リアルの全能力をゲーム内に持ち込めるって仕様、割とクソ仕様だよね。やめないけど
私が作って何故かは分からないが物凄いバズってしまった『Second Reality Online』の配信開始から凡そ1ヶ月が経った6月12日。この日、私とソフィアは共にゲームの世界へ向かう事になっているのだった。
「楽しみじゃのぉ。めっちゃリアルなんじゃろ?」
「ゲームタイトルからセカンドリアル、第二の現実ですわよ?現実以上に現実してますわ」
「現実以上なのは現実じゃないのでは?妾は訝しんだ」
「確かに………!」
なんてツッコミをされつつも、私はソフィア専用のヘッドセットをソフィアに手渡す。
「はいこれ。ソフィア特別仕様のヘッドセットですわ」
「む?特別仕様?何か通常のものとの明確な違いでもあるのかの?」
「ゲーム内の経験を全て現実にまで持ってこれる特別仕様ですわ」
「なんと?」
「というか、本来はこっちが通常品ですわ」
「む?どういう事じゃ?」
説明すると、本来【擬似世界の加護】というのは、ワールドシュミレーター内でのスキル全てを内包する実績として、現実に対して直に影響を及ぼすつもりだったのだ。だったのだが………
「前に言ったでしょう?権能ってやつ。それが無いと、加護を全て受けきれないんですのよ」
「あぁあれか………」
権能とは、一つのルールを司るモノだ。その過程において、自己の認識、世界の把握、自己の展開、世界の掌握という四工程が存在しており、今回の場合最も必要なのは、第一工程である『自己の認識』。これが権能を扱えるレベルで高くないと、加護を過剰に受けてしまって、最低でも肉体の爆発四散、最悪で魂魄の破損などもあり得るのだ。
加護を与える側となって分かったのだが、加護というのは基本的に、与える存在に適した量というか、出力が存在しているのだ。私で例えるなら【性別神の加護】だが、内包されているスキルは三つ。ユニークスキルであるお馴染みの〈性転換〉、性別神より強い存在でないと私の加護の存在を知覚できない〈隠蔽〉、そして私が望む相手以外と子供を作れない結界を張れるらしい〈貞操守護〉の三つである。多分、これに加えてほんのちょっとスキルを足されたら私は爆発四散してたと思う。
あれだ。例えるなら、ゲームの編成コストみたいな感じ。キャラ(スキル)一つ一つにコストが設定されてて、決められた値以上のコストのパーティーメンバーは連れてけないタイプのゲームみたいな感じだ。そういうコストがスキル一つ一つに設定されてる訳である。ならそのコストを減らす為に、スキルそのものの性能を下げてしまおう!という機能が、販売しているヘッドセットには装着されているのである。
「貴女もやってる自己の認識。これが権能レベルにならないと、加護で受け止められるコスト上限が低いんですの。ですから、わざわざスキルの方の出力を下げて消費コストが上限を越えないように減らしてる訳ですわ」
「はー、なるほどのう」
ちなみに、既にソフィアには権能の話をしている。自分の内側でだけなら使えてるんだし教えてもよくね?ってなったのである。ま、四工程で教えたの、自己の認識だけなんすけどね!
「自己の認識、つまり当人の自我が強ければ加護を受けられる量が変わりますけど………まぁ、この特別性を使わない限り、プレイヤー達がリアルに持ち込める加護の量は微々たるものですわ」
「しかし、そのような仕組みじゃと………今は良いが、数年後辺りに現実でも魔法を使い始める輩が出そうじゃの?」
「まぁそうですけれど、別に元々現実にあるものですし」
「おぉ、そういや妾達が存在している事自体がファンタジーの証明じゃったな」
………ちなみに。加護を与える方法は今回の件でなんとなーくやり方を理解したのだが、私が持ってるもう一つの神から与えられたモノである【自然神の祝福】のような"祝福"を与える方法は、今も分かっていなかったりする。他の実績の鑑定結果とは内容文章が全く違うので、多分何か方法があるのだと思ったのだが………分からんのだよなぁ。
というか、実の所私が加護を与えられたのはあくまでもワールドシュミレーターによる副産物のようなモノであって、現実で加護を与えられるのかどうかは分からんのよな。私が作り上げた世界でシステムとしてのスキルを与え、コピーした魂魄に実績を追加し、それを現実にフィードバックする際に加護として生まれるようにした………ってだけだし。だから、実績名が【擬似世界の加護】なんだよね。私の加護なんじゃなくて、ワールドシュミレーターの加護だから。
ただ………今の仕組みだと、少しずつでもいいから自己の認識を深めていかないと、何処かでコスト上限が来てしまうんですよね。その時は現実にフィードバックしないようにはするつもりなんで、まぁ別に良いんですけど。それに、色んな権能を見てデータが欲しいっていう私の最終目的を考えるなら、この仕組みの方がやりやすいだろうし。
「それで………これを頭に装着、っと………うむ、これで良いのかの?」
「えぇ、それで大丈夫ですわ」
私とソフィアは2人一緒にヘッドセットを頭に装着し、そのままベッドに横になる。ちなみに、2人揃って横になるという都合上、私専用ベッドがソフィアの家に追加されていたりする。社会人ってば頼りになるぅ!
「それでは………ゲーム開始じゃ」
「ゲームスタートですわー」
ちなみに、ゲームを始める際はヘッドセット君にゲームを開始する旨を口頭で言ってくれれば勝手に始めてくれる仕様であるので、私もソフィアも割と適当なフレーズでゲームを開始したのだった。
ほんの少しだけ意識が落ちたかと思えば、直ぐに再起動され目を覚ます。そこは、事前にソフィアと向かう先であると決めていた、とある王国の中心部に位置する、プレイヤーが転移してくる専用の場所である。プレイヤーのリスポーンポイントでもあるので、リアルと同じ服装をしている私とソフィアがやって来てもあまり違和感は無いだろう。
「おぉ、起きたか、テアよ」
「あら、ソフィアの方が起床が早かったんですのね。おはようございますわ」
「うむ、おはよう。それで………ここはゲームの中、という事で良いのかの?」
「えぇ、間違いなく」
「………本当に、異世界にやって来たかのようにしか見えんのぉ………」
「あぁソフィア。とりあえず、これを」
そう言って私がソフィアに手渡したのは、『運営』と書かれたシンプルなデザインの腕章である。
「む、これが運営側である事を示す腕章か。シンプルなデザインで妾は好きじゃぞ」
「あら、ありがとうございますわ。一応、干渉不可能オブジェクトとして設定しておりますから、例え全裸になっても決して外れませんが、そこに存在している事も忘れてしまいますわ」
「確かに………ふむ、あるのかどうか分からんな。直接見ないと分からんわい」
「さ、もう自由に世界を旅してもらって結構ですわ。好きなように生き、死に、そして楽しみ、哀しみなさいな」
「そう言われるとワクワクするの。ふむ………別行動、と言う事で良いのか?」
「えぇ。
ワールドシュミレーターのマップは全自動生成なのでね!まぁ私の場合、一応はゲーム内は世界の端から端まで
「そうか………しかし、初日くらいは共に動きたいのぉ。戦闘力は現実と変わらんのじゃろ?じゃったら、わざわざレベル上げする必要もあまり無いしの。ちまちまやれば良いじゃろ」
「では。一緒に行動する、という事で良いんですのね?」
「うむ」
そふぃあ が なかま に なった!
恐らく、私と同じようにソフィアの脳内では私が仲間になったテキストが流れている事だろう。私がやったんだから多分ソフィアも似たような事するって知ってるんだ、私。
「きんぐふろてあ が なかま に なった!」
まさか口に出して言われるとは思わなんだ。
「ふむ。仲間と言えばなのじゃが、このゲームにパーティーのようなシステムは存在するかの?」
「ありませんわ。勝手に名乗ってもらうくらいなら別に良いですけれど、運営側からそういうサービスの提供は行っていませんわ」
「となると、フレンドリーファイアはあるんじゃな」
「勿論。現実で味方に攻撃をしたら受けるに決まっているでしょう?」
「そう言うと思ったわい」
このゲームを舐めないで貰おうか………怪我の描写は勿論、攻撃を受けた際も現実基準だぞ?腕を切り落とされたら欠損するし、足なら同じく欠損、腹を切られようものなら内臓が溢れるし、急所を攻撃されたら即死は当然。火に巻かれたら当然熱いし焼け死ぬぞ?炭になっちまうぞ?当たり前だろうがよ。
年齢制限?勿論そんなものは無いね。だから当然、子供が呑気に街の外に飛び出てぶち殺されて泣いてゲームやめる、ってのが割と多発してるらしいんだよね。最近のニュースで話題になってた。なんかね、そんな光景を見てトラウマになった子も居るんだって。制作者に慰謝料の請求もしたいらしいよ?誰か分からないから出来てないっぽいけど。
まぁ、だから何?って感じだけど。トラウマ?まぁそれはすまんだけど、じゃあ最初っからこのゲームなんかやらせるなよって言いたくなるし、そもそも"誓約書にはこのゲームで受けた精神的な影響の全ては当人の責任である"って書いたし、承認もしてるよね?そりゃあ私も万が一があるから精神的な保護はしてるけど、それは精神支配とか魅了とか精神破壊とか精神改竄とか記憶改竄とか精神簒奪とかの外部の影響を防ぐものであって、自分の精神的ショックは保護しねーよ。というか無理だよ。
あのね?外部からの干渉ならなんとか出来るよ。世界全て私のモノなんだから好きなように出来るし、アバターが精神干渉を無効化すれば済むだけだからさ。でもさ?内部で生まれた精神的ショックは精神治療の魔法が必要じゃん。意識だけアバターに移して貰ってるからそんなんどうにもなんねぇよ。私の責任にしないでくれ。
「………む?それだと妾、血液の存在する生き物相手なら無双出来るのでは………?というか、妾はこの世界でも不死身なのでは………?」
「まぁ、そうですわね?」
「なんと、これが異世界チートというものか」
「いえ、貴女のそれは自前のものですし………」
そもそも『権能』はチートじゃないし、ソフィアの不死身性って生来のものだし。本来存在する常識やルールを覆すズルがチートなら、常識やルールを生み出すのが権能ってもんだから、全然違う。というか、現実でチート行為ってどうやるんだよ………ここはゲームの世界だけどさぁ。
「まぁよい。まずはこの街中を探索するぞ!魔法の店とかあるかの?ないかの?」
「多分どっかにあると思いますけれど………」
これまでずーっと魔法で発展して来てる世界だし、多分それっぽいのはあると思うんだが………ふむ、どうだろうね?
なんとなく思い立ち、改めてソフィアの格好を見る。ソフィアの服装だが、いつものぐーたらノーパンファッションではなく、吸血鬼としての自分を前面に押し出したかのような真紅と深紅のドレスに身を包んでいる。その様子だけ見るのならば、吸血姫などと言われそうなくらいには可愛らしくもカッコいい服装である。『運営』腕章があっても似合うんだから流石はリアル吸血鬼さんやでぇ。まぁ私にも付いてるけどさ。
ちなみにこのゲーム、1番最初の転移時に限り、ゲーム開始時のリアル服装がゲーム内にも反映される仕様である。だからソフィアは自分の持ってる中で1番………というか、自分の権能や魔法を使って作り出せる最高峰の1着を来てゲームを開始したし、私も同じくキングプロテア・スカーレットとしての服装そのままでゲームを開始したりしている。まぁ、私達2人共、別にわざわざこんなドレス着てこなくても権能で作れるからあんまり着てくる必要は無いんだけどね!
「空飛ぶ箒とか売っとらんかのぉ………透明マントとかもあったら楽しそうじゃの………!」
「うーん………この国の文明がどのようなものか、正確に把握していませんのよねぇ………」
そもそも把握する必要も無いと言う。
「お?あれとかどうじゃ?行ってみるぞ!」
「あっちょっ、えっ早っ?!そ、その速度はアリスよりタチが悪いですわよー?!」
周りのプレイヤー達の目にも留まらぬ速さで街の上を全力疾走して行くソフィアを追いかけるべく、私も第八アップデートである完全転倒防止アップデートを上手く利用し、空中をこれまた目にも留まらぬ速さで駆け抜けて追いかける。確かに私なら着いていけるけど、だからって普段みたいなパワーの制限を完全に忘れるくらいはしゃぐのはどうなんですかねぇ!?アリスもそうだし、もしかして私って振り回される側の存在なのかなぁ?!それはちょっと心外かも!
というか、目的地が遠い!確かに私とかソフィアの視力なら数km先まで正確に見えるかも知れないし、この街の中央部は元々低い丘だったのでリスポーン地点は周りに比べて高い位置にあるから遠くを見やすいだろうが、だからって街の上を疾走するな!走れば数秒だろうが歩いても数十分程度じゃん!!やめてよ突然走り出すの!せめて走り出すよって教えてから走ってよ!びっくりするじゃん!!
そんな愚痴は心の中に仕舞い込みつつ、ソフィアを追いかけて到着したのは『魔法店 マジカルミーティア』というお店だった。ソフィアも私と同じくらい身体操作能力が高い為、店のガラスや屋根の瓦などを破壊してはいないからいいものの、こんなガラス全開のお店に超速で向かうなよ危ないでしょうが………!!アリスでもそんな事しませんよ!アリスはそんなに身体能力高くも無いですけどね!
「おほー!!凄いのじゃ!ファンタジーじゃー!!」
「貴女も充分にファンタジーですけれど?!というか、急に走り出さないでくださいまし!驚きますから!」
店の中に入ったソフィアの放った言葉に対して、ついついツッコミを入れてしまった。ついでに愚痴も溢れた。いやだって、言うでしょこんなん………
「おぉ!すまんの!ちょっとはしゃぎすぎたわい。いやー、久しぶりに身体能力を解放した気がするのー!」
「あぁ、そういう事ですのね………」
まぁ確かに、現代日本で吸血鬼の身体能力をフル活用する機会なんて皆無だし、それでストレス溜まりそうだけども。というか私も似たようなストレス感じる時あるけども。だからといって一言くらいくれよ。びっくりしちゃうから。
「ここは魔導具の店かのぉ?ファンタジー世界に来たみたいじゃ、テンション上がるのぉ」
「魔法道具のお店というより………あれですわね。エンチャント付きの装備品のお店みたいな所っぽいですわ」
商品を見る限り、このお店は魔法的な付与を行う店らしい。ロ型世界にもあったタイプの店である。後付けのエンチャントは高い効果を発揮できる分、ふとした拍子に解除されたりとか、パッシブ効果しか載せられないとかがあるらしい。まぁ、個人的には使用した素材の性質を引き出したりとか、魔法回路を中に書き込んだりする事で魔法効果を発揮するタイプの装備の方が好きだったりする。解除されるの怖いしね。
ちなみに、私の持ってる魔法道具は幾つかある。自作したものと言えば、作ったはいいものの今の所使い道が皆無な『紫煙のキセル』がある。正直改良の余地があるので今度改良してみてもいいかもしれない。
購入した魔法道具は割とある。魔力を流すだけで内包された魔法を使える『魔術符』に、完全静音なのに対象を超振動で削り切れる『シェイブカッター』、水の中でも消えない火を出せる『消えぬ炎』、他者から見られる自分の姿を偽れるが魔力や身体能力が大幅に封印される『偽りの腕輪』や、本来の2分の1の魔力で魔法を使用可能な代わりに魔法の威力や効果を半減する『魔力抑制スカーフ』、そして妖属性の効果を25%上昇する『狐面』に、ラピスラズリが綺麗ながらも深淵属性の効果と幸運と病気耐性を10%ずつ上昇させる『ペンダント』に、デザインがシンプルで魔力回復力を上昇させる『ヘアピン』など、割と色々と持っている。後は確か、魔力を流すと回転するだけの独楽である『魔限独楽』という魔法道具も買った記憶がある。使った覚えがあんまり無いけど。多分使ったことない。
ちなみに、『ペンダント』と『ヘアピン』は今も装備している。実の所権能で作った悪魔達に似たような効果を持たせてしまえばいいのだが、せっかく買ったものだから手放すのが惜しいという気持ちもあるのだ。
「んー、効果の詳細まで書いてあるのぉ………ほー、便利じゃの………ふむ?これは、なるほど………」
「集中してますわねぇ………」
………今ふと思ったのだが、『紫煙のキセル』と『狐面』の組み合わせがあるのなら和装出来るのでは?綺麗ながらも華美すぎない和服なら作れるし、靴は綺麗な色の下駄にして………そうだ、小物に番傘を追加してしまおう。そしたら………うん、いいんじゃないかな?和装美人のイメージは完璧だ。今度やろう。何なら和装して街を練り歩く事もやぶさかではない………ふふふ、
いやまぁ。実のところ、私の性癖で好きなキャラって言うなら『めちゃ強白髪オッドアイ無表情ロリ』ってのが1番好きなんだけどね………というか、多分私、白髪が好きなんだよね。だからマスターの事は普通に好きだし。まぁ銀髪の妹様も全然普通に好きだけどね!
ただ。もしなれるとして、自分が白髪ロリになりたいか?って言われたら………別にそうでもないんだよね。私はそういう、白髪ロリでオッドアイで無表情キャラだけど好きな人には一途で愛が激重でめっちゃ強くて天才とか言われちゃうタイプの美少女、ってのを側から見ていたいのであって、自分がなりたい訳じゃないの。まぁ金髪赤眼お嬢様になりたいか?って言われたら、別にそんな事とか無いんだけどね!あの時の私は純粋なノリと勢いだけで美少女作ってたからね………テンション上がって完璧を追求してたらこうなったんだよ。今はもうバッチリ気に入ってるから変えないけどね!
………いや待てよ?もしかしなくても、白髪ロリは別の変身形態としてしまえばいいのでは………?うーん………いや、それならマスターに和装させた方が早いな………そっちの方が好きかもしれねぇ。やっぱり白髪ロリは自分がなるもんじゃねぇわ。
「………む?これは………ほほう!良いではないか………そうじゃテア。お金はどうすればよいかの?」
「まぁ、一つくらいなら買ってあげますけれど………今度からはご自分で働いてくださいまし」
私の所持金の話をしよう。これは前提なのだが、この世界には宗教が割と幾つもある。しかし、それら全てはこの世界の創造主、つまり私を崇める宗教なのである。中には日本のような全部神様みたいな所もあるが、それだって創造神が居るが故の信仰なのだ。んで、そういう信仰をする教会や神社などには、所謂賽銭箱が設置されている。
私の所持金はそれだ。この世界全域のあらゆる教会や神社及び信仰集団の祭壇などに、どこからともなく設置して回るのだ。そして、ある程度のお金が入る度に周辺へ全自動で恩恵を与える事で、神への信仰心という名のお金をがっぽり稼ぐのだ。この惑星だけではなくて他の惑星にもあるのだが、賽銭箱の内部で一旦価値や概念に分解し、使用する際にその国の文化毎に通貨の変換を行う事で使えるのである。
まぁつまり、私の所持金はこの世界の人々の血税によって成り立っているのである。なんか変な事に使うと怒られそうだからあんまり使わないようにしてるんだよね………そもそもこの世界で買い物もあんまりしないけどさ。
「一つ、一つだけか………!悩むのぅ!」
「他にも欲しいのなら、魔物でも狩って自分で稼ぐと良いですわ」
「むむ………むむむ………!」
実際に頭を抱えて悩むソフィア。なんかあれだね………駄々を捏ねたら、お母さんに一つだけなら買ってあげるって言われて、めっちゃ悩んで一つだけお菓子を買ってく子供みたい………すっごい失礼なのは分かってるんだけど、なんか、そう見えちゃう………ロリ体型だからそう見えるのかなぁ………いや、別にロリ体型じゃなくてもこう見えるか。ちょっと想像したけど、大人体型のソフィアとか子供にしか見えないし。
「むー………悩むが………これだ!これを買うのじゃ!」
悩みに悩んだソフィアが私に見せてきたのは、一本のナイフ。持ち手は革製。刃部分は鉄という、何ともシンプルなものだった。
「これでいいんですの?」
「あぁ!これで良い!何とこのナイフにはの、"吸血"という特性が付与されているらしいのじゃ!敵の血液を吸収し、素材以上に強化されるエンチャントが施されているらしいぞ!しかもじゃ!このエンチャントは"吸血して強化する"という特性を付与するものであって、強化されたナイフはエンチャントが剥がされても強化されたままなのじゃ!どうじゃどうじゃ!これは凄いじゃろう?!」
「ふむ、なるほど」
なるほどね。良いコンセプトの武器じゃないか。エンチャントは外的要因などで剥がされてしまうことが多々ある。しかしこのエンチャントは"吸血して強化する"というエンチャントであって、強化されたナイフ本体はエンチャントが剥がされても強化の恩恵は受けたままと。説明を読む限り吸血による強化率は非常に低いようだが、不可逆の強化であるというのは利点だな。
………ん?待てよ?これもしかして、ソフィア自身の血液を注ぎ続けるだけでやべー魔剣みたいなのになるのでは??血液の権能そのままぶちこむみたいな事でしょ??………いや、そんな事してもエンチャントが焼き切れるだけか………いや、そうじゃないのか。ソフィア自身が遠隔から生物を吸血すればいい。ソフィアの吸血は視認しているだけで成立するんだから、高台から生き物の群れでも見てるだけで吸血は可能だ。そしてその吸血した血液をナイフに注ぎ続ければ………うむ、この方がやべー魔剣みたいになりそうだな!
「しかもじゃ!このナイフはの、同じ種類の生物から血液を注ぎ込み続ければ特殊能力も追加で獲得する優れものらしいぞ!成長する武器は邪道も邪道じゃが、しかしロマンに溢れておる!最高じゃ!!」
特殊能力も手に入るのかよこのナイフ。むしろ何で売れてないの?………まぁ、ぶっちゃけただのナイフだからか。しかも鉄製の。わざわざナイフ1本を育て上げるより品質の良い武器買った方がいいもんな。それにこれ、ナイフなんだよな………あまりにもリーチが短い。ナイフ使うくらいなら短剣使うし、投げナイフに吸血と強化は相性が悪いし、何より数存在してないし………うーん、売れる人には売れそうだけど、売れない人には本当に売れない一品だ………考え方は良いんだけどな。
「まぁ、それで良いなら買いますわ」
この日は結局、ナイフを買ってもらってウキウキなソフィアが近場の森で吸血無双するのを眺めて終わったのでした。まぁ、大はしゃぎしてるソフィアが可愛らしかったので楽しかったですけどね!
『後書き』
ソフィアの吸収無双によるナイフの変化。
(※分かりやすいように攻撃力や耐久力を数値化していますが、ゲーム内でこのような数字表記はされませんし、そもそもこんな表示は鑑定しても出ません。専用の魔法を作れば別ですけど)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名 称】鉄製のナイフ → 魔血鉄のナイフ
(魔血鉄:魔力の込められた鉄である魔鉄に、多くの血液が浸透して出来た金属。魔鉄の時点で鉄の数倍は強度が増しているのだが、魔血鉄は更に数十倍の強度を誇る)
【所有者】ソフィア・アマリリス=レッドライオン
【各種パラメータ】
『攻撃力』10 → 784
『耐久力』10 → 784
(どちらも生物一体の血液全てにつき1ポイントの上昇)
【特殊能力】
『付与:吸血強化』
生物の血液を吸収し、吸収した分だけ攻撃力、耐久力、素材品質などを強化するエンチャント。同じ種類の生物から吸血し続けると、追加の特殊能力を獲得する。
『吸血姫の加護』
吸収した血液量に応じてこのナイフの耐久力を回復する。
『風狼の足捌き』
使用者の敏捷性を強化。強化率は攻撃力に依存。
『岩纏い熊の頑健』
使用者の耐久性を強化。強化率は攻撃力に依存。
『無音梟の静けさ』
使用者の静音性を強化。強化率は攻撃力に依存。
『眠り羊の耳栓』
音属性への耐性を上昇。耐性は耐久力に依存。
『病毒鼠の底力』
病気や毒への耐性を上昇。耐性は耐久力に依存。
『病毒鼠の爪』
攻撃対象に病毒を付与。
病毒:病気と毒による行動阻害。症状としては思考能力の低下、頭痛、咳、嘔吐など。非致死性。
『森林蜂の針』
攻撃対象に猛毒を付与。
猛毒:毒による継続ダメージ。症状としては皮膚細胞の壊死、筋肉の急速な腐敗、瞬間的な骨の脆弱化など。致死性。
『痺れ蛇の噛み付き』
攻撃対象に麻痺を付与。
麻痺:麻痺による行動不能。症状としては運動機能の低下、感覚機能の低下、末端の痺れなど。非致死性。
『吸血蝙蝠の牙』
攻撃対象に出血を付与。
出血:出血による重傷化。
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