宙ヲ侵ス戦闘遊戯

バトロワって人数が多い方が楽しいけど、多過ぎると時間かかり過ぎてヤバそう


魔人を捕縛してハ型世界で楽しんでいた日から4ヶ月後。具体的には120日後の、イハニ型世界における8月13日、ロ型世界における8月12日。夏休みも折り返し、進学の事を考えずに好きなだけ遊べる高校2年生である私は、新しい異世界を発見していた。


ちなみに、鬼門となる夏休みの宿題は完了済みである。以前は夏休み開始時に半分やって終了間際に残りの半分とか、開始前に大半を終わらせるとかしてモチベーションを保っていたが、今年は問題式とかそういうのを書くのが非常に面倒だったので、大半はうちの子達にやらせた。まぁうちの子達は実質私自身なので何も問題は無いだろう。筆跡も私と同じに設定したからバレる訳がない。


「んー………座標はここ、と………」


閑話休題。新しい異世界、ホ型世界の話に戻ろう。今回新たに発見したホ型世界はなんと、初めて発見した魔法の存在しない世界である。魔力の素となる魔素が存在せず、それ故に魔力が発生出来ないようだ。しかし魔法や魔術が存在しない分、やはり伸びていくのは科学文明。科学文明のレベル的には、恐らくホ型世界が今の所一番高いまである。


一応言っておくが、私が参照した各文明は、頭、口、鼻などが一つ、目、耳、手足が二つ、指が各四肢につき5本ずつという、私が良く知る人型範疇生物が栄えている、イ型世界で言うところの地球のような世界である。宇宙に目を向けたらそれ以上の文明を持つ惑星などゴロゴロ存在しているが、姿形が私と全く違う惑星にそこまでの興味を得られないので、基本的に私の世界の基準は地球に似た惑星に依存している。


話を戻そう。今回のホ型世界だが、イハニ型世界の何処よりも科学文明が発達している。ただ、それで他の世界の文明が劣っているのかと言われたら………よく分からん。そもそも評価すべき基準から違うのだ。しかし科学技術という観点から見るのなら、今のところホ型世界が最も科学技術が高いだろう。宇宙船などの宇宙進出はまだのようだが、医療や交通の技術は非常に高いようだし、その宇宙進出だって資金があればいけるかも?みたいなレベルである。まぁ、未だに国同士で戦争をしてるのは馬鹿みたいだなとは思うが。どう考えても資源の無駄使いなのに。


それにああいう戦争とか見てると、私が参戦して全部荒らしたいって欲に掻き立てられるんだよ。戦闘欲と勝利欲が渦巻いてくるんだわ。だって戦争って、数と数の戦いでしょう?それこそ私の真価を発揮する場面じゃんか。相手が数ならこちらも数、無限の数であらゆる敵を殲滅する………くぅー!一度で良いからやってみたいぜ!出来れば相手の数も質も普通ではあり得ないレベルだと有難い。それを凌駕して勝つ自信しかないから。


「時間同期………も、良い感じ………」


また話が逸れた。んで、肝心の文明の具体的な内容としては………分かりやすいのは、身体欠損の完全修復や物質転移による輸送、完璧なリサイクル………とかだろうか?


まぁ、メリットだけ聞くと技術としては確かに凄いのだが、身体欠損の完全修復は最大で成功率50%程度だし、物質転移による輸送は転移先で物質を構築しているだけに過ぎないので自己同一性を維持出来ない為に生物には使えないし、完璧なリサイクルには核融合レベルのエネルギーが必要になるので常用は難しい………など、まだまだ改善点の多い技術ばかりである。


しかし、その技術が他の異世界と比べても劣らないレベルの素晴らしい技術である事に変わりはない。私が今まで出向いた世界では魔力によって得られた結果を、純粋な化学のみで出力しているのだ。これは凄まじいだろう。何よりも素晴らしいのは、更なる改良点が多く存在している事だ。それはこの惑星の科学者も気が付いていて、今も更なる改良や改善の為に地道な研究を続けているのだ。


良い、良いじゃないか。今に怠けること無く、更なる地点を目指して突き進む。そんな心意気を持つ人々が多いからこそ、この世界はここまで科学文明が発達しているのだ。確かに戦争やら何やらをしている国もあるが、そんなものは少数派。大半の国は、他のどの国よりも早く宇宙へ進出出来るのかを競っている傾向にある。実に素晴らしい競争をする惑星だ。


………まぁ、ちょーっと気になるというか、明らかにやべーのもあるけど、それはぶっちゃけ巻き込まれなければ困らないし………巻き込まれてもそこまで困らないけども。


「魔力量………オールグリーンですわね。一応予備魔力もセットしておいて………」


よしよし。これで転移準備はオールオッケーだ。イ型世界の学校は夏休み中なので平気、ロ型世界の店員としての仕事は夏休み前半の方でかなりやっていたので大丈夫そう、ハ型世界は元から誰かと関わってないので無視、ニ型世界は本部に掛け合って別の異世界に旅行に行くので休暇にしといてくださいって言ってあるので大丈夫。A型世界は5月中旬くらいに1周年記念として無限ダンジョンを解禁したくらいで他は特に何も無い………うむ、各世界の用事は全部済ませてあるな。


また、今回は誰か同伴ではなく1人で行くつもりなので、言葉やら何やらの準備は私1人分だけで済んだ。そもそもの話、今回向かうのはこれまでと違って魔力すら存在しない世界だ。魔力の存在する世界に生まれた住人としては、もしかしたら何かしらの欠乏で死ぬかもしれないと割と警戒しているのである。まぁそん時はそん時、一応色々と検査はしたので平気だとは思うが………何が起こるか分からないのが異世界だからなぁ。


では早速行ってみようか、ホ型世界へ!











「………んー、転移は完了………座標も完璧ですわね」


私本人がホ型世界へ向かうのは初だったので何かしらのハプニングを想定していたのだが、特にそんな事は無く、完璧に転移が完了した。


そうして目に入ってくるのは、イ型世界とそこまで変わらない街並み。しかし、遠目に見えるビル群の高さや、あちらこちらに見かける見知らぬ装置やら機械、全員がスマホではなく何かしらのホログラムのようなモノを手にしている光景………そういった些細な部分から、ここが異世界なのだと実感させる。


それにしても、本当に空気中に魔力が存在していないな。これだと、私みたいに自力で魔力を生成出来る存在でも無い限り、魔力は回復しないだろう。ゲーム的に表現するなら、MPの自然回復が発生しない感じだ。別に魔力が無くても異世界の魔法は使えるが、その代わり眠っていても魔力自体が回復していかない、みたいな。


というかこれ、空気中に魔力が存在していない分、普段よりも消費する魔力量が跳ね上がりそうだ。普段なら、自分の魔力+それに付随する周囲の魔力、みたいな感じで魔法を使える世界ばっかりだったからなぁ。周囲に魔力があると多少は消費を削減してくれるんだけど、この世界ではそれが無いから、初めから最後までぜーんぶ自分の魔力で魔法を発生させなきゃいけないみたいだ。


まぁ私には関係無い。権能の魔力消費は普段よりも高いけれど、ぶっちゃけそれだけだ。元から無限のエネルギー源なんだもの。消費が高くても問題ゼロだよ。更に言うなら、私には悪魔炉心がある。放射線属性を由来として大量のエネルギーを毎秒生成するこのユニークスキルは、この世界でも有効らしい。まぁそうじゃなかったら私は心臓が停止してるんですけど。


まぁ、仮に心臓が止まっても問題は無いけども。元から他の内臓とか血液とか骨とか、そういうのも形だけ再現してるだけの肉体だしな、悪魔の身体。ぶっちゃけ私、人型の肉なら何でも活動出来るし。肉の種類が牛肉でも豚肉でも鶏肉でも、人型に形成された肉なら何でも問題無いんだよな。最悪人形に並べられててもOK。悪魔にとって肉体なんてこんなもんだ。所詮悪魔は精神生命体だからな。


私の場合は元が人間で、割と人間に戻るので、内臓とか骨とか血液とかの感覚を忘れない為にも悪魔の肉体でも色々と再現してるけれど、そうじゃないなら心臓だけ残してそれ以外は全部肉と骨の装甲で埋めてるよ。だってそっちの方が肉体の防御力が上がるし。心臓だけ残してるのはそうしないと悪魔炉心が発動しないからだけど、無くても良いなら心臓だって肉と骨で埋めるよ。


ちなみに私の身体を肉単体で埋めないのは、私が牛乳魔法によって骨の強化が出来るからだ。今の私だと骨を1000倍くらい強化出来るんだが………そこまで行くと、下手な金属よりも硬くなるんだよな。だから仮に本気で身体を作るなら、内部装甲的な意味で皮膚の真下に骨を配置するかもしれない。まぁ関節が動かせるようにはしなきゃダメだから………んー、まぁやるとしても球体関節人形とか、そういうのを元にして骨を配置するかな?


「………んー、肉体、精神、魂魄、どれも異常無し………権能………こちらも異常は無し………っと」


何度も言うが、権能とは世界の掌握だ。自分が把握した世界を問答無用で掌握する技術。これは決して世界の上書きや改変ではない。例えるなら、世界というジオラマの上に、自分が描いた紙や駒を追加で投入するようなものだろうか。既存の世界はそのままだが、そこへ好きなように追加が出来る………そうだな、ジオラマに巨大怪獣を追加して人々を襲わせても良いし、ここはこうなるという設定が書き込まれた紙を投げ入れてもいい、みたいな感じだ。


ただし、ジオラマを直接破壊したりは無理だ。配置した駒とか投げ入れた設定によって破壊する事は出来るけれど、私が直接手を出すのは出来ないらしい。そういう権能なら行けるかもしれないが、生憎と私の権能は破壊と直接関係のある権能じゃないんでね。そこを期待されても困る。むしろ私の権能のメイン機能は生命の創造だからな………まぁ創造出来るの悪魔だけだけど。


「では………まぁ、今日は都市部でも回りましょうか………」


さぁさぁと意気込んで異世界へとやって来たのは良いものの、この世界は基本的に特筆した危険などは存在していない。イ型世界みたいに幻想種が居るだとか、ハ型世界みたいに各地に迷宮があるだとか、ニ型世界みたいに魔物が溢れてるだとか………そういう、世間一般の人々が感知できる危険というのは、殆どないと言って良いだろう。


特に、私が今居る日本(形が似てて文化が似ているだけで正式名称は日本ではないが、翻訳時に本来の名称ではなく日本と聞こえる様にしている)はここ数年、極悪犯罪も特に起こっておらず、世界的に見ても非常に治安の良い国だと言えるだろう。まぁ、科学技術が進化した分、発見されたり対処されたりする犯罪が増えてるって研究成果もあった筈だからな。実に平和な国だ。


私が求めているのは刺激じゃない。未知だ。しかし危険な未知に手を伸ばすほど、私はアリスではない。今ナチュラルに"アリス"を動詞として扱ったが、意味としては危険を顧みずに自分の好奇心を満たそうとする者の例えである。私とレイカは良く使っている。まぁね、アリスさんが未知を求めて危険な事をしたとレイカとフェイの事後報告で聞かされた事は何度もあるからね。何ならアリスさん本人に今日はこんな事があったんですよーって言われる事も多々あるし。


最近だと、火山を噴火させてその様子を観察したとかしてたな。まぁ無人島でやってたからまだマシだけど、だからと言って自分から噴火させるのはどうなんだろう。しかもなんか火山の中に住んでたドラゴンを起こして戦闘になったらしいし。まぁ溶岩ごと凍らせて勝ったらしいから良いんだけど………炎属性のドラゴンに氷属性の魔法って、熱で氷が溶かされるからあり得ないくらい相性悪かった気がするんだけどなぁ。


「………あら、煙草………」


私が都市部を求めてトコトコと歩いていると、明らかに未成年なのに煙草を吸ってコンビニ前を占領しているガラの悪い集団が目に入った。こんな科学技術の進んだ世界でもこういう不良みたいなのは居るんだなぁと思いつつ、私はその横を抜けてコンビニの中へ入る。ちょっと小腹が空いたので何か買おうと思ってね。後はまぁ、この世界のコンビニがどんなもんなのかを確認する為でもある。別にこの世界に来る前から確認は出来たけど、実際に体験してみたいというのが本音だよね。


そのまま私はツナマヨおにぎりを購入し、その後は特に不良集団に絡まれる事もなくコンビニを後にした。私みたいなゴスロリドレス着てる奴が居たら絡まれるかと思ったんだけど………別にそういう事は無いらしい。ただ残念な事に、彼らはもう2度と煙草を吸わない方が良いだろう。


実は言って無かったが、私は煙草が死ぬ程嫌いである。いや、別にキャラクターが画面の向こうでハードボイルドに吸ってるとかなら全然良い。むしろカッコいいおじさんが吸ってるのは割と好きな方だ。が、それは画面の向こうだからであって、私の目の前で煙草を吸うのは断じて許さない。別に吸ってる当人が目の前で死のうがそこは心底どうでも良いが、私が向かう空間に副流煙があるのが我慢ならない。


煙草というのは、直接煙を吸っている人間よりも、吐き出された煙を吸った人間の方が病気などになりやすくなる。つまり定められた場所で煙草を吸っていないクソゴミ共は、周囲に対して毒属性の煙幕を張っているようなものだ。それはつまり私に対する攻撃と見做し、だからこそ私は全力で反撃する。まぁ私は煙草の煙を害と見做している為第二アップデートの自動防御が発動するので私には通用しないし、何なら第三アップデートの毒物検知で検知した害を除去する機能もあるが、それはそれ。


私は静かに権能を展開し、悪魔の能力だけを現実へと奮起させる。その能力によって、先程の彼らが受ける煙草の影響は──つまりは煙草を吸う事による健康被害の影響は、これまでの蓄積分も併せて数十倍にも跳ね上がった。これまでに吸っている本数が多ければ多いほどに影響は増す為、もしかしたら後数年すら生きられない子も出てくるかもしれないが………だから?むしろ、私に対して攻撃してきて即死しないだけマシだと思って欲しい。


今こうして煙草の影響を強めたのは、『煙草の悪魔』によるものだ。この子は芥川龍之介の短編小説である"煙草と悪魔"に由来した概念の悪魔で、その作中では明確な肉体を持っている子でもある。まぁ流石に時代が合わないしそもそも同じ肉体なのも無駄なので変身能力を付けたが、それはそれ。実際に存在する経由の悪魔なのは変わりないので、普段は一本の煙草としての姿をメインにとって貰っている。


この子の本命は、"煙草"という概念を保有している部分だ。由来となった作中でも煙草の種を生み出したり、キリシタンが居ないし暇だからって畑を作って育てるとかもしているので、十分に煙草の概念と相性が良いのである。まぁ煙草の姿になっているが、別にそこは関係ないので無視する。


そして、ほんの僅かでも概念があるなら無限に利用できるのは、永久悪魔アップデートの"マクスウェルの悪魔"が既に示している。マクスウェルの悪魔は既に否定されているのにも関わらず、私は内包されている"永久機関"という概念だけを引っ張ってきて、それを使って魔力を無限に生成しているんだぞ?今回だって煙草と関連してるから煙草の影響くらい操れるやろ、という解釈の元に、この子は煙草による影響を好きなように操作出来る訳である。


影響を完全にゼロにする事も、影響を数十倍にして死亡リスクを高めるのも、本当に自由自在だ。元々は魔法道具のキセルを吸う時に無害な煙草が作れないかなぁ〜と思い立って作った子だったので、どちらかと言えばメイン機能は煙草の無害化だ。


こういう悪魔を作る度に思うのだが、やはり権能の持ち主は下手に賢いよりも無知で無垢であった方が絶対に良いんだよな………だってさ、無駄に知識があると固定観念が生まれるじゃん?そのせいで好きなように権能を使えなくなるって確率はゼロじゃない訳よ。実際、私も固定観念を引き剥がせなくて普通に逸話通り作った子とか居るし。


「むぐ、もぐ………ふむ、流石は近未来ですわね。コンビニのおにぎりがあったかいですわ………これ、イ型世界に持ち込んだら泣く人出て来そうですわね………」


コンビニの話に戻るのだが、やはりこの世界はイ型世界の出身としては近未来として映る。コンビニ店員はゲームのアセットにありそうな簡単モデルのAIロボットだし、さっきまで冷やされていた筈のおにぎりは購入時点でほっかほかになっているし、廃棄食品が出てもバイオ燃料に変換されてコンビニ経営時の電気料金が割引されるっぽいし………うーん、些細な事ではあるけれど、所々がマジでハイテクなんだよな………やっぱり、この世界の技術は全部覚えるべきだ。うちの子10億くらい総動員してやらせておこう。


さてさて、おにぎりも食べ終わったのでさっさと都市部に向かってしまおう。個人的にはこの世界は基本的にどんな店舗でも電子決済が出来るのが素晴らしいな。MICCミックの追加機能によって異世界のモノだろうと電子通貨なら好きなように両替出来るから、私が『SRO』を売って手に入れた莫大なお金を有効に使えるし………いやまぁ、イ型世界で使わないとお金が回らず実質虚空に消えていくだけなんだが、そん時はイ型世界以外で使った分だけハ型世界産の金属でも売ってバランスを均等にするから問題は無しとする。


「………んー………」


この世界を見た私が初めて思ったのは、思ったよりも自然が多い、という所だ。ここまで科学技術が発展した都市部なら草木が消えていても何ら不思議では無かったんだが、そんな事は無く、街路樹はイ型世界と変わらず存在している。既に地球温暖化みたいな感じの現象も科学技術によって解決されているし、空気もこれまた科学技術で清浄なモノになってきている。


何なら、一部ではあるが二酸化炭素を酸素にする機械もあるので、ぶっちゃけ都市部の植物が少なくても問題は無さそうなもんなのだが………やはり人間、近くに自然が皆無なのも違和感があるのだろうか?それとも………


「………まぁ、わざわざ関わり合いになる訳でもありませんし、そこはどうでも………」


自分から危険なモノに首を突っ込むなんて、アリスじゃないんだからする訳が無いだろう。いやまぁ、内容的には私に1番向いているとは思うが………何ならハマるだろうが………まぁ、それはそれというか、わざわざ自分から観察されるのも嫌というか。


「まぁ………確率自体は低いですし………」


仕組み的に私が巻き込まれる可能性は高いが、そもそもの発生確率が低いしフィールドも惑星全土の何処でもだからな。そう簡単に巻き込まれる訳が──


「………あぁはいはい。今のは確かにフラグでしたわね」


──そう簡単に巻き込まれる訳が無いのだが、フラグなのか何なのか。ニ型世界で魔法少女に見つかった時もそうなのだが、私はこういうお約束には遭遇しない性質だと思っていたんだけどなぁ。もしかしてこれまでの揺れ戻しでも来ているのだろうか。そうだとしたら迷惑とかいうレベルでは無いのだが??


「はぁ………隠密行動補佐を起動、隠蔽偽装処理を即時実行開始、認識阻害結界を展開。まぁ、後は逃げる感じで………」


私の眼前に広がるのは、先程まで見ていた世界………ではなく、先程まで見ていた世界の上に被せるように展開された水色の、言わば異世界における異界のようなモノ。


ここは戦闘フィールド。惑星の各地にランダムで選出された地域を元にして作られた、別空間に存在する異界そのもの。出場選手以外は内部に侵入出来ず、あくまでも選出元の地域を再現しただけの世界なので破壊行為もし放題………という場所である。


懸念点はあった。事前の調査時にこの異界に引き込まれたのは、選手以外ではうちの子達だけ。これによって私が推測したのは、選手とは別に、ランダムで選ばれた地域に存在する、事前に登録されていない生物の全てを巻き込んで生成するような異界なのではないかという推測。私は人型をしているだけの悪魔なので、悪魔が事前に登録されて居なければ当然のように巻き込まれるかもしれないとは思っていたが………まさか、本当に巻き込まれるとは。確率どうなってんだ。


ここで今から行われるのは、この惑星に住まう人間同士の殺し合い。文字通りの命懸け。与えられ強化された肉体と、保有するナノマシンを用いて行われるもの。


「………これ、途中で逃げるとバレそうですわね………」


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