成長はデバフかバフか…個人的には死に近づく訳だからデバフだと思うんだけど、どうなんだろうか
護衛中に襲撃された日から10日後、つまり護衛任務が完了したその日。あの襲撃以外は何事もなく行われた護衛任務は、恙なく終了した。その間に行われた
私はちらっと見ただけでそこまで興味も湧かなかったのでほぼ見ていないが、かなり興味津々に見たがっていたアリスには偵察悪魔越しに映像記録を飛ばして見せてあげてはいた。レイカとフェイ、マイマスターと妹様も割と楽しんで観戦していたようだし。ついでに、アリスが録画をご所望だったので映像の記録とその再生が可能なうちの子を渡してある。これ、悪用すると映画とかお金を一切払わずに無限コピー出来るようになってしまうのだが、流石の私もそういう事はしない。するとしても身内で楽しむだけだ。盗まれたら自壊するようにでもしておけばいいだろう。
そうそう。この10日間、再度の襲撃に気を付けつつではあるけれど、待機時間が割と暇だったので"過程のスキップ"をどうにか極めようと色々と練習してたんだよね。前からちょくちょく練習はしてたんだけど、こうして纏まった時間を確保出来る事ってそんなに無いからさ。普段は夜とか普通に寝てるし、わざわざ悪魔になってでもして起きてもないし。
って事で色々と試してたんだけど………私は気が付いちゃった訳だよ。とある事実に………!そう!過程のスキップの習熟の過程すらスキップすれば万事解決、ってね!
「──そこで飛び出して行ったのが魔法少女トレインじゃったな!あの逃走劇は手に汗握る素晴らしいものじゃった!」
『はい!確かにあの場面、敵に囲まれている中で突撃して仲間を救うシーンは最高でした!!』
「そうじゃったよなようじゃったよな!」
まぁその結果、私の保管してたうちの魔力が恐らく権能全力行使換算で数千年分くらいはごっそりと減ったし、それ以外にも過程のスキップ中に必要であったであろう惑星一つくらいなら数億年単位で補給し続けられる物質の一部が極端に減ってて底を突く寸前だけど。
これで分かったんだけど、過程のスキップをしたと言っても過程を一切出力しないだけで、過程自体はあるんだよ。だから魔力はごっそり減るし、過程で使用した物資もごっそり減ってた訳。何せ、どうやって結果にまで至ったのかを私も知らないもんだから、こんな仕様は初めて知ったよ。
けれどこれで、私は過程のスキップの調整を完璧に行えるようになった。まぁ、スキップする技能によってはその過程の消費が馬鹿にならなくなってしまうのが試さなくても分かるので、普段使いするにも基本的に移動や戦闘にのみ使用しようと思っている。個人的には移動に使用するのが一番良いのではないかと思ってるくらい。だってさ、向かう場所さえ分かってればそこへ至る過程を全スキップなんだよ?
そうなるとだよ。これからは何処から異世界の情報を見つけてくるだけで、その世界への道を作り出せるって訳。これまで次の世界を見つけるのに掛かってた時間を短縮出来るんだぜ?こりゃもう移動に使うべきでしょうよ!異世界探す為に当てずっぽするの割と大変なんですから!!
「──のぉテアよ!お主もそう思うじゃろう?!」
『テア!テアもそう思いますよね!?』
「………煩いんですけれど………」
つい数時間前。先日行われた
それに、なんというか………あれは、"戦闘"じゃなかった。絶対の安全が考慮されている"訓練"、という側面の方が強かった気がする。まぁそりゃ訓練だから当たり前なんだけど、その訓練の範疇で10VS10の戦いをしてる、って感じがしてねぇ。見て楽しむ分には派手だし華があるしで良いんだけど、私みたいにガチの戦闘を見たい奴からしてみれば生ぬるいなぁ、としか。そんなもの求めてる方がおかしいんだけどね?
だからって別に嫌いって訳でもないので、特に不満は無い。実際、楽しむ分にはそこそこ面白かったように思える。広大なマップ、派手な魔法、奇想天外な発想。ルールはシンプルに敵全員を倒す事だったけれど、その結果を得る為に多くの戦略と戦闘があったのだから、見て楽しむ分にはかなり楽しそうだった。確かにオリンピック的な感じだったし。
まぁ私、スポーツ系のテレビって欠片も見ないんですけど。いや、だって………ほら、側から見てても分からないことっていっぱいあるじゃない?実際にやってみないと駄目な訳よ。私割と体動かすの嫌いじゃないし、運動神経も皆無って訳じゃないから自分でやりたくなっちまうし………元から器用貧乏だったしね。割とどんなスポーツでも素人より上手かった記憶がある。
「貴女達、興奮するのは良いですけれど、あまりうるさくしないようにしてくださいましね?特にアリス」
『分かってます!それでですね!あの場面では──』
「分かっておる!そうじゃな!あれは──」
………………まぁ、音が外に漏れないように私が魔法で遮断しておけばいっか。そうすりゃ周りの迷惑になったりはしないでしょ。私は私で権能の調整があるからちょっと忙しいんだよ。
いやさぁ。権能ってのは私がポンポン使ってるから忘れがちなんだけど、これはあくまでも神の機能を模倣した技術な訳よ。そして私は神でもない普通の人間であり悪魔なので、プロスポーツ選手みたいに自分自身の調整だってする必要があるのである。
私の場合、それは大半がうちの子達、創造する悪魔達の性能調整だ。創造時の必要コストに制限をかけ、最低限の消費で最大限の性能を発揮出来るように、常日頃から調整を行なっているのである。別にやらなくても魔力は無限なのでやらなくてもいいのだが、やることで生まれる得も多少はある。後は純粋に、ほら、制限の中で色々やるのって楽しいから………
無論それだけではなく、私が今詰め込める強化全てを詰め込んだ最強の悪魔の性能を更に強化したりとか、元ネタの存在する悪魔達の純粋な肉体性能を底上げしたりとか、割と色々とやっている。特に最近力を入れているのは、オリジナルの悪魔を色々と作る事だ。
オリジナルの悪魔は概念が私の権能にのみ依存する為、概念的な悪魔特攻などにあり得ないくらい弱くなってしまうという明確な弱点が存在するのだが、それはそれとして色々と性能を特化させた子を作るのも楽しいのでついつい作ってしまうんだよな。この場合の性能特化っていうのは技術の特化ではなくて、身体能力、適性属性、魔力量などの調整を意味している。
例えば、剣に特化した子なら身体能力を私以上に、器用さも極限にまで引き上げる代わりに、魔力量や適性属性を皆無にしてみたりとか。
例えば、火属性の魔法に特化した子なら私の魔炎粘液体質から引っ張ってきた火属性適性をとことんまで積み込み、魔力量も私とのパスが繋がっていれば無制限とかにしてみたりとか。
例えば、同じ規格の歯車だけをただひたすらに作り続ける為の能力を過剰と言われても仕方ないくらい与えた、歯車生産特化の子を作ってみたりとか。
そんな感じで、ただひたすらに単一機能に特化しまくった子達をどんどん作り上げているのである。私の場合、事前に試作品でも良いので一体でも作成しておけば後は無制限に創造する事が可能である為、これいつどこで使うの??みたいな性能の子であったとしても、別に構わないのだ。言ってしまえば、私は設計図なら無限に保存できるので、どんどん作っている訳である。
「んー………」
しかし、そうやって把握し切れないくらいの量の悪魔を作っていると、何かしら悪魔達の性能の強化が可能になった時、その全てに適用しなければならなかったりするので、そこがちょっと大変な部分。一応、個別で調整しなくていい………大抵は私の権能による器用さへの強化とかは、全ての悪魔に同じくらいだけ適用出来るようにはなっている。が、それ以外は殆どが個別での調整を必要とするので、そこはちょっと困っている点だ。
何せ、純粋な身体能力の強化であっても、ほんの数%の強化だけでかなり違ったモノになってしまったりするのだ。微調整を繰り返してより良いモノにするのが、私の権能の真髄なのである。まぁ、私はこういう作業が嫌いではない、むしろどちらかと言えば好きな方なので、そこまで困っていない。というか、嫌いだったらこんな権能にはなっていないんだよな。
ただ、無駄にどんどこ作りまくっているので、その時その時の状況などに応じて適切なうちの子を探し出すのに割と時間がかかるという欠点もあったのだが………それは既に、器用の権能による"過程のスキップ"によって解消されている。ただただ一覧リストから探し出す行為なので、特にこれと言ってアイテムを消費する訳でもない。仮に一覧リストの中に目当ての悪魔が居なくても、その場で目当ての悪魔を即席で作り上げるだけである。過程のスキップが便利過ぎて何にでも使いたくなってしまうな………
ただ、幾ら過程をスキップしても結果に辿り着く為の過程は認識出来ないだけで存在しているので、辿り着くまでに必要な魔力とか物資とかは消費されちゃうからなぁ。一覧リストを確認するだけなら魔力消費くらいで済むけど、なんか即座にお城とか作らなきゃいけねぇ!みたいな状況になると、その分の石とか木とかが消費されるんだよ。
これが"過程のデリート"ならマジでただ結果だけ出力する事になるから、多分過程で本来消費されるべき魔力とか物資の消費がゼロなんだろうけど、流石の私も"器用さ"からそんなイメージ出来なかったよね。私が調子乗って権能とか言ってるけど、これってあくまでも神の機能を魔法の延長線上に存在する技術として確立させてるモノだから、どうやってもイメージによって影響受けるし。
「ここも………」
というか多分、イロ型世界って他の世界よりも知的生命体のイメージが具現化しやすい世界なんだよ。色々な世界を精査してて気が付いたんだけど、なんというか、世界毎に何かしら特有の性質があるんだよね。
例えば、ハ型世界はダンジョン溢れる世界。そうなっている原因としては、あの世界では魔力が一定の場所に留まりやすい性質にあった事だろう。魔力が過剰に溜まり過ぎた結果、溜まり過ぎた魔力を効率良く消費する為にダンジョンとして変化して、魔物や宝物を放出する訳だ。知的生命体が近くにいなければ稼働しないのは、放出された魔物や宝物を効率良く世界中に巡らせられるのが知的生命体であるのをダンジョン自身が理解しているからだろう。
例えば、ニ型世界は魔法少女の存在する世界。この世界では前提として、魔力が感情の揺らぎから発生する事が挙げられる。また、知的生命体の発する正と負の感情が特定の亜空間に溜まりやすい傾向にあるのも確認した。こちらもハ型世界のダンジョンと同様に、溜まり過ぎたエネルギーが天国と地獄という巨大且つ重なっているという不可思議な異界を発生させていたのだ。
このように、ハ型世界は魔力が一定の場所に溜まりやすい、ニ型世界は感情エネルギーが亜空間に溜まりやすい………など、何かしらの性質を持っている世界ばかりなのだ。では、イロ型世界はどうなのか?当然、性質のようなモノが存在している。そしてイ型世界とロ型世界は多少の差異はあれど、その世界の根幹ルールは同じだ。その世界の性質もほぼ似ている。
その性質とは、イメージが具現化しやすい事だ。これはロ型世界で習得した魔法や、イ型世界で発生している幻想種が分かりやすい例だろう。イメージ、空想、幻想と呼ばれるモノが、何かしらのエネルギーによって形となりやすいのだ。
そんな感じで、世界には特有の性質がある。そして基本的に、その世界に生きるモノはその世界の性質を内包している。例えば………私はイロ型世界出身なので、魔法や権能を行使するにはイメージが最も重要となる。イメージ出来るならどんな魔法でも魔力が足りていれば使えるし、イメージ出来るならどんな権能の使い方をしても良い訳だ。
しかし、ニ型世界出身の魔法少女が魔法を扱う時に必要なのは思いの強さであって、イメージはそこまで重視されない。別にそこまで強固なイメージなんか無くても、支払うべき魔力さえあれば魔法は望むままに行使されるのだ。その分かは分からないが、魔法の性質が単一に固定されており、本来の仕様に無い魔法は頑張っても扱えないようだ。
ハ型世界では具体例が居ないので私が調査した結果となるが、あの世界の魔法はなんというか、事前に作成されたプログラムの関数を魔法行使のタイミングで呼び出して使っている感覚………ブログミングを知らない人にも分かりやすく例えるなら、ゲームでコマンドを選択して使う魔法のようなモノだ。事前に設定された以上も以下も発揮せず、ただ効果だけを捻出するのである。
ハ型はちょっと特殊で異世界人でもハ型世界特有の魔法を扱えたが、これは逆に言えば異世界人でも扱えるくらいには単純で分かりやすい魔法だという証拠に他ならない。だって、キャラクターのコマンドから使いたい魔法を選ぶだけなんだもの。例えばゲームを知らない人が居て、その人にゲームのコントローラーを渡してこのボタン押して?って言ってその人にボタン押して貰うって方法でも、コマンドを選択したり決定したりして魔法を使えるでしょう?それくらい分かりやすい仕組みの世界って訳だ。
何なら世界の性質なんて、私の作り上げたA型世界である『SRO』にだって存在している。あの世界は全ての法則が悪魔に支配された世界なので、何かしらの法則を司る悪魔を討伐すると、討伐した悪魔の行使していた法則を自在に司る権利を得られるのだが………これは、充分に性質と言えるだろう。勿論、イ型世界の内側に存在している小さな世界であるので、イメージが具現化しやすい性質もあるが、それに加え、単一存在が法則を司る世界である事も世界の性質として数えてもいいだろう。
「これは要りませんわね………んー………」
追加の熱が入り始めて更に煩くなった2人の声が聞こえないようにしつつ、私はその後も色々と思考を巡らせながら、色々な悪魔の調整をし続けるのでした。
3日後の3月22日。この日は丁度、14回目のウロボロスメタル生成の期間が終了し、15回目のウロボロスメタル生成の期間が開始された日だった。一度の生成で得られる量は1kg分のインゴットという、金属としては非常に少ないと言わざるを得ない量をちまちまと生成しており、今では14kg分を確保出来ている。
まぁ、私には永久炉心があるので魔力をどんどん詰め込めば即座に100kgでも生成可能ではあるのだが………そんな魔力を一度に詰め込んだら壊れそうですねー、とアリスに言われてしまったからな。そりゃ確かにって思ったので、それなら前からずっとやってる量でちまちま魔力を注いで40日間に一度、1kgだけ生成していく方が総合的に大量に生成できるかもしれない………そう思ったので、今日までちまちま作り続けている訳だ。
というかぶっちゃけ、1kg分のインゴットであっても極薄にすれば大抵の場合で事足りるんだよな。どうせこれ、自在に変形可能な金属だぜ?何しても壊れないなら、ナノサイズの薄さにして既存の物に貼り付けるだけでも充分でしょ。何なら、めっちゃ薄くしつつ更に網目状とかにするでも良い。どうせ不壊なんだからそれでも充分過ぎるでしょ。まぁ、熱とか電気とかは完璧に防げても衝撃はどうにもならないから、そこは上手くしないと駄目そうだけど。
「うーん………そろそろ、ウロボロスメタルを活用する方法を考えてもいいかしら………?」
まぁ、ウロボロスメタルは溜め込んでいるだけで使う機会も使い道も無い金属素材なのだから、何かに活用出来たりしないかなー、とは割と思うんだがなぁ………肝心の使い道があまりにも皆無過ぎて………
だってさぁ、"硬い"以外に意味の無い金属だぜ?一回変形させたら2度と変えられない硬さなんだぜ?何に使えばいいんだよこれ。お試しで変形させたらそっから戻んなくなっちゃうから無駄使い出来ないしさぁ………うーん………何か、何か用途は………
「………あ」
これもしかして、"絶命刃"で使う刀にしたら毎回武器が破壊されるってのを防げるのでは?ちょ、ちょっとやってみるか?流石に勿体無いから………そうだな………1kg分を薄く伸ばして刀………鞘はうちの子で代用するとして、必要なのは刃部分………いや、柄と刃どっちも不壊にしないとダメか………そうなると、鍔は要らないな………ビジュアル的にはあった方がカッコいいからうちの子を被せて造形だけ………とりあえず、それでいってみようか。どうせ不壊なんだから薄め使ってかさ増しして………と。
「………んー………?」
とりあえず、器用さの権能フルパワーで常に魔力を流し続けてウロボロスメタルを変形させ始めてみるが、これは………上手くいってるのか………?一応刀の柄と刃部分は完成したけど………鞘と鍔はうちの子を被せて代用する、と………おぉ?中々に良い刀かもしれない。まぁ、ビジュアル面で特に凝った訳でもないから、本当に無骨も無骨な刀身だけど。何なら刀特有の模様みたいなの全く無いから不自然感凄いけど………まぁいっか、これでも。
さぁて、問題はこっからだ。気になるのは、ウロボロスメタルは私の"絶命刃"による武器への絶大な、具体的には一度振るった刀が爆散するでもなく粉になる程のダメージを回避出来るのか?最低限、私の一撃に耐えられる程度の強度があると嬉しいが………不壊だから行けそうなんだけどなぁ。
しかし、こっちが使ってるの権能だからな………出力差があり過ぎて………まぁいい。使えばわかるな。何か切るもの………切るもの………うーん、特に切るようなものないな………仕方ない。うちの子切るか。
という事で創り上げたのは、訓練用案山子型のうちの子である。この子はあらゆるダメージを一切の防御や耐性無しで素直に受けるが、その代わりにどれだけ破損しても即座に再生する能力持ちの子である。この子の亜種というか色違いみたいなのに、〇〇耐性待ちの似たような機能の子が居たりする。まぁ、普段からこの子を使ってうちの子達は戦闘訓練を行っているのである。
「まぁこの辺で、と………」
まぁ、別にうちの子同士で戦闘訓練させて仮に死んじゃっても即座に蘇生させられるからあんまり使わない子なんだけど、"的"として利用する分には充分な性能があるから、普段は遠距離系の訓練をしてる子達の標的役として活躍している子である。
ちなみに、案山子型悪魔シリーズには一律に自走機能や転移機能などの、物理的な移動から魔法による移動まで、兎に角移動に関する多くの機能が搭載されているので、不規則な動きをする標的を狙い撃つ訓練とかで主に活躍している子だ。
そんな子を部屋の隅に設置した私は、手に持っていたウロボロスメタルの刀身を鞘から取り出す。私の器用さでゴリ押しされた刀は非常に鋭く、薄く、そして思っていた数倍は軽いもの。人間の時の私だって持てるくらいの重さだ。まぁそりゃあ1kgですもの。1kgのダンベルってかなり軽いよ?振れるかは兎も角として。
………ふむ、軽く振ってみたけれど、重心の偏りは無いな。どうせどんな重心だろうと器用さでゴリ押しして使うからそこまで関係無いんだけど、私の器用さを最も有効活用出来るのは特化型より汎用型なんだよ。何せ、特化しててもどうせ器用さでゴリ押しすりゃあどうとでもなるからな………それなら最初から基礎ステータスが高い方が良いって訳。
「では、絶命刃」
私は案山子から数歩分だけ離れ、そのまま何の溜めもなく、まるで日常の一動作の内であるかのようにして絶死の一撃を放つ。私の一振りによって、真横に真っ二つにされた案山子型悪魔が合わせれば繋がりそうなくらい綺麗な断面を見せるのと同時に、手に持っていた刀からヒビ割れるような音が聞こえて来た。
逆に言えばヒビ割れただけで、粉のようにして崩壊するなどはなかった。これは私にとって驚くべき結果だ。今まで、うちの子に多くの工夫を重ねて尋常では無い硬さを搭載した刀などを振るったりもしていたが、その悉くが粉となって消え去っている。なのに、今もこうして原型を留めている。本当に不壊なのかは兎も角、曲がりなりにも"不壊"という概念を保有している金属だからだろうか?
「しかし、かなり深刻なヒビですわね………」
しかし、そのヒビもかなり深刻なモノだ。刀身や柄などに
はかなり大きなヒビが入っており、これが不壊の金属でなければ今崩壊してもおかしくはないくらいである。不壊金属なのでこのままでも十分に武器として扱えはするだろうが、仮にもう一度絶命刃を放ってしまった瞬間、この刀は武器としての機能すら失われそうな程だ。
うーん、不壊金属であってもここまでになるってんなら、ウロボロスメタルは使えないなぁ。これなら崩壊前提でうちの子を使った方がコスパが良い。うちの子にかかるコストとかゼロに等しいし。
ただなぁ。こうなってくると、本格的にウロボロスメタルの使い道が無くなって来てしまった。というか、最低でも権能に耐えられるモノじゃないと、今の私には何もかもが足りていないんだよな………まぁ、だからってウロボロスメタルを手放したりはしませんけど。ほら、どっかで使うかもだし………別にゴミじゃないから………権能に耐えられないだけで………
「壊れないよう、器用に振るってはいるのですけれどねぇ………」
それでも素材の強度が足りない………というか、これは器用さの権能ではどうにもならない問題だ。言ってしまうのなら、これは概念的な強度が足りていないのだと思う。不壊という概念を保有している金属である事に変わりはないのだけど、その概念が権能に耐えられなければ意味が無いのだ。
だからと言って悪魔の権能でもどうにもならないのだから、今の私ではお手上げだ。器用か悪魔の権能で、何かしら不壊の物質を生成する能力があれば別なのだが………流石の私もそう簡単に編みだせない。いやまぁ、オリジナル悪魔でなら不壊物質を作れるかもしれないけど………そうなると、概念的な強度が足りないんだよ。どう頑張っても悪魔産の物質になるから、どうしても悪魔の概念が内包されるので………うーん、概念が………不壊の概念が足りない………!
なーんか良い感じに不壊物質を生み出せる権能持ちがSROで生まれないかなー!そしたら創造主権限でゲーム内から現実に持ってくるんだけどなー!
あ、ちなみに今言ったが、A型世界から物質を持ち出すことは普通に可能だ。分かりやすいのはソフィアの所のちなっちゃんだろう。あの子はゲーム内、つまりA型世界に存在していたアイテムだったが、普通に現実にまでやって来てソフィアの脳天に突き刺さっていたからよく覚えている。 あれはソフィアの権能が手を貸したのも原因としてあるだろうが、それ以上にA型世界が実際に存在する世界であることも重要な点だろう。
A型世界は電脳世界ではない。イ型世界の私専用の亜空間に実際に存在している、現実の一部なのだ。まるでゲームのように作り上げているだけで、あの世界は確かにある。だからこそ、ゲーム内で作成されたアイテムは幾らでも現実に持ち出せる訳である。それが例え、他者の権能で作り上げられたアイテムだとしてもだ。まぁ、権能由来の物質を貰うわけだから相応の対価は支払うけど。
『デーモン、今よろしいですか?』
「イモータル?えぇ、どうぞ」
私が自室で色々としていると、いつも通りのシンプルな服装をしたイモータルが部屋の中へ入って来た。何用だろうか?別に用事とか無かった覚えがあるんだけど。
「それで?何か御用かしら?」
「少し聞きたい事がありまして」
「まぁ、良いですけれど」
………なんか変な予感が。
「デーモンは豊胸の魔法を使えるとヴァンパイアから聞いたのですが、本当ですか?」
「え?まぁ、使えますけれど………それが?」
………私、いつソフィアに
「私にも使えたりします?」
「まぁ、多分?流石に使ってみないと分かりませんけど………イモータルは、豊胸に興味でも?」
「ありますよ、何言ってるんですか。これでも女の子なんですよ?幼い頃に魔法少女になって、しかも不老にもなってしまって、一切成長しなくなったんですから。私だってなれるんならナイスバディの状態で不老不死になりたかったですよ悪いですか??」
「いえ、悪くはありませんけれど………」
ごめんね、気にしてることを言って………ふむ、しかしそうか。一時的な成長を齎す………ふむ?
「ねぇ、イモータル。貴女は別に豊胸したいのではなくて、成長した自分を少しでも見たいのですわよね?」
「そうですよ。文句ありますか?」
「少し手伝ってくれるなら、貴女の肉体全てを成長させて差し上げる事も可能だと思いますわ」
「何ですって?!」
あら、イモータルがここまで驚くなんて珍しい。普段は冷静沈着というか、どんな物事も驚く前に受け流してしまうタイプなのに。まぁ、それだけ成長を望んでいた、という事だろうな………不老不死にはそう言う弊害もあるって訳だ。
それに今思ったんだけれど、多分、成長させられるのは胸だけじゃないんだよね。だってこれは牛乳魔法なのだ。ほら、牛乳を飲むと背が伸びるとか言うじゃん?何なら胸も大きくなる………ならもうそれは、全身が成長するのと何が違うのさ?って、今思ったよね。
そしてイロ型世界の魔法では、そういう解釈の仕方で無限に好きな魔法を生み出せるのが特徴だ。世界の性質からしてイメージが具現化しやすい世界なんだぜ?って事はつまり、イメージ出来るなら何でも出来るって訳なんだよな。ロ型世界では適性って言われてるから分かりにくいけど、魔法の属性適性なんてその属性のイメージが得意か不得意かを表しただけのもんだからね?
そして私は今、牛乳魔法で成長を齎せる事をイメージした。ならば後はもう、認識を固定する為の名前と、具体的な効果を考えればそれで魔法は完成する。へへ、新しい魔法を生み出すのは複合魔法で慣れてるからな!これくらい朝飯前よ。
「………では、
新しく、何なら今ここで作り上げた魔法をイモータルに対して使用する。
一応言っておくが、この魔法は肉体だけを成長させるので、この魔法による直接的な死亡は発生しないようになっている。分かりづらいと思うので例を挙げると………そうだな、後数年しか生きられない少女が居るとしよう。その少女は病気で、15歳までしか生きられない。そんな女の子にこの魔法を使って、肉体だけを20歳にしてみると………まぁ、死なない。
肉体だけを………これは言わば、妖属性の魔法で肉体を変形させているようなモノだからだ。まぁそれよりも物事をある程度無視しているから、ちょっと違うけれど、イメージ的にはそんな感じ。つまり
「お、おぉ!これは………!」
使用した
「凄い………!凄いですよデーモン!流石は悪魔です!これが望んでいた成長………!これなら中学生って名乗れますね!次!次は高校生にしてください!」
「え、えぇ。
とりあえず20代後半くらいを目安に使ってみると、今度は160cmを越え、体感的には高校生くらいの姿になった。胸の大きさも小山から山って感じになった。しかし………あれ、もしかしてイモータルって元から成長が遅い………?
「おー!長年望んでいた高校生スタイル!!この身長なら間違いありません!ふぉー!次は大学………いや、大人!大人スタイルでお願いします!!」
「あ、はい。
次は30代を目指して使うと、165cmくらいの身長になった。流石にこの辺がイモータルの自然な成長の限界らしい。しかし、それ以外は大人の魅力に溢れる姿へと変化している。胸もそうだが、くびれが出ているからだ。これは20代………おかしいな。30代目安だったんだけど………
「ふぉー!これが!これが私の大人スタイルなんですね!!これで………これで同期の子達に子供扱いされずに済みます!!最高!最高ですよデーモン!これ何時間保つんですか?!」
「最低でも6時間は保つと思いますけれど………何処に?」
「外です!大人しか体験できない色々を体験して来ます!」
「それなら効果時間を18時間に伸ばしておきますから………まぁ、楽しんで行ってらっしゃいな」
「おー!ありがとうございますデーモン!行って来ます!!」
そのままイモータルはテンションぶち上げのまま走り去っていった………まぁ、当人が楽しそうだから………いっか!真実は話さなくて!
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