翻訳は基本的に分かりやすさを優先してるので、固有名詞が全然違う時は普通にあるんすよね
ソフィアと一緒に魔法少女VS魔物の戦いを観戦した日から5日後の3月5日。今日の私はニ型世界ではなく、イ型世界でいつものようにソフィアの家でゲームをしていた。家の主人であるソフィアはニ型世界で魔法少女との戦闘訓練をしてくると言って出掛けているので、今この部屋に居るのは私だけだ。
厳密に言うとうちの子が数人くらいちょっとした作業をしているが、まぁうちの子は実質私みたいな所あるし、私だって言い張っても問題無い。実質〇〇みたいなイメージで私の権能外の概念をちょこっとだけ弄る時もあるし、割とこういう精神は大事。
「ん………」
やってるゲームは今日も今日とてFPSである。まぁ、器用の権能を上手く利用出来るゲームの種類は幾つかあるが、その中でもFPSゲームは顕著な成績を叩き出せるからな。器用さを極めれば人力の限界点くらい余裕で越えられるんですわ。例えゲームの中だろうとそこに仮初であっても偽物であっても確かに世界が存在しているのなら、私の権能で干渉出来るんだよ。まぁ干渉出来るって言っても、干渉出来る範囲がそもそも少ないけど。私が作り上げた世界じゃないし。
ゲームとしての強制力………例えば、世界の切り替えとかだな。ゲームというのは、例えオープンワールドゲームであってもマップ全域が全て常に読み込まれている訳じゃない。そんな事してたらスマホとかパソコンとかアチアチになっちゃうからな。だから基本的に、プレイヤーを中心として世界が読み込まれている、らしい。流石に詳しい理屈は知らん。
んで、私はゲームの中の世界にも多少は干渉出来るんだが、そういう世界の強制力には絶対に負けるんだよ。当然だ。私の作り上げた世界でも無いんだから、自分の好き勝手には出来ない。あくまでも………そうだなぁ。例えるなら、勝手に新幹線の屋根に乗って相乗りって言い張ってるみたいなもんだ。狭くても確かに存在している世界そのものである新幹線が動けば、当然のように私も動かされる。新幹線が消えれば私は世界から弾き出される。そういうもんだ。
この辺はあんまり理屈的に考えない方が良い。こういうのはマジで概念的というか、あやふやで曖昧だからな。深く考える必要はない。こういうものだ!って固定観念をぶち壊して、これもあればそれもある、みたいな考えでなきゃね。
話を戻すが、干渉出来る範囲で権能を使ってゲームのキャラクターにも器用になって貰うと、理屈はわからないけどゲーム内の操作キャラクターが私の超絶操作に追い付くようになるんだよね。そうすると、私が超高速で操作入力してもラグ無しで反応してくれるようになるんだよな。もうね、操作と画面でのラグが消滅するのめっちゃストレス減るんだよ。楽過ぎて最近ゲームする時はずーっとこれ使ってるからな。
「んー………あ、撃ち負けた」
ただ、幾ら私が人類以上に器用であり得ないくらい超高速で動けようとも、撃ち負ける時は負ける。特にシールドみたいなのがあるFPSだと人数差がそのまま戦力差になるので、全弾ヘッドショットを人力でやっても複数人から撃たれたり狙撃されたりすれば死ぬ時は死ぬ。普段はソフィアがこの辺をカバーしてくれるんだが、私1人だとそうもいかないんだよな。マジで司令塔って居ると居ないじゃ全然違う。未来予知みたいな予測してるソフィアが居ないと勝率95%以下になるわ。いやまぁ、ソフィアが居ても最大で勝率98%くらいが限界だけど。
やっぱり、どんなゲームにも偶然ってのがあるし、ソフィアの予測は基本的にベテラン用にチューニングされてるから、初心者特有の謎行動は予測出来ないんだよ。そういうのがあるから稀に負けたりするんだわ。しかも、中にはチートも無く私とソフィアと正面から戦って勝ってくる相手も居る訳よ。勿論相手にも大打撃を与えて死ぬけど、もうちょっとの所でって言うので負ける時もあるんだよ。………こういう所に人間の可能性を感じてしまうのはもう人外の思考回路なんだけど、実際に今の私は悪魔だし良いか。
「んー………ん?」
私が次のマッチに向かおうとしていると、第五アップデートによって表示されているスマホの画面に連絡が掛かってきているようだったので一度ゲームを中断し、連絡を取る事にした。その連絡相手はソフィア。
「はーい、もしもーし」
『おぉ、テアよ。少しばかり人手が欲しいんじゃがよいか?』
「良いですけれど、何してるんですの?」
『いやぁ、少しばかり戦闘訓練をする魔法少女の人数が多くてのぉ。妾とのタイマンだけじゃと回りきらんのじゃ。じゃから、お主の子らを貸してほしいんじゃが………良いかの?』
「良いですけれど、どれだけ欲しいんですの?」
『戦闘相手となる悪魔を30、治療を行う悪魔を10じゃな』
「えぇ、はい、どうぞ」
『おぉ!やはり早いのぉ。よしお主ら、妾の友人たるデーモンから送られてきたそやつら相手に戦ってみよ!なぁに、治療はそやつらがしてくれるからの!存分に戦うと良い!あ、ではテア、また!』
そこで通話は途切れた。んー、どんな状況か全く把握していないから分からんかったが、もしかしてあの吸血鬼、魔法少女との関わり合いを割とエンジョイしてるな?良いなぁ良いなぁ、私も戦闘訓練したぁい………でもなぁ、目の前で戦われると本能が刺激されるんだよなぁ………イモータルみたいに殺しても良い相手なら良いんだけど、そうじゃないと手加減が難しい………こりゃあ、難儀だねぇ。
まぁ直そうと思えば直せるが、ぶっちゃけ今みたいに単一の欲望って状況にメリットが多過ぎてなぁ。わざわざ直す必要性が感じられない。欲望が少な過ぎて自制が難しいってデメリットがあるけど、それ以上に良い所ばっかりなんだもの。
「んー………」
そういやつい最近、『SRO』で私とソフィア以外の権能保有者が現れたんだよ!その時の流れとしては、獲得した瞬間にゲーム内でも時間加速が馬鹿みたいに掛けられてる特殊な空間に送り込んで、説明役のうちの子に権能が現実でも制限無く使用出来る技術である事と、それを他人に話さない、伝えないという契約を結んで貰ったんだよ。
いやぁ、マジで中々現れないから、もしかして10倍に加速された世界とか私が作り上げた仮想世界だから権能獲得は無理なのかなぁって思ってたけど、本当に現れてくれるとは思わなんだ。後数年くらい待たされるかと思ってたけど、そうでもなかったのは良かったぜ。その頃になってたら忘れてそうだしな。
ちなみに、『SRO』で初の権能保有者になったのは、名前を
「あ、ちょ、初動即降りなのマジですの?これランクなんですけれど………まぁ良いですわ。無双して差し上げましょう!」
このまま権能保有者がどんどん増えてくれば、権能に覚醒する人物の傾向も見えてくるだろう。それに、どんな権能なのかを詳しく知る事だって出来る筈だ。まぁ、今の優也君は四工程の内の一工程、自己の認識しか出来ていないが、それくらいは想定の内だ。次第に他の三つにも気が付くだろう。
むしろ、新しい工程を考えてくれるかもしれない。権能の覚醒のやり方が一つだけとは限らないのだ。勿論私も普段から他に権能を極める為、他にやり方が無いかは模索している。そうする人物が増えていくのだろう?ふふ………良い、凄く良いじゃないか。やはり数、マンパワーは全てを解決する!多様性を追求するには数が必要なのだ!
「ちょ、味方が倒されるのが早過ぎますわ!流石の
幾ら私がチートを超える動きが出来るって言っても、別にチートを使ってる訳じゃないからね………人数差があると、まぁゲームにもよるけど、大体1〜2割くらいは負けたりもするし。特に、このゲームみたいに頭に当たれば一撃とかじゃなくて、シールドみたいなのがHPの他に存在してるゲームだと尚更負け易い。
ちなみに、頭に当たったら一撃みたいなゲームだと普通に無双出来たりする。まぁそりゃ全部の弾が頭に当たるんだもん。そう簡単に負ける訳ねぇ。ただ、そういう時でも死ぬ時は死ぬ。相手の弾がマグレでも頭に当たれば死ぬんだからな。そりゃそうだとしか言いようが無い。器用に避ける事は出来るけれど、避け切るのは流石の私でも難しい。まぁ、リアルでなら機銃掃射とかでも避けられますけどね!
「あ、よし!3人撃破ですわ!これが
流石の私もシールド全損、HP1割みたいな状況で追加で3人も万全な状態の相手をして勝てる訳がない。さっさと逃げよう。逃げ切るのはこのキャラだと難しいから、どっかに隠れようかな………んー、この辺とかどう?
「あーっ反則スキャン!このゲーム本当にハイドに厳しいですわね!?あ゛ー!!あー………」
くそぅ、9位か。せめて上位5チームには入りたかったぜ………流石にハイド非推奨のゲームで隠密するのは厳しかったか。いやまぁ、ミスディレクションとかみたいな心理学的な隙を突たりすりゃあ上手く隠れられはするんだろうけど、ぶっちゃけそんなんしてる暇があったら戦うのが私なのよ。
つーか、こちとら戦闘と勝利を糧とする悪魔ですよ?!誰が相手だろうと戦って勝つ事が優先に決まってるじゃないですか!ま、勝てなさそうな局面なら普通に逃げますけどね!いやだって、負けるとめっちゃ悔しいんですもの!勝つのと同じくらい、負けない為の工夫はするべきでしょうよ!
「はぁ………悔しいですわ………まぁこれはゲームですし、そこまで………ぬぅ、やっぱり普通に悔しいですわね!もう一回ですわ!!」
負けると悔しくてもう一回挑みたくなるのはいつもの事なんだよな………まぁ滅多に負けないけど、負けるとこうして何度も挑めるってのがゲームの良い所だ。リアル戦闘じゃこんなの出来ないし。いやまぁ、戦闘と勝利の悪魔としては現実でやるガチの殺し合いだろうがゲームだろうが、誰かと誰かの間で些細であっても争いに勝ち負けが存在してるなら何でも良いんだけど。
でも個人的にはゲームの方が好きかな。いやさ、現実の殺し合いって明確なルールとか無いじゃん?マジで何でもアリじゃん?でもゲームにはさ、ゲーム側から提供される範囲で何でもして良い、って感じで緩い制限が掛かるじゃない?個人的にはそれくらいの制限があった方が実力が対等な相手と戦えたりするから、私はそっちの方が好きかな。強者に挑む挑戦とか弱者を嬲る蹂躙とかより、私は対等な相手との戦闘が一番好きなので。どれだろうが勝つ方法を模索する事に代わりは無いし。
「………あ、お昼どうしましょう………まぁ、気分転換も兼ねて外に買いに行きますか」
そういやソフィアの家に食材が殆どない(厳密には補充していないので元から大量にあるお菓子しかない)事を思い出したので、悔しい気持ちをある程度リセットする為の気分転換も兼ねて外に行くか………負けた後のメンタルでゲームすると視界が狭まってたりで負けやすいからな。
ぶっちゃけ悪魔の私に食事とか不必要だし食欲も皆無なんだけど、それはそれ、これはこれ。
「まぁ、うちの子居ますし、鍵はかけなくても良いでしょう………そもそも鍵持ってませんし」
そういやソフィアの家の鍵とか持ってないな。というか、普段からソフィアが血液操作して鍵の形にして開けてるから、鍵使ってないんだよな………私は私でうちの子を鍵の形に成形して開けてるけどさぁ。鍵どうしたんだろ。もしかして無くしたのか………?
20分後、ソフィアの家から最も近い場所にあったスーパーで食材を購入した、その帰り。どうせこの後もゲームするだけだし、折角外に出たんならちょっと散歩でもしてこよう………という風に考えた私は、荷物の食材をソフィアの家に転送してうちの子にお昼の作成を任せ、散歩が終わって帰るタイミングで料理を先に作り始めるように指示しておく。帰りも転移じゃなくて歩く気分だし、多少時間はあるでしょ。別に帰って直ぐにでも食べたいって訳でも無いし。
「んー………ふわぁ………」
改めてイ型世界における日本の街中を歩いていて思うが、治安の良さがロ型世界と比べて段違いだなぁ。まぁ、そんな治安の比較的に良い国でも悪事を働いてる奴は割と居るし、何なら他国のスパイみたいな奴も居るけど、それはそれとして世間的な治安は良い感じだよね。
犯罪ねぇ………聖書とかに書かれている悪魔なら人間を陥れる為に推奨するべきなのかもだけど、私は別に聖書の悪魔じゃないしなぁ。逆に私1人で世界中の犯罪を未然に防ぐ事だって出来なくはないけど、それをする為の理由も義務も無いんだよね。誰かに乞われたのなら助けるけれど、誰にも乞われなければ助ける気は起きないからなぁ………
「んー………うわ、うるさいですわね………」
私が呑気な雰囲気で街中を歩いていたら、爆音を鳴らして走り去るバイクが真横を通って行った。ただでさえ悪魔は五感が良いので尚更煩い。かなりの音量だったので不意の攻撃と見做されて自動防御が発動してくれたが、そうでなければ耳に痛みがあったくらいには煩かった。
「………まぁ、報いって事で」
音属性によってバイクを中心とした1mより外側へ響く爆音を普通のバイク音程度に拡散し、内側で発せられた音は全てバイクに乗っている人物の耳元へと雷属性で収束させる。これで周囲の人々は騒音から解放され、爆音バイク乗りは自分のバイクが出した音でやられるだろう。くふふ、悪魔に仇なした罰だ。自分の業で打ちのめされてしまえ。あぁそうだ、突然の爆音でバイクが事故を起こしたら大変だから、元々の目的地までは安全自動運転してくれるようにしておこう。
ふははは、これでもう2度と爆音のバイクに乗ろうなどと考えないだろう。このせいで今後聴覚障害などが発生しても私は知らん。そんなモノは自業自得、むしろ悪因悪果だ。今まで爆音で他人にかけてきた迷惑を自分が受けると思えば悪くなかろう?くくく………悪魔的所業………!
「まぁ、これもバレなさそうですわよね………」
改めて。今、こうして人一人を害する魔法を仕込んだが、それに周囲の人々が反応しているようには見えない。誰も魔力を感じられないから、誰も感知出来ていないんだろう。魔力を直接注がれでもしないと、イ型世界の人々は魔力を使えないし感じ取れないのだろうな。私もそうだったし。
というか、イ型世界は根本から魔法を使う環境に向いていな過ぎる。このイ型世界の人間達の魔力はほぼゼロに近く、どうにか育てる為にちょっとした初級の魔法を使ったら数ヶ月の時間をかけて待たないと魔力は戻らないから、どう頑張っても最低限戦闘に利用できる魔法を扱う為だけで数年もの研鑽が必要になるんだもの。
まぁその分かは知らないが、消費魔力を極限まで軽減した魔力とか、ほんの少しだけ魔力を込めた武器とか、とにかく少ない魔力を補うような魔法や技術が存在しているようだ。何なら、どの国もそういう魔法技術とか魔法部隊みたいなのは最低限保有しているみたいだし。
それもこれも、度々現れる幻想種に対抗する為の部隊や技術のようだ。まぁ幻想種と言っても、私やソフィア、八尾美さんのような人間に友好的な幻想種ではなく、メリットも無く人を害を与える事しか出来ない奴らのみに限定して狩っているらしいが。まぁ、狩ると言っても幻想種は基本的に強力な力を持っている事が多いので、人間が対処出来る幻想種には限度があるみたいだけど。
そういう時は、人間に友好的な幻想種達の力を借りることもあるらしい。まぁ、基本的に幻想種は我が強いというか自己が強いので、自分の持つ法則外の事はしたがらないだろう。ぶっちゃけ、人間社会に紛れて生活しているソフィアや八尾美さんの方がおかしいまである。私?私は悪魔の幻想種だけど元々人間………最近、学校以外だとずーっと悪魔だから違和感あるけど、私はこれでも、一応は人間なので。
「幻想種でも、中途半端な権能持ちでも存在は少ないみたいですし………接触する意味はそこまで無いでしょうねぇ………」
そんな、人間に友好的だったりそうでもなかったりする国所属の幻想種達だが、彼ら彼女らは権能を持たない。具体的には、権能に程近い"法則"のようなモノは持ち合わせているが、それは超能力や異能のような意味であり、権能レベルの世界支配能力は有していない。
権能で最も重要なのは、権能行使時に己の把握した世界を支配する事で、他者に変更出来ない、自分だけの絶対法則を扱う点だ。これによって神々は世界の運行を行なっており、A型世界であるワールドシュミレーターの仕組みとほぼ何も変わらないようだ。具体的に解析した訳じゃないから観測結果しかないが、多分そんな感じだろう。多分。
そうして始めに自分の世界を支配する事で、権能はどんな状況であろうとも行使可能となる。他者の妨害は意味を成さず、まるでそれが世界にとっての当たり前かのように行使される法則こそ、権能と言うのだ。そして国所属の幻想種らは、超能力などの独自の法則を持ってはいるが、世界の支配が欠片も出来ていない為、何かしらの要因で使えなくなったりするのである。
まぁ、法則が育てばいずれは絶対の権能になるかもしれないが………だからと言って、私がのこのこと国と関係を持つ幻想種の前に現れて、絶対法則を敷く事の出来る権能を教えるとでも?当然、否だ。わざわざ教えるメリットが無い。強いて言うなら私が権能を見たいくらいだが、それだと感情論しかない。
つーか、ぶっちゃけ権能なら『SRO』で見れる仕組みにしてあるし………元々権能へと至る為の世界みたいなもんだし………わざわざリアルで直接見たい訳でも無いし………むしろゲームの世界だけで使ってくれた方が現実への影響も少ないから安全だし………
「………そろそろ帰りましょう。あ、そうですわ。上手く行くかは分かりませんけれど、
そう呟いた私は次の瞬間、既にソフィアの部屋に居た。
「………んー、上手く行きましたわね?なるほど、このくらいでこの程度………」
これは転移ではないし、時間停止でもない。じゃあ光速移動か?違う、これは速さの極地ではない。これは権能の産物だ。
ちなみに、今やったこれは割と調整が難しい技術であり、ぶっちゃけ今出せるフルスペックで使う方が良いのだが、こういう細かい調整は覚えておいて損は無いからな………まぁ、調整するのが結構難しいんだけど。
「もっと練習するべきですわよねぇ………けどゲームがやめられませんわー」
ナチュラルにゲームポジションに付いてしまった。うぅ、ゲームは時間が溶ける………でも楽しくてやめられねぇ!
3日後、私は今日も今日とてニ型世界へとやって来て、いつも通りに何事もなくだらだらと過ごしていた。ソフィアはここ最近、魔法少女との戦闘訓練が楽し過ぎて毎日毎日戦闘訓練をしているらしい………ズルいけど、私が行くと本能が刺激されちゃうからなぁ。魔物として討伐されない為には自制も必要なのです………ソフィアがめっちゃ羨ましいけど。
「お仕事と言っても………全部うちの子がやってくれますし………」
一応、本部から仕事は与えられているのだ。その大半がうちの子を派遣するだけで済んでしまうだけで。
何でも、魔物と戦う事を主目的とする魔法少女業界はバックアップ要員であっても比較的に危険な仕事になり易く、本部の事務職員ですら人数が少ないのが現状らしい。私のように人手を作り出せる魔法を持つ魔法少女達に手伝って貰うこともあるが、そういった人数を確保できる魔法少女は重宝される為、常にそうして事務作業を手伝って貰える訳でもない。そもそも魔法少女の魔法は千差万別で、事務作業を任せられる人手を作り出せる魔法少女は少ないらしい。
そこで選ばれたのは私である。うちの子達は文字を読む知性があり、私が操作しなくてもオートで動いてくれ、更にはうちの子全体が行っている知識と技術の共有により情報共有の手間が減り、その分だけ作業が高速化し易い。どんなスペックの子も無限に作り出せ、更には休憩せずに作業をし続けられる。また、非常事態で戦闘行為が必要な場合も単体で戦闘が可能で、何なら他の人間職員達の肉盾になる事もOKだし、数が居るなら相手にもよるが相手の撃退も出来る。
そんなこんなでうちの子達は本部の皆さんに気に入られ、本体の私は居なくてもうちの子達は私の権能を仲介として勝手に追加の悪魔を増やせる為、私は部屋待機というか自由行動となっていた。いやまぁね?うちの子達をこんなに便利にしたのは私だけど、まさかこんなに気に入られるとは………まぁ、ちょっと思ってたけども。
しかし、まさかこんなに上手く行くとは思わなんだ。魔法少女かも怪しい異世界からやって来たとか宣う輩に事務作業の手伝いをさせるなんて、割と高確率で通らないと思ってたのに。というか、普通に人手不足だから誰でも良かったのかな?それとも、単純な事務作業だとうちの子が一番適してるとか?それなら納得出来るけど………そもそもの話、人員の補充くらいしなさいよ。何で外部の人間に任せちゃうかなぁ。
「デーモンちゃんおはよー!」
「あら、スーパーパワー。何か御用かしら?」
だらだらゆったりしている私の部屋の扉を唐突に開いたのは、短くも美しい赤髪と黒い瞳を持っている一人の少女。彼女の魔法少女名は『スーパーパワー』と言い、最大魔力量に応じた身体強化を行う事を得意とする魔法少女である。その身体能力は悪魔状態の私以上であり、最大魔力量特化なので継戦能力も非常に高い。これでも超人部隊に所属しており、イモータルの仲間だ。
当然のようにスーパーパワーもイモータルと同じく魔法少女の衣装を作り上げる魔力は割かれておらず、動きやすいからという理由で私服は学校の体操服だ。今も着ているらしい。毎度思うが、超人部隊の魔法少女達は変身してるのかしてないのかが外見からでは非常に分かり難いのが難点だな。イモータルは常に変身が継続されているから兎も角、他4人は私服と戦闘服が同じだから尚更分からない。
「いえ、本日は御用ではなく、ご招待です」
「あら?クレアボヤンスまで」
私がスーパーパワーの飛び付きに対して正面から受け止めていると、その後ろからもう一人、超人部隊の魔法少女がやって来ていた。黒い髪を綺麗にポニーテールとして纏めている、白い瞳の少女。彼女の魔法少女名は『クレアボヤンス』と言い、扱う魔法は名前通りの千里眼。しかしその魔法には魔力操作可能な距離までしか見えないという制限があるのだが、クレアボヤンスは魔力操作能力に特化している魔法少女だ。当然のように数十万kmを目視するという、偵察のスペシャリストなのだ。
彼女は超人部隊のサブリーダーであり、リーダーであるイモータルと合わせるとかなり高精度な情報収集を可能とするらしい。私服というか好きな服装が衣装が制服などのきっちりとした服装ばかりである事もあり、彼女の今の服装は制服となっている。
制服といえばなのだが、実はこの特区内には小学校から大学までが併設されている。当然のようにどこも魔法少女専用の女子校であり、義務教育+魔法少女としての授業をしたりもするらしい。何ならイモータルが教鞭を取る時もあったらしい。あれでも最初期の魔法少女だから教えられること多そうだよね。
「本日、魔法少女デーモンには我々超人部隊と共に行動してもらう事になります。言ってしまえば任務ですね」
「内容は?」
「4日後、外国から来日する他国の魔法少女達を受け入れる事になるのですが、我々はその他国の魔法少女達が帰国するまで、秘密裏に護衛する事を求められています」
「そーなんだよー!秘密裏にってむずかしけど、いざって時は私がどうにかする予定!」
「そうですね。基本的にはこの私クレアボヤンスが監視、不審者はテレキネシスに対処、タイムキーパーはそのサポート、護衛対象へと接近され過ぎた際にはイモータルとスーパーパワーによる直接護衛へと切り替える予定です。デーモンには、確保した不審者の捕縛を頼みたいのですが、よろしいでしょうか?」
ふむ、ふむ………まぁ暇だしいっか。深く考えようとも思ったけれど、私、そこまでこの国の事情に詳しい訳じゃ無いからなぁ。考えても無駄でしょう。とりあえず、暇な私にお仕事って事でしょう?ぶっちゃけうちの子がいれば解決する程度のお仕事だけれど、多少は暇だったのも事実。大人しく受けるとしましょう。
「ふふ、喜んで受けますわ。暇でしたもの」
「良かったです。我々超人部隊は個人性能に特化した魔法少女ばかりですので、貴女のような数で押し切るタイプの魔法少女が居ると心強い」
「それで?詳細な資料などは?」
「こちらです」
「んー………」
クレアボヤンスから渡された資料によると、今回来日するのはこの世界におけるアメリカのような文化の国(国として見て類似点の多い国が自動翻訳で表記されるようにしてあるので、恐らく似ている文化)の魔法少女10名、翻訳やバックアップを行う人員20名のようだ。
来日の目的は2カ国間における技術の交換が第一目的、第二目的は日本の魔法少女VSアメリカの魔法少女同士での模擬戦闘なのだそうだ。このうちの第二目的は日本とアメリカ間で一年に一度、毎年行われている一種の行事のようなモノらしい。私がイモータルとの戦闘訓練で利用したシュミレーターの超巨大版が日本の特区には存在しており、そこを使うのだとか。
この行事は魔法少女達の戦闘訓練は勿論、世間の人々から魔法少女に対するイメージを高める効果もあるらしい。言うなれば、ニ型世界におけるオリンピックのようなものらしい。色々と違う点はあるが、大体そんなもんだ。
ただし、オリンピックと言っても競技は一つだけ。10人対10人で行われる
ちなみに、イモータル率いる超人部隊の面々は出場不可能だ。これは、仮想のHPを付与しているのが魔法少女の衣装であり、衣装を持たない彼女らでは仮想のHPは持てないから、という理由がある。だからこそ今回、超人部隊は護衛に回るらしい。しかし5人で対処するにも流石に限度があるので、統率の取れた人手を無数に作り出せる私が選ばれたんだとか。なるほどね。
護衛の期間は10日間。また、流石に超人部隊5人だけでずーっと護衛するのは不可能である為、流石に4分割されたうちの一つの時間を担当するらしい。今回、超人部隊プラスアルファの私達が護衛する時間は、夜9時から翌日の朝3時までの6時間だそうだ。ふむ、その時間帯なら普段寝てる時間だな。家族にも怪しまれないだろうし、怪しまれそうならうちの子でどうにか出来そうだな………睡眠しない事にはなるが、まぁ、元々悪魔に睡眠は不要だし。
「何となく分かりましたわ。それで?今日は二人も来てどうしたんですの?」
「護衛の詳細を聞く為の会議がこの後あるんだよ!行こ!」
「そういう事です。同行を願います」
「まぁそういう事なら行きますわよ」
という事で、私はスーパーパワーとクレアボヤンスに付いて行く事になったのであった。
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