不老不死ってどうやればなれる訳?老いずはまだしも死なずってどうやりゃええねん


私とソフィアはニ型世界へやって来て2時間ちょっと。それだけだと言うのに、何故か幻獣部隊と呼ばれる魔法少女5人組と遭遇してしまい、今はそんな部隊のサブリーダーという魔法少女ケルベロスと共に、とある事をしていた。


「し〜、鍾乳洞〜」


「む、うか………う、う………ウミウシじゃ」


「し?んー………勝利、ですわ」


はい、しりとりに励んでました。


いや、言い訳を聞いてくださいよ。ほら、暇なんすよ。スマホは私もソフィアも持ってるし、私が異世界を超えてもネットが繋がるようにしてるから全然使えるけどさ、一応監視中な訳じゃん?迂闊な真似すると後で絶対面倒じゃん?いやまぁ最初っから見つかってんじゃねーって話なんすけど、直感頼りとか意味分からん方法されたら対策のしようがないんだよな。


話を戻すが、私とソフィアは暇だった訳よ。そしてそれは魔法少女ケルベロスも同じ事………ってー事で、魔法少女ケルベロスとソフィアとの3人でしりとりをしているのだ。何せ暇なので。道具無しで場所も時間も選ばす、言語を持つ知的生命体との翻訳が完璧なら誰が相手でも出来るからな、しりとりは。ニ型世界にも似たようなというかほぼ同じ遊びがあったので、しりとりって固有名詞として翻訳しているっぽい。


「り〜、理科室〜」


「つ、つ………ツナじゃ」


「な………んー………茄子、ですわ」


まぁそんな経緯で、私達はしりとりをしている訳である。 


「す〜、スイーツ〜………っと、ちょい待ち〜。みんなから連絡来ちゃった〜」


「む、では一時中断とするか」


「そうですわねぇ」


そんなこんなでしりとりをしていたら、魔法少女ケルベロスに連絡が入ったらしく、耳に装着していた通信機で誰かと連絡を取っているようだった。誰と連絡しているのかは知らん。いやまぁ、身体能力が高いので耳を澄ませば普通に聞こえるのだが、マナーとして聞こえないようにしてるんだよ。具体的には、ただ器用に連絡中の会話だけ聞き取れないようにしてるだけなんだけどね。普段から底上げされてる器用さで十分出来るレベルだから余裕あるぜ。


「………は〜い。わかったわかったよ〜」


と、私とソフィアが暇になってにらめっこをして遊んでいたら、魔法少女ケルベロスの連絡は終わったらしい。どこの福笑いかと見紛う程に顔のパーツをバラバラのぐちゃぐちゃにしていた私とソフィアは顔の配置を元に戻し、何の連絡だったのか聞くのだった。


「のぅ、今の連絡は何の連絡じゃったんじゃ?」


「うちのチームのみんなが魔物を倒したんだって〜。それでね〜、グリフィン先輩が本部に確認したんだけど〜、テアちゃんとソフィアちゃんを連れて来てだってさ〜。ど〜する〜?大人しく着いてきてくれる〜?」


「えぇ、当然行きますわよ。まだ時間ありますし」


「うむ、まだ余裕はあるからの」


「異世界転移って〜、何か制限時間とかあるの〜?」


「いえ、純粋に明日の予定が………」


「妾も会社が………」


「お〜………そうだよね〜。あんまり拘束しないであげて〜って本部に言っておくね〜」


「すまぬな………妾としても折角の旅行。異世界人を受け入れてくれるのはありがたいことじゃ」


「今のところ、そんなのしてる異世界は見た事ねーですけれどね………」


むしろあるなら全力で利用しますけど。


「今度は初めから異世界人旅行窓口みたいのがある世界とか行きたいですわね………」


「そういった世界ならば、異世界転移の技術も体系化されてるんじゃないかの?」


「確かに………!」


そういう所で異世界転移について学べば、今以上の速度と精度で新たな世界を探せるかも!そうなると尚更そういう世界に行きたくなってきたな………いやまぁ、そういう所に行けるかは運なんですけどね!


「さ〜、行くよ〜」


「「おー」」


気の抜ける返事をして、私達は本部とやらに向かう事になったのだった。









そうして魔法少女ケルベロスの案内でやって来たのは、魔法少女達が住まい、日常を過ごしている特区だ。ここは魔法少女達とそのサポートの人員のみが侵入する事を許されていて、出入口はたった1箇所のみ。そこで正式な入場許可証を貰わなければ魔法の結界の内側に入れないという、言わば陸の孤島なのである。


まぁ権能で普通に入れたので、特区内の地形データもあるし、偵察悪魔もいっぱい居るが。そりゃね、侵入不可って言われてもそこに空間は存在してるからね。特区内部が異空間とかだと入れなかったかもしれないけど、結界を通り抜けできないだけだからね。結界は魔法少女の転移も弾く事が出来るようだったけど、こっちには権能があるからね。悪魔達の能力ゴリ押しすりゃあ幾らでも侵入出来るんだよなぁ!流石はうちの子達だせぇ。


そんな特区の中に、魔法少女達が本部と呼ぶ施設がある。魔法少女達はそこで多くの訓練を積み、魔物についての知識を学び、互いに交流を行い、魔法少女としての力を高めるらしい。魔法少女達はそんな本部に居る元魔法少女の司令官達から指示を受けて活動しており、担当区域も本部が決定しているようだ。


ちなみに、この本部には魔法少女達が自分達の担当区域にのみ転移する装置が置いてあるらしく、これによって遠方の担当区域であっても急行出来るようだ。帰りも転移で帰還する事が出来るが、今回はそれは使われなかった。転移は事前に登録した者のみ使用できるシステムらしいのでね。いやまぁ、私の方で転移すりゃ早いんだけど、それすると私が結界無視できるのバレちゃうし………


「お〜、ここだね〜。この部屋の中で〜、私達魔法少女の総司令官が待ってるんだよ〜」


魔法少女ケルベロスに連れてこられたのは、どう考えても重要そうな部屋に繋がりそうな扉の前。あれだ、コントロールルーム的な部屋に繋がってそう。正面に大画面があって、こう、色んなオペレーターいっぱい居そうな感じの。


「総司令官………ほぇー………」


「興味無さそうにするでないわ」


「あぁいえ、興味はあるんですのよ?でも実感が湧かないと言うか………偉い人と話すの初めてで………」


「お主………案外可愛いところあるんじゃな」


「煽られました??」


「煽っとらん煽っとらん。さっさと入るぞ」


「あぁはい」


「頑張ってね〜」


魔法少女ケルベロスはそのまま去って行ってしまった。ので、覚悟を決めて中に入る。


「おぉ………」


「うむ………」


扉を開けた先に広がっていたのは、予想通りの管制室みたいな所だった。正面に巨大な画面があったり、オペレーターの人達が座ってそうな席が沢山あったり、1番高い所に司令官が座ってそうな席があったり………


「ほう。君らが、報告にあった異世界人かい?」


………そんな席に座っている明らかに総司令官っぽい人と、それを守るように配備された20人以上の魔法少女達だったり。まぁ魔法少女達は良いんだ。全員が権能に片足突っ込んでそうな気配がしてて、うちの子達の気配に気が付いてた側の魔法少女なのも別に良い。あちらからしてみればこちらは危険な謎の存在だからな。これくらいの対処はするだろう。


でも総司令官アンタが生身なのだめだろ。せめてさぁ、正面に大画面あるんだからさぁ………こう、遠隔から通話するとかさぁ。しかもバッチリ顔見えてるし………隠蔽事項とか無いんか??黒髪黒目な長身美人がアニメとかにありそうな綺麗な軍隊の服装してるのバッチリ見えちゃってますけど??あ、ポニテ似合ってますね。いやまぁ私が心配する事でも無いのかもしれないけどさ………


「はい。わたくしとソフィアは、この世界とは別の異世界からこの世界にやって来ましたわ」


「うむ、妾は初めての異世界転移じゃったからな。中々に楽しんでおる」


「ふむ………目的は観光だとあるが、本当か?」


「えぇ、はい。魔法少女と魔物くらいは見られたらなーとは思っておりましたわ」


「魔法少女は先程5人見たし、今も沢山見てるからの。割と満足しておる。魔物は別に見なくても構わん」


そりゃあ20人以上の魔法少女見たら満足するだろうね。


「ふむ、ふむ………君らには、我らと敵対する意思はあるか?」


「別にしませんわよ。メリットとかありませんし」


「うむ、そうじゃな」


そもそもの話、私もソフィアも10分あれば惑星一つくらいなら完全支配出来るし………わざわざやらないよ、そんな単調な作業みたいなの。私の場合はうちの子を無限に召喚し続けて魔法少女諸共人類全てを圧倒的無限の物量で支配出来るし、ソフィアもソフィアで血液持ってる生き物なら問答無用で支配できるから魔法少女も普通の人間も関係無いし。


「そうか。我々としても、その言葉を信じてやりたいが………生憎、魔法少女は国に所属していてね。君たちが本当に魔物ではないという証拠が無い限り、ここから出す事はあまり推奨出来ない」


「なるほど?」


「あれじゃ、猛獣がどれだけ大人しくても檻の外に出さんのと同じ感じじゃろ」


「なるほど」


「こちらとしても、君達に何の首輪も無いというのは国の威信に関わる、と言われているからな………君達には、この特区内で仕事を割り当てる事になっている」


「マンパワーなら任せてくださいまし」


「妾、異世界でも仕事するのか………まぁ良い。アルバイトと考えれば中々に楽しそうじゃし、人手問題はテア1人で良いしな」


マンパワーなら誰にも負けません。


「そうか………ありがたいな。こちらとしても穏便に済むなら良い事だ。あまり多くの仕事は出させない事は約束しよう。………イモータル、彼女らを寮へ」


「はい。お二人、こちらへ」


総司令官的な人との会話は終わったらしく、イモータルと呼ばれた魔法少女に連れられ、私たちはその場を後にするのだった。




















side ???


「………ふむ。皆、彼女らを見てどう思うかね?」


「フェニックスの報告通り、魔物と似た気配はしますね。瘴気にしては薄いですが………」


「しかし、確かに妖精の気配もいたします。あの安らかな気配、間違いありません」


「2人とも魔力の隠蔽が完璧過ぎて怪しいかも。あんなの、自分達には魔力が沢山あるから隠してますよって叫んでるようなもの」


「異世界でしたっけー?その技術欲しいですよねー。世界を越える技術とかー、魔物対策とかで便利そーですよねー」


「明らか気配に余裕があった。あれは強者故の余裕だろう。我々の姿を見てもその態度を崩さないという事は、我々とは力の差がある証左ではないか?」


「ケルベロスとの会話内容を聞く限り、本当に異世界へ旅行しに来ているように見えますね。帰った際の仕事を気にしていたりしているようでしたし」


「んー………なんかー、神様みたーい………」


「………そうか。皆、意見感謝しよう。彼女らの監視は被害を最小限にする為、イモータル率いる超人部隊に任せる。イモータルなら側に置いても安心だからな………では、解散」




















side キングプロテア


魔法少女イモータルに案内された先は、なんと魔法少女達が過ごしている寮なのだとか。2人一組の相部屋タイプらしく、私とソフィアはそこに入れられるようだ。中は最低限の家具しかないが、まぁ別に一回元の世界に帰ればいいので気にもならない。一応、ソフィアも単独で転移出来るようにしてるし、自由にこの世界へと転移する事が可能だろう。


「ありがとうございますわ、イモータルさん」


「いえ、仕事ですので」


「妾はお主が不老不死と聞いて勝手に仲間意識を持っておるぞ!仲良くしようではないか!」


「私も、私以外の不老不死は初めてですから、かなり楽しいですよ」


魔法少女イモータル。彼女は超人部隊という所のリーダーであり、その部隊は魔法少女の中でも割と特殊な変身をするタイプの魔法少女が所属する部隊なんだそう。その特殊な変身というのは、魔法少女を象徴する煌びやかで可愛らしい衣装が無い、という所である。何でも、変身した際の服装がそのままその時その時の衣装として扱われるんだそう。変身中に着ていた破損しても変身を解除すれば服の破損が元に戻っている事から、変身しても衣装が欠片も無いという訳では無いらしいが。


そして、そんな特殊な変身をする魔法少女達を纏めるのが彼女、魔法少女イモータルである。彼女は不老不死の魔法少女であり、扱える魔法は文字通りの不老不死。怪我を負っても消滅しても何をされても死なず、初めて魔法少女になった12歳の時から身長も外見も医学的な検査でも一切の変化が無く、更には魔法少女で唯一、20歳を越えても魔力生成量が12歳当時のままという、かなりイレギュラーな魔法少女らしい。何なら変身解除出来ないらしいし。しかも自分が不老不死になる以外の魔法を使えないので、変身時に召喚される武器のみで魔物とは対峙しているんだそう。1人だけ縛りゲーでもやってんのかなって。


ちなみに、魔法少女イモータルさんは今年で51歳。なんと、魔法少女という存在が現れ始め、魔物が出現し始めた"黎明期"とかいう時期からずーっと活動していたそうだ。まぁ武器の特性上、黎明期辺りでの活躍はパッとしていないので、世間ではそこまで名前が知られていないそうだが。後単純に、戦法の基本がゾンビ戦法なのでテレビとかで放映出来ないというのもあるだろう。死ぬまでは普通に痛いらしいので死亡回数は減らしたいらしいが、怪我をしながら戦える程才能もないので死に戻りした方が早いんですよね、とは本人の談。覚悟ガン決まりすぎて逆に怖いんだよな。


まぁそんな感じで不老不死なので、同じく不老不死のソフィアに目をつけられた感じだ。私はまだ不老だけしかないので、不老不死2人の話はちょっとついて行けねぇ。何だよ1番楽だと思った死に方ランキングって。イモータルさんも割と楽しそうに発表し始めてたし。あれか、初めて同じ体質の人が居てはしゃいでたのか。外見的には身長123cmの白髪赤目美幼女だから私の性癖にも刺さってるから嫌いになれないし………うーん、私達に付ける人員としては100点かもしれない。もしかして魔法とかで私達の性癖でも読まれたのかな。こわー。不死だから殺して口止めとかも出来ないようだし、私達への監視役として適役過ぎる。まぁ監視されても気にしないけどさぁ。


「あ、そうです。ちょっと自室戻ってゲーム取ってきますね。どうせなら3人でゲームしましょゲーム。ついでに配信もします」


「50歳とは思えないラインナップ出てきましたわね………」


「新しいモノが大好きなので、これくらいは。最近はVというのにも手を出したいと思ってますが、少し作るのに時間がかかっていまして」


「めっちゃクリエイターですわね」


「妾のも欲しいのじゃ!」


「流石にイモータルさんの手を煩わせる訳にはいきませんし、わたくしが今度作ってやりますわ。任せておきなさいな」


「おー!流石はテア!頼もしいの!」


まぁ作るのは私じゃなくてうちの子だけど。


「では、ゲームと配信機材を取ってきます。あ、聞いておきますが、配信での顔出しはOKでしょうか?ダメなら声だけでも」


「全然OKですわ。気にしません」


「妾もオールOKじゃ、ドンと来ると良いぞ」


「では、行ってきますね」


てくてくと、光景だけ見ていると幼女が歩いているようにしか見えないイモータルさんの背中を見送ってから、私とソフィアは部屋に備え付けられている冷蔵庫の中に食べ物や飲み物を追加したり、各々の望むような小物類を整えたりなとして、暇を潰した。


そうして待機していると、10分程度でイモータルさんが戻って来た。流石に大荷物だったからか、台車を押して向かって来ている。私とソフィアはそれを見て、特に何の声掛けもせずに荷物を持った。いやね、流石の私も外見ロリの女の子に重そうな大荷物押させないから。というか、デスクトップパソコン3台持って来てるのやべーんだわ。家庭用ゲーム機かと思ったらゴリゴリのゲームやる気じゃんこの人。


「あぁ、ありがとうございます。不老不死なのは良いんですが、筋肉を鍛えても一切肉体に反映されなくて困っているんですよね………お陰でこうして荷物を運ぶのも大変で………」


「あれでしたら、わたくし達がイモータルさんの部屋に行きましたわよ?」


「そうじゃな。わざわざ持ってくるよりそちらの方が早いじゃろうに」


「あぁ、私の部屋は今、荷物が沢山あって狭いんですよ。この前にお試しで欲しいものリストを公開したら、その次の日から山ほどダンボールが届いてしまって………寮にいる魔法少女のみんなに配っても溢れるくらいだったので、最近は特区内の職員さん達に配ってます」


「やばそうですわね………」


「やばそうじゃな………」


「まぁ、配信としては良いネタでしたね。私は1人部屋だったので、スペースだけは余ってましたから、そこまで気にもなりません」


それでいいのかそれで。


「では、機材のセッティングが完了したら配信を開始しましょうか。ちなみに、お二人が得意なゲームなどはありますか?」


「FPSとか格ゲーとかのプレイヤー対戦系のゲームは多分全部出来ますわ」


「出来るというか、チートを疑われるレベルで上手いぞ。妾達は人間ではないからの。人間向けのゲームとなると身体能力の差が如実に現れてしまうのじゃ」


「ふむ………まぁ折角ですし、最近やろうと思っていたFPSゲームでもやりましょうか。どうせ私達は同じパーティーになりすし、味方が強い分には好都合です。ほら、私初見プレイですし、このゲームのアベレージは知りませんから」


マジで躊躇いもなく初見のゲーム持ってくるじゃんこの人。無敵か??まぁ楽しそうだから良いんだけど。テキパキと機材を準備するイモータルさんの分のおやつや飲み物を用意して待機していれば、配信の準備は万端。正面に配置されたカメラの映像がパソコンの画面に映っており、なんか既に配信が始まっているらしいが、音声は入っていないし、配信画面の方は他の画像があるので見えていないようだ。


「では、まずは私がいつもの自己紹介をしますから、その後にお二人も自己紹介をお願いします。あ、一応、私は魔法少女イモータルとして配信活動をしていますので、どうせなら本名ではなく魔法少女的な偽名だと助かります」


「偽名………まぁ魔法少女デーモンとかで」


「妾は魔法少女ヴァンパイアとかで良いじゃろ」


「はい、ありがとうございます。では始めますねー」


躊躇なく音を乗せて配信画面を乗せるイモータルさん。この人行動が色々と強いんですけど………


「皆様、こんにちは。魔法少女イモータルの配信へようこそ、です。本日はゲストが2人も居ますよ。では、自己紹介をお願いします」


「魔法少女デーモンですわー」


「魔法少女ヴァンパイアじゃー」


「はい、ありがとうございます。本日はデーモンさんとヴァンパイアさんと一緒に、最近流行りのFPSをやっていこうと思います」


配信画面であるイモータルさんがゲームを起動する。私とソフィアは特に何も考えずに普通にゲーム開始してしまっていたわ。まぁ指示なかったから別に問題でもないんですけど。


『ゲストさんは新しい魔法少女の人なの?』


「お二人は新しい魔法少女さんですよ。今日就任です」


「あの、そういうのって言ってもよろしいんですの?」


「まぁ、事前に機密事項と言われてなければ大丈夫ですよ。例えば、魔物対策本部の総司令官さんの趣味はぬいぐるみ集めですとか、別に機密事項でも何でもありませんし。後でお小言はあるかもしれませんが、私はこれでも最古参の魔法少女ですので。あの子の弱みくらいなら幾らでもありますよ」


「えぇ………」


何この人マジで強いんだけど。無敵じゃん。


「ふむ、あの総司令官殿はぬいぐるみ好きじゃったのか………デーモン、今度プレゼントしに行くぞ」


「ヴァンパイアもヴァンパイアで強いですわね………身長2mくらいのやつ送りましょう」


抱き心地完璧なぬいぐるみさんをお届けしてやるぜ!


「あ、やっと始まりました。オープニング長いですね」


「イモータルよ、スキップできるぞ」


「最初くらいは見ておきたいなと思ったんですけどね。今度から全部スキップします。じゃあ、早速ですがパーティーを組んで試合に行きましょう」


このFPSはよくあるバトルロワイヤルタイプのFPSなのだが、なんと試合中に色々なロボットに乗り込めるのである。いつでも乗れるという訳ではなくて、他ゲーで言うところのウルトとかスペシャルとかみたいな必殺技的な扱いらしく、序盤の方は乗れないようだ。


しかし、時間経過でゲージが溜まる仕様である為、ロボットが破壊されても時間が経てば再度乗り込めるようになっているらしい。ただ、終盤になってロボットを破壊されると再召喚出来なくなるようで、生身の状態でロボットと戦う事になったりしそうだ。


使用できるキャラクターは多いが、身長以外に特質すべき相違点は無く、ロボットだってキャラクター毎に存在している設定ではあるものの、選択できるロボットとキャラクターは別に紐付けされていないらしい。まぁつまり、好きなキャラクターと好きなロボットでバトロワ出来る訳だ。モードも色々あるが、今回は4人パーティーの試合に3人で突撃するらしい。判断が強い。


「お二人共、FPSが非常に上手いとの事ですので、今回は人数不利な状態で試合を開始しますね」


「まぁわたくしはそれでも良いですけれど、イモータルさんはそれで良いんですの………?」


「だって、そっちの方が楽しそうでしょう?」


この人さっきから判断も行動も強いんだけどぉ………!メンタルが無敵過ぎるよぉ。


そして。その後、私達は何度かゲームをプレイして、エイムの良さで上位に食い込んだもののロボットに乗り込んだ敵プレイヤーに爆殺されたりもしつつ、操作感や銃の良し悪し、具体的な概要が理解出来たり掴めて来たあたりで、私とソフィアはガチでやり始めることにした。


「イモータルさん、これから本気でやりますわね」


「大体の仕様は把握出来たし、入力に対してどの程度のラグが発生するのかも理解出来たからの。マップも大体頭に入っておる。ここから妾達に負けは無しじゃ。よーく見ておれよー?」


「む、お二人揃って豪語しますね。ですが、私も頑張りますよ。頑張って貢献してみせますとも」


とは言ったものの、綿密な予測に予想を重ねたソフィアの殲滅力と、私の器用さによるゴリ押し操作による突破力はどう考えても洒落になるようなものではなく、生半可な相手では即死も即死。本来なら不利な人間VSロボの構図であっても遮蔽物と操作能力でゴリ押しで買ったし、今日初めて出会ったチーターはソフィアの指示に従っていたらなんか上手い具合に爆殺出来ていた。まぁぶっちゃけ、イモータルさんが必要かと言われたらちょっと悩んじゃうかもってレベルだった。


しかしイモータルさんはそんな事を気にせず、


「お二人はとても強いんですね。今度、これとは別のFPSの大会とかに一緒に出ませんか?優勝して焼肉食べましょ、焼肉」


とか普通に言ってきた。メンタルが無敵過ぎる。


「魔法少女ってお給料少なかったりするんですの?」


「いえ、基本的にとても高いですよ。5人一組の安全マージンは可能な限り取られていますけど、だからって命の危険がゼロになる訳じゃありませんからね。私は昔から居るので諸々込みでかなり高くなっていますが、昨年の年収は大体100億くらいでしたし」


「公共事業用の予算みたいな額しとるが………??」


「まぁ、新人さんだともっと低いですよ。年収5億くらいです」


「たっか」


「高いのじゃ」


何だ年収5億って。大手事務所のタレントさんとかでもないとそんな年収行かないぞ普通。


「魔法少女はみんな、命を懸けて戦っている訳ですからね。安かったなら誰も国に所属なんてしませんよ。それに、昔よりはマシなんですよ?昔はそもそも給料とか無かったですからね」


イモータルさんによると、そもそもの話、魔物が出現し始めた当時の魔法少女達は国に所属している者達ではなく、ただ妖精に選ばれて契約しただけの一般人に過ぎなかったのだ。魔物を倒せば強くなるだけで、そこにお金は一銭も発生しなかったそう。担当の区域などはなく、魔物が現れたら魔法少女が自力で駆け付ける方法しかなかったが故に、救われなかった人々も大勢居た。


そこで、政府は魔法少女達を統括し、魔物という脅威から人々を守る為の部署を作り上げ、そうしてやっと"魔法少女"という職業になったのだとか。当時から居る人の言葉だと思うと、なんというか重みが違うな………


「まぁ、昔の本部も本部で割と酷かったですけどね」


偶然選ばれた女の子に過ぎなかったのに、魔法少女であるとバレれば、当時10代前半の女の子に対して軍隊のような毎日の訓練漬けは当たり前。学校は必然化のように中退させられ、友人との関係は断絶。当時は魔物一体の討伐でお金が貰えるという歩合性に近い制度だった為に、今で言うアタッカータイプの魔法少女ばかりにお金が集中。だから無闇矢鱈に突撃して死んでしまう魔法少女も多かったそうだ。なんか、それはもう酷い環境だったらしい。


「しかしある時、私達魔法少女の一部が反乱を起こしたんです。もう体罰は嫌だ、死にたくない、怖い、学校に行きたい、友達に会いたい………彼女達は、そんな気持ちだったんでしょう。だって、彼女達はまだ小学生や中学生ですからね?中には幼稚園生だって居ましたし、そりゃ嫌ですよ。私だって嫌でしたし」


そうして、魔法少女達は自分達の環境を世間に知らしめ、それによって政府は社会的に追い詰められ、環境の改善を余儀無くされたのだそう。


「まぁ、それからですね、魔物を倒せなくても年収が億とかになったのは。まぁ、今でも魔物を倒せばボーナスが入るので、アタッカーの人の方が給料が良いのは変わっていませんけどね。それでも、ディフェンダーやヒーラー、サポーターの子達にも命を懸けている分のお給料が払われるようになりましたから」


なんか話が壮大過ぎて着いていけねぇ。


「ほへー………大変だったんですのねぇ………実感湧きませんわ………」


「まぁ、私のお給料はそれとは別の所で増えてるんですけどね」


「うむ?そうなのか?」


「はい。ほら、私って不老不死でしょう?死んでも蘇るので、偵察にはもってこいなんですよね。ですから、まだお給料が支払われて間もない頃、危ない魔物の情報を集める為に何回も死にながら偵察してた頃があるんですよね。その頃の功績を盾にして年収増やしてもらいました。その時の決め台詞はこうです。『あなた方のような後ろで待機してるだけの人間に、私の感じた死の痛みの1兆分の1でも分かりますか?』って言い放ちましたよ。その後に具体的な死の痛みを情感たっぷりに話して脅してたら増えましたね」


この人本当に強いんですけど!自分の死の痛みで相手を脅すとか最強か??無敵じゃなくて最強か?!?!


「なんかもう凄いしか言葉が出てきませんわね………」


「覚悟ガンギマリじゃの………」


この日は結局、イモータルさんとの配信を楽しむだけ楽しんでゲームして、それから何事もなく普通に元の世界へと帰ったのだった。

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