ゲームは1日1時間?そんなんじゃ足りないが??


「嘘ですわよね………?」


私は自分が作った『Second Reality Online』を遊ぶためのヘッドセットの売上をちまちま確認するのを忘れて、1週間は放置していた。


そしたらなんか、ネットで馬鹿みたいにバズっていた。


「うえぇ………?!なんかめっちゃ拡散されてますわ………!?」


何でも、私が気紛れにヘッドセットに装着していた録画機能やら配信機能などが功を奏したのかなんなのか、めちゃめちゃにバズり散らかしていた。なんかよく知らない有名ゲーム配信者の『Second Reality Online』の配信があり得んくらい再生されまくってるし、なんかよく分かんない投稿者の動画がはちゃめちゃに高評価されまくっている。青い鳥のSNSを確認してみたら『#SRO』でもう世界的にすんごくバズってたし、何ならもう6日連続くらい世界一位に輝いている。


しかもなんかこの前テレビでやってて、私がそのニュースしてるのを偶然家で見てて、今回ネットでバズってるのが発覚したのだ。作者不明なのが更に話題を呼んでいるらしい。個人情報考えて色んな保険かけといて良かった!


そして、確認してみたらヘッドセットは馬鹿みたいに売れまくり、私の手元(電子通貨全般を扱えるラプラスの悪魔君。MICCミックの新しい機能として追加されている)には数百万円近い金額が………


「………まぁ、夢かもしれませんし………さっさと寝ましょ………」


──結局、世界販売台数は数千万台くらいになりましたとさ。











2週間後の6月5日。私はソフィアの家でぐったりしていた。


わたくしの作ったゲームがバズり過ぎな件、ですわー………怖………」


「そうらしいの。最近世間で流行りに流行ってる流行の最先端ゲーム、『Second Reality Online』。これまで空想だったVRを実現した超技術は勿論、ゲーム内の世界はまるでタイトル通りの第二の現実そのもののようである、とな。ニュース番組でも連日報道されておるし」


「嘘ですわよね………?」


まだ報道されてるの………?もう販売から3週間も経ってるんだが………??開発主が広告してる訳でも無いんだが………??


「妾はまだ積みゲーフルコンプの消化が終わっとらんので買っておらんが、ネットでも掲示板が乱立したり攻略Wikiが出来上がったり、他のゲーム界隈が急激に落ち目になるくらいにはバズっておるようじゃの」


「あぁ、そういえば。言ってませんでしたけれど、ソフィアには運営側に回ってほしいですわ」


「む?運営側じゃと?」


「えぇ。わたくし以外に運営って肩書きの存在が欲しいんですの」


「まぁ運営になるのは別によいが、妾はこのゲームの事などあまり知らぬぞ?ちゅーか、作ってもおらんし運営もしとらんし」


「別に良いですわよ、それで」


「ふむ。運営になったらゲームが出来ぬ、などの制約はあるか?」


「別に運営側がゲームをしちゃいけない理由もありませんわよ。というかわたくし、そろそろバリバリにゲームする気マンマンですし………」


運営がゲームしちゃいけないルールとか無いし………そもそも私の作ったワールドシュミレーターなんだし………私の世界だし………私がやっちゃいけない理由も権利も何にも無いし………前提として私が世界を貸してるんだし………他の誰かに何かを言われてもなぁ。


「じゃあよいかの。やる」


「よし………ふふふ、悪魔との取引はもっと慎重に行うべきでしたわね………!」


「ちょ、おま、悪魔がそんなん言ったら怖いじゃろ?!」


これでお前も運営ですわ………!運営パンチですわ!


「ま、運営と言っても何か義務は特にありませんわ。秘密とかも、まぁ世界のシステムを言わないなら別に何を言っても良いですし。強いて言うなら、運営って名前の腕章を付けるだけですわねー」


「ぬ?そんなんで良いのか?GMコールに対処するとか、なんかあるじゃろ?」


「んなもん最初っからありませんわよ。第二の現実ですわよ?この現実にGMコールが存在するんですの?しませんわよね?だからありませんし、しませんわ」


「そこまで行ったらお飾りの運営だと言われてしまいそうじゃがなぁ」


「別に思われても良いですわ。むしろ、わたくしのゲームを遊べているだけ光栄に思うべきでしょう?」


「ま、その通りじゃのー。お主がそれでいいなら妾も口は出さんわい」


ソフィアはそれだけ言って、改めてパソコンの画面に視線を戻す。先程言っていた積みゲーをやっているらしい。今やってるのは………王道のRPGゲーム………じゃねぇこれエロゲだ。よくあるエロがおまけとか言われるタイプのエロゲだ。今ステータス欄にエロゲ特有のエロステータス見えたから間違いない。しかもこのエロゲ、負けイベントでえっちな目に遭っても相手によってはどうにかなるタイプのゲームだ!エロステータスが成長してるし、なんならえっちなデバフも付いてやがるぞ!なんて業の深いゲームを………いや、この前言ってたリョナ系のやつよりマシか………?


「エロゲ楽しいですのー?」


「楽しいぞ?いやぁ、妾好みの娘がぐちゃぐちゃになるのは見ていて楽しいのぉ………ふへへ、ふへへ………」


「うわぁ………」


やべーやつですわ………と少し引きつつ、私も私でパソコンを立ち上げてゲームを始めるとしよう。今日も今日とてその為にソフィアの家に来たのでね!


今から始めるゲームはシュミレーター系のゲームである。その中でも最も有名………かは知らないが、私の中では有名なゲーム、『アームシュミレーター』である。このゲーム。基本的に動かせるのは腕と手だけである。指一本一本をキーボードで操作して色々するのがこのゲームである。実は私、こういうゲームは上手い。


こちとら『器用』の権能を持ってる悪魔さんだぞ。悪魔は元から身体操作能力が高いっていうのに、それに加えて権能による器用さブーストだ。まるで本物の腕のようにヌルヌル動かせるってもんよ………!ふははは!どうだどうだ!この速度!ハンドガンとはこう撃つのだ相手プレイヤー!私にかかれば右手と左手を切り替えて両手で撃てるぞぉ?ふはは、足掻け、喚け!命乞いをしたら最後に殺してやるとも………!アッこいつ今中指立てたぞ!死ねー!!ふ、一撃必殺とはこうするのだ!


「お主もお主でそれ楽しいのかのー?」


「楽しいですわー!勝つの超気持ちいいですわー!」


「そんなんでも勝てればいいとか、お主は割と安上がりじゃよなぁ………」


「まぁ、自分でも安上がりだなーとは思いますけれど、これがわたくしですもの!」


そのせいかは知らないが、戦闘欲求の方は相手が自分と対等な存在でなければ、つまり私と同じように『権能』を持つものでなければ、あんまり欲求が解消されないんだぞ。欲求不満なんだぞ。いやね?適当な相手と戦っても欲求自体は解消されるっちゃされるんだけど、こう………足りないんだよね。食欲で例えるなら………ある程度食べはしたけれど、まだ入るなーって時にそこで食事が終わる感じかな?お腹は満たされはしてるんだけど、満腹には程遠い、みたいな?


人間に戻ればそんなでも無いんだけどね………悪魔になると我慢してた分が一気にクルから、基本的にあんまり我慢はしない方向で行ってるし、戦闘の方法をゲームとかにして出来るだけ対等な相手を得られるようにしてるし。苦肉の策だったけど、案外満たされるもんだぜ?欲求不満感は否めないけれど、別にそれが悪い訳じゃ無いし。ある程度は食べれてる訳だしね。


「妾はお主と違って吸血が絶対ではなくて助かったのー」


「むー、そこは狡いですわよねぇ」


私の中の吸血のイメージは命を奪う程のエナジードレイン、みたいな感じなんだけどなぁ………ソフィアの場合、権能そのものがエネルギーを生み出す炉心そのものだし、その生成方法からしてエネルギー自体はほぼ無制限だからなぁ。吸血鬼なのに肝心の吸血の必要も無いってのが狡いんだよなぁ。私みたいに欲求を解消する必要が無いんだからさー………


いやまぁ、私も変身を解いて人間に戻れば大丈夫なんですけどね?いざとなったら悪魔の姿でバティンと戦ったりとか、私が作った中で一番強い性能の悪魔と戦ったりだとか、色々と工夫して戦闘欲求を解消するけどさ。なんてったって、そもそもの話、人間から悪魔戻ると一つ二つの欲求が幾つにも分散するけど、それは別に欲求不満が解消された状態になるという訳ではないのでね。あくまでも(悪魔だけに)欲望が分散されるだけで、欲求が解消されたりはしないのだから。


「ま、改めて言いますけれど、ゲームの方はお願いしますわね」


「うむ、任せておくのじゃ。この積みに積み上がった積みエロゲーを即座に消化してやろうとも!」


エロゲーを積むなよ………というか、チラッと見えたタイトルからしてリョナ系多くね………?やっぱり、ソフィアって自分の好きなキャラが虐められてるのが好きなのかなぁ。私にはあまり分からない分野だ。戦闘と勝利の方がよっぽど気持ちいいのに………あいや、勿論だけどこんな思考するのは悪魔の時だけだよ?人間の時は人間の時で性癖変わるから………白髪の女の子が好きだから………!


「ちなみに聞きますけれど、それってどれくらいで終わりそうですの?」


「目安は1週間じゃな。ま、終わろうが終わるまいが1週間を区切りとしてやるわい。流石の妾も1週間エロゲー漬けだと飽きるじゃろうしな」


「あ、理由はそこなんですのね………」


なんかもっとこう、カッコよさげな理由があるのかと思ったじゃん。いやまぁ確かに、エロゲー1週間漬けは飽きるだろうけどさぁ。


「当たり前じゃろ?エロさというのはギャップじゃ。普段は服を着ている愛する者が、ベッドの上ではその身を隠さず曝け出している………そういうギャップがエロさというものを醸し出すのじゃ」


「まぁ、理解は出来ますわ」


「予想出来ない展開が多ければ多いほどエロい、というのが妾の自論じゃ。じゃが、やはり1週間も続けてエロゲーなどしていたら予測出来ない展開が減ってくるんじゃよ。じゃからギャップも減り、エロさも減ってしまうのじゃ」


「ふむ………あながち間違いでも無さそうですわね」


「じゃろう?」


ギャップがエロさ、か。今の悪魔の私に性欲なども存在しないし、興奮するのは戦闘と勝利だけではあるが………確かに、これまで幾度となく戦い手の内全てが既知である筈の相手が、未知の技術や能力を使ってきたら………唆るな。逆転劇での勝利も似たようなものだろうか………ふむ、ソフィアの自論もそこまで的外れの事を言ってるんじゃ無さそうだ。私も今度そのフレーズ使お。

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