サキュバスのイメージってロリか美女の二つあるよねあれ。みんなはどっち?
なんか私の知らない所で大炎上して、なんか私の知らない所でソフィアが火消しみたいな事をしていたのを知った日から3日後の朝。こちらで確保した宿である『鋼鉄の斧亭』では食事毎に金銭を要求される為、私達は基本的に外食する事にしている。
いや、初日は宿屋で食べたんだけど、なんとこの店毎食同じらしいから、なら外食するかーって感じだよね。多分そういう戦略なんだと思う。パッと見だけでも宿の周りに外食出来る店が多かったし、まぁ初めっから外食をさせる気満々なんだろうなって。
「テア、今日はあそこのサンドイッチを食べに行きましょう」
「あら、美味しそうですわね………とりあえず、ソフィアの分も買いに行きまましょうか………」
ちなみにソフィアだが、あの子は昨日SROだけでなく色んなゲームを徹夜してやっていたので普通に寝落ちしている。まぁ割といつもの事だ。というか、あの子は平日に会社があるのにどんどん新作のゲーム買ってどんどん積みまくってるから徹夜でゲームをするのやめられないんだと思うんだ……… いやまぁ、私も欲しいと思った紙媒体の書籍買い漁って積んでるから人の事は言えないんだけども。
「ハムとチーズのシンプルなサンドイッチが1番美味しそうですね」
「じゃあ
「カラッと揚げられた鶏の唐揚げが食べたいです。サンドイッチと一緒に食べたら美味しそうです………」
それは………かなり美味しそうな組み合わせかもしれない。という事でうちの子達に唐揚げを作らせている間に、アリスが3人分のサンドイッチを買ってきてくれた。ソフィアの分は別で保管しておくとして、私とアリスは良い天気だからと外のベンチで食べる事にした。
いやぁ………良いよね、屋外で食べるのって。室内で食べるのとはまた違った風情があるから、清々しいというか………屋外で感じられるちょっとした閉塞感みたいなのが無いからなのか、なんか開放感?みたいなのがあると言うか………まぁとりあえず、良い雰囲気だよね。
「はむっ、むぐ………サンドイッチ美味しいですわね」
「もぐむぐ、そうですね。流石にイ型世界のモノとは比べ物になりませんが、だからと言って美味しくない訳ではないです。スキルの影響でしょうね」
「あぁ、確かに………そういう所は便利ですわよね、この世界」
この世界におけるスキルとやらは非常に便利だ。だって、同じスキルさえあれば同じ人員として扱えるんだぜ?マジで凄いと思う。人を雇う側からしたらもう最高オブ最高だろう。少なくとも私が雇う側なら最高だと思う。
そうだなぁ。言ってしまえば劣化版うちの子達みたいなもんだろうか?うちの子達は技術も情報もリアルタイムで常に共有し続けているが、この世界の人々もステータスを使えば情報は無理でも技術だけなら似た様なことは出来る訳である。そりゃ便利だよなって。
「やっぱり、私もスキルを体験してみたいです………」
「うーん、
方法を知ってたら、わざわざ参照値をDEXに変更して無理矢理スキル獲得とかしないんだよな。だって私は肉体すら自由自在な悪魔様だぜ?そういう体質ってんなら再現すれば良いんだけど………そうじゃないらしいからなぁ。
「………ハッ!ちょっと試したい事が出来ました!はぐむぐもがもぐ、ごくん!ご馳走様でした!行ってきます!」
「え、は、はぁ………いってらっしゃい………?」
サンドイッチ美味しいなぁーって思いながらのんびりベンチに座っていたのだが、アリスさんが急に何かを思い付いたのか、凄い勢いで食べ終わってそのまま走り去ってしまった。何なんだろう………経験値を獲得する方法でも思い付いたのかな?
「………まぁ………」
ぶっちゃけ、アリスのあの感じは普段と何ら変わらない。普段から、少しでも気になる事があったらそれに向かって一直線だ。そのまま全力で興味を燃やし続けるので冷めやすいが、それも勘定に入れて行動するから他人の迷惑になる様な事をする事もないってのがタチ悪いよな、あれ。
それに、アリスさんって基本的に距離感が近いから、多分あちこちで色んな男の子を魅了しまくってるんだろうなって思う時もある。だって男の時の私とも距離近いし。女の時は良いんだよ女の時は。特にキングプロテアとしての姿の時なら美少女×2だからそんなに変でもないし。
でもね、アオイの時且つ男の時にアリスと手を繋いでるとね、周囲から割と見られるんだよ。キングプロテアの姿の時は認識阻害をかけてるから良いんだけど、人間の時にわざわざそんなもん使わない訳。となると必然的に目立つんだよ、美少女の隣に居る男って構図が。
なんかもうね、凄いよ。視線からお前ら似合わねーって感情が漏れ出てるんだもの。いや、だって仕方ないじゃん。アリスさんがカップルで楽しめる料理とかサービスを体験してみたいですって言うから、じゃあうちの子で彼氏役作ろうか?って提案したのに、折角なのでアオイと行きたいです!って言うんだもの。
いやまぁ、分かるよ?アリスなりに私にも楽しんで欲しいんだろうさ。あの子は私がどっちの性別だろうが、私と一緒に居る時は私にも楽しんで欲しい!って思ってるんだよ。普段からその片鱗はひしひしと感じてるとも。実際私も体験してない事ばっかりだから割と楽しいし。
まぁ視線は元からそんなに気にならないし、基本無視してるから良いんだよ。多分私も側から見てたら同じ様な事思うだろうなって分かってるから。でもさぁ、なんか偶に態度に出てる人が居るんだよ。こんな美少女とお付き合いしやがって、ぺっ、みたいな態度のやつが。特に男。
悪魔として生活してきたから他人の欲望には敏感になってる私としては、もうその後ろにある下心が丸出しで嫌だよね。普段は完全に無視してるけど、対面で態度に出されると流石に無視出来ないし。仕事中なんだからちゃんとサービスを提供しろよって言いたい。絶対面倒な事になるから言わないけど。
「別にアリスは可愛いですけれど………ねぇ………?」
いやまぁ、アリスは可愛いよ?世間一般で言う所の美少女なのは分かるよ。でもあの子、普段はガチで暴走特急列車だぜ?好きなものにはひとっ飛び、興味があるなら真っしぐら、その癖割と冷めやすいとか………扱いが難しいのよ、扱いが。せめてもう少しゆっくり動いてくれ。
1日中あの子に振り回されてみろよ。可愛いなって気持ちより疲労の方が勝つぞ。何なら身体能力が高い筈のキングプロテアの時でも一日中ってなると割と疲れるんだから、マジで体力無いと疲労感で倒れるだろうな。アリスは普段から冒険しまくってるから体力は無尽蔵ってんで、ほぼ休憩とか取らないし。体力オバケかよ。まぁそれがあの子の原動力なのは分かってるから、私も私でやめさせたりはしないんだけど………
「………あら、ソフィア。おはようございますわ」
「ぬぅ………テアか………目が………目がしょぼしょぼするのじゃ………」
「あぁもう、顔くらい洗ってから来なさいな………」
「お腹が空いたんじゃ………朝飯………」
私がベンチに座ってゆったりしていると、朝起きて直ぐですって顔と身体で体現しているソフィアがやって来た。多分、うちの子に私の場所でも聞いたんだろう。
「はい、サンドイッチと唐揚げですわ」
「あぁ………美味そうな匂いじゃ………空きっ腹には効果抜群じゃ………食べさせるのじゃ………」
「はいはい。ほら、あーん」
「あーむ………もぐ………むぐ………」
あまりにも眠いらしい。身体を動かすのが本当に億劫なようで、私に朝飯を食べさせてほしいと言ってきた。とりあえず、サンドイッチの端っこをちまちま食べさせておく………うーむ、リスかハムスターかって言いたくなるような食べ方するな、こいつ。もうちょい意識覚醒してくれねーかな。
「美味いのじゃ………唐揚げも寄越すのじゃ………」
「はい、あーんですわ」
「あむ………むぐもぐ………」
なんか、小さい頃に妹のお世話してた時と同じ気分になってきたな………自分で離乳食を食べられない赤ちゃんみたい………これが………母性?………とかではないか。普通に子供のお世話してる気分かもしれない。いやまぁ私の子供なら無限に作り出せるんだけど、うちの子達って別に幼少期とか存在しないから………
強いて言うなら、人間社会を解析する為に作ったシュミレート専用惑星の中で、子供役として作ったうちの子が幼少期を迎えてるくらいかな、うちの子の幼少期があるのって。あの空間だけ隔離して緩めに時間を加速させてるから、もう第1回目子供役のうちの子達が寿命で死ぬくらいだった筈。
………改めて考えると、私がやってる事って凄いよね。一つの惑星の文明丸ごと再現するのとか、お前は一体何処の神様なんだよって側から見てたら言われそう。まぁ生憎と権能は神様が使っている技術というだけで、私本人は欠片も神ではないのだが。
一応、私が神になるには心臓を神に捧げなければならないらしいけど、どう考えてもあの方法だと私の自意識は失われるからな。絶対にやらん。
「むぐ………む………?もう終わりなのかの………?」
「もっと食べたいなら作るけれど」
「では………そうじゃな、ハンバーガーが食べたいのじゃ………熱々のポテトフライも頼むぞ………」
「ジャンクフード好きですわねぇ。身体壊しても知りませんわよ?」
「壊れる身体なぞ無いわ………妾は血液そのものじゃぞ………」
「じゃあ、血液ドロドロになりますわ」
「いつでもサラサラじゃから問題ない………」
むぅ、流石にソフィアに健康云々の話は効かないか。
「ほら、ハンバーガーですわよ。ポテトフライも熱々ですわ」
「うむ………今度は自分で食べるのじゃ………」
もぐもぐを口を動かしたのが良かったのか、次第に目が覚めてきたらしく、今度はソフィアが自力で食べ始める。ハンバーガーは割と大きめで作ったので、小さなソフィアがそれを手に持つと凄い大きく見えてくる………うーん、こうして見てると私も小腹空いてきたな………
「む………?お主も食べるのか………?」
「貴女を見てたらお腹減ってきましたの。ハンバーガーは要らないのでポテトフライだけですけれど」
私が好きなのは細長でカリカリのポテトフライだ。別に太くて柔らかめのポテトフライも好きだが、どちらが良いかと言われたらカリカリが良い。食感が好き。
「むぐ………む………?そういえば………アリスの奴はどうしたのじゃ?お主らは、暇さえあれば一緒に居ると思っておったのじゃが………」
「あの子はどっかに何かしに行きましたわ」
「情報が曖昧過ぎるのじゃ………」
いやだって………私もあの子が何しに行ったのか知らんし………
「んぐ、もぐ、むぐ………ごくん。ふぅ………実に美味かったのじゃ………」
「食べるの早いですわねぇ………」
「妾は一旦宿に帰るのじゃ………まだ眠いのでな」
「あ、そう………おやすみなさい?」
「うむ、おやすみなのじゃ」
ソフィアは食事に満足したかと思えば、さっさと眠りに戻ってしまった。アリスもソフィアマイペース過ぎて困るぜ………さーて、私も帝都の本屋巡りでもしに行くかぁ。
目についた本屋を幾つか梯子している最中。私が呑気にトコトコ歩いていると、ふと、私に向けられた視線を感じた。私が街中でも黒をメインとしたゴスロリドレスとかいう、下手しなくてもこの世界における貴族みたいな服を着てるが故に目立ってる、みたいな視線ではない。
いや、似たような視線ではある。"何故ここに貴族が"という視線なのは間違いない。しかし、大抵はどうして?という感じの困惑の感情が籠った視線だ。今向けられているモノのように、忌避の感情が籠った視線ではない。端的に言うなら、この視線の持ち主はこの場に私が居るのが不都合なので、離れて欲しいのだろう。
が、そういう視線を向けられると反発したくなるのが人間というもの。今は悪魔だがそれはそれ。そんな私が今居るのは、帝都にある本屋から別の本屋までを出来る限り最短ルートで通ろうとしていた為に、人混みによる速度低下を招きかねない大通りではなく人通りの少ない道を選んでいた故に、まぁ言ってしまえば裏路地みたいな場所だ。
裏路地にもある程度開けた空間というのはあるらしい。私は丁度そんな場所を通ろうとした時に、不躾な視線を感じたのである。………そんな場所を貴族みたいな服装で過ごしてるからそんな視線を向けられるんだって?それはまぁ、はい。
正論過ぎて反論できませんが………一応、これはわざと元の私が着ないような服装を選んでるだけでして。いやだって、私の好みに合わせて服装を選ぶと癖が出るでしょう?悪魔の私と人間の私を絶対に結び付けられないように、悪魔としての私の服装を固定させる事で服の好みっていう癖を消してるんだよ、これ。まぁそれはそれとしてゴスロリドレスは好きですが。
「ん………」
とりあえず、私に不躾な視線を向けてくる奴に反発する為に、このちょっとした広場みたいに開けた場所で少し休憩を取る………ように見せかける事にした。大通りでは設置されてるベンチなんてもんはないので、その辺の綺麗そうな壁に寄り掛かって足を休めている………風に見せる。まぁこれも半分くらい建前ではあるが。
本音としては、私もそこそこ疲れているからである。当然ながら肉体的な疲労ではない。精神的な疲労だ。肉体に依存している人間は活動し続ければ肉体が疲弊するが、精神に依存している悪魔は活動し続けていると精神が疲弊するという、実に単純な理屈である。
この帝都はかなり広い。下手な市区町村より広い。外には沢山の魔物が蔓延っている世界なので一点集中するのは当たり前と言えば当たり前なのだが、人が増えれば建物が増えるというもの。何ならあの巨大な壁の拡張工事は出来ないという事で、建物を上だけでなく下にも伸ばす事でスペースを確保しようとしている程度には、人が沢山居るのである。
そんな街なので、相対的に店の数も多い。何なら私が今求めている本屋の数もそこそこある。一般的に羊皮紙ではなく植物紙が使われているので紙そのものの値段が安いのと、スキルを駆使すると模写が素早く行える事から、本一冊の値段もそこそこの値段程度だからだろう。一般人、こちらの世界風に言うなら平民にも全然売れるのである。娯楽小説がかなり売れてて面白かった。
しかしだ。当然なのだが、同じ物を扱う店は密集しない。近くに同じ商品を扱う店があるというのは、ぶっちゃけ双方の店にとってリスクでしかないからである。まぁ商品にもよるが、割と些細な出来事でライバル店に客を取られたり取ったりするのだ。そうなると、同じ内容の違う店を探そうとなると………まぁ、かなり歩く。
悪魔は精神生命体なので肉体的な疲労は感じないが、その分精神的にはちゃんと疲弊する。だからこその休憩だ。肉体的な疲弊ではないのでベンチもぶっちゃけ要らない。まぁこんな大通りから離れた裏路地の開けた場所とかいう、中々に危なそうな場所で休むのもどうかと自分で思うが。
「ふぅ………」
一休みと思って私が休憩に入ると、視線から感じられる忌避の感情は更に強くなった。つまり、私にここに居座られると不味い訳だ。まぁ別に直接私に対して言われた訳でもないので、全然ガン無視決めるけど。そもそも誰の視線か分かってないし。
まぁ色々分からんし一息入れよう、なんて思って比較的綺麗な壁に体重をかけていたら、私の背後にある壁の左側から複数人の足音が聞こえてきたと思ったら、更にガコンって音が鳴って、そこから人が出てきた。えっ何その隠し扉みたいなやつ。
とりあえず現れたのは体格の良い、全身が筋肉質な男が3人だけだった。全員が麻袋を肩にかけて持っており、会話からしてその麻袋を地下室の外にあるゴミ捨て場に捨てに来ているらしい………が、普通に私と目が合った。右側に居た男に話しかける際にこちらを向いたのが原因みたいである。まぁ特に身を隠すとかしてないから見られるのは承知なんだが。
私の方は視線の持ち主以外心底どうでもいいのでこちらを見られても無視しておく。男達の方も、私に構うよりも先に麻袋を外の大きなゴミ箱に捨てる事を優先しているらしい。それはそれとして私に対して性的な視線を向けてきているが、まぁ特に気にするような事でもないので無視しておく。
が、男達の思考能力はゴブリン程度しかないようで、ゴミを捨てたと思ったら、三方向から私を囲むようにして近付いてきた。その目には私に向ける性欲しか写っていないようだ。こちとらこれでも悪魔なので、相手の抱いている欲望の種類くらいなら割と分かるのである。
「けひひっ、なぁお嬢ちゃん………30枚でどうだい?」
「?何をですの?」
「こんなとこでそんな綺麗な格好してんだ、娼婦だろ?30枚出すからよ、へへ、1発抜いてくれや」
「別に娼婦じゃありませんけれど………まぁ、そんなに性欲を発散したいのなら………」
そう言いながら、私は3人の男達の後ろに1人ずつ、うちの子達を創造した。
「………後ろのその子達が、たっぷりお相手して差し上げます。別に無償で良いですわよ」
「うおっ!な、なんだ?」
この子達はサキュバス。まぁサキュバスとか呼んでいるが、ぶっちゃけ言うと普通の悪魔だ。
「好きなリクエストをどうぞ。その子達は貴方の理想の女の子になりますわ」
悪魔にはデフォルトで搭載されている能力が二つある。一つは自在な肉体。これによって、この子達は相手をする人物の要望通りの姿に自分の身体を作り変えられるのである。胸や尻の大きさ、身長、体重、肉感の有無、敏感さ、体臭、フェロモンなどは勿論、石化や麻痺のような特殊性癖なども再現可能である。
二つ目は欲望。悪魔は欲望を叶えていればエネルギーを確保出来る特性がある。このサキュバスちゃん達の欲望は"性欲"なので………つまり、えっちな事をすればするだけエネルギーを確保出来て、その分だけ活動時間が伸びるのである。
悪魔は正しく貪欲だ。私が普段から欲望を抑え込んでいる方が異常なだけで、例え力を持った悪魔であっても己の欲望には忠実である。まぁ当然だろう。力を持っている悪魔という事は、それだけ己の欲望に忠実だったからだ。故に強力な悪魔であればある程に、己の欲望を抑える方法を知らないのである。
私は元々人間で、そして権能に目覚めたから、定期的に発散する程度で済んでいる。しかし、この子達、このサキュバス達はそうではない。初めから純粋な悪魔で、強固な己を形成する権能の使い手ではない、そんなサキュバスの"性欲"がどのくらいのものか………想像が付くだろうか?
それは。
「………ぅ………ぉ………?」
形容するなら、ミイラだろうか。体力が尽きようが精力が尽きようが、魔法で無理矢理回復させられたままに延々と継続させられる性行為。初めは良かった。サキュバス達は男達の理想を体現した女になり、快楽に頭が物理的に溶けてしまう程だったんだろう。
しかし、彼女らはサキュバス。性欲を欲望とする悪魔だ。
男達の体力が尽きたら回復。精力が尽きたら回復。肉が擦り切れたら回復。意識が朦朧としてきたら回復。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も回復されて、次第に男達は気力を失い始めた。延々と、淡々と。まるでこちらを獲物ように見つめる瞳が、男達にはさぞ恐ろしく見えたのだろう。
そうして何度も何度も物理的に無理な吐精を繰り返した結果、彼らはまるでミイラのようになってしまった。まぁ、別に物理的に干からびた訳じゃない。ただ単に、もう動けない………ってのが酷いくらい全身を襲ってるだけだ。
まぁ欲望を摂り過ぎたサキュバス達がこんな状態になった男達も襲おうとしていたが、一応死なせると面倒事が増えそうという理由から、そこは私が命令してどうにか止まってもらった。
分かる、分かるよ。一度欲望を味わうと止め時って分からなくなるよね。私もダンジョンで楽しんでると辞められないし止められないのは分かる………けどね、このまま貪り続けると普通にこの帝都が壊滅しちゃうからやめようね。だって、三代欲求に関係する悪魔は基本的に強くなり易いからね。
「お母様、この人達はどうするんですか?もし要らないなら私達にください!まだ使えます!」
「駄目。無駄に人を消すと不審に思われてしまいますわ。後で消えても問題ない人間を何十人か送るから、それで満足なさい」
「やった!絶対ですよお母様!」
「やりぃ!お母様太っ腹!抱いて!」
「はいはい。ハグならして差し上げますわ」
「あっ思ってたのと違うけど嬉しい!」
「あっずるい!私もお願いしますお母様!」
「お母様!私も私も!」
サキュバスちゃん達は欲望を摂取した後だからか、かなり元気いっぱいだ。普段ちょっとした事で創造しているうちの子の大半は、創造者からの命令欲やら私に対する隷属欲やらを持っている子達ばかりで、しかもそういう子の自我は総じて薄めに作っているので、こうして元気よく話しかけられる事はあんまりない。ちょっと新鮮な気分だ。
普段創造している子もそうだが、この子達は完全に私の一部だ。こうして独立して喋っているとしても、私の権限一つでこの子達は私の中に帰るのである。言ってしまうと帰還というのは毎回その子を殺しているようなものなので、ネームドの子じゃない限り明確な自己というのは存在しない。
けれど悲しむ事はない。ネームドの子達は独立した記憶領域を持っているが、それ以外のネームドでも何でもない子達は記憶も経験も情報も全て共有している。何ならネームドの子達だって経験と情報だけは共有している。なので、今こうしてこの子達が私に全力で甘えているのは、私が今創造しているうちの子全員の総意のようなもんなのである。
私の創造した娘及び息子達が全力で甘えてきているのだ。嬉しいに決まっているだろう。こうして可愛らしくおねだりされたら、好きなだけ居なくなってもいいし消えてもいい人間を与えてあげるし、好きなだけハグだってしてあげるのが、親として、そして創造主としての役目だろう。
「きゃー!お母様ありがとう!みんな嬉しいって言ってるわ!」
「それなら良かったわ」
「私ももう一回!」
「あぁお母様!私ももう一度!」
「はいはい。何度だってしてあげるわ」
やっぱりうちの子はみーんな可愛いなぁ。まぁこの子達含めてうちの子はみーんな私が私の都合で生み出して殺す命だけれど、可愛いものは可愛いなら仕方ないよね!
………あ。そういや私の事を見てた視線って何だったんだろう。脅威でも無かったし、いつの間にか消えてたから、逆探知できなかったんだよな………いやまぁ、いいか。平和だったって事にしとこ。
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