蕎麦かうどんか選べって言われたら割と迷わない?
ソフィアが『Second Reality Online』を遊び始めて1週間。ソフィアは今日も今日とてゲームの世界へダイブしているらしい。ちなみに"ダイブ"とは、別に私が考えた訳でも無いのに世間で確立した言葉である。ゲーム開始の瞬間の意識がまるで潜るようだからこんな名称が付けられたらしい。私の知らない所で私のゲームが流行ってるの、なんか怖いなぁ………いや、良いんだけどね。多分あれだ、正体不明の製作者ってなってるから怖いのかもしれん。バレたらどうしよう………でもねぇな。いざとなったら記憶消せるし………うーん、単にバレて無駄な労力を味わいたくないだけかも?
まぁそれはいい、重要な事じゃない。とにかくこれを見てくれ。
名前:性別:男(女モードでは女と表記される)
魔力量:5780
ユニークスキル:性転換(神の加護により隠蔽中)、無窮の瞳、悪魔炉心、魔炎粘液体質
実績:
【器用貧乏】
【悪魔の婚約者】
【一点集中】
【読書家】
【口撃者】
【聖女】☆
【看板娘】
【影悪魔の母】
【新技術開発者】
【謎の解決者】☆
【妖精の友人】
【擬似再現者】
【救人者】
【変転悪魔】
【幽閉王女攫いの悪鬼】☆
【夢心の偶像】☆
【恐乱の象徴】☆
【泉の祝福】
【固有属性:牛乳】
【放射線属性の発見者】
【悪魔炉心の使い手】
【主従自在】
【異世界転移】
【世界創造】
【加護付与】
【謎の製作者】☆
【神】☆
【見習い魔術師】
【魔術師】
【上位魔術師】
【契約魔術師】
【上位契約魔術師】
【高位契約魔術師】
【雷魔術師】
【上位雷魔術師】
【高位雷魔術師】
【光魔術師】
【上位光魔術師】
【高位光魔術師】
【毒魔術師】
【上位毒魔術師】
【音魔術師】
【上位音属性魔術師】
【影魔術師】
【上位影魔術師】
【高位影魔術師】
【妖魔術師】
【上位妖魔術師】
【高位妖魔術師】
【空間魔術師】
【上位空間魔術師】
【深淵魔術師】
【上位深淵魔術師】
【放射線魔術師】
【上位放射前魔術師】
【見習い契約者】
【契約者】
【悪魔契約者】
【上位悪魔契約者】
【公爵級悪魔契約者】
【見習い召喚師】
【召喚師】
【上位召喚師】
【悪魔召喚師】
【上位悪魔召喚師】
【公爵級悪魔召喚師】
【見習い狩人】
【見習い狙撃手】
【世界創造者】
【ソロモンの断片No.18】
【権能】
【性別神の加護】(神の加護により隠蔽中)
【自然神の祝福】
これが私の今現在のステータスなのだが………まずは魔力量。前は2000とかそのくらいだったというのに、今は2倍近くにまでなっている。恐らく、権能を多用した事で魔力の消費量が極端に増え、それを急激に回復する、というのを繰り返した事によって魔力量も一気に増える事になったのだろう。
そして新しく、【異世界転移】【世界創造】【加護付与】【謎の製作者】【神】【世界創造者】という実績が増えている。まぁとりあえず、それぞれ詳しく見ていくとしよう。
【異世界転移】
〈転移補正〉
己の力で世界を超えて転移した者の証。自身の使用するあらゆる転移効果のあるモノの魔力消費、飛距離、精度などを強化する。
【世界創造】
〈世界創造権限〉
世界を創造した者に与えられるモノ。世界を創造する権利。
【加護付与】
〈加護付与権限〉
加護を付与した者に与えられるモノ。加護を付与する権利。
【謎の製作者】☆
〈認識阻害〉
自身が望む相手以外の存在からの認識を阻害する。
【神】☆
〈神威権限〉
自らの権能の干渉能力を強化する。
【世界創造者】
〈想像力極化〉〈処理能力極化〉〈魔力極化〉
想像力と処理能力と魔力量が極限まで増える。
まずは【異世界転移】。これはまぁ、異世界転移して割と直ぐに確認したのであるのは知っているが、具体的な内容は特に気にしていなかったので確認するのは初めてだ。ふむ、転移による消費、飛距離、精度の強化か。順当なバフ実績だから普通に嬉しいな、これ。つまりこれ転移なら何でも発生するんでしょ?最高か?地味にフレーバーテキスト風の文字があるのも特別感あるな………異世界転移ってやっぱり偉業だよね。実績にあるって事はそういう事だ。
【世界創造】と【加護付与】、後は【世界創造者】もそうか。これらは………まぁ言うまでもなく、『Second Reality Online』を作って世界を創造した事と、内部での経験を外に持ち込む為の加護を付与した行為が元だよね?これ。それでなかったんならむしろ何なのかと。というかこれ、世界を創造する"権利"と加護を付与する"権利"って事はさ、もしかしてどっちも本来なら相応の"権利"が無いと普通はこんなの出来ないって事で良いのね?あれか、私がバグ技みたいな事して通過するのは予想外だったりする?………予想外ならこんな実績ないか。多分予想済みだろう。そういう事にしておこう………
んで、残った【謎の製作者】と【神】はどっちも付加実績。つまり、私を含まない大勢の誰かがそう思ったからこそ実績として現れた、という訳だが………まだ、【謎の製作者】の方は分かる。『Second Reality Online』という世界の作者が分からないって事で出たもんだ。まぁ今はもう全部不明でもなくなったけど、それは置いておいて。
問題は【神】の方だ。何これ、私こんなのネットでも見たことない。え、何?私はどっかで神として崇められてるとでも?嘘でしょ………?あ゛?!もしかしてアレか!?最近ゲーム内で出来たクラン(ゲームシステム的にクランは機能として存在しない為、国の法律に則ってプレイヤー達が企業しただけの集団ではあるが)で今現在トップの人員数を誇る謎の信仰宗教『第二現実教』か?!
確か、ソフィアや私が開始国にした王国の隣の帝国に存在するNPCの宗教団体『精霊教』と交渉を繰り返し、異世界からの来訪者(つまりプレイヤー)に限定して教義を広める事を許されているというのにNPC達にも教義が広まってしまって第二現実教の方が困り、交渉と違うと怒る精霊教に泣き付いたら第二現実教の方も困ってしまい、何やかんやで皇帝に話が行き、どっちも国の宗教としてやるぜ!ってなって互いに連携を取り合った事によって、なんかもう凄い勢いで他国への宗教侵略が著しくて他国からちょっと嫌がられてる第二現実教か?!?!
………こうして羅列するとエグいなこいつら。改めて見たらやってる事ヤバ過ぎでしょ………でもこいつら、やってる事と言ったらただの慈善事業者なんだよな………恐ろしいことに。活動資金は、基本的に何があっても蘇生するという特性を利用したプレイヤー達の危険区域の偵察任務とか、危険な魔物の討伐報酬とか、半ば人体実験みたいな危険な実験の被験者とかで何とかしてるらしいし。何なら普通に現実の科学技術を持ち込んで一儲けしてるし。それを慈善事業に使ってるから尚更タチ悪いんだよな………
しかも、無理矢理な勧誘とかが一切無いのにプレイヤー最大のクランになってるのがもう怖いよね。手腕が完璧過ぎる。一応、崇めてる神はこの世界の創造者らしい。精霊教も最高神に創造神がいるらしく、精霊教的にはその最高神だけを崇める団体って事で、割と受け入れやすかったのかな、とも思う。ちなみにその創造神って?そうだね私だね。
絶対こいつらじゃん………原因。
「まぁ、それは良いんですよ、それは」
まぁそれは良い。別に【神】の実績はあって損ではないし、むしろあってくれた方が楽になるまである。
今問題なのは………
「………まさか、ここまで影響があるとは………」
私、キングプロテア・スカーレットがこのゲームの運営であると同時に製作者である、って事が世間に影響を与えまくってる事だ。
いやね?どうせバレたらプレイヤー達に色々言われるだろうなー、って思ったからバラしたんだよ、こっちから。私とかソフィアが街中で歩いてて突然バレてしまうより、こっちから先に色々言える時に言ってみた方がいいじゃない?って思ってさ。だから動画配信サイトで、とりあえず自己紹介動画みたいなのを撮ったよね。ついでにこのゲームのホームページにその動画へのリンクも付けておいたし。
ちなみに、動画の内容は割と単純な自己紹介だ。キングプロテア・スカーレットという人物の性格を前面に押し出すような、つまりはまるで女王様のような風格を醸し出しながら、私の名前と、『Second Reality Online』の製作者であり運営である事と、運営もゲームするから迷惑かけるなって事を言った。だからまぁ、動画時間2分程度の簡素な動画なんだけど………
まぁはい。その動画がテレビニュースで放映されるくらいには影響ありましたね………多少バズるとは思ったけど、まさかまたニュースになるとは………というか私、今後キングプロテアの姿で外出たらまずいのでは………?いや、それは別に権能とか魔法でどうとでもなるから平気か。何なら【謎の解決者】と【謎の製作者】という二つの実績のお陰でバレないまであるぞ?
「アリスー、どうすればいいと思う?」
「はい?何がですか?」
そんな私だが、今日はゲームの世界ではなく、ロ型世界にやって来ている。今は昼営業が終わり、休憩時間なのでゆったり出来る時間でもある。
「いやさぁ………元の世界でキングプロテアの姿が有名になってさ。キングプロテアのままだと街中とか歩けないのかなぁ?って」
「そうなんですか?」
「や、ただの予想」
「なるほど?………うーん、魔法で対策をするとかですかね。アオイには【謎の解決者】という実績があったでしょう?その実績の効果を増幅するようにしてしまえば良いと思いますよ」
「あぁ、なるほど。それは盲点だった」
実績は実績、魔法は魔法って分けて考えてたわ。実績のスキルを魔法でブーストさせてもそりゃ良いわな。
「ん、ありがと。やっぱりアリスは頼りになるぜ」
「そうですか?じゃあお礼にイ型世界に連れてってくださいね」
「え、まぁいいけど………」
私がそうして自室でアリスと話していると、部屋の扉が勢い良く開け放たれ、そこからレイカ、フェイ、マスター、妹様が雪崩れ込んでくる。なんだなんだ。
「あ、ずるーい!私も行かせてー!」
「!!、!!、!!!」
「ほら!フェイも行きたいって言ってる!」
「はい!私もアオイさんの世界に行ってみたいです!」
「私もアオイお姉ちゃんのとこ行きたーい!」
うーん、全員行きたいのかぁ………
「………じゃあ、今度旅行でも行く?」
「「「行く!」」」
「!!、!!!!」
幼女3人と妖精1人は旅行に賛成、と………
「アリスも行く?」
「はい、勿論!」
はーいお転婆アリスさんも追加でーす。うーむ、旅行、旅行かぁ………そういや、そろそろ夏だなぁ。今6月くらいでしょ?そろそろ、というかもう暑くなり始めてるし………どうせなら、海とか行くか?でもなぁ、前に一度、ロ型世界で海には行ったしなぁ………
「………んー、海に行きたい人ー」
「海!行きたーい!」
「!!!、!!!」
「アオイさん!行きたいです!」
「海〜!海だ〜!アオイお姉ちゃん大好きー!」
幼女+妖精組は大賛成と。
「アリスも行きたい?」
「勿論ですよ!!」
「よし、ではロ型世界の海に行くという事で。予定は事前に決めるから、それまで待っててね」
「「「はーい!」」」
「!、!!」
元気いっぱいだなぁ、このちっこい4人は。可愛いじゃないか全く。
「ロ型世界の海!一体どんな場所なんでしょうか………あぁ、楽しみ過ぎて暴れ出したくなります!」
いやまぁ、ちっこくなくても元気いっぱいな人は居ますけども。後暴れないで??
「とりあえず、行けそうな海でも調べるか………」
うーん、なるべく人の居ない場所とかが良いんだけどなぁ。
旅行に行くみたいな話をした日から1週間後の6月26日。イ型世界、つまり私が元々居た世界で、私はこの地球という惑星について詳細な情報収集を行なっている最中だった。第十三アップデートの子達を利用して、この惑星に存在するファンタジー的な要素を見つけ出そう!という事をしているのだ。
何でそんな事をしてるのかと言われたら………気になったから?ですかね。いや、だって気になったんだもん。最近現代ファンタジーモノの小説読みまくってたのも影響あると思うけど、でも実際気になるよね?国家所属の魔法研究部門とか、秘密結社みたいなやつとか、秘匿されたダンジョンとか、妖怪の住う亜空間とか、古ぼけた神社に未だ存在する祟り神とかさ………めっちゃ気になるじゃん?しかも私の場合、わざわざ深淵属性の魔法使って情報を抜く代わりに抜かれるって事したくないんだけどさ。とりあえず何してるか分かんない事柄は全部アリスに頼めば1発で情報抜いてくれるから、めっちゃ情報収集しやすいんだよね………
ちなみに異世界にいるアリスと連絡を取る手段として、アリス達全員には
ちなみに、アリスは毎日連絡してくる。毎日毎日夜になると、その日知った新しい情報をどんどん教えてくれるので、私の無駄な豆知識がどんどん増えていく。レイカとフェイは兼用だが、あまり連絡して来ない。私も自分から連絡するタイプではないので似てるんだろう。また、マスターと妹様も何かしら用事がないと連絡はないタイプだ。と言うか、本当にどうでもいい情報を毎日夜に教えてくるアリスの方がおかしいと思うんだ、私。昨日なんか、娼婦のお姉さんに教えてもらったお口奉仕のコツとか教えられたし。言葉で教えてもらっただけで様子は見てないから出来ないらしいけど、そもそもそんな話を私にするなと言いたい。
「………んー、そろそろ熱変動に対応できるアップデートを作るべきですわね………流石に、このドレスだと暑いでしょうし………」
私は今、キングプロテア・スカーレットの姿でソフィアの住んでいるマンションの近くを歩いていた。何故かと言われたら、今日も今日とて吸血無双を繰り返して武器を強化しまくってるソフィア本人のご要望で作るの面倒だから妾の代わりに昼飯を作ってほしい!と言われたので、まぁ作ってやるかぁと思って買い物をしに行っているのである。
まぁ、買ったの流水麺の蕎麦なんですけどね。お水をしゃーって数十秒してるだけで食べられるめっちゃ簡単で美味しいやつ。麺つゆは少し前にうどん作ってあげた時のが残ってたやつがソフィアの家にあったから、蕎麦と天ぷらだけ近くのスーパーで購入しに行っただけだし。薬味はまぁ、別に無くてもいいかなって………私的にもネギとか入れた方が美味しいんだけど、別にソフィアと2人だけで食べるなら要らないなーって思って。
というか、悪魔の姿の時って食欲も皆無だから、別に美味しいものを食べたい!とか、特に何にも無いんだよね。知識とか理性では美味しいものを食べるべきって主張してるんだけど………ソフィアに飯を要求されたから、簡単に用意できるやつを作るってだけだしなぁ。今。そもそも、悪魔の時の私の食事は"戦闘"と"勝利"だし………何ならソフィアだって血液だけで生きてけるし?というか、私もソフィアもそれぞれ"炉心"があるので無補給でずーっと過ごせるし?だからあんまり食事にこだわってないというか。
「この格好も、そろそろ目立ってきてしまう頃かしら………?」
悪魔としての自分の服装を見て、改めてそう思う。それと同時に、自分自身の肉体についても思考が回る。
私がこうして、出来る限り長い時間"キングプロテア・スカーレット"として過ごしている理由だが、実はある。それは、キングプロテア・スカーレットの強化だ。常日頃から『悪魔』と『器用』の権能を軽く展開させ続け、『悪魔』の権能で悪魔としての私の全能力を強化させ続けつつ、『器用』の権能で器用さを強化させ続けているのである。
例えば身体能力。以前は1秒で300mくらい踏破出来ていたが、今では1秒で500mくらいは加速出来る。私は既に音を置き去りにしたのだ。今なら多分分厚い金属も殴ったら穴を開けられるし、そんな大層なことをしても私の拳に傷一つ付かないだろうし、例え傷が付いたとしても即座に治療される程度には自然治癒能力があるだろう。器用さに至っては悪魔が持つ元々の器用さに加えて、『権能』によるパッシブブースト、そして権能に慣れることによる強化というモノが揃い、特に権能を使用せずともまるで写真みたいな模写が出来るようになっている。
まぁ正直、器用さだけは能力値が天元突破してしまっていて比較対象が分かりづらいが、だとしても着実に強化されているのだ。なんと、今の私の速度と器用さが混ざり合うと、機械の処理速度を悠々と超えてしまうからな。何なら最近使用してるパソコンはうちのラプラスの悪魔が取り憑いて処理能力やら通信速度やらをスパコン並みに強化しているのに、それでも追いつけない程度には器用になっている。器用さ特化の権能なんだから当たり前なんですけどね。
「今帰りましたわよー」
「おー、昼飯は何なのじゃ?」
「お蕎麦ですわよー」
「わーいなのじゃー」
中々に知能指数のひっくい会話をソフィアと一緒に繰り広げつつも、私はテキパキと昼ご飯の準備を始める。まぁやる準備と言っても、ステンレス製のざるの中に流水麺をぶち込んで、水道の水でしゃかしゃかとほぐしていくだけだが。天ぷらもトースターにアルミホイル引いて焼くだけだし。食器類は事前にソフィアがある程度準備してくれてた………訳もなく、事前に創造しておいたうちの子達に準備させたものだ。
「お母様ー!ご準備は完了しましたよー!」
「ありがとうございますわ、リリス」
こうして私の食事の準備を手伝ってくれているこの子の名前はリリス。とあるコンセプトの元に作成された、アップデートでも何でも無い、ただ純粋な悪魔である。
彼女は『邪樹の悪魔』。これは私が識別用として付けた名前であり、その本来の名は"クリフォト"。ユダヤの神秘主義カバラにおける、悪の勢力もしくは不均衡な諸力を表す邪悪の樹である。元になったクリフォトは生命の樹"セフィロト"を逆さまにした構造を持ち、各球体にはそれぞれに対応した悪徳と悪魔が存在し、球体の番号にはそれぞれ虚数単位を意味する「i」が付けられているという、ゲームやアニメで割と出てきがちな四天王とか七つの大罪みたいなやつである。
この邪樹の悪魔はそれぞれの球体に由来した悪徳の力を発揮し、対応する悪魔を創造して個体として登録する悪魔なのである。つまり、この悪魔を一度創造するだけで追加で10体の悪魔も連鎖創造し、更にはクリフォトの球体それぞれに存在する悪徳を由来にした10の特殊能力を使用する、割と凶悪な母艦のような存在なのである。
そしてその中でも、9i番は"アィーアツブス"の名を冠し、その悪徳は不安定。そして、登録された悪魔はリリスである。
"不安定"の悪徳由来の能力としては、周辺一帯に存在する存在全ての平衡感覚を喪失させるものだ。また、範囲内に存在するあらゆる遠距離攻撃を不安定化させ、狙った場所には決して届かないようになる効果もあるのである。基本的に邪樹の悪魔の特殊能力はこう言った広範囲空間に被害を齎すものが多いので、私としても街中などで使ったことは無い。むしろ使ったら不味いものばっかりである。
そしてもう一つ。9i番に登録された悪魔の名はリリス。人間社会に疑われる事なく溶け込む為の完全変身能力と、特定の種族の社会に溶け込み擬態する事を望む擬態欲を持つ悪魔である。まぁ、あらゆる能力が平均的な人間並みであるので戦闘能力はあまり無いが、今この瞬間に戦闘能力なと求められていないので正直関係ない。なんせ、リリスは人間社会に完全に溶け込める事に特化している悪魔だからな。今こうして料理の手伝いをさせている方が本来の使い方から外れているまである。
「リリス、これを運んでくださいな」
「了解です!任せてください!」
「おー、頑張るのじゃー」
何も準備してねぇ奴がなんか言っとる。まぁ、そこでソファ座ってだらけつつくつろいでる人に頼まれて昼飯作ってるんで別に良いんですけど。何なら人手だって自分で無限に創造出来るし、私1人の方が楽まである。というか、わざわざリリス1人を創造するより、何の指定もしてない普通の悪魔を1万体創造する方が楽なんだよね………
ただ、何の指定もせずに普通に悪魔としての創造すると、"悪魔"の性質が強く出てしまってなぁ。ある程度は人型にはなるんだけど、全身が黒い皮膚に覆われてたり、角が生えていたり、コウモリの羽根みたいなのが生えてたりと、ちょーっと料理に適した姿ではないんだよね。ま、戦闘能力としてならこっちの方が"悪魔"の性質が強いので、総合的な性能は高いんですけど。ま、やってる事と言っても単純で、その時その時の状況に合った悪魔の使い分けが大事なだけだ。ほら、ソシャゲのクラス相性とか属性相性みたいなもんよ。
「リリス、ありがとうございましたわ。もう大丈夫です」
「はーい!お疲れ様でした、お母様!それでは!」
リリスがそう言ったのと同時に、私はリリスを分解した。まぁつまり、創造した存在を破壊している訳である。リリスみたいな特殊な調整を施した悪魔は勿論、普通の子も全て、彼らはあらゆる知識と経験を共有しているので、わざわざ個体に拘る必要が無いのだ。まぁ、特殊な調整を施した悪魔は前回の感情が伴ってたりするので、その点で言えばリリスは普通の悪魔とは違うのだが。
ちなみに、うちの子達を分解するとエネルギー、つまり魔力になる。これを回収すれば、消費した魔力の内の何割かは魔力が回復するのである。まぁ、特に何も調整していない普通の悪魔なら100%還元、リリスのような調整をしている特殊な悪魔なら50%以下の還元率だが。だから特殊悪魔の方がコストが重いのだ。私の扱えるコストは実質無限だけれど、だからって無制限に扱える訳じゃないからね!
「ではいただくのじゃー」
「はいはい、
「食べ終わったらゲームじゃぞー?」
「ソフィアはソロプレイなんですから、別々参加でも良いですわよね?」
「それはそうじゃが、どうせなら一緒に始めたいじゃろ?」
「まぁ、そうですわねー」
今日も今日とて吸血鬼と悪魔の会話とは思えない平凡な会話を繰り広げる、私達なのでした。
ちなみに、ちゅるんと口に入ってくる蕎麦は美味かったぞ!
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