太陽さんがポカポカで眠くなっちまいますわね!


「ああっ!私の英雄カレがもう1人殺しましたわ!キャー!良い調子ですわー!頑張ってくださいましー!」


「あの女の子………良い剣捌きね。鍔迫り合いだと見応えがあるわ………」


「あーっ!?私好みのショタがーっ!!」


バトルロワイヤル開始時刻から6時間が経過した頃。私達は私の英雄カレが徹底的な奇襲によって参加者を的確に殺していく様子や、明らかに身体能力が高い少女が高い技量の剣捌きで鍔迫り合いを行う様子、リリスの好みだと言うショタがナノマシンによる魔術で吹き飛ばされて爆殺される様子など、各々が好んだ参加者を選び、うちの子に映像を届けて貰っていた。


流石に参加者数百人分の映像を一度に届けられても見切れないので、各々お気に入りの映像を見つけて楽しむ、という感じで楽しんでいた。私は私の英雄カレだけ………ではない。私の英雄カレとの相性が悪そうな相手もピックアップして、どうすれば私の英雄カレが相性的に悪い相手に勝てるのかを妄想したりもしている。


ちなみに、今回用意したうちの子は認識透過対策済みというか、ナノマシンによる認識透過を無視して認識可能とする機能が付いてる子だ。こうでもしないと録画でも私の英雄カレを認識出来ないので仕方ない処理だが、いずれ来る私の英雄カレとの決戦では絶対に使わないと決めている。というか、ぶっちゃけ自分の本能に従ったほうが精度が高いので、わざわざ使わないと思う。無駄に行動が遅れるだけだ。


「良いですわっ良いですわっ!わたくしの英雄様っ!その調子ですわ!」


「残り30人………終盤戦………かしら?」


「ですが………このルールですと、最後の方になればなるほど接敵の機会が減っていきますよね?終わるまで結構時間かかりそうじゃないですか?」


「ハッ、確かに………そうですわね!私の英雄カレの攻撃方法的に考えれば、注意するべき対象が多い方が良いですわよね!ちょっと減らして来ますわ!」


「テア………流石にダメよ」


「そうですよ!お母様だけズルいです!干渉して良いなら私好みのショタを見殺しにする必要無かったじゃないですか!」


「だ、だってだって!私の英雄カレわたくしだけの英雄なんですのよ!?本音を言うなら私の英雄カレにはわたくし以外を殺すのだって嫌ですのに!!私の英雄カレが殺されるのとか言語道断ですわ!!」


分かってる。理性では分かってるんだよ。ここでわざわざ干渉したら異星人共にバレて色々と手間が増えるって。でもね?私の本能が叫んでるんだ。どうせバレた所で殲滅に2秒もかからないし、何よりいつか自分を殺してくれる最後の人なんだから私の英雄カレには自分だけ見て欲しいな、って。


この私の英雄カレへの執着は、もう既に理性なんかじゃ止められない。権能に覚醒した存在ならば誰もが夢見て、誰もが必要なのだと理解する、自分で止められなくなった己を最後に終わらせてくれる"誰か"。自分の最後を看取る人。


それが、私にとっては私の英雄カレと言うだけ。言うなれば、他人任せな終着点。何処までもがむしゃらに線路を引き続ける私達の最後を作ってくれる人。自分では止められないから誰かに止めてもらうという、他人任せな最悪の方法。けれど、そうでもしないと私達は止められない。誰かに止めてもらうまで、私達は自力でなんて止まれないのだから。


そして私の場合、もう一つ。私は何処まで行っても"悪魔"なのである。妖怪のような自然現象やらの具現とはまた別の、絶対善たる神の対になる絶対悪の存在。それが、悪魔。どんな物語だろうと悪の存在なのだと謳われる、主人公にとっての越えるべき壁。神の齎した試練そのもの。


なら必要でしょう?自分を最後に止めてくれる、悪の対となる善なる者が。世界を滅ぼす魔王には世界を救う勇者が居るように、国を滅ぼす敵には国を救う英雄が居るように、悪逆を成した冷酷無比な悪魔には、それを討伐する私だけの英雄が必要だとは思わない?


なのに、なのに………なのに!私の英雄カレに殺されて良いのは私だけなのに!!私の英雄カレに殺されるのは私の役目なのに!私の最後を看取るのは私の英雄カレなのに!!あぁもう理性では分かってるんだよ!でも本能が叫んでるの!!私の英雄カレは私だけのモノって!!!世界も人も神も全部全部私の内側に存在してるなら私のモノなんだからさぁ!!!!悪魔の本能と権能使いとしての本能があり得ないくらい肥大してるんだよ!!!!あ゛ー!!!!気が狂う!!!!!!


「もう………ほら、落ち着きなさい」


「あぁ分かってますわよ!分かってますけれど………!!うがー!お母様!ちょっとこのままハグしといてくださいまし!!リリス!クッキー追加!!」


「はーい、ただいま!」


うぅ、絶対にこうなるって分かってたから2人も一緒に観戦して貰ってたけど、マジでこうなりたかった訳じゃ無いんだよぉ。でもでも言葉では言い表せない不快感がぁ。うぅ、アリスのよしよしが欲しいよぉ………でもヘカテーのハグも中々に安らぐぅ………ふぐぅ………ちょっと泣きそう………


「ほらお母様、私達が丹精と愛情を込めて作った絶品クッキーですよー。あーん」


「あーん………むぐもぐ………クッキーおいひい………あっ、わたくしの英雄が走ってるぅ………いつかわたくしの終わりを看取ってぇ………」


「もう、テアったら………こんなに甘えて………可愛いわね………」


「ほらお母様、元気になられてくださいねー」


精神的につらぁい………あっでも私の英雄カレが沢山戦って成長してくれるのは嬉しい………!成長すればする程私の最後が近づいて来てるって事だものね………!ハッ、そう思うとなんか元気出て来たかも!最後の最後で私をちゃんと殺せるように努力してる最中なんだって思えば殺意も湧いてこない!!


「ふー………よし!とりあえず精神は安定しました。ありがとうございますわね、お母様」


「ふふ………これくらいお安い御用よ………」


「リリスも、ありがとうございますわね」


「こちらこそです、お母様!」


そんなこんなしてる最中に試合内容が動く………なんて事にはなかったようだ。まぁ、どんだけ時間が経ってもマップ範囲が一切狭まくならないから、人数が少なくなればなるほど参加者同士が出会う確率も減るしね。そうなると、マジで誰かが積極的に動かないと試合が一生終わらない。


ただ、それは参加者達も理解しているらしく、安全を取って潜伏を選ぶ人数はそこまで多くない。実際の人数としては4人くらいだ。というか、使用される魔術の種類によっては建物毎吹き飛ばせるような魔術があるのは確認済みなので、潜伏をしていない参加者はそういった魔術の対策の為に動き回っているんだろう。


「あ、私の英雄カレが………」


「標的発見………かしら?」


「彼って確か認識透過してましたよね?それなのに隠密行動を徹底してますよ!」


私の英雄カレは最初っからそうですわ。決して敵に見つかるような痕跡を残さず、隠れ続けて一撃必殺。わたくしも同じことをされましたわ。たった一つの獲物の為に待ち続ける忍耐力もありますから………油断した所をサクッ、でしょう」


「へぇ………思ったよりも慎重なのね………」


「私とは相性悪そうです!」


そりゃリリスとの相性は悪いだろうよ。リリスは元々、どんな文明社会だろうと容易に溶け込めるように設計された悪魔なんだからな。突出した能力を持たないようにと戦闘能力は平均的な一般人程度だ。家事の技術は高めに設定したけど、突出してると言えばそれだけ。個性と言える程度のモノでしかない。


しかし実際に戦闘を行うとなれば、リリスは別に弱くはない。それは彼女が単なる悪魔のリリスではなく、邪樹の悪魔によって連鎖召喚される悪魔のリリスだからである。


リリスの持つ邪樹の悪魔としての特殊能力は『不安定』。リリスを中心に、もしくは邪樹の悪魔本体を中心にして展開されるのは、結界内のあらゆる存在の平衡感覚を喪失させ、あらゆる遠距離攻撃を無意味にさせる時空間。遠距離攻撃は無効化、近づこうとすれば平衡感覚を喪失して接近は困難。この能力が故に、別に弱くはないのだ。


ただ、リリス側からの攻撃能力が存在していない。精々、平均的な攻撃魔法をある程度使えるだけだ。魔力は私が意図的にパスを切断しなければ無制限に扱えるし、仮にパスを切断しても悪魔として魔力量はそこそこあるから、無力って訳じゃないが………だとしても、リリスの攻撃性能が低い事には変わりない。まぁ、そういう風に作ったのは私なんすけどね。


一応欠点というか、仕様上仕方ないというか、リリスの索敵性能は一般人並みだ。なので、相手が平衡感覚を失ってもそれ以外の感覚を使って冷静に隠密をこなせるような奴だと、普通に奇襲攻撃が通るのである。防御性能も一般人並みだから、そこら辺の鉄の剣とかでも全然普通に攻撃が通る。


まぁ別に精神生命体なので純粋な物理攻撃だけでは死にはしないが、リリスの本能的に肉体が無いと魔力を補充出来ないので、実質的には死亡扱いとなる。まぁ私が魔力渡せばそれで良いんだが。何なら死んだとしてもうちの子ネットワークに情報は残るから、情報を抜き取る的な観点から見れば損とかも無いんだけど。


「あっ!?広範囲攻撃!?」


私が私の英雄カレの隠密行動をじっくりと観察していると、突如として莫大な水量による津波が私の英雄カレを周囲の建物毎押し潰していった。


「かなりの水量ね………確か、特殊効果の無い物質の生成には………生成制限が無い、だったかしら………?」


「その場合、水を操作する魔術もありそうですね!無秩序に放水するだけですと自分も巻き込まれるでしょうし!」


私の英雄カレは………あぁ!何とか生きてますわね………!良かったですわぁ………!」


うちの子が即座に水中用の視界に切り替えてくれたので、私の英雄カレが生存している事は確認出来た。室内に居たので建物の崩落に巻き込まれなかったのが功を奏したらしく、建物内に潜伏していた参加者の1人が崩落によって死んでしまったようだ。


私の英雄カレは水流に流されながらも無事に残った高所に登るが、周辺を襲った津波が今度は水を生成していた参加者の方へと戻っていく。なるほど、津波によって周囲の障害物を破壊し、その津波を今度は攻撃や防御に利用するのだろう。また、この段階で未だ水の中に居る他の参加者を自分の方向に引き寄せる意図もありそうだ。


ただ、津波が本当にただの津波だったのを見るに、水の操作範囲はかなりのものだが、水に触れている対象の索敵効果などは無いらしい。それがあるなら水の中の参加者を水圧で押し潰す事が出来そうだからな。少なくとも私ならやる。


何を取り繕おうとも、大量の水とは莫大な質量そのもの。1立方メートルで1トンの大質量である。これによって押し潰されれば、例え物理攻撃無効化の能力を持っていようが大質量によって動けないだろう。何より厄介なのは、この大質量が不定形な液体な所である。固体の大質量なら即座に細かく砕けばいいが、液体だとそうはいかないからな。


「むぅ、環境が完全に相手側有利ですわね………私の英雄カレは大丈夫かしら………?」


「そうね………逃走を選ぼうにも、水量はどんどん増えてるわ………津波の範囲も広がっていくし………引き寄せられる範囲も広くなる………」


「これは詰み、というやつなのでは?」


マジで状況が詰みになりそうで困る。むぅ、私の英雄カレがここから勝利するのはかなり難しいぞ………?認識透過は大質量の水相手に意味が無く、位置の追跡魔術は相手が見えている必要があるが、私の英雄カレから津波を生み出した参加者は見えていない。鋏、岩、紙を生成した所で水への対策は出来ない………本当に、魔術では対策方法が無いな。


この場で彼が取れるのは、逃走か戦闘の2択だ。認識透過によって気が付かれないままに水によって引き寄せられ、気が付かれていない事を利用してどうにか一撃を加えるか………もしくは、これまた認識透過を利用し、津波に巻き込まれるようにしてこの場から逃走するか………私の英雄カレが出来るのは、恐らくはこれくらいだろう。


ただ、これはどちらもハイリスクだ。戦闘を選ぶとしても、認識透過がどこまで通用するのかが分からない。相手が何故か水を操作出来ない場所を見つけてしまった瞬間、その場所を周囲の水で攻撃されればそれでお終い。逃走を選ぶとしても、津波によって安全に逃げられるのかどうか、そもそも津波の及ぶ範囲がどの程度なのかが私の英雄カレには分からない。もしくはこれ以外の方法があるのか………


「………?どうして私の英雄カレはどんどんアイテムを生成して、水に流してるんですの………?」


普通に予想外なんだが………?え、何その新手の流し雛みたいなやつ………鋏も岩も紙もぜーんぶ津波に流し続けてるんだが………?え、待って待って待って。私の時より生成量が多くない?そりゃあの時は慎重に慎重を重ねてたから仕方ないとは思うけど、だからって手元からドバドバって出し続けるのは何??


「あら………アイテム生成の勢いが………凄いわね………?」


「これは一体どういう事なんでしょう?」


「さ、さぁ………?」


何も分からん。別に私、私の英雄カレの思考回路を全部理解出来るって訳じゃないし。私の英雄カレはただ私が一方的に最後の人って運命を埋め込んだだけだから、そういう思考の理解はアリスとかみたいな身内の方が出来る。毎日の日常を共に過ごしてるのはアリス達の方だし当たり前なのだが。


ほらあれだよ。例えるなら、私の英雄カレへの感情は推しというか、アイドルとかキャラクターみたいな感じ。んで、アリス達への感情は親愛なんだよね。今こうして私の英雄カレを応援してるのは推し活であって、別に恋愛的な意味でキャーキャー騒いでる訳じゃない。つーか別に、最後の人は別に女性でも良いんだよ。今の所そんな女性が居ないだけで。


ちなみに、最後の人は基本的に他人だ。少なくとも私の本能はそう叫んでいる。殆ど関わりを持たない人でなければならないのは、身内認定している存在だと自分の一部として認識してしまったりで、どうやっても最後の人になるのに不利になるからである。これは例え、身内が同じく権能保有者になったとしてもである。


まぁ、最後を看取るのが身内じゃなくて赤の他人ってのは、自分の為だけに全てを滅ぼせる権能保有者には良い皮肉なのかもしれないけれど。


「うーん………これにはどんな意図が………?」


「水を堰き止めてる………?それにしては………」


「あまり堰き止めてるようには見えませんね!」


「………あぁ、なるほど」


「え、お母様?何か分かりまして?」


「恐らく………水を汚しているのよ」


「水を………?」


汚す………?それは一体どういう事?


「推測になってしまう、けれど………紙は、水に溶けてしまうでしょう………?そうなれば………水を操作、なんて出来るかしら………?汚れているのに………?」


「!なるほど………ナノマシンの仕様を突いてますのね!」


ナノマシンはその仕様上、どのような物質であろうとも操作は可能なのだが………事前に操作する対象を決めておく事が絶対条件である。これは元々ナノマシンが医療用に用いられているが故の機能で、言ってしまえば必要の無い血液やら内臓やらまでを一緒に動かさないようにする為の機能だ。


だからこそ、操作系の魔術には操作対象の明確な物質名称と基準値が記載されるらしい。例えば水なら、不純物はどの程度からどの程度までのモノを許容するのか、みたいな感じだ。つまり何が言いたいのかと言うと、私の英雄カレは今、水を全力で汚しているのである。汚せば汚すほどに基準値から離れ、最終的には操作不可能なまでに汚れた水になる………かもしれない。


そう、これは賭けに近い。そもそも新しく水を生成されれば無意味だし、操作可能な基準値がかなり広かったらそれこそ無意味だ。だから、これは賭けだ。


そして………


「あ」


「あら………」


「あちゃあ」


………私の英雄カレは殺された。水を汚す事で操作不可能にしたのは良かったのだ。ただ、相手の生成可能な水量が汚す勢いよりも早かった。認識透過を行おうとも周辺全域を一気に水の壁に埋め尽くされてしまえば、流石の私の英雄カレも逃げられなかったのだろう。


私の英雄カレが………私の英雄カレが………」


まぁそれはそれとして、応援していた私の英雄カレが負けてしまった事が普通にショックだ。あれだ、野球とかサッカーの観戦をしてる人の気分を味わっているのかもしれない。観戦して応援しているチームが勝てば嬉しいが、負けてしまうと悔しくなってくる感じのアレ。


ただ私の場合、勝利とは欲望だ。それが例え自分のモノでは無かったとしても、私が応援していたのだから負けてほしくなかった。やばい、めちゃくちゃ精神にクル………


「うぅ………ごめんなさいお母様、リリス………ちょっと癒されてきますわ………残りはお二人で楽しんでくださいまし………」


「あら………ふふ、いってらっしゃい」


「了解しました!いってらっしゃいませ!」


私はそのまま、アリスさんにでも慰められようと思ってロ型世界の自室へと戻るのでした。








ホ型世界でバトルロワイヤルが開催された日から、およそ5日後。つい昨日の夜に終わったらしいバトルロワイヤルだが、結果として私の英雄カレの順位は21位。最大人数が数百人でこの順位はかなりの好成績だとは思うが、それでも悔しいのがこういうモノだ。


さて、今日も私は懲りずにホ型世界へと足を運んでいる。だが最近は色々と収まったからか、私の英雄カレの家に突撃して抱きしめたりはしていない。よくよく考えたら赤の他人にも等しい相手にそういうのは良くないなって思ったからである。そもそも私の英雄カレ側の視点から見れば、私と出会ったのは最初の一回だけだ。ほぼ初対面というか初対面も初対面である。会話も皆無だったのだ。


まぁ、元から悪役としての正義やら私の終わりの人やら、色々と個人的に嬉しい要素が混ざってしまったから本能も混ざって暴走していただけである。何せ、私の英雄カレはあの瞬間だけ私と対等に渡り合ってたからな………あれは多分それも含めた興奮だと思う。


だからこそ、その欲望を最後には必ず享受出来るのが確定しているからこそ、欲望に呑まれずに元に戻るのも思ってたよりも早かったのだろう。最後までの期間は………そうだな、イメージ的には高度な焦らしプレイみたいな感じかな。良いね、最後の瞬間に最高に楽しい気分で終われるなんて………私はなんて幸福なんだろう。


「んー………この世界もそろそろ………かしら?」


個人的には、この世界はもう割と楽しめた気がする。別にこの世界が面白くなかった訳じゃない。面白かった上で、もうそろそろ帰っても良い気がしてきたのである。ほらあれだよ。例えるなら、何泊かの旅行に出掛けて、旅行先でふと、はぁ………家に帰りたいなぁ………って気分になる感じ。ちょっとしたホームシックみたいな?いやまぁ帰るだけなら数秒も必要無いし、何なら今日も普通にイ型世界からこっちに来てるんだけどね?


でも別に飽きた訳じゃない。多分というか、確実に今後も通うだろう。何てったって私の英雄カレが住む世界だからな………!いやまぁ、仮にそれが無くても通いはしてたよ?どっちにしろ、知的生命体の存在不可能な領域から資源を集めたりはするつもりだったし、適当な戦闘遊戯の観戦はちょくちょくするつもりだし。いやぁ、この前のバトルロワイヤルが割と楽しくてね………


と言うか、今でも異世界は割と巡ってる方だよ。ハ型世界は宇宙のあちこちにあるダンジョンでとことん素材を集めまくってるし、ニ型世界では魔法少女としてちょっとしたお仕事をしたり、普通に仲良くなった魔法少女と遊んだりとかしてるし、ロ型世界はもう毎日通ってるよ。宿屋の仕事をしたりしなかったりではあるけれど、あっちも私の家だからな。


「しかし………こうして日向ぼっこするのには向いてますわね………」


ホ型世界にあるこの惑星は、異星人共が環境を管理しているせいなのか、あまり大きく天気が崩れる事がない。良くも悪くも気候が安定しているのだ。これは実に日向ぼっこ向きの気候………あれだね、土曜日の昼とかに近くの自然公園に行ってさ………元気に駆け回る子供とか、犬を散歩するお爺さんとかを尻目にさ………草原の上にレジャーシートを引いてさ………太陽の暖かさを感じてお昼寝したいよね………何なら今は寝てないだけでほぼ同じ事してるし………


「はぁ………癒されますわぁ………」


こうしてポカポカとした気候の中、全身の力を抜いてゆったり出来るこの感じ………癒されるぅ………まぁ、別に毎日に疲れてる訳じゃないけどさぁ。何なら私、授業を受けるのは割と好きな方だし。まぁ授業中に暇な時間がある時とかは第五アップデート使いながら小説読んでたりもするけど。ほら、なんかあるじゃん?全員一緒に進める的なタイミングのやつとか。ちょっとした隙間時間が暇だから、それを埋める為にね。


授業で思い出したんだが、この前アリスが他国にあるらしい、アマテラス学園とかいうロ型世界に存在する学園に入ってみたいです!とか言ってたのを思い出した。調査によればあそこの防犯システムは非常に強固で、ぶっちゃけ私ですらそう簡単に侵入出来ないレベルである。


ただ問題というか………その非常に高い防犯能力の高さと、既に数百年という歴史がある事から、あの学園には割と各国の王族や貴族が多く入学しているらしいので………私が居ない時のアリスさんは一体何処の主人公ですか?みたいなレベルで色々なゴタゴタに巻き込まれるらしいからなぁ。絶対何かあるじゃん。


予想だけどね、絶対恋愛関係で何か起こるよ。だってアリスは美少女だぜ?しかも私みたいに人造じゃなくて天然モノの美少女だ。そりゃ私だって黄金比くらいは気にして作ってたけれど、アリスはそういう容姿だけじゃなくて、行動から美しさが滲み出てる。うちのアリスがモテない訳がない。抱き枕にしても可愛いんだからモテない訳がない。


ただ一個問題なのは、アリスは自分の興味のある事以外はマジで視界に入らない事だな。自分の好奇心を満たす為なら平気で暴力を振るうし、平気で淫らな行為にすら及ぶだろうよ。まぁ今のところはどっちもやってないけれど、多分行くところまで行ったらそうなるよ。どう考えてもアリスさんも私と同じ権能の使い手だろうし。


「アリス………あの子、大丈夫なのかしら………」


アリスさんは思い付きとかで突拍子もない事をしでかすタイプだから、個人的にはマジで心配なんすよね………知識はあるから貴族相手でもちゃんとした受け答えは出来るだろうけれど、多分本人が嫌ならどんな事を言われてもNOって言えるタイプなんだよな。私と同じで。


いやぁ。こう思うと、アリスって結構権能を使う適正あるよね。何処までも自己中心的で他人なんて欠片も見えてない所とか私そっくり。特にアリスの場合、あの子は常日頃から私の展開してる権能を概念的に見てるからなぁ。感覚的に使えるようになってる可能性だって十分にあるだろう。


うぅん………まぁ、これは後回しでも良いか。あの学園は防犯面の都合上、途中入学とか出来ない仕組みらしいし。どれだけ早くても来年の4月中しか入学手続きが出来ないから、この問題は来年の4月まで後回しできる。何なら私は今年で高校卒業だから、このまま大学とか専門学校とかに行かないならかなりの自由時間が出来るんだよな。就職?いやもう既にゲームで馬鹿みたいに稼いでるから、別に要らないかなって………


というか、何処かに就職するよりも、多分自分で企業した方が稼げるんだよな。うちの子を使った派遣会社とか使ったら一生安泰だと思う。何せ、うちの子を使えば人件費ゼロだ。しかも技術はうちの子全体で共有だから、誰か1人が覚えてしまえば残りの無限人が同じ事出来るようになる。うちの子に勝るマンパワーは存在しないだろどう考えても。


しかも、更に私が器用さバフを付与というかうちの子の器用さを限界以上にしておけば、それだけで技術の習得率はかなりぶち上がる。1を10にも100にも1000にも出来る。数には数を、質には数を。例え1%上昇のバフだろうが、それを1億回も重ね掛けすれば1億%の上昇バフになる。理屈は非常に単純だが、分かりやすく強い。


「んー………すぅ………はぁ………」


こうして色々なことに思考を巡らせていると、だんだん眠くなってくる………このぽかぽか陽気からは悪魔も逃げられないなぁ。良い感じにお昼寝出来そう………家のソファより良い感じに寝れそう………家のソファ固めだしねぇ………


「ふわぁ………んー………」


色々とするべき事はあるんだけど………まぁ、いいや。眠いし、良い気分だし、起きた後の私にぜーんぶ任せて寝ちゃお………


「おやすみなさいまし………」


すやぁ………

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