ゲームのレベルアップって割と凄くね?世界が味方し過ぎでしょ
イモータルとの訓練をした日から4日後。私は今日も今日とて特にこれと言った用事も無く、ニ型世界へやって来ていた。一応誘ってくるイモータル対策として、ある程度ハ型世のダンジョンに潜って欲望を解消してきてはいる。あんの戦闘狂がよぉ(ブーメラン)………2度目は無いからなぁ………!
「今日は………あら」
私がニ型世界であてがわれた自室から出た瞬間、寮の中に取り付けられている放送設備から魔法少女を呼び出すアナウンスが流れてきた。
『魔物出現の予兆あり、宇宙部隊の出動を要請する』
そのアナウンスが流れてきた数分後、寮から5人の魔法少女が本部へと走って行くのが
確かイモータルによると、宇宙部隊は現存する魔法少女部隊の中で最も広範囲殲滅を得意とする魔法少女部隊で、あまりの殲滅力の高さから市街地へ出動する事は余程の事が無い限りないという、規格外の殲滅力を持っている部隊なんだそう。また、部隊員の数名が空間転移魔法を行使出来るらしいく、担当する地域が全国に散らばって存在しているんだとか。
ちなみに担当する地域というのは、それぞれの部隊に存在する魔法少女達が最も得意な戦場に合わせて設定される、言わば縄張りのようなモノらしい。殲滅力が高過ぎる宇宙部隊は海上だったり、機動力の高い幻獣部隊は都市部から離れた市街地の広範囲だったり、色々あるようだ。
「んー………折角だから、今日は喫茶店にでも行きましょう」
この特区内の喫茶店にはなんと、非常に美味しいたらこパスタが存在しているらしい。どうしてかは知らないし分からないんだけど、たらこパスタって定期的に食べたくならない?私はなる。個人的に好きなパスタはカルボナーラだから普段はカルボナーラ一択なんだけど、どうしてかたらこパスタだけ定期的に食べたくなるんだよな………
それから、美味しいハンバーガーを売っているチェーン店も件の喫茶店の近くにあるらしいので、そっちはソフィアの分と一緒にお持ち帰りしよう。アリス達の分?あぁ、あの子達の分は全部、材料持ち込みでうちの料理班の悪魔が作ってくれるから買わないよ。料理班を育てる為っていうのもあるけど、それ以上にその方が美味しいんだよ。
何せ、材料だけ見ればロ型世界の強い魔物から取れる食材の方が美味しいからな。どんだけ厳選した最高ランクの牛肉よりダンジョンに居るミノタウロスの肉食った方が美味しいってんなら、わざわざ買って帰るより、材料を持ってきてうちの子達に作ってもらう方が美味しいもんが出来るんだよな。
肝心の料理のレシピだって、深淵属性の魔法をアリスの手助けを借りながら活用して、私が食べた料理を勝手にうちの子達のレパートリーになるように細工してるんだよな。端的に言うなら、私が食べた料理は全てレシピが完璧に暴かれるんだよ。だから私、いつでもどこでも材料さえあれば好きなものをうちの子達に作ってもらえるんだよな。何なら材料だって
「あ、ここですわね」
色々と考えながら歩く癖は歩きスマホに違い危険性があるので普通にやめた方がいいんだが、これがどうにも癖になってしまっているんだよな。ただ、肝心の喫茶店には辿り着いたものの、人気なのか、時間帯が悪かったのかは知らないが、少し並んでいるので待機時間が生まれてしまう。電子書籍の続き読も。
んー………………………………
「お客様、何名様でしょうか?」
「ん、あぁ、1人ですわ」
「カウンター席でよろしいでしょうか?」
「えぇ、お願いしますわね」
「では、こちらにどうぞ」
店員さんに呼ばれたので読書は一時中断し、案内されたカウンター席へと着席する。側に置いてあるメニュー表を手に取り、何があるのかを一通り確認して、やはりたらこパスタだろうと食べ物は決定。飲み物は………まぁ、折角喫茶店に来たんだから、美味しいコーヒーにしようか。別にお腹いっぱいにする為に来た訳じゃ無いし、満腹になりたいならば次に行くハンバーガーショップでするべきでしょう。
いやまぁ、悪魔の時にお腹いっぱいになりたいなら、私の場合は戦闘して勝利するのが1番なんだけどね?でもそれはそう簡単に出来るものじゃないので………まぁ、これは言わば妥協みたいな所あるよね。
というか、悪魔になると当然のように食欲とか欠片も無いから、定期的にあれこれが食べたくなったりするのって、言ってしまえば人間の時の精神状態を引き摺ってるだけというか………どっちかといえば、人間の時の習慣を悪魔の時もしてる感じかな?多分後者の方が割合多めだと思う。まぁ兎に角、そんな感じなんだわ。
だから別に食事は必要ないと言えば必要ないんだけど………そもそも内臓だって形だけ再現しただけだから、胃に消化機能も無いんだよな。何なら今胃にある機能、レシピの自動解析機能とその解析が終了した物体の放射線属性による崩壊機能だけだぞ。エネルギーだけならもう事足りてるから、欠片もエネルギーにならないんだわ。
ちなみに、悪魔の私に消化機能が無いのは私が無くしたからだ。いやさ、レシピ解析機能と競合するからオミットしてるんだよ。素材に使用された食材が何かを解析して、私が視認した料理の完成系から逆算してどんな料理かを推測する感じだからな。胃液とかで消化されると難易度上がるんだよな………
一応、元は似たような食べたくもの魔力に変換する機能があったんだけど、それもそれで邪魔だったので………まぁその代替として、放射線属性による崩壊機能を付けてるんですけどね。これならレシピの解析が完了するまで消化というか、食材に変化を加えないからな。ついでに崩壊による消滅なら、接種によって効果のある毒とか無効化出来そうだし。後はそうだな、食べ過ぎても即座に食べられるとか?多分大食い大会とか余裕ですわ。
「あぁ、すみません。こちらのたらこパスタと、オススメコーヒーというのを一つずつ頂きたいですわ」
「はい、はい。たらこパスタと、店長のオススメコーヒーですね。かしこまりました、少々お待ちください」
この喫茶店、オーダーするボタンみたいな奴が無い所らしいので、側を歩いていた店員さんに声を掛けて注文する。よしよし、これで後は待ってりゃ良いわけだ。しかし、まーた暇になったぞぉ。こういう微妙な待ち時間に良いのはゲームか読書かで毎回悩むけれど………うーん、どうしよっかなぁ。
そうだ。どうせなら、この世界の概要を改めて確認しておこう。
では改めて確認するが、このニ型世界には、既存の人間達が作り上げた科学技術と、妖精達に齎された魔法技術の二つが存在しているようだ。ただし、一般で流通しているのは大半が科学技術であり、魔法技術の方は殆ど普及していない。かと言って魔法の普及率がゼロという訳ではなく、魔法的な効果によって怪我や病気の治療を行う技術はむしろ積極的に流通されている傾向にある。
それ以外の魔法技術は基本的に一般人に知らされず、密かに国が研究している場合が多い。うちの子調べだとそういう傾向がある。それは何故かと言えば、そりゃあ魔法技術を使った犯罪が横行するからだ。メリット以上のデメリットすら発生しかねない。何よりも恐ろしいのは、魔法を使って犯罪を起こす魔法少女が誕生し、魔法少女全体のイメージが低下してしまう事だろう。そうなったらもう負のループ真っ逆さまだ。
話を戻すが、大半が科学技術で構築されている世界の為、ロ型世界の魔法道具とかみたいなのが街中で売られている、という訳では無い。ただし、そこらの薬局に魔法産のポーションは売られてたりする。怪我や病気を治すのに有用過ぎて、ポーションを作る作業を行うだけの魔法少女も居るらしいとイモータルが言っていた。
ちなみに、その件のポーションを作るだけの魔法少女のお仕事は、ポーション作成に必要な魔力供給だけなんだそうだ。それ以外は機械化されており、マジで魔力の供給だけが仕事なんだそう。ただ、魔力供給だけとは言っても1日で数万本は作成するのでかなり大変で、何ならポーション作成専用の部隊が存在する程なんだそう。全員が全員、魔力回復手段を持つ魔法少女で構成されているらしい。
まぁそりゃそうだよな。むしろ1人で回る訳ねぇ。というか、仮に1人だったら負担がエグいよ………しかも、どんな種類のポーションがあるか特区内で売ってるのを確認したけど、ポーションって割と種類あるんだよね。全種類作るのにどんだけの魔力が必要になるかを考えたら………怖いわぁ。
一応、ポーションは魔法の効果で劣化しない仕組みらしいので、売れなければ売れない程に在庫が増えていく仕様なのは良い事かもしれないが。いつでも売れるし誰にも売れるし季節限定でもないしで、不良在庫が存在しないのは良い商品だよね。割と良い商品、特に劣化しないってのを気に入ったから、全種類30本くらいずつ買ったし。
だって欲しいじゃん。私ってほら、怪我の治療は疑似回復属性で出来るけど、病気の治療は一切出来ないし。ハ型世界に行けば怪我も病気も何なら肉体に魂の欠片が残ってるなら蘇生も出来るけど、ハ型世界行かないと使えないし。でもポーションはさ、アイテムな訳よ。どんな世界だろうが使えば効果は出るんだよ。まぁ使った後の効果がどうなるかは全く知らないが、どんな世界でも薬効は確実に出るんだよ。
だったら欲しいでしょうが。例え異世界では治療の効果を正しい形で齎さなかったとしても、解析して自力作成出来るようになったら世界毎に適応させたポーションを作れるかもしれないじゃん?だって、前々からロ型世界のポーションをうちの子達に作らせてたからさ。
というか、何かを作る系統の技術はどんな世界でも使えるだろうなって事で、割と年がら年中させ続けてるし。素材はロ型世界のうちの子達に取ってきて貰う事で植物や鉱石などの採取系の技術を鍛え、ロ型世界やハ型世界の魔物を討伐する事で戦闘技術や解体技術の向上を目指し、それらの素材を利用して色々な道具やアイテムなどを作成し、道具やアイテムを使う事でそれらに関する知識と対策などの技術も伸ばし………って感じで。
何なら、イ型世界で誰も概念的に所有していない惑星を丸ごと一つ素材にしてたりもするし。まぁ、勿論というか余計な面倒事を増やしたくないので、地球人では何億年掛けようが観測出来ないくらい遠方の惑星にしてるけど………いやぁ、流石は惑星一つ丸ごとだったよね。
地球型惑星だったから金属素材がたんまりだったし、うちの子達を数千万って数動員して消費し続けても、マジで数ヶ月掛けて使い切ったレベルだったもん。味を占めてもう一惑星丸ごと素材にしてるし、何なら今現在それ消費してる最中だし。もうね、最高だよ。宇宙には限界があるから無限ではないけれど、これから幾つも世界を巡るんだぜ?色んな世界の宇宙で惑星一つくらい素材にしても………バレへんやろ。
無限資源と言えば、ハ型世界のダンジョンが便利過ぎるんだよな………いやさ、あの世界って宇宙にもダンジョンがあったりする訳よ。そこは地球で管理されてないからさ、こっちも観測不可能地点のダンジョンで乱獲し続けてるんだけど………素材がウハウハで楽しいのよ、これが。しかも、中には植物系の素材を落とす魔物も居るからそっち系統の素材も集められるから、マジでダンジョン一つでうちの子達が育っていくんだわ。
もうね、同時に数千近いダンジョン攻略するの楽しいよね。まぁ攻略してるのはうちの子達なんだけど、もう楽しいのなんの。
「お待ちいたしました。たらこパスタ、店長のオススメコーヒーで宜しかったでしょうか?」
「はい。ありがとうございますわ」
「では、お楽しみください」
色々と振り返ってニヤニヤしていたら店員さんがたらこパスタを持ってきてくれたので、お礼を言ってたらこパスタを楽しむ事にする。
ちゅる………あ、美味しいわこれ。全体的にたらこが絡み合ってて、適度な塩っ気が良いね。これは定期的に食べたくなる味………美味しいわぁ。これが今度からうちの子が作れるってマ?流石はうちの子やでぇ………素材持ち込みさせなくてもアリス達に食べさせたげようかな………ハンバーガーは持ち込みした方が美味しいだろうからさせるけど。
んー………素材は外部から集めてくるのも良いんだけど、どうせなら植物系の素材は栽培とかしてみたいかも………ほら、その時に食材類も一緒に栽培する事にすれば、野菜とか菌類とかは取ってこなくても大丈夫だろうし。あ、それをするなら牧畜もしよう。どうせなら植物動物問わず天然モノより品質の良いのに仕上げてみるのはどうだろう。
よし、思い立ったが吉日と言うし、早速ではあるが栽培班と牧畜班をそれぞれ1万体ずつ配置しよう。野菜類はイ型世界で種を買って、薬草などは魔物由来の素材の種があるからそっちを使うとして………牧畜か。元になる動物を買うのには………いや、買わなくてもいいか。ロ型世界に居る美味しい肉になる魔物を強制的に連れて来て飼い慣らそう。そっちの方が早いし、何より元の品質が良いから美味しい肉になるだろう。
うーん、どうせなら鶏小屋………あ、確かアリスによると、鶏の卵よりもコカトリスの卵が美味しいんだっけ?後、鮮度もかなり高いらしいし。じゃあロ型世界のコカトリス小屋を作ろうかな。コカトリスって何食べるのかな………まぁ、ニワトリと同じモノを食べさせて駄目なら地道に研究するしかないか………そういう管理をする子達も配備しようかな………
あぁ、こうやって色々と考えていると時間が溶ける………程々にしておこう。
私が2店目のハンバーガーショップも堪能したので帰ろうとした時、特区内に部隊招集のアナウンスが響き渡った。特区内のどこに居ようと放送が聞こえるようにあちこちにアナウンスが設置されているらしいので、割と音量は控えめだ。少ないと音量で頑張らないといけないけど、多い分、煩く感じない………のかも、しれない。流石に幾つも配置されている要因は知らないので………いやまぁ、過去視とかで調べられなくもないけどさぁ。わざわざ調べることでも無いし………
それよりも、だ。実は、その魔物が出現した特区から非常に近い場所だったようで、特区内からも避難者が出ているらしい。魔物の中には特区に張られている結界を素通りするような奴も過去に居たらしいので、そういった懸念から避難する人も居るのだろう。
ちなみに私は避難しない。いやさ、ソフィアが結界ギリギリの場所で魔物VS魔法少女の戦いが見れるかのー?とか言っててさ。予想範囲的にそれもあるかも?って思っちゃって、ちょっと気になったんだよね………やっぱり本音としては、この世界でも特に単騎として強力な"魔法少女"がどれくらい強いのかを知りたい訳よ。
彼女達の扱う超常である、"魔法"。イモータルとの戦闘で分かったが、あれの根本は基本的に権能と同じだ。これは断言してもいい。
「んー………中々来ませんわね、魔物」
「にしても、お主の子供達は便利じゃのぉ………同時に100窓くらいしなきゃならんのが大変じゃが」
「まぁ、魔物が現れたら数は減らしますわ」
彼女達は妖精と契約を行い、契約に則って魔物を討伐する事でポイントを獲得し、自らを強化する素材を集め、どんどん力を増していく………という感じなのだ。ただ、今は組織として体制が整った事により、その強化素材みたいなモノに必要なポイントが本部から割譲して貰えている、らしい。つまりソシャゲ風に言うなら、手に入れるキャラのレベルが元から最大レベルまで解放されてる感じだ。
実は魔法少女の強化には天井が存在し、最大まで強化した後は強化素材と取引できるポイントが割と余るらしいのだ。何ならイモータルとか、余りまくるからポイントは全て本部にあげてるらしい。一言で例えるなら、ゲームで所持金カンストして無駄にしている気分なんだとか。分かるようで分からないような例え方だなぁとは思った。
ただ、この強化は強化したら即座に効果が発揮出来るようなモノではなく、あくまでも能力の限界値を最大にまで引き上げるタイプの強化方式だそう。ソシャゲで例えるなら、最大レベルの上限が引き上げられただけで、レベルアップに肝心な経験値が足りないイメージだ。そしてその経験値は当然、魔物と戦う事で蓄積される。
そして恐らく、この経験値が最大レベルにまで追いついた時、魔法少女は権能と似た出力を発揮出来るようになる。これはイモータルが証拠だ。彼女の発揮している不死性の出力なのだが………それが、あまりにも無尽蔵過ぎた。私はそれに違和感を覚え、改めて確認した所………なんと!魔法少女イモータルの強化されていた部分は、その全てが魔力回復力であったのだ。
ほんの僅かな、本来は感情の揺れとすら言えないレベルの感情の揺れであったとしても、魔法少女当人の蘇生に必要な魔力を得る為の手段。それこそが、20歳を超えても魔法少女イモータルとして成立させている要因であり、彼女の不死性の元なのだ。
そう、魔法少女はレベルアップと共に性能が向上する。本来は身体能力や魔力保有最大値、回復力、操作力などなど、色々な方向が強化されるのだが………魔法少女イモータルは、それが全て1点にのみに割り振られていた。彼女の固有魔法である"不老不死"が、自分の能力を全力で発揮する為にはこれだけを伸ばせば良い!と主張したのだろう。彼女の才能が、彼女を不老不死に仕立てあげたのだ。
「おぉ、魔法少女がおるのぉ。こっちには気が付いておらんようじゃが………」
「まぁ、気が付かないように工夫は致しましたわ。負の感情エネルギー………魔法少女達に言わせると瘴気でしたか?彼女達は、それを鋭く感じ取れるようですわ。うちの子達も
「なるほどの。魔力の隠蔽を徹底したのじゃな」
「そういう事ですわね。もしくは、気配を感知する力も魔法少女の成長項目なのかもしれませんわ」
魔法少女イモータルの凄まじい所は、死亡した事に対する感情の揺らぎだけで蘇生に必要な魔力を確保する所だ。しかも、イモータルは蘇生以外に魔力を使用しないので、魔力回復無しでも数十回は蘇生出来るらしい。しかも、戦闘中の高揚感ですら魔力回復するから………まぁ、魔力は常に満タンみたいレベルだわな。イモータルの不死性が途切れる訳がない。
まぁその副作用なのかは知らないが、魔法少女の変身を途切れさせられないようだが。マジで何でなんでしょうね?そこはマジで意味が分からん。いやまぁ、変身解けたら死ぬようになるのは理解出来るから、それを止めてマジの不老不死になる為の処置とか?だとしたらそれはもう呪いに近いんだよな………
ただ、イモータルの部隊の魔法少女達が変身しても、変身前とその服装が変わらない理由は分かっている。これは恐らく、イモータルと同じように強化されるパラメーターが特化している為に発生しているのだろう。変身後の派手な服装の防御力や服を召喚する能力すら削っているから、変身しても服装が変わらないのだ。
多分、イモータルの部隊の魔法少女達は才能に溢れ過ぎているから、その弊害が出てしまっているのだろう。何事も程々に、という事か。しかしその特化した能力は凄まじいだろう。何せ、自分の才能が成長を管理しているのだ。一点にのみ特化しているのだから、役にハマれば無敵も無敵だろうし。
あ、そうそう。一応、イモータルと同じ部隊になる超人部隊の魔法少女達とはもう既に面識あるんだよね。その時に色々と調べたからこんな感想を出せてるって訳。んで、その時にこの仮説を五人に話したら、全員があー、みたいな顔してるのが割と面白かったよね。何となく察してたっぽい。
「むぅ、魔物が現れるのが遅いのー」
「現世へと出現する為に、転移先に少しずつ魔力を放出している最中なのでしょう。一度に送ると侵食しきれないからかしら?」
「ふーむ………めちゃくちゃ展開の遅い権能のようなものかの?」
「んー、間違ってはいないでしょうね。己の魔力で世界を満たし、自分が生存できるような空間を作り上げている訳ですし」
「まぁだとしても、妾達が魔物に負ける道理は無さそうじゃな」
「それはどうかと思いますけれど………まぁ、これまで観測されてきた魔物なら勝てるでしょう。無論、魔物本来の異界であっても」
それにしても、魔物が出現するまで割と時間がかかるなぁ。ちょっと暇になってきちゃったからっておやつ片手に見るくらい暇だ。………あ、このお団子美味しい。以前から採取し続けていた植物型魔物のドロップアイテムの中に米っぽいのがあったから、ふと思い付いてうちの子にお団子にして貰ったが………やっぱりというかなんというか、魔物由来の食べ物って美味しいんだよな。
ただまぁ、魔物の素材には毒やら何やらが仕込まれている事が多く、何ならこのお団子に使われた魔物の米には食べた相手に神経麻痺を引き起こす為の身体部位だったが、それらを綺麗に取り除けば美味しいのだ。まぁ、この美味しさは状態異常などを隠す為の処置であって、別に美味しく食べられる為のものじゃあないが、加工すれば美味しいなら加工するんだな。
そして、そういう元から美味しい魔物は基本的に弱い。そんな美味しい魔物を喰らうから強い魔物も美味しくなる。これこそが美味しさのスパイラルだ。中には相手の肉体と一緒に魔力を食べるドラゴンみたいな例外も居るが、最上位種は大体そんなもんだ。わざわざ肉体を食べてとエネルギー変換時にロスが発生するのなら、始めっからエネルギーだけ喰えば早いでしょ?みたいな感じなので。
ちなみに、本能を満たせばエネルギーを確保出来る悪魔は割と最上位種寄りだ。というか、大抵の幻想種は割と最上位種寄りである。
ほら、ソフィアとか基本的に無補給だけど、全然生きてけるでしょ?吸血衝動はあるけれど、別に吸血しないと生きていけない訳じゃないんだよ。まぁ、自分の肉体とも言える血液を摂取するのが1番エネルギー効率が良いというかそのまま自分の肉体に出来るので、吸血が一番ではあるけど。ただソフィアの場合、自分の権能を使って血液を増産出来るんだよな。だから補給いらないんだよ。
私も私で永久機関回せてるから魔力だけは有り余ってるでしょ?ぶっちゃけ欲望を満たさなくても割と生きてけるんだけど………吸血鬼と違って、悪魔は欲望が一つ二つしか無いからなぁ。欲望の自制が難しいし、他の欲望で代用ってのが出来なんだわ。吸血鬼は吸血衝動を別の欲望で上塗りすりゃあいいんだけど、悪魔はそもそも欲望が一つ二つからなぁ。要らないんだけどどうにもならんね。
まぁ、私の場合は人間状態に戻ればいいんだけど、悪魔の権能を慣らす為にも出来る限り悪魔になっておいた方が良いんだよね。何せ、慣らせば慣らすほどに悪魔としての力が強くなっていくからな。これは器用の権能も同じだ。これはつまり、自らの権能を常に使用し続ける事で、常に使用し続けている状態こそを自分の当たり前だ、と刷り込む訳なんだよ。
権能は魔法と同じくイメージに影響を受ける。しかも、権能なんて強烈なイメージが必要だ。それを展開すべきタイミングでのみ開いていたら、わざわざ毎回権能を展開しなければならないだろう?しかし常に展開し続けていれば、わざわざ展開せずに使用可能な訳だ。
そうだなぁ。例えるなら………夢だろうか。夢は多かれ少なかれ、大抵の人が見るモノだろう。そしてそんな夢の主人公は、基本的には自分自身だ。夢とは記憶の整理整頓中に見る幻覚なので、そりゃあ当然ながら自分が出てくるだろう。それが当たり前なんだ。
権能を常に展開し続けるというのは………言うなれば、その夢の主人公を別人にするようなモノだ。夢の中で現れる主人公を、自分から、自分が作り上げたオリジナルキャラに変えるようなモノ。権能を常に展開するというのはつまり、何度夢を見ようとも必ずオリジナルキャラだけが出てくるよう、常日頃から自分に言い聞かせるのだ。私はそいつだと、それが当然だと思うまで続ける。マジでそうでもしないと権能の常時展開なんて無理だ。
私がわざわざこんな事をしているのは、私の権能を使いこなす為だ。
「データは読み込んだが、中々に被害が出ておるんじゃよな………のぉ、テアよ。妾達は人間を愛する幻想種じゃが、場合によっては人間を憎む幻想種も生まれるじゃろう?その時、お主はどうするかの?」
「無論、
「お主、割と苛烈じゃよな………まぁ、妾も同じ気持ちじゃから、人の事は言えぬか」
ロ型世界における神は、常に権能を展開し続けられる。そりゃそうだ。神ではない存在が技術として身に付けた権能を、神は生まれた時から使用できるのだ。権能とは生まれた時から使用できる、言わば心臓の鼓動のようなモノ。無意識だろうと意識的だろうと、権能は常に展開し続けられるだろう。
人間がその領域に辿り着くのには、人の寿命ではあまりにも時間が足りない。100年で権能を常時展開させられる技術を手にできれば良い方だろう。もしかしたら、どれだけの努力と才能を以ってしても数千年以上も必要になるかもしれない。
だから私は、権能を常時展開する為の"技術"ではなく、権能を常時展開しているのが当たり前であるように"常識"を書き換える事にした。それは正しく、生まれながらの神と同じようになる訳である。
「お、この気配。お主の転移と同じじゃ。となると?」
「あら、ビンゴ。魔物が転移してきましたわね」
手元に表示されていた無数の映像が数個に絞られ、先程と比べれば人間であろうとも処理できそうな数、大体3〜5つ程度の映像が表示され始めた。ふむ、流石はうちの子。映像のアングルが完璧過ぎるな………分かりやすく、且つ格好が良いんだから。
魔物は知的生命体の負の感情エネルギーから構築される。端的に言うなら、つまり人間の嫌いな生き物の形をした魔物が出てきやすいのである。
今回現れたのは、虫型の魔物。そんな虫の中でも、今回は蜘蛛型のようだ。虫型の中でも蜘蛛の魔物は罠を仕掛ける作詞家として中々に強いらしく、粘着質な糸や触れたら毒に侵される罠など、悪辣で大変なモノらしい。また、虫型の魔物で非常に厄介なのは、魔力を持つ生物を苗床として卵を産み落とす事である。
そして、産み落とされた卵は宿主の魔力を急激に吸収し、宿主の生命を奪いながら僅か数分で孵る事になる。それまでに卵を排除出来れば死にはしないが、一つでも残っていれば死んでしまう、らしい。また、過去に一度だけ魔法少女が苗床になってしまった事があったらしく、従来の人間以上の魔力を持つ魔法少女から孵った魔物は親以上の力を持ち、対処を行なっていた魔法少女数名を瀕死に、1人を死亡までさせたのだそう。
そんな過去があるからか、虫型の魔物が相手の場合、街中だろうと殲滅系の魔法を扱える魔法少女が増援として送られる場合もある。当然だ。ただでさえ危険な魔物が魔力を求めて増え続けたらおしまいなのだから。実際、虫型の魔物に滅ぼされた国も過去にはあった程だ。偶然にも滅んだ国が島国で、現れた魔物が空を飛べない虫であったから良かったものの、そうでなければ世界中に虫型の魔物が大軍勢として送られていたかもしれないのである。
その国は殲滅系魔法少女の魔法で国や島ごと殲滅されたが、これによって虫型の魔物の対処は各国が慎重になっている。何せ、1匹でも逃せば最低でも国が滅ぶのだ。それは既に過去が証明している。対処に遅れて魔物を放置をしてしまえば、簡単に世界は滅ぶ。このニ型世界は、そんな薄氷の上に存在しているのである。
故に、この惑星に存在する国と国とで争いなど、彼ら彼女らにはする余裕が無い。そして強力な駒になりそうな魔法少女達は、妖精達との契約により魔物討伐以外での使用は許可されていない。無論、妖精達の許可を得られれば本来の使用用途以外でも魔法少女の力を利用できなくはないが、そんな許可も滅多に降りない。国に所属せずに個人で戦い続ける魔法少女も居るが、彼女らだって魔物討伐以外に魔法を使うことは出来ないし、魔法を使っての悪さは出来ないからな。
まぁ悪さは出来ないだけで、悪くないなら割といけたりするらしいけど。どんな契約結んだのかは流石に分からん。悪魔は契約に長けているし、私だって契約属性の才能は割とあるが、だからって他人と他人が結んだ契約の内容が分かるかよ………まぁ、調べれば分からなくもないけど、そこは契約を重んじる悪魔のプライドにかけて調べませんとも。
まぁ人間の姿の時は普通に調べるんで………
「ふむ、蜘蛛型の魔物か。資料によると、確か罠特化の魔物じゃったな」
「えぇ。ですけれど、そういう傾向にある、というだけで、厳密にはどのような能力を持っているのかは軽くランダムらしいですわよ?」
「ふむ、そうなのか」
蜘蛛型の魔物が罠特化なのは変わらないが、仕込まれる罠が毒なのか麻痺なのか、仕掛け方は地面に仕込むのか壁に仕込むのか、とか、言ってしまえば同じような魔物でも使用するスタイルが違うのである。そして強力な魔物である程、そういったスタイルを複数個も持っていたりするもの、らしい。そして魔物は強力であればある程、出現前の魔力放出、この世界では魔物の出現予測範囲と呼ばれるアレ。その範囲が広ければ広い程、魔物は強力である、という研究結果があるらしい。
今回の魔物の予測範囲は中くらい、具体的には地区一つ覆うくらいの広さなので、ベテランの新人の間くらいの魔法少女が主に対処する中型魔物らしい。ちなみに、それ以下の広さなら小型魔物、それ以上なら大型魔物、といった風に区分されるんだそう。〇〇級みたいな分類の仕方もあるにはあるが、こっちは戦闘を行なった実際の強さから算出される記録用の指針であるので、今の段階ではどんな級の魔物なのかは分からない。
別に、小型魔物だからって弱い訳じゃない。中には小型の魔物なのに最上級である神話級の一つ下、伝説級の小型魔物だって存在している程だ。しかしそれはイレギュラーもイレギュラーで、しかも初めから伝説級な訳ではなかった。初めは最下級の伝聞級だったようなのである。これにより、小型魔物であっても放置すると強くなる、と世間は知った訳だ。後に行われた実際の研究でも、同じ結果が出たらしいし。
魔物の強さの指針は五つあり、伝聞級、逸話級、御伽級、伝説級、神話級となっている。基本的に小型魔物は伝聞級か逸話級、中型魔物は逸話級か御伽級、大型魔物は御伽級か伝説級の魔物である事が多い。当然、これは出現直後の能力であるし、対処せず放置されればどんな魔物でも一から二段階は強くなる傾向にある。また、大型魔物のみ、初めから神話級という事も稀にある、らしい。
「ふーむ………神話級の魔物は強いんじゃろうか………」
「まぁ、多少は強いと思いますわよ。色々と過去映像やデータを見ましたけれど、転移先の活動に必要な魔力放出だけで権能に近い世界侵食を行なってましたもの。まぁあれ、能力的にも世界の掌握しかやってませんから、
「なんじゃ、情けないのぉ」
「あら、ソフィアは初めて会った時、自己の認識しか出来てませんでしたけれど………?」
「えぇいうるさいぞ!妾は良いんじゃ妾は。それに、妾は努力と研鑽の出来る吸血鬼じゃからな!既に認識も把握も展開も掌握もぜーんぶ出来るからの!」
「まぁそうですわねー」
「なんじゃその勢いのない返事は!褒めろー!妾を褒めろー!」
「あぁはいはい偉いですわねー」
「雑に褒めるなー!!」
おぉう、あまり肩を揺らさないでほしい。悪魔の私は動体視力が高いからいいけど、それはそれとして喧しい。やめろー、やめろー吸血鬼ー。離しておくれー。
「お主は妾に対する感謝が──ぬ?」
「あら、魔法少女が到着しましたけれど………」
私とソフィアが戯れている間にも、当然ながら魔物は活動していた訳で。それに加えて、予測範囲内の全員が必ず避難できる訳でも無い訳で。
「逃げ遅れた老夫婦かしら」
「ふむ、自分の家から逃げるのが嫌だったようじゃな」
「戦う術もないのに無茶しますわねぇ」
「そんなもんなんじゃろ。家というのは思い出の宝庫じゃからな。これまでずーっと過ごしてきた小さな世界なんじゃから、壊されたくない、離れたくない、そう思う事だってあるじゃろう。まぁだからと言って、自分で対処出来ぬ危険が迫る場所に残ってるのは愚かとしか言いようがないがの」
「そうですわねぇ………あら、あらあら」
「むぅ。流血沙汰は牙が疼くからやめて欲しいんじゃが………」
「現実なんてそんなものでしょう」
そうこうしていると、その老夫婦は当然のように魔物に殺された。何の感慨も無く、何の物語性も無く、魔物の側に一般人が居たから魔法少女が攻撃出来ない、という単純な理由によって、噛み殺されてしまった。そりゃあそうだ。戦う術もないのに頑なに危険地域から離れないんだから。
少なくとも、この世界はご都合的なアニメや漫画の中の世界じゃない。人の命は軽く、救われない者も居る。ピンチは当然のように危険なモノで、失われた命が取り戻される事は無い。少なくとも、魔法少女の中に他者の蘇生が出来る魔法を持つ者は居ない。これが現実というものだ。
そして何より、私も助ける気は無い。ハ型世界に連れて行けば私が蘇生出来なくもないが、別にする理由も無い。私に対して助けを乞うた訳でもないのに誰が助けるかよ。まぁ、映像の中の老夫婦は何を言う暇もなく殺されたから、誰かに助けを乞うような時間も無かったっぽいけど。
「むー………あぁ、ダメじゃダメじゃ。牙が疼く。アニメなら良いんじゃが、マジもんの血じゃとダメじゃ」
「映像越しに吸ったり出来るんでしたわよね?」
「出来るから疼いておるんじゃよなぁ。少し見るのをやめておくわい」
こう考えると、ソフィアの権能は割と強いんだよな。映像越しでも吸血出来るんだもん。録画は流石に無理らしいけど、生放送くらいなら割といけるらしいし。しかも、例え異世界だろうと映像として見えてれば概念的に吸血出来るらしいんだよ。………ごめん、流石の私もよく分からないからこれ以上言えない。私も映像越しに悪魔創造出来るけどさぁ、それとこれとは別じゃん?というか、他人の権能ってマジで理解し難いんだよな。
自分が司ってない概念だから当然っちゃ当然なんだけど、そもそも概念ってもんが曖昧過ぎてね………司ってるって言っても、場合によっては操作出来ない時だってある訳だからなぁ。そうならない為に概念補強はしてるけど。
そうだ、それに少し関係する話があったな。
「あ、討伐終わりましたわよ」
「むぅ、死体はまだあるか?」
「まぁありますけれど、もう映像はシャットアウトしましたわよ」
「む、そうか。あ、そうじゃ。どうせなら魔法少女の観察でもせんか?」
「良いですわね、やりましょう」
実は最近色々と確認していて気が付いたのだが、今現在、私のイロ型世界におけるステータスは機能が停止している。これがどういう事かと言うと、割とそのままだ。
イロ型世界のステータスという存在を改めて調査した時、私はちょっと違和感を感じたのだ。何で魔法一つで個人の性能を把握出来るの?って。いやさ、ハ型世界っていう世界でもステータスあったじゃない?イロ型世界のステータスとは全く違う奴が。となると、全世界共通って訳でもない。かと言って、ニ型世界にステータスなんてもんがあるかと言われたらそんなもん無いんだよ。
という事は、ステータスってのはある程度の世界毎で共通な概念って訳なんだが………じゃあその"ステータス"って誰が作ったのさ?という話になるんですよ。そして私が確信を齎したのは、A型世界。即ち、私が作り上げたワールドシュミレーター内部の世界。あの世界にもイロ型世界のようなステータスがあるけれど、私が改造して表示を変更してるんだよ。
そう、これだ。私が表示を変更して変わるのはおかしいだろ。A型世界はあくまでも、イロ型世界という現実の上に、特定の法則を持たせたうちの子をルールとして貼り付けた、疑似的な世界でしかないんだよ。ステータスだってイロ型世界のモノを流用してるんだわ。それなのにどうして、そんなステータスの表示を変更出来る訳?
何なら、あの世界のうちの子達は概念的には非常に弱い。概念干渉の手段を持ってる人なら割と攻略自体はしやすいと思っている。事実、"血液"という概念へ干渉する事が可能なソフィアはあの世界で無双出来る。私が掛けているアバターへの制限など無視して、己の世界を吐き出すだけで上書き出来るのだから。
兎に角、私はそんな簡単に表示を変えられるステータスに違和感を覚えて、改めてじっくり確認したら………なんと、私が【世界創造】と【加護付与】の実績を獲得した瞬間から、私のステータスは魔力量以外一切の変化が起こっていないのである。
「魔物を討伐した後も随分と警戒しておるの」
「まぁ、今回のは虫型の魔物ですものね。特に慎重になると言うものですわ」
いやぁ、割と気が付かないもんだよね。ハ型世界でのダンジョンを攻略している最中に魔力量は確認した事あったけど、逆に言えばそれ以外を注視した覚えがないのだ。となると、最後に実績が追加されたと思われる時から既に6ヶ月以上経過している事になる。私はその間でダンジョンをある程度楽しみ、何なら今こうして魔法少女の居る世界になってやって来ている。なのに私のステータスには一切の反応が無い。それは何故か?
答えは単純。あの魔法一つで確認可能なステータスとは、何者かが作り上げたチュートリアルのようなモノなのである。実績によって獲得可能なスキルとは、言わば世界から個人に与えられ贈られるバフであり、あくまでも個人の能力にプラスされる形で存在するモノ。そして
いや、ちゃーんと調べたら出てきたんだよ。ロ型世界で文明の灯火が発生した瞬間から現在まで、過去視とかの悪魔の力を全力で使用したり、過去の文献を調べ尽くしたりして、割と徹底的に。そして分かったのは、
他の魔法であれば、時を重ねるごとに使いやすいように改善されていたり、時には効率度外視で華々しく広められたり、またはかなーり無駄な詠唱式を追加されたりなど、割と色々な変遷が見えたのだが………
強いていうなら、自己にしか使用できないモノを強制的に他人に使用出来るようにしたりとか、生物限定だった筈のステータス鑑定能力を物品にも使用出来るようにしたとかだが、これらは
そんなチュートリアル用のバフなのだが、今の私にはそんなバフが存在していない。ではイロ型世界の実績やスキルは無駄だったのか?いやぁ、それが違うのよね。なんと、元は世界から与えられ贈られたバフだったのだが、今では個人の性能基礎値としてプラスされている。
例えば〈魔力増加〉みたいなスキルを保有していた場合、今までは最大MPに対するバフだったのだが、今では直接最大MPが増えている訳だ。与えられた能力ではなく個人のモノになるので、例え別世界へ赴こうが関係無く恩恵を受けられる………という訳である。私があの段階でワールドシュミレーターを作成する事は決して間違った選択じゃなかったんすよね。そうしてなかったらハ型世界にバフ持ってけなかったから。
「魔物の死体も回収するんじゃの。あれか、研究的な感じか?」
「それに加えて、魔法的な製品の素材にもなるらしいですわね。比較的大きめな蜘蛛型の魔物でしたし、まぁまぁ素材としては優秀なのではなくて?」
「リサイクルみたいなもんかのぉ………」
この件で最も重要なのは、自身のステータスがこれ以上変化しない、という部分を自覚する事にある。
なんとそれにより、私は好きな情報を確認出来るようになるのである。例えば、今現在のイロ型世界式ステータスでは、ゲームでよくあるSTRや DEXなどは確認出来ない。A型世界のステータスだって、元の数値から何倍されているかを示す数値でしかない。
しかし、私がステータスの真実を自覚した事により、例えば………そう。まるでゲームのようなステータスパラメーターを確認出来るようになる。しかもそれは自分だけではなく、他人のモノも見れるようになるのだ。しかも、情報を知りたい相手が権能持ちでなければ問答無用で見れるレベルだ。
ちなみにだが、
ただなぁ。自分の好きなようにステータスを作れるとは言われても、ちょーっと内容についてはまだ考え中なんで………後から幾らでも改良出来るっぽいが、だからと言って考えないというのはあり得ないからな。割と真剣に考えている。お披露目はまた今度だ。
「さて、そろそろ片付けますわよ。もう後は帰ってくるだけですもの」
「うむ、そうじゃな。しかし………勿体無いのぉ。どうせなら残りのおやつも食べたいんじゃが………」
「それなら、部屋に戻っておやつの続きとしますわね」
「おぉ、やはりテアは太っ腹じゃのぉ」
「まぁ、
転移悪魔を経由して空間を直接弄ることで、私とソフィア、そして先程まで観戦用に用意していた机や椅子などを含めた諸々を自室まで転移させる。よし、これで一歩も動かずに部屋の中でもそのままおやつタイムを継続出来るな!流石はうちの子だ。一切の違和感や浮遊感なく、まるでスイッチを切り替えたみたいに光景が入れ替わったと誤認するかのような絶妙な転移だぜ。
転移ってさ、転移先の座標からちょっとでも浮くと浮遊感を感じたりする訳よ。私1人の単独転移だと割と良くなるんだけど、これが違和感でもあるんだよ。しかし、うちの子達は違う。転移対象や転移先の地点の観測、対象の姿形から何処へ転移すればピッタリなのかを計測、そして実際に寸分のズレなく完璧な転移………ふふふ、流石はうちの子。些細な技術だろうと完璧を目指している。いやまぁ完璧を目指してるのは私の指示によるものなんだけど、実際に努力してるのはうちの子だからね!沢山褒めてあげなきゃ!
「うむ、やはりこのおやつは美味いの!おかわりじゃ!」
「え?あ、全部食べたんですの?太りますわよ?」
「太る訳無かろう。こちとら血の塊じゃぞ。圧縮すれば幾らでも誤魔化せるわ」
「太る時は太るでしょうに………ほら、追加ですわよ」
「いやーテアはチョロいのぉ。あむ!うむ!やはり美味いの!」
ふふ、それもうちの子が作ってるんだ………流石はうちの子だぜ!
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