不法侵入ぅ?周りは兎も角、迷宮内部の土地は国のものでもないだろ?


ハ型世界へ初めて私自身が向かった日からは2日経過した10月1日。イ型世界とハ型世界は非常に似た暦なので、ハ型世界でも10月1日である。


さて今日だが、私は2日前と同じようにハ型世界にやって来ていた。2日前に探索者ギルドのフリースペースで思い付いた"良い事"を実行する為、昨日1日で素早く色々な準備をしたりちょっとした検証をしたり………そして今日、遂にというまででも無いが準備が完了して後は待つだけなので、こうしてハ型世界にやって来ている訳である。


「んー………」


その"良い事"とはズバリ、『もう勝手に侵入しちゃおう』というものである。


具体的に説明しよう。まず初めに、第十三アップデートである偵察悪魔達に地星重力圏内に存在していて探索者ギルドが管理しているダンジョン内部へと密かに侵入してもらいます。そして偵察悪魔を起点にして転移門で侵入します。それだけです。わざわざ探索者ギルドが管理しているダンジョンに入る理由としては、管理されているダンジョン=管理出来るレベルのダンジョンという事で、宇宙に揺蕩う内容もわからんダンジョンに入るより比較的安全だろう、という思惑によるものである。


そもそもの話、人間達が探索者ギルドに所属していないとダンジョンに入れないのは、ダンジョンというものが一律で危険だからだ。数十年前に行われた世界戦争以前までは管理する機関が存在せず、一般市民が簡単に金を稼ぐ方法としてダンジョン攻略があった程だ。しかしその際の死傷者は非常に多く、不景気になるとその数が数倍になる程に死者が多かったらしい。


何より。ダンジョンの魔物を適度に間引いていないと"溢れる"のだ。普段は決してダンジョンの外に出たがらない魔物が積極的に外へと向かい、『大放出』と呼ばれる現象が起こるのである。種別種類関係なく、一つのダンジョンの魔物が一度に放出される、太古から幾度となく発生してきたハ型世界における自然現象なのだ。ちなみに、この大放出が発生するのはダンジョン周辺に生命体が大勢存在する時に限る為、宇宙に揺蕩うダンジョン群は一度も大放出が発生していないやつもあったりするらしい。


話を戻すが、莫大な死者、及び大放出による被害を少しでも抑える為に各国が作り上げた組織こそが『探索者ギルド』である。本拠地はなんと亜空間に存在しており、各国に存在する支部から転移で向かう事が出来るという。そんなギルドを組織してからはダンジョン関連の死者が激減。これまでは命懸けの金稼ぎだったダンジョン探索が、探索者という有資格者だけが出来る仕事にまでなったのだ。


さて。ここまで来て分かると思うが、私に探索者ギルドに加入する意味は無い。探索者ギルドの許可が無ければ入れないというのはあくまでも探索者ギルド側の都合であり、人知れない場所に出来上がったダンジョンに勝手に侵入して一般市民が死のうが関係無いのだ。


まぁそのせいである程度マスコミに非難されたりもするが、ちょっと昔に本当に神出鬼没な自然現象をどう対処すりゃいいのか、という本音をマスコミに投げかけた1人の探索者ギルド職員のお陰なのかせいなのか、探索者ギルドが管理していないダンジョンでの死者はそこまで見向きもされなくなっている。その代わり、管理しているダンジョンでの死者はめっちゃ報道されるが。


「………よし、人の来ない場所は確保出来ましたわね」


これから私が侵入するのは、探索者ギルドのA〜F段階評価では初心者級のFランクに分類されるダンジョン、その名前を『草原と粘液の火ダンジョン』と言う。環境は視界の開けた草原で、出現する魔物はスライム種ばかり、属性は火属性というダンジョンである。


スライム種は体積=戦闘能力という種族であり、小さい個体であればある程に弱い。体積=最大魔力量でもある為、大きな個体なら魔法を使ってくる事もある。が、小さな個体は魔法に回せるほどの魔力量が無く、何より弱点属性が非常に分かりやすい為、事前対策さえ整っていれば初心者でも討伐可能であるとされている程だ。このダンジョンのスライムは火属性ばかりであり、最弱個体なら素人が水鉄砲で水をかけるだけで討伐出来るレベルであるし、攻撃されてもちょっと熱いレベルのボールがぶつかってくるみたいなレベルなのだ。


更に、このダンジョンは階層が上であればある程にスライムの最大体積が小さく、階層を潜れば潜る程に最大体積が大きくなっていくのが特徴のダンジョンだ。しかし、どの階層であっても空が見えていて閉塞感が無く、何なら環境的に非常に横に広く、更には足元は雑草が根を張るしっかりとした芝の地面。上下へ向かう階段には分かりやすい目印があるので視界が開けたこのダンジョンなら遠くからでも見える為、初心者がそう簡単に迷うような事は無く、閉塞感が薄く太陽が見えるので不安感を感じ辛く、芝の地面なので足元がしっかりしていながら転んでもあまり痛くないと、環境すら初心者向けのダンジョンなのだ。


対策さえ完璧なら初心者でも討伐できるスライムと、木々の一本すら存在していない視界の開けた草原という環境、そして何より水をかければ討伐出来るという事から、このダンジョンは探索者ギルドの評価でも最下級であるFランクダンジョンに認定されているのである。


「転移、っと」


そして、私はそんなダンジョンの最下層を転移先に指定した。このダンジョンの最下層にもなると家屋レベルの大きさのスライム種が現れ、中級者であるCランク探索者でも苦戦するような個体が無数に草原を蔓延っているのである。更には、草原の雑草は水を含んでいるので燃えにくく、最上階付近であればそもそも火を使わないので燃焼の危険を考えなくても良いのだが、最下層のスライム種にもなると居るだけで周囲を乾燥させ、草木を燃やし、何なら火属性の魔法もポンポン使ってくるのである。


そんな階層だから旨みも少なく、大放出対策として定期的に探索者ギルドから掃討依頼が出るものの、普段は探索者が1人も居ないなんてザラにあるのだ。故に、私はこの階層を選んだ訳である。しかしそれ程危険なスライムなのだ。それの対処はどうするのか?………それは単純。私のユニークスキルで解決すればいい。


ユニークスキル『魔炎粘液体質』。その効果は火属性、自然治癒力、魔力量、器用さの強化と、打撃、寒さ、暑さ、行動束縛系状態異常への耐性の獲得。そして何より、火属性スライム種に敵対されず、仲間として見做される効果も付随しているのがこのユニークスキルである。


「おぉ………大きいですわねぇ………」


いやぁ、使うでしょこんなん。こんなに私に似合ってるダンジョンあるなら行くでしょ?しかも安全なら尚更。仲間扱いされるから攻撃されないし、何なら握手とか出来るぜ?今でっかいスライムさんとすれ違ってるけど、手を振ったら触手みたいに体を伸ばして振り返してくれてるのが可愛いね。


中々火属性のスライム種なんて見ないし見れるような場所に行かないから恩恵をほぼ感じられないユニークスキルだったけど、こうして火属性のスライム種がいっぱい居る場所に立ってると物凄い恩恵あるね、こりゃ。ユニークスキルって言う異世界の理を持ってきてたから若干心配だったんだけど、ユニークスキルは私自身の力として認識されてるから大丈夫っぽいし。いやまぁ、悪魔炉心が使えてたから大丈夫だとは思ってたけど。


あぁいや、そんなんしてる場合じゃないか。


「あぁそう、えぇと、確か………ステータスオープン?」


ここにやって来た理由を思い出した私は、早速とばかりに自分のステータスを確認する事にした。



───────────────────

【個体情報】

階位 : 0

名前 : キングプロテア・スカーレット

種族 : 悪魔

年齢 : 17

職業 : 無職


【パラメーター】

生命 : 6,666

魔力 : 6,205

体力 : 6,666

筋力 : 6,666

耐久 : 6,666

敏捷 : 7,410

器用 : 19,000,000,000

精神 : 10,650

抵抗 : 6,666

幸運 : 6,666


【ポイント】

技術 : 0


【保有スキル】


───────────────────



おぉう、器用のパラメーターが狂ってやがるぜ。確か………えーと、一般的な成人男性のパラメーターがオール10だったらしいから、私の筋力と耐久と抵抗のパラメーターは凡そ666倍くらいで、素早さは741倍、精神は1065倍、そんで器用さに至っては………何倍だ?19億倍くらいか?というか、6って数字多いなぁ………私が悪魔だからか??そんな雑な数字合わせある???いやまぁ、気にする事じゃないけどさぁ。むしろ何で敏捷と精神は6666とかじゃねーの?魔力は私の世界のステータスで見れる魔力量参照してるのかなって分かるけどさぁ。


それと一個思ったけど、もしかしてこの器用のパラメーターがこんなにもピッタリなのって、もしかしなくても『器用』の権能が原因だよね。上限無く上げられるけどこの辺でいいやろーってキリの良さそうな所で上昇させてなかったけど、それが原因でこんな数字になったのかなぁ。本当に桁違いな数字過ぎてヤバいわ。


「えぇと………ジョブチェンジ、でしたわね」



───────────────────

【職業変更】

現在の職業 : 無職

『能力補正値』

生命 : 1

魔力 : 1

体力 : 1

筋力 : 1

耐久 : 1

敏捷 : 1

器用 : 1

精神 : 1

抵抗 : 1

幸運 : 1

『ポイント上昇率』

技術 : 1


『変更可能な職業一覧』

戦士    : 肉体戦闘に秀でた初級職

魔術師   : 魔法戦闘に秀でた初級職

盗賊    : 探索に秀でた初級職

僧侶    : 援護に秀でた初級職

───────────────────



私の宣言と共に眼前に浮かんでいるステータス表記が切り替わり、職業変更画面になった。この画面では変更可能な職業一覧にある初級職へと転職する事が可能となるらしい。気になった私が変更可能な職業一覧にある『戦士』という職業を押してみると、新たに画面が現れた。



───────────────────

【職業変更】

変更先の職業 : 戦士

『能力補正値』

生命 : 3

魔力 : 1

体力 : 2

筋力 : 3

耐久 : 3

敏捷 : 3

器用 : 2

精神 : 1

抵抗 : 1

幸運 : 1

『ポイント上昇率』

技術 : 2

───────────────────



なるほど?戦士の職業は説明通り、筋力、耐久、敏捷、生命といった肉体的なステータスが伸び易い職業な訳か。そうなると他の職業も気になるのが人の本能。好奇心には勝てはしないと言う事で、私は一気に全て選択してみるのだった。



───────────────────

【職業変更】

変更先の職業 : 魔術師

『能力補正値』

生命 : 1

魔力 : 3

体力 : 2

筋力 : 1

耐久 : 1

敏捷 : 1

器用 : 2

精神 : 3

抵抗 : 3

幸運 : 3

『ポイント上昇率』

技術 : 2

───────────────────


───────────────────

【職業変更】

変更先の職業 : 盗賊

『能力補正値』

生命 : 2

魔力 : 2

体力 : 3

筋力 : 1

耐久 : 1

敏捷 : 3

器用 : 3

精神 : 1

抵抗 : 1

幸運 : 3

『ポイント上昇率』

技術 : 2

───────────────────


───────────────────

【職業変更】

変更先の職業 : 僧侶

『能力補正値』

生命 : 3

魔力 : 2

体力 : 3

筋力 : 1

耐久 : 3

敏捷 : 1

器用 : 2

精神 : 1

抵抗 : 3

幸運 : 1

『ポイント上昇率』

技術 : 2

───────────────────



ふむ、こうして複数の職業を確認して分かったが、初級職と呼ばれるこれらの職業はレベルアップ毎に3ポイント上昇するパラメーターが四つ、2ポイント上昇するパラメーターが三つ、1ポイント上昇するパラメーターが四つで統一されているらしいな。初級職からシステム面での優遇みたいなのは無いらしい。既にステータスが常人の50倍以上の私からしてみると、ステータスで職業を選ぶよりも選択した職業の獲得可能スキルで選ぶべきだろう。


スキルは、『技術』のポイントを消費する事で、今現在の職業に合わせたスキルを獲得出来る、らしい。例えば『魔術師』であるなら色々な攻撃魔法スキルを覚えられるが、補助や回復といった魔法スキルは覚えられないんだとか。逆に『僧侶』は攻撃魔法スキルを覚えられないものの、補助や回復といった魔法スキルは覚えられるらしい。


一応、職業を変更してもスキルは引き継がれる為、『戦士』である程度ステータスを上げてから『魔術師』としても成長して、最終的には剣と魔法を使う『魔法剣士』みたいな事も出来るらしいし、そうやって複数の職業に慣れないと現れない職業も存在するらしいが、私は特に惹かれないのでスルーだ。いやまぁね?色々出来るのは凄いけど、私の場合は元から色々と出来るし………


「戦士と魔術師は………別にならなくてもいいですわね。探索も………第十三アップデートで出来ますし………ここは、僧侶ですわね」


という事で、私は『僧侶』の職業になる事にした。私は回復属性や補助属性の魔法に適性が無く、擬似回復属性とかいうので色々と捏ねくり回してマイマスターの怪我を治したりしていたが、あれはあくまでも擬似的なモノだ。本職の回復魔法が使えるのなら使わない手は無いだろう。いやまぁ、この世界でしか使えない可能性もあるから、それは事前の調査が必要だけども。


「後は………レベルアップですわね」


そう言って、私はふと周囲を呑気に蔓延るスライム種を見てみる………まぁ、流石に火属性のスライム種は倒せないよね。ユニークスキルの効果で仲間だと思われてるからなのか、私の方もちょっと仲間意識芽生えてるし………うん、違うダンジョン行こう。


という事で、ダンジョンを移動する事にしたのでした。








はい。前回と同じように侵入します今回のダンジョンの名称は『草原と死体の闇ダンジョン』でございます。


環境は火属性スライムの居たダンジョンと変わらない草原だったが、出現する魔物は死体、即ちゾンビやスケルトンといったアンデット系統の魔物が出現するダンジョンなのである。アンデットと相性の良い闇属性のダンジョンという事もあり、アンデットは本来の性能以上の力を発揮してくるらしい。


しかも人型のアンデットに限らず、獣型のアンデットや様々な魔物のアンデットも、最下層付近にはアンデットドラゴンのような強力な個体も居るらしいのがこのダンジョンだ。ちなみに、探索者ギルドの認定ではこのダンジョンはBランクである。最高級であるAランクではないのは、弱点となる光属性のスキルなどを使用すれば難易度が格段に下がるからだ。


そんなダンジョンなのだが、非常に人気が無い。その理由は単純明快。


「うぅ、匂いが………」


ダンジョン内のあちこちに溢れる腐敗臭だ。この匂いがダンジョン内に蔓延している為、このダンジョンは人気が無いのである。後は、アンデットのドロップアイテムが腐敗肉の付いた骨だったり腐敗した内側だったりするのも人気を失わせている要因だろう。いやまぁ、そんな素材でも売れはするのだ、売れは。


腐敗肉や死体の骨は、『死霊術師』という魔術師と僧侶の複合職業の進化系の分岐先の職業の進化系で大量に使用する素材であるので、Bランクという難易度のダンジョン産の素材にしては安いがまぁまぁに売れるのだ。


「うぅ、祝福ブレッシング………はぁ、これで平気ですわね………」


まぁそれはそれとして匂いが酷いので、咄嗟に私は祝福ブレッシングを使用した。この魔法は、物質、生物問わず、使用した対象に神聖属性のエンチャントを施す事のできる魔法である。全属性に共通する属性付与エンチャントの魔法の神聖属性verといった所だろう。この魔法を付与されている対象は常に浄化プリフィケーションの魔法に覆われている状態となり、これによって死臭という汚れを祓う事が出来るのだ。


ちなみに浄化プリフィケーションだが、こちらは魔法の光を付与し、その光に覆われたモノに触れた対象を浄化する魔法である。水に使えば水質を改善して綺麗にできるし、床の掃除にも使えるし、剣など武器類に対して付与してその武器でアンデットに攻撃すればかなりのダメージを与えられる魔法なのである。ただし、祝福ブレッシングと違って効果時間が短く、精々が10秒程度となっている。その代わりなのか、浄化効果は祝福ブレッシングの数倍だ。瞬間的な効果を求めるなら浄化プリフィケーション、持続的な効果を求めるなら祝福ブレッシング、みたいな使い分けが必要だろう。


そしてこの祝福ブレッシングの持続効果の中には、なんと、嫌な匂いを遮断する効果が存在しているのである。元はアンデット対策として使われる魔法であるので、アンデット由来の死臭への対策も含まれているのだろう。なんなら浄化プリフィケーションの方でもアンデットの死臭をさせなく出来るし、やはり先人もアンデットの腐敗臭には苦戦したと言う事なのだろう。その対策方が存在しているのは素晴らしい事だ。


「人は………まぁ居ませんわね。それじゃ、レベルアップ開始ですわ!祝福ブレッシング!」


流石に死体に素手で殴りかかるのは嫌なので用意した即席の悪魔製のメイスを創造しながら両手に取り、二本のメイスのどちらにも祝福ブレッシングを付与してから、私は戦闘を開始した。


私がわざわざアンデット塗れのダンジョンを選んだのは、私自身がアンデットへ効果のある魔法を覚えているから効率が良さそうだな、と思ったからである。何なら、光属性の攻撃魔法をぶっ放せばアンデットドラゴンだろうが何だろうが吹き飛ばせるからな!光属性はアンデットに特攻よ。まぁそれはハ型世界の光属性だけの話で、私の光属性魔法にアンデット特攻とか無いけど。


無いけど、肉体全部焼失させれば勝ちは勝ちじゃんね。ダンジョン内は異空間だからどんだけ派手に吹き飛ばしても外に影響無いし、ここなら存分にして暴れられる。くっくっく、私の最高火力の一角である光線フォトンレーザーを受けるが良いわ!ま、地形破壊効果も物凄いから使わないようにするけどね!


幾らダンジョン内はどれだけ破壊しても再生するから問題無くても、ダンジョンの侵入者がゼロになるまで再生しない仕組みだから、私の探索中は地形ボコボコのまんまな訳よ。そんな地面嫌だわ。歩き辛いったらありゃしない。いやまぁ、歩行補助且つ転倒防止の第八アップデートがあるから転けたりしないけどさぁ。だとしてもボコボコの地面歩きたくないよ。


大火力で全部吹き飛ばすなんていつでも出来るし、何より。


「あはははっ!あはははははははははっ!!」


私も久々だから、楽しみたいし。



……


………


………そうして本能のままに戦い続ける事、凡そ3時間。無限に湧き出る魔物相手に全力で無双し、強さを求めてどんどん下の階層に向かい続け、何なら最下層のアンデットドラゴン数十匹を相手にしてもまだまだ余裕があったのだが、そろそろ帰る時間になってしまったので今日の狩りは終了という事になった。本音を言うならまだ戦い続けたい。


もうね、ヤバい。戦ってるんだって高揚感と、勝ってるんだっていう興奮感がね、もう、エゲツないの。これ多分、イ型世界にある麻薬なんかよりもっと凄いんじゃないかな。いやまぁ麻薬使った事ないから具体的な事は言えないけど………兎に角楽しかった………あぁ。普段は結構理性で抑え込んでる分、一気に発散したからかな?空腹は最高のスパイスって言うらしいし………確かに、めっちゃお腹いっぱいだし。マジで欲望を叶え続けるの最高でしょ………


そりゃあ悪魔が悪い奴らって言われる訳だよ。だってこんなに楽しいんだよ?自力じゃそう簡単に止められないって。欲望を貪る為なら何でもするって悪魔の気持ち、めっちゃ分かるわぁ………はぁ、楽しかった………余韻だけで1週間は楽しくやれそうだよ………


っと、そうだ。折角だからステータスを確認してから帰る事にしよう。


「ステータスオープン」



───────────────────

【個体情報】

階位 : 41

名前 : キングプロテア・スカーレット

種族 : 悪魔

年齢 : 17

職業 : 僧侶


【パラメーター】

生命 : 6,789

魔力 : 6,287

体力 : 6,789

筋力 : 6,707

耐久 : 6,789

敏捷 : 7,451

器用 : 19,000,000,000

精神 : 10,691

抵抗 : 6,789

幸運 : 6,707


【ポイント】

技術 : 82


【保有スキル】


───────────────────



おぉ、レベル41か。我ながら随分戦ってたな………確か、探索者ギルドの階級で当て嵌めると、最下級のFランクが0〜20、Eランクが21〜40、Dランクが41〜60、Cランクが61〜80、Bランクが81〜100、Aランクが100〜みたいな基準だったよな。となると、私は探索者で言う所のDランクな訳か。まぁパラメーター狂ってるから絶対Dじゃ無さそうだけど。


というか、器用のパラメーターが一切変動してなくね??あれ、どんな職業でもステータスはレベルアップ毎に1ポイントは上昇する筈なんだけどなぁ………まぁ、もしかしなくてもというか、どう考えても『器用』の権能が原因だよな。あれか、私の器用さはこの値って自分で決めたから一切動いてないのか?まぁ確かに勝手に上がらないようにしてたけど………でもそれは、私の権能が暴走して無駄に器用にならないようにするセーフティだったんだけど………


………まぁいっか。特に気にもならないし。時間も押してるしさっさと帰りましょ。

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