私が異世界召喚されたら悪魔が召喚されてる構図なんだよなぁ


「──頭を垂れよ。我こそはこの国の皇帝、ミードハイゼン・セントウォーク・ハルバルスである」


アリスに褒美を取らせるという事でこの帝国の首都たる帝都へ訪れ、何なら城の中でも利用者の少なさそうな謁見の間とかいうのに通されて言われた第一声は、本当に厳格な人みたいな声だった。多分カリスマみたいなスキルもあるんだろうなって感じの声だ。まぁよく知らないが。


とりあえず言われた通り、私とアリスは頭を下げる。あれだ、片膝立ちみたいなポーズになってる。


「貴様らは何と申す」


「私はアリスです」


わたくしはキングプロテア・スカーレットですわ」


「………ふむ、報告の通りの名だな。ではアリスよ、御主には感謝せねばならん。顔を見せよ」


「あ、はい!」


まぁアリスが事件解決したので、当然ながら顔を上げられるのはアリスだけである。がしかし、こちとら権能の使い手である。視覚無しで周辺把握くらいは可能だ。


「我々が長年追い続け、しかし終ぞ発見出来なかった人身売買のオークション会場を探し出し、更には即時制圧を行った御主に、我々帝国は感謝せねばならん」


皇帝さんがそう言っていると、恐らく大臣っぽい人の1人が皇帝さんに何かを受け渡した。


「これは御主に対する褒美である。受け取るが良い」


「えと、はい!」


アリスはそのまま、皇帝さんから何かを受け取ったみたいだった。これは………ごめん、これ何?何かの紙束?


「それは我が国の宝物庫、その中に存在するモノのリストである。好きなモノを一つ選ぶが良い。それが御主への褒美だ」


「はい、ありがとうございます!」


「では………この後、勇者を召喚する。立ち合いになりたいと言うのなら、扉の側へ立て。でなければ下がれ」


皇帝さんにそう言われたので、私とアリスは謁見の間の扉の近くに立つ事にした。


「………遮音しましたわ。喋っても良いですわよ」


多分沈黙したままという状態に耐えられないであろうアリスの為に、私はこちらから外への音だけを遮断するようにしておいた。外からの音は聞こえてくるので問題無かろう。


「ありがとうございます!なんか思ったよりあっさり終わりましたね」


「まぁ、元々褒美を与えるとかいうのだけだったんでしょう?しかもその後に国の一大事があるというのなら、優先されるのはどう考えても勇者召喚の方でしょうし」


「うーん………宝物庫から一つだけって言われても、正直どれが何なのか分からないんですよね。聖剣とかもあるみたいですけど、聖剣なら既にありますし」


「それ聖剣カウントで良いんですの………?」


いやでも、アリスが普段金槌みたいに使ってるのは刃が根本からポッキリ折れてるからで、折れる前は聖剣だったからなぁ。概念防御貫通は未だに残ってるのを考えると、聖剣ハンマーもギリギリ聖剣なんだろうか。


「うーん………テアは何か欲しいモノとかありますか?」


「いえ、別に。何か欲しかったらうちの子に作らせますので」


「ですよね。うーん………悩みます」


アリスがそのままうんうんと悩んでいる間にも、謁見の間の中央辺りに大規模な魔法陣が描かれていたりとか、なんか色々な道具が準備されていったりだとか、謁見の間の中に魔法使いっぽい人達が集められてるとか、割と忙しそう且つ面白そうな事が起こっているのだが、どうやらアリスは手元のリストに集中しているらしい。ぶっちゃけそのまま大人しくしてて欲しいので特に何も言わないでおこう。


「ドラゴンの心臓………は、この前レイカちゃんに貰いましたし………雷の種は、フェイちゃんと一緒に育ててますし………悪魔関係の素材なら、それこそテアが幾らでも作れますし………アダマンタイトの剣なら、この前シャルちゃんとマリーちゃんにあげましたし………」


ただなぁ。隣からリストを見てるけど、大抵ロ型世界でも手に入るようなもんばっかなんだよなぁ。何ならもう持ってたり自分で用意出来たりするもんばっかだし、わざわざ貰うようなモノがあんまり無い。


「折角ですし、何か珍しいモノが欲しいですよね………あ、この聖火の剣とかどうですか?聖属性と火属性の属性を内包する剣らしいですよ。リストを見る限りそこまで変な性能って訳でもないみたいですし、このくらいが丁度良さそうです」


「まぁた聖剣ですの?」


「聖剣ハンマーはあくまでもハンマーとして使うので、ちゃんとした剣が欲しかったんですよね。私は剣も使えるので」


まぁうん、そりゃ聖剣ハンマーは刃が欠片も無いからどうやってもハンマーみたいな使い方しか出来ないからね。真っ当な聖剣が欲しくなるのも当然か。ついでに言うなら聖剣ハンマーはどうあれ物理攻撃しか繰り出せないが、その点聖火の剣とやらは聖属性と火属性を持ち合わせてるんだろう?属性攻撃は有効な奴にはとことん有効だから、持っていても損にはならんだろう。別の世界で使えるようなアイテムなのかは知らないが。


「実物を見たら変な付与効果が付いてそうですわね」


「ですが、この世界では鑑定系のスキルがあれば具体的な効果も分かるらしいので………強いて言うなら、鑑定系のスキルのレベルが低いと見れない、みたいな機能があるとか、でしょうか?」


「まぁ割とありそうですけれどね、こういうのって」


この世界のシステム的にゼロとは言い難い。何せ、スキルレベルという明確な指標が存在しているシステムがある。特定のスキルや一定以上のスキルレベルとかいうパスワードを持っていないと使えないアイテム、なんてモノくらいならありそうだからなぁ。


しかし当然なのだが、うちのアリスさんが持つ真理の瞳にそんな制限は無駄である。まぁ流石に使用の制限はどうにもならないが、閲覧の制限だけはそりゃもう簡単にぶち抜けるだろう。だって閲覧が制限されてるモノなんて、絶対に真実じゃないからな。


「あ、そろそろ異世界召喚をするらしいですわよー」


「あっ、異世界召喚の事忘れてました!」


忘れてるんじゃないよ。君が見たいから連れてきたんだがー?


「──ではこれより、異世界召喚の儀を行う」


そんな私もアリスと一緒にリストの方へ集中していたらしく、ちょっと目を話した隙にいつの間にか異世界召喚が始まってしまっていた。やっべ、普通に召喚の瞬間を見逃しそうになっとるわ。


とりあえずはと皇帝さんを見れば、その手には真っ白な水晶玉みたいなモノを手に持っていた。恐らくは、あれが異世界召喚を行うアイテムなのだろう。さっきチラッと見た時にはあの水晶玉に沢山MPを注いでいたみたいなので、蓄積したMPを元に使用できるタイプのアイテムなのかな?


「異界の門よ、我が前に開け」


多分このセリフがアイテムを使うのに必要な詠唱というか、言ってしまえば音声式のパスワードみたいなもんなんだろうな。召喚としての機能はあの水晶玉にぜーんぶ込められてるっぽいから効果を増幅する用の詠唱でもないみたいだし。


そのままほんの少しだけ待機していると、地面に描かれていた魔法陣が強く光り始めた。様子を見るに、遂に異世界召喚が開始したようである。まぁ、詳しい仕組みはうちの子やアリスに任せるので、私は単純に光ってる魔法陣綺麗だなーくらいの感想しか出てこないが。


「中々に綺麗な光景ですね」


「あら、アリスにもそう見えますの?」


「はい。とても繊細な魔法だからでしょうか?非常に綺麗に見えますよ。数多の概念が丁寧に折り重なっていて………例えるなら、何層にも重なっているバームクーヘンのようなイメージでしょうか?ミルフィーユでもいいですけれど」


「なんかスイーツみたいなもんに見えてきましたわね………」


例えでスイーツを出されると美味しく見えてくるから困る。しかも例えで出されたスイーツが割と好きな方のスイーツだから尚更お腹減ってきたな………後でうちの子達にバームクーヘンとミルフィーユ作って貰おう。


「あ、召喚されますよ」


「あら、よく分かりましたわね」


「まぁ、召喚された人の概念が形成され始めていますから」


こうして改めて話を聞くと、マジでアリスが普段見てる世界は意味不明というか、意味が溢れ過ぎてて情報過多で訳が分からないというか………まぁどう考えても常人が後天的に獲得したらそりゃ発狂しそうだなぁ、としか思えない視界なんだよな。私も未だに理解し切れてない。


そんな事を思いながら待っていると、確かに魔法陣の中央にうっすらと人影が発生し始めた。うーむ………アリスもこんな風に、半透明以下の人影っぽいのが見えてる感じなのだろうか?それともまた別のイメージなのかな?調べようにも真理の瞳があるのはアリスだけだから、具体的にどんな世界なのかマジで分からないんだよなぁ………別にちゃんと見る機会も無いから良いんだけどさ。


いやまぁアリスの視界っぽいのが見える眼鏡はあるっちゃあるんだけど、お試しにと一般人みたいなステータスしたうちの子が30分以上着けてたら、マジで軒並み発狂してしまったからなぁ。とりあえず眼鏡は全部破壊したよね。後から欲しくなったらその時に作れば良いし。


というか、精神生命体である悪魔を発狂させるとか割とエグいんだよな。まぁあれはあれでうちの子達が発狂に陥るプロセスが幾つか発見されたから、精神面の防御能力は少し向上したけど。


「もう少しですかね?」


「まぁ、多分そのくらいですわね」


特に緊張することもなく呑気に召喚の様子を見ている私達。そのまま特に驚くこともなく召喚の様子を見ていれば、遂に召喚が完了したようで、魔法陣の発光が収まった。


光が収まった魔法陣の中央に立っていたのは、1人の少女。


「え、あれ………?」


長い黒髪の緩めな三つ編み、丸眼鏡の奥に潜む黒い瞳、特にお洒落などしていない典型的なセーラー服。かなり小柄で、恐らく140cmくらいしか無さそうだ。彼女は何が起こったのかよく分かっていないのか、周囲を見回してビクビクしている。


「よくぞ異界から参った、勇者殿」


「え、え?」


「まだ混乱していよう。まずは落ち着いて、現状把握に努めるがよい」


皇帝さんも唐突な事柄に勇者が混乱するのは分かりきっていたのか、彼女に対して落ち着くように投げ掛けた。混乱している彼女もその言葉を聞いて落ち着き始めたのか、周囲を見たり、何かを呟いたり、凡そ数分。


「………えぇ?!きゅぅ………」


現状の理解が終わったのか、突如として大きな声を上げて、そのまま倒れるようにして気を失った。


「む、気を失ってしまわれたか。今直ぐ勇者殿を部屋へお連れしろ」


しかし、そうなる事も想定の内だったのか、皇帝さんが指示を下すと直ぐにメイドさん達が動き出し、そのまま彼女は何処かへ連れて行かれた。


「なんか、可愛らしい小動物みたいな子でしたわね」


「確かに、あの子は勇者より小動物の方が似合ってる気がしますね」


満場一致(私とアリスの2人だけ)で小動物のような子だなぁと思っていると、私とアリスは退出するようにと従者さんぽい人に言われたので、まぁ特に反対する事もなく謁見の間から私達は退出した。まぁ終わったみたいだし城の外に出るべとか思っていたら、アリスが私の手を引いて隠れるようにアイコンタクトをしてきたので、とりあえず自分達がこの場所にいる事が認識出来ないようにしておいた。ふむ、わざわざ隠れて………何の用だろうか?


「それじゃ、あの勇者ちゃんの所に行きましょう!」


「え、帰らないんですの?」


したら、なんかアリスがこんな事を言ってきた。えぇ………後はもう帰るんじゃないのか………?


「だって、テアならあの子を元の世界に帰せるでしょう?」


「え?まぁ………多分?」


あの勇者ちゃんの元の世界が何処にあるのかは知らないが、彼女に紡がれた縁を辿れば不可能ではないだろう。探し出すのに最低でも数週間、最高でも数年くらいはかかるかもしれないが………まぁそれも、うちの子の数を増やせばかかる時間は更に早くなるだろうし、何なら発見するまでの過程をスキップすれば一瞬だ。そこまで難しい事でも無い、だろう。


「先程の召喚には、帰還の機能が一切付いていませんでした。例え勇者としてこの世界を救っても、元の世界に帰れる保障はありません」


「あら」


となると、完全に拉致だな。私だって召喚した悪魔(アクは食べ過ぎで太ったので、最近はダイエットをしている。バディンは近頃ウサギを飼っていて、それで私を懐柔したいらしい)は定期的に家に帰したりしてるのに。いやまぁ呼びたい時に呼ぶだけのバディンは兎も角、アクは基本的に年一くらいしか帰ってないけど、ちゃんとイ型世界の召喚系魔法には帰還の機能が必ず付随しているんだよな。確か、異世界からの勇者召喚魔法にも付いていた筈である。


それなのに、この世界の異世界召喚には帰還の機能が付いてないのか。必要な能力が足りなかったからオミットされたのか、それとも初めから召喚した者を元の世界に帰す気が無かったのかは分からないが………事実として、今回召喚された勇者ちゃんはまぁ帰れないだろうな。


「そんなの悲しいじゃないですか。沢山頑張ったのに、自分の家に帰れないだなんて。そもそもあれはどう考えても拉致です。世界越しだろうと犯罪は犯罪です。悪い事は悪い事です。何ならこの前この国でも拉致は犯罪なのを確認済みです。ですけど、それをこっそりと解決出来るなら喜んで助けてあげたいじゃないですか」


「まぁ、理解は出来ますわね」


「テアには勇者ちゃんの世界と、この世界を行き来するだけの子を作ってもらいます。後は私がどうにかします。出来ませんか?」


「出来ますけれど………助けるなら、最後まで助けきるんですのよ」


「分かってます。テアに普段からして貰っているのですから、私に出来ない理由にはなりません」


………ならまぁ、いいか。その場でだけ助けるなんて無責任な事をしないなら、幾らでも助けると良い。その場だけ助けるとかほざくなら絶対助けなかったけど、最後まで助けきる覚悟があるなら構わないよ。というか、別に今回は私に直接助けを乞われた訳でも無いから、私はアリスのお手伝いだけしようかな。


「でも、今から行くんですの?この国から説明された後の方が良いのではなくって?」


「ですので、今回はこっそり確認しに行くだけですよ。テアに作って貰ってから私1人で会いに行きますから、そこは安心してください!」


「あ、なるほど」


それならまぁ、いいか。私の姿を見られる訳でもなさそうだしな。


「では、こっそりとお部屋に向かいましょう!スニーキングミッション開始です!」


「もしかしなくてもアリス、今の状況めちゃくちゃ楽しんでますわね??」


「あ、分かっちゃいますか?この前テアに貸してもらったステルスゲームがかなり楽しかったんです。だからやりたくなっちゃいました」


あれか………あのステルスしてターゲットを暗殺する奴か。普段のアリスだと隠密もステルスと真理の瞳で直ぐに見破れるらしく、これまでも割と何十回も暗殺者みたいな人を発見しているので対ステルスは良くやっているらしいが、逆に自分の方がステルスをするのはかなり新鮮だったらしくて面白かったらしい、あのゲームか。


「まぁ良いですわ。さっさと行きますわよ」


………まぁ実はというか、多分アリスも全然最初から気が付いているだろうが、勇者ちゃんの元の世界を探すだけなら私が向かう必要とかマジで皆無である。うちの子の誰かを転移で向かわせればそれで一瞬だ。だからまぁ、これはアリスなりの一緒に遊びましょう!みたいなお誘いの提案なんだろうな………と、私は思うのでした。


まぁそれはそれとして、自分がステルスを楽しみたいってのもあるだろうが。いやまぁ、私も私で楽しそうだなーって呑気に思ってるから別に良いんだけどね?


「はい!では、ステルス作戦開始です!」


この後めちゃくちゃステルスして、勇者ちゃんの寝顔を2人で楽しんで帰りました。まる。








勇者召喚が行われた日から5日後。直接勇者召喚を見られなかったソフィアを宥めつつ、私達はこの世界での仮拠点を帝都の宿屋へ変更していた。録画映像は一応見せたのだが、ソフィアはこの目で見たかった………!何故妾は行かなかったのじゃ………!みたいに悔しがっていて笑っちまったよね。そんなに見たかったなら来れば良かったのに。いやまぁ、勇者召喚が見られるとか聞いたの後からだったから仕方ないかもしれないけど。


「妾も噂の勇者ちゃんに会いに行きたいのー」


「アリスが良いと言うなら、良いのではなくって?」


「良いですよー。今度一緒に行きましょうか?」


「行くのじゃ!勇者とか凄そうなのじゃ!」


「まぁ、あんまり期待しない方が良いですわよ………」


何故、彼女が勇者として召喚されたのか。その疑問について、私達は既に解答を得ている。それは彼女が、異世界転移に耐えられる魂魄・精神の持ち主であったからだそうだ。


あの勇者召喚、アリスの見立てではかなり危険な魔法らしい。なんとあれ、召喚する対象の肉体は安全に召喚出来るのだが、精神や魂魄は一切の安全保障が存在していない為、弱い心の持ち主や脆弱な魂の者が召喚されると普通に廃人になったり死ぬのである。


だが召喚の機能的には、そういった危険の心配はしなくても問題ないらしい。何故なら、そもそも精神や魂魄が一定ライン以下の者は召喚できないようになっているからである。所謂セーフティーってやつだ。逆に言うと精神や魂魄の強さが一定以上無ければ召喚出来ないという事で………まぁ普通に怖いよね。


そして、そんな危ない勇者召喚で呼ばれた彼女の名前は東雲 綾華しののめ あやか。色んな本を読み漁るのが趣味な、所謂文学少女的な子だそうだ。ちなみにこの情報はアリスがこっそり遊びに行ってお話しして得られたものである。アリスさん、普通に城に忍び込んでそのまま勇者ちゃんの話し相手になってるんだよな………スニーキング能力高いし、何よりコミュニケーション力が高いわぁ。


しかし、ここまでの説明だけだと、勇者召喚を行う目的が精神と魂魄の強力な人物を呼ぶ、という事だけになってしまうが………では何故、そのような人物でなければならないのか。


「期待するじゃろう!勇者じゃぞ、勇者!」


「まぁ、それはそうですけれど………別に元から強い訳じゃありませんわよ、彼女」


「運動苦手らしいですよ、綾華ちゃん」


それは召喚対象の人物の精神及び魂魄を、この世界に適応する為に必要なのである………一応、簡単に言い換えよう。つまり、経験値の蓄積能力だ。


この世界におけるステータスは、前提からして経験値の蓄積が行える存在でなければ利用出来ない様になっている。今日までそこそこ活動してきたアリスとソフィアが未だにEXPの値がゼロなのが、その事実を物語っているだろう?私は裏技使ってチートしたみたいな感じなので例外だとして。


しかし勇者として召喚された者は、経験値を蓄積出来るようになるのである。理論上どんな世界から召喚されても、だ。しかも召喚の特権として、通常の人間の数十倍は経験値獲得量が多いのである。そういう風になるよう召喚時に改造されるみたいな感じだ。普通の人なら10年必要な所を数ヶ月や数日で終わらせられると聞けば、この凄さが理解出来るだろうか?あれだ、所謂成長系チートみたいな感じである。


更に言うと、勇者は召喚時に莫大な経験値………具体的にはスキル一つをスキルレベルMAXに出来るくらいの経験値を獲得している。これの理由は単純で、精神と魂魄に多大な負荷を与えられながらも世界を隔てている絶対的な壁を越える………とかいう、普通に生きてたらあり得ない様な経験をしているからである。


莫大な経験値、獲得経験値量数十倍………なるほど確かに、勇者としては相応しいだろう。当の本人を拉致してるって事に目を瞑ればだが。


ちなみに経験値の蓄積は勇者ちゃんの元の世界でも普通にされるし、経験値獲得量は数十倍のままである。ステータスはこの世界のシステムなので弄れないが………ぶっちゃけステータスを弄る時だけヘ型世界に来れば、この世界と関わる必要無いんじゃないかなってキングプロテア思うワケ。


「勇者も居れば魔王も居るんじゃろ?この世界。妾この世界楽しくて好きじゃ〜」


「魔法少女の世界は?」


「あの世界は戦えるから好きじゃ。別腹ってヤツじゃな」


「あ、別腹で思い出しました。テア、この前一緒に作ったアイスクリームはまだ余ってますか?」


「あれならもう残ってませんけれど………もしかしてアイス食べたいんですのね?」


食後のデザート的な?別に今食後でも何でも無いけど。


「食べたいです!作ってくれますか?」


「ふふ、うちの子達にお任せなさいな」


ふっ、既にうちの子はイロ型世界における一般的な料理であればどんな料理であれ10秒で提供出来るようになっているからな………アイスクリームなぞ朝飯前よ。


「お、なら妾は抹茶味が良いのじゃ。この前駅前で食べたのが美味しかったんじゃよな」


「私はチョコにします!駅前のってあそこですよね、噴水前の」


「お、アリスもあそこ行くのかの。今度一緒に行くか?」


「はい!是非行きましょう!」


「はーい、アイスクリームですわー」


「マジで早いのぉ」


うちの子のアイスクリームが10秒未満で完成したので、ソフィアには抹茶味、アリスにはチョコ味を渡す。ちなみに私はバニラ味のアイスクリームだ。アイス系は基本的にバニラ味が好みなのでね………いやだって、牛乳の味を感じられるから………ソフトクリームの方とか特に。


「あ、これ駅前のアイスより美味しいのじゃ」


「ふっ、そんじょそこらの店には負けない自信がありますわ」


「やっぱりテアのアイスは美味しいです!」


ふふ、うちの子達を舐めるんじゃあない。数十万人規模で情報と技術を全体にリアルタイムで共有しながら常に料理しまくってるんだぞ。美味しくない訳がないだろう。技術の元になる私が素人だろうと何だろうと無限回繰り返せばいつかは必ず究極に至れるっていうのを証明してやるぜ。


「あ、そうじゃテア。SROの話なんじゃが………」


「はいはい。何ですの?」


「1周年記念で出した無限ダンジョンあるじゃろ?9ヶ月前くらいに出したやつじゃ」


「………あぁ、あれ。それがどうかしましたの?」


無限ダンジョン………1,000階層以降は権能を使う魔物が現れ初めて、1万階層以降は出現する敵の数が増え続けるとかいう、ぶっちゃけ私でも10万階層以降には敵の数が無双ゲームかよってレベルで多くてそんなに行きたくないやつね。


プレイヤー達には割と好評だったが、カフェで紅茶飲んでた時に運営側の発言として、運営も10万階層以降は面倒過ぎてまだそこまで検証してないですって言ったら最低でも10万階層まではあるのか………って困惑されたやつ。いやだって、権能をフルで使ってくるやべー魔物の軍団が無双ゲームの雑魚みたいに出てくるんだぞ?私もソフィアも2人して10万階層以降は別にやらなくてもよくね?ってなるレベルだぞ。


「最終到達階層がやっと1,000を越えたらしいんじゃが、権能とかいう公式チートに遭遇して一部界隈で大炎上中じゃ」


「あらまぁ」


「まぁそれが飛び火してカフェで休憩中の妾に勢い良く突撃してきたのでな、あれはどんなプレイヤーでも手に入るもんじゃし、無限ダンジョン1,000階層以降には必須技能じゃって言っておいた。良かったかの?」


「別に、具体的な内容を話してなければ大丈夫ですわ」


「なら良いんじゃが」


とりあえず美味しかったからバニラアイス追加で食べよーっと。

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