第6話 乗り越える力

 この病気になって、そろそろ10年が過ぎようとしています。


 進行性ではないと言われていたけれど、ゆっくりと進行している病状。いつか家事ができなくなったり、自分の足で歩けなくなったりもするのかなぁ。と将来の心配は尽きません。


 夫は凄く理解してくれていて、私が無理しなくて済むように、その時その時に合わせて、対応してくれています。

 本当に、この人がいてくれるから、私は生きていられるのだと思いますね。感謝しかありません。


 ずっとずっと、そうやって「痛み」に囚われ続けていた私に、あるお医者さんが言いました。


「痛みは一生治らないと思うよ。

 だけど、気にしないで生きることはできる。

 君の好きなこと、やりたいことは何?

 それをやってみてごらん」


 私は、自分にはもう何もないと思っていました。結構絶望的に。


 でも、先生にそう言われて、目からうろこ

「書こう」

 そう思いました。


 書いているうちは、そちらに集中するため、痛みはあまり気にならなくなりました。

「趣味」って凄いパワーを持ってるんですよね。

 強い強い痛み止めでも治らない痛みを、一時的にではあるにせよ、軽減してくれるんですから。 


 元々、集中力が凄くて、

「夕方、思いついて、絵を描き始めて、ふと気がついたら朝だった。」

ってこともしょっちゅうあった私にとって、「好きなことをやる」っていうのは、何よりの薬でした。


 でもね、病気のことなど知らない、理解してくれない方々には、また、

「仕事もロクにしてないくせに遊んでる」とか、

「そんな何の稼ぎにもならないことやってどうするの?」

 とか……言われるんだろうなぁ、と思うと、中々そればかりやっているわけにはいかない。


 だから、実際書くのは、たまに。

 後は頭の中で、あれこれ考えてました。

 料理しながら、掃除しながら、洗濯干しながら、お風呂に入りながら……。

 そう、空想することも、かなり効果のある痛み止め。 

 少なくとも、私にとっては。


 でも、痛みを感じなくするためっていうより、やっぱり好きだから書いているんですよね。


 やりたいことがあってよかったなぁ。

 そう思います。

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