終わったーって安堵したらドッと疲れる時あるよね


極級職になってから3日後の10月15日。私は今日まで、これまで潜っていた『草原と死体の闇ダンジョン』や『荒野と死体の風ダンジョン』とは違った、新しいダンジョンに潜っていた。その名も『雪原と死体の闇ダンジョン』である。環境は名前通りの雪原で、荒野や草原のように遮蔽物が存在しない地形である。ただし、地面が雪で構成されている為に足場が悪く、何より雪原なので普通に氷点下とかいく。


そんな環境で再生能力の高いアンデットを相手にするというのは中々に苦痛のようで、ここも当然のように人気が無い。まぁね、気温が氷点下の環境で有効な魔術が無ければ長期戦が基本なアンデット、しかも闇属性だからデバフ攻撃してくるやつを相手にするのって………これがMMO系ゲームのステージなら運営への遺憾の意を示すお便りが沢山届きそうな所である。そんな環境と合わさって出現する魔物が闇属性のアンデットという強力な個体というのもあり、このダンジョンは当然ながらA………ではなく、更に一つ上となるSランクダンジョンに認定されている。


つまりこのダンジョンは、人間ならば最低でも極級職でなければ最下層までの攻略は不可能、というレベルなのである。まぁ、私は能力パラメーターの初期値が人間の600倍以上あるのでその基準より少なくても平気だし、そもそも過剰威力な魔法もあるし、何なら権能もあるのでそこまで危険でもない。それに、イロ型世界の悪魔は精神生命体であり、肉体は世界に干渉し易くする為の器のようなものなので、精神攻撃や精神干渉系の状態異常などを受けない限り死ぬ事もない。その精神干渉系の攻撃だって、私が認識していなければ自動的に防御される。それ以外にも権能による無数の防御が張り巡らされているのが、この私だ。


しかし、イレギュラーというモノは何時でも何処でも発生するものなので、油断しないに越した事はない。慢心、ダメ、絶対。


「寒いですわねぇ………」


確かに寒いが、まぁそこまででもない、というのが本音である。これも『魔炎粘液体質』による寒さへの耐性の賜物だ。まぁそもそも悪魔は肉体依存じゃないからどんだけ寒くても死にはしないし、例え寒さで悴んだ所で私の器用さだと手先への影響とか皆無だし、まぁつまり、どれだけ寒くても私はいつも通りだ。


「んー………目標の階層まで遠いですし、転移で向かいましょうか」


Sランクダンジョンだからと言って、別に最上階から最下層までエルダーアンデットドラゴン塗れ、みたいな事にはなっていない。精々が浅い階層にアンデットドラゴンが居るくらいだが、それでも大分大変なことだ。まぁ私は魔法で転移してスキップするんですけど。誰が目的以外のやつと戦うかよ。


私がシュパッと転移した先にあったのは、凶悪な顔をしている腐り落ちた竜の群れ………というか、これはもう軍隊とか軍団みたいなもんでは?視界に映っただけでも数万以上居るぞこれ。私の居る所が雪の積もった小山みたいな所じゃ無かったら物量で押しつぶされてるレベルでマジで多い。こうして離れた場所を事前に指定していなかったら危なかった。


まぁ。


光線フォトンレーザー


最大出力の光線フォトンレーザーで一掃しますけど。


「………やっぱり、戦ってる感じがしませんわね………」


まるで星を貫く一撃かと見紛う程の一撃は、あらゆる存在を完全に焼き切りながら光の速度で飛んでいく。その余熱によって周囲に存在していた雪は完全に蒸発し、一撃によって生まれた線のような跡は目に見えない場所にまで伸びていき、最終的には屋外ダンジョン特有の見えない壁にぶつかって消滅した、ようだ。というか、別に扇状に撃った訳でもないのに中央ぶった切って数万もいたエルダーアンデットドラゴンを半分くらい消し飛ばしてるのがね………どう考えても前より威力出てるんだよな。


あれか、プラクティススペースで練習してたからか?いやだってさぁ、普段は地形とかに気を付けて撃てないのにあそこなら全力でぶっ放せるからさぁ………あ、原因マジでこれか。私が何度も光線フォトンレーザーを全力でぶっ放してるから、私の中ではそれが当たり前だっぴ!みたいになってしまったせいで通常攻撃が必殺技(文字通りの意味)になってしまってる訳ね………それ、尚更街中で使えなくなるでは………?いや別に元から使えねぇわ。じゃあいいか。


「レベルは………あら、凄い」


この三日間、良さそうなダンジョンを探し当てるまで暇だったので隙間時間にアンデットドラゴンをかなりの量殲滅していたが、それでも現在のレベルは201。200の大台を越えた瞬間、マジで次のレベルに必要な経験値が馬鹿みたいに増えたからだ。確かに100の大台を突破した時もドカンと必要経験値が増えていたが、今回はそれ以上だ。まぁ、個人的に言わせて貰うなら戦闘回数が増えるのは実に楽しいので、別に必要経験値が増えても良い。


そして、そんな200になってからほぼ上がらなかったレベルが、なんと。


「201から213………あれだけで一気に12も上がったんですのね。これだから面白くない………」


前々からイロ型世界の魔法をぶっ放しても経験値が入るのは確認していたから、別にそこは心配していなかった。しかし、ここまで一気に上がるとは………まぁ、多分目視できるだけで数千匹くらい一気に塵にしてるしな。この上昇率も妥当………か?個人的には魔法1発だけでコレというのは中々につまらない結果ではあるが、まぁつまり。


「数千殺せば10くらい上がる計算で良さそうですわね………!」


普段通りに緑玉剣の悪魔を右手に生み出し、私は煮え立ちながらも冷たい矛盾した思考の海に自分自身を突き落とすのだった。









数時間後、私は順調に目標レベルの260に到達した。何かしらのイベントも無く、素直に敵を切り殺し続けたのみ。それだけで良かった。そして私は、とある事実を理解した。


多分、素のステータスだとしてもエルダーアンデットドラゴンは余裕だ。


「はぁ………たっのしかったですわぁ………!」


私の権能は二つある。一つは、あらゆる悪魔を創造、知覚、命令する『悪魔』の権能。そしてもう一つに、自他を問わずあらゆる器用さを操作する『器用』の権能だ。


悪魔の権能は、細かな雑事から大部隊の殲滅まで、果ては砂粒の創造から世界一つの創造まで、ありとあらゆる万能性を秘めている権能である。完全なる全能までは難しいだろうが、完璧なる万能へは容易に至れるだろう。実際、真の全能へ至る道半ばかも怪しい私であったとて、今現在既に凡そ万能であると謳っても可笑しくない程である。


器用の権能は、自他を問わずに対象の器用さを操作する権能だ。出来る事柄は単純明快、ゲームで言う所のDEXを無限に無制限に上げ下げ出来るだけではあるが、無限に上げるだけで他者の技術模倣など容易いし、無限に下げるだけで生物ならば容易く死に至る。何なら概念的な器用さだって操作可能だ。また、能力の単純さ故か、例え能力を展開していなくとも微弱な器用さ補正が私に入るのも特徴だろうか。微弱なとか言いつつハ型世界式ステータスだと200億とか出てるって?いや、無限大に比べれば些細も些細でしょ。


話を戻すが、私が素のステータスでもエルダーアンデットドラゴンが余裕だと言わしめる理由は、この『器用』の権能にある。何をしていなくとも器用さが200億、常人の20億倍という数値なのだ。そして、これだけの器用さがあれば絶大な器用さのゴリ押しにより、ドラゴン及びエルダードラゴンが標準装備している魔力障壁をたった一撃でぶち抜けるのだ。魔力障壁に存在している数ナノ以下レベルの、本来ならば綻びとすら言えない程の小さな小さなヒビを"器用"に見つけ出し、そこへ適切な角度と威力を込めて"器用"に緑玉剣の悪魔を振り下ろす事で、本来必要な筋力未満の一撃だけで魔力障壁を破壊できるのだ。


「ゲームみたいで楽しかったですわねぇ………」


なんかね、数ナノ以下の綻びを見つけるのは間違い探しみたいだったし、それに向かって緑玉剣の悪魔を正確に振り下ろすのは音ゲーというかタイミングゲーみたいで楽しかったんだよね。間違い探しってファミレスとかにあるとやりたくならない?私はなる。ああいうのを食事待ちの時間で駄弁りながらやるのが楽しんだよね………まぁ私はインドアの引きこもり気質だからあんまりファミレス行かないけど。そもそも必要以上に外出しないし。行くとしてもソフィアの家とか宿屋のお仕事とか、後はブレイブさんとのデートくらいか?あぁ、後はアリスとかね。


それにしても………改めて思うが、やはり権能は権能だな。普段はただ器用さを出鱈目なくらい底上げする権能として扱っているが、改めてしっかり使おうとすると理不尽の権化みたいな事が出来るのだから。何ならこの権能だけで惑星一つくらいなら簡単に制圧できるしね。というか権能なんて大体そんなもんでしょ。多分。


「ステータスオープン」



───────────────────

【個体情報】

階位 : 260

名前 : キングプロテア・スカーレット

種族 : 悪魔

年齢 : 17

職業 : 死竜殺し


【パラメーター】

生命 : 138,746

魔力 : 110,248

体力 : 99,746

筋力 : 63,606

耐久 : 94,546

敏捷 : 90,610

器用 : 20,000,000,000

精神 : 114,390

抵抗 : 94,546

幸運 : 102,866


【ポイント】

技術 : 0


【保有スキル】

職業:僧侶

職業:司祭

職業:教会騎士

職業:女教皇

職業:聖騎士

職業:巫女

職業:聖女

職業:死竜殺し

───────────────────



あーらま、もうステータスの数値がすっごいんだから。10万越えてるのが器用除いて四つもあるし、そうで無くても6万越えが最低値なんて凄いねぇ。ステータスによる補正の無い素の私の10倍以上の性能を発揮出来る訳でしょう?いやぁ、凄いねぇ。まぁ、スキルもしっかりコンプリートして魔力に応じた能力補正も入ってるから、表示されてるステータスより実際のステータスは高いんだろうけど。


「んー………さぁて。次はどうしましょう………?」


極級職というこの世界における至上を体験し、八つの職業を極め、最高級のダンジョンにも挑み………もう、この世界の観光を終えても良いくらいだ。特にこの世界に知り合いとかも居ないから、本当に後腐れなく帰れるし。


「まぁ………地上の観光をして………術理系で覚えられることを覚えてから………帰りましょうか」


どうせこのステータスは他世界に持ってけないからな。折角だから色々と観光して、そんで術理系のスキルで覚えられることを覚え切ってから帰るべ。まだまだ研鑽しようと思えば出来なくは無いだろうが………別に良いかなぁ。


それに何より、私がこの世界で得られたモノはステータスばかりじゃない。ハ型世界における数多の知識と発想、ハ型世界式ステータスという法則、ダンジョンという不可思議な現象。それら全てが私の糧となるのだ。何よりも大事なのは、異なる世界を認識したことによって得られた"悪魔"と"器用"の概念の欠片。それにより、私が司る権能の概念的最大体力が増える。この補強があるのと無いのでは天と地程の差があろう。その副作用として悪魔全ての制作コストが低下して、展開せずに強化される器用さが更に増える。ただ別世界に赴くだけでそれが成せるのならば、私は幾らでも世界を越えてみせようとも。


………まぁ。異世界観光したいってのが本音で、そういうのはなんか行ったらこれ貰ったわみたいなノリなんすけどね。どれもこれも別に確実に貰えるわけじゃないし。というか、"悪魔"と"器用さ"って概念の無い世界だって当然のようにあるだろうし。そういう世界だと、まぁ貰えないよね。当たり前だ。あくまでも、その世界に存在している概念を私が認識する事で概念的に補強してるだけだし。


「んー………戦闘欲の解消には向いてそうですわよね、ダンジョン………」


プラクティススペースはどれだけ壊しても大丈夫なのだが、私が作った以外の生命体が存在しない無制限に広がる空間なので、どうしても戦闘欲の解消は難しい。大規模破壊を齎す魔法の練習とか、うちの子達に色んな技術の鍛錬をさせるのには向いてるんだがなぁ。制限なく広がる空間だし。ここで戦闘も出来なくはないが、その為には戦闘相手を作るか連れてくるしかないので手間なんだよな。うちの子とか悪魔相手なら創造も召喚も出来るけれど、そうなると私の権能による悪魔への絶対命令権があるんだわ。そんな戦闘にもならないの邪魔でしょ?


けれど、ハ型世界のダンジョンは違う。無制限に広がる空間という訳にはいかないが、屋外系の環境であるならば空中へ飛び立つ事も可能だし、横にだってかなりの広さを誇る。そして何より素晴らしいのは、何もしていなくても勝手に戦闘相手が生み出される所だ。Sランクダンジョンに深く潜れば潜るほど、私の悪魔としての身体能力を遥かに超越するような個体すら出てくるのだから堪らない。しかも数は大量だなんて………実に素晴らしいじゃないか。中にはランダムな魔物が出現するダンジョンもあるらしいが、基本的に上から下まで環境も出てくる魔物も属性も同じなので、今日はこれを食べたいなーって気分の時に的確な相手を選べる選択制なのも良いポイントだろう。ランダムなのはランダムなのでフルコースみたいで需要あるけど。


「ふー………さっさと術理を覚えて帰りましょう」


多分、器用さゴリ押ししたら1分も要らないだろうけど。そう愚痴りながら、私はイ型世界へ転移したのだった。全職業解放?いやー、それは今後ちょっとずつやる感じでダメっすかね………?











1週間後の夕方頃。私は久しぶり………でもない。いつものように、ソフィアの家へと訪れていた。今のソフィアは私の作ったゲームである『Second Reality Online』をメインにやりつつ、それ以外のゲームも普通に遊んだりしているらしい。今やってるのはヤギゲーだ。ガソリンスタンドを爆発させたりジェットパックで無限飛行したりして遊んでいるらしい。


「なるほどのー。最近のお主が何してるのか分からんかったが、異世界とはのぉ。あ、妾も行けるか?」


「行けますけれど、わたくしのゲーム世界のダンジョンの方が出でくる魔物は強いかもしれませんわね………あぁでも、リアルステータスがありましたわ」


「おー。どんなやつじゃ?」


「10の能力パラメーターと名前と性別と種族と保有スキルがあるようなやつで………」


隣でやっているヤギゲーを見ながらくつろいでいる私は、ハ型世界の話をソフィアに話していた。現代ファンタジー的な世界であった事、ダンジョンがあった事、ステータスがあった事など、色々と話していた。


「ほーほー。極級職なんてものもあるんじゃのー」


「まぁMMOとかなら運営にお便りが届きそうなタイプのオンリーワンでしたけれど、中々に色々とあってネットで載せられていた極級職の内容を見るだけでも割と楽しかったですわよ」


「ちなみにお主の極級職はなんじゃった?悪魔女王とかか?」


「死竜殺しですわね。レベル上げの為に人気の無いアンデット系ダンジョンに潜って、ずー…………………………っと、アンデットなドラゴンを殺してましたから」


「あ、そういう感じになるんじゃな………あれか、お主の欲を解放したのか………どんな気分じゃった?最高にハイってやつか?」


「めっっっっっっっっっっっっっっっちゃ気持ちよかったですわ。麻薬みたいなカスとは比べものにならないと思いますわよ。中毒性もありませんし」


「そりゃあ良かったの。随分と晴れやかな顔をしておるし、よっぽど溜まってたんじゃろうな………ずーっと欲求不満だったんじゃろ」


「あら、そうなんですの?」


「妾から見るとそうとしか見えん。いいのーいいのー。妾も吸血衝動をどうにかしたいのー」


「そうですわねぇ………悪魔の血なら幾らでも出せるんですけれど………」


「要らん要らん。飲むとしても人間のじゃ。しかし人間を傷付けるのはのぉ………難しい問題じゃ。あーあー、何処かに妾の事を養ってくれる人間とかおらんかのー。良心に漬け込んでカプッと一噛みしたいんじゃがのー………漫画だと割とありがちなんじゃが………可哀想で可愛い美少女おらんかのぉ………」


「人間の血ならわたくしが集めてきても良いですわよ?」


「んー………惜しい話じゃが、やめておくかの。初吸血は生まれたばかりの自我が曖昧じゃった頃じゃが、せめて初噛みは愛する者にしたいからの………それまで禁欲じゃ。やるとしてもゲームの中で吸うわい」


「あぁ、それが良いですわね。ゲーム世界でなら何をしても平気ですし」


私がロ型世界で調べた所によると、悪魔のように欲望が単一、もしくは本能的に衝動を持つ生物は、基本的にその欲望及び衝動の範疇で矜持を持つ者も少なく無いそうだ。私であれば、弱者を甚振る蹂躙も強者を倒す挑戦もどちらもまぁまぁで、1番好きな戦闘は同じくらいの力量の持ち主とバトル………みたいな。勝利欲求の方は勝てればなんでもいいやって感じなんだけど。多分それと同じように、ソフィアにもソフィアなりの矜持があるんだろう。どんなのかは良く知らないし知る必要も無いが。


「あら、凄いことに」


「うーむ。他ゲームならバグを疑うんじゃが、これはそういうの疑うゲームじゃないからのー。あ、治った」


大爆発と共にヤギが物凄い形になりながらぶっ飛んでいく光景は、確かにバグを疑うレベルだ。まぁこれバカゲーだからこれはバグでもなんでもないんだけど。何なら車に轢かれるだけでこうなる時あるし。


「なぁテアよ。次異世界に行く時は妾も連れてってくれんか?」


「えー………まぁ良いですけれど、どんな世界かまだ分かりませんわよ?もしかしたら吸血鬼狩りいっぱいの世界かもしれまんし」


そもそもの話、新たな異世界はまだ見つかっていない。異世界を探す手段がゲームのデバッグみたいなもんだからかは知らないが、兎に角時間がかかるのだ。デバッグ対象が無限に広がる空間なのは控えめに言って地獄だけど。異世界調査用に調整した偵察悪魔はローコストもローコストな仕様なので無量大数とかいうレベルも居るのにね………暇な時とか余裕がある時にはずーっと全自動で創造してるのに、それでも足りないんだわ。無限に対抗する為に無制限の子供達を次々に投下してるんだけどなぁ。


「そん時は流石に辞退するわい。妾もそこまで馬鹿ではないぞ」


「そもそも、新しい異世界とかそう簡単に見つかりませんけれどねー。マンパワーのゴリ押しだから仕方ないかもしれませんけれど………うーん、異世界転移とかそういう専門家とか、どっかに居ませんかしら………?」


「まぁ少なくとも、この世界にはおらんだろうなぁ」


「次は異世界転移の専門家がいる異世界が良いですわね………」


そんなものが本当に居るのかは知らんが、異世界なんぞ無数にある。その内の何処かにはきっと、異世界転移が技術として構築されている世界だってあるだろう。広い世界、イロハ世界の隅から隅まで探しても、それっぽいのほ居なかった。というか、人間みたいに生命体を構築して発展してる文明が本当に少ないんだよな。イ型世界にも地球以外の高度文明は幾つかあるけれど、宇宙航行にまで手を出せている文明は数個しかなかったし。その内の二つの文明は地球にも手を出していたけれど、私の知り合いが巻き込まれる訳でもないなら当然無視だ。


しかしなぁ。イ型世界のような高度科学文明だとしても宇宙航行やワープ航行とかが限界で、異世界とか並行世界とかに手を出している所は皆無だし、ロ型世界みたいなファンタジー的な世界だと高度魔法文明でなんかもう凄い魔法の国過ぎて科学文明みたいになってはいるけれど、こちらも宇宙航行くらいが限度なんだよなぁ。


禁忌みたいなのもあったりしたからうちの子が片っ端からぜーんぶ調べてくれたけれど、禁忌指定されてるものは、使用後に甚大な影響があるだとか、精神干渉の更にヤバいやつとか、魂魄や存在にまで干渉してくるやつだとかで、異世界転移みたいなのは妄想でしかないらしい。ハ型世界のようの科学魔法文明でも似たようなもので、やはり宇宙航行やワープ、魔法的な禁忌などはあれど、異世界転移などに手を出している訳じゃないらしいし。


うーん………悩ましい所だ。実は宇宙の外側、外宇宙的な場所も実はあるのだが、そこまで行くとクトゥルフ系統のSAN値ピンチ!みたいな話になってくるんだよな。安易に触れると発狂しちゃう。というか、多分何処の世界だろうと外宇宙全ては同じ場所にあるっぽいんだよな。イ型世界だろうとロ型世界だろうと外宇宙は同じものみたい。しかも確認する限り、外宇宙にはやべー奴らしかいないんだよね。クトゥルフ系統の奴らそのまんまが居るのかどうかは調べられてないから分からないが、似た雰囲気の奴らなら居るっぽいし。


というか、ナチュラルに権能以上の出力で領域の掌握するのやめてくれませんかねぇ。狂気無効化とか精神干渉無効化とかしてるうちの子が発狂するレベルなのは何?怖いんですけど。いやまぁこっちも出力上げればいいんですけど、普段使いしてる出力以上を出さないといけないから集中力が削られるんですよね………私はボールペンのノックを3時間ぶっ通しで続けられる程の集中力がありますが、権能を使いながら集中するの、割と疲れるんですけど。そのせいで毎日2時間くらいしか探索出来ないし………1日2時間じゃあ、無限に広がる外宇宙を概要を調べるのに一体どれくらい時間が必要なのか分かったもんじゃない。


まぁやるけどさ。割と良い権能の練習にもなるし、通常出力の強化にも繋がるし。実際、初期の頃の探索時間は1時間半くらい(外宇宙は時間の流れがはちゃめちゃで時間同期をしても内部時間だと物凄い差異がある為、イ型世界で私が権能を外宇宙にまで使用している経過時間)だったが、数ヶ月でちょっとずつ伸びて今は2時間だし。あそこ、時間の流れが訳分からん過ぎて探索難易度がルナティックなんだよな………しかもそれだけじゃなくて、空間も存在も現象も物質も、果ては概念も何もかもがはちゃめちゃだからさぁ。異世界よりも常識が通用しないのやめてほしいかも。


「専門家………異世界転移の専門家なんて言いませんから、せめて時空間系の専門家が居てほしいですわ………次元の狭間が複雑怪奇過ぎて分からんですわ………」


「そういうのはお主に任せる。妾はよく知らんからの」


「任せてくださいましー」


まぁ、異世界を探すのはうちの子ですけどね!

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