世界の創造って………あれ?なんか私神様みたいでは?


性癖云々みたいな話をソフィアにされた日から3日後の5月14日目。唐突ですが、ワールドシュミレーターを作ろうと思います。


………まずは話を聞いてほしい。実は昨日の夕方の事なのだが、なんと、この宇宙全域の探査が遂に完了したのである。偵察悪魔アップデートの子達が随分と頑張ってくれたものだ。正直言ってそれだけで大偉業にも等しいのだが、夕食時にそんな報告されてしまって特にこれと言った反応が出来なかったのが悔やまれる所であった。………まぁ、なんだ。つまりはな?私の手元には今、真なる世界地図が載っている魔法的な地図が浮遊している事になるのだ。元は権能における"世界の把握"の性能を今以上に高める為の偵察悪魔アップデート達だったんだが、それだけで終わるのは勿体無いと思ってしまってな。


それじゃあ世界丸ごとのデータを利用できる何かをしてみよう!って事になって………最終的に考えついたのがワールドシュミレーター、即ち模擬世界の運営だ。私の手元には"ラプラスの悪魔"が存在している。元々、この子達の得意分野は時間同期とか時間観測じゃなくて、その世界におけるデータそのものの観測だ。とある瞬間における全てを知れるのならば、過去も未来も同様に知れる、という理論の元に存在している悪魔なのだ。例え今は理論として否定されていたとしても、かつて存在していたという事実さえあるのなら、私の権能はどうとでもなる。


話が逸れたが、今現在における宇宙のデータさえ保有しているのなら、うちのラプラスの悪魔がそれを使って過去と未来の全てを観測出来るのだ。単純な時間観測なら別にデータとか要らない(要素だけ勝手に抜き取って使用できる為)が、"本来の用途"で悪魔を使う時は別なのである。権能とは限られた範囲で全能ではあるが、限られた範囲でなければ万能にも劣るのだ。そういうもんである。


しかし、まぁ。


「うーむ………これってこんなんでいいんですの………?


権能を手に入れた私だが、流石にワールドシュミレーターなど、そう簡単に作れるようなものでもない。惑星単位のシュミレーターなら試作品として既に10分とかで幾つも作成したのだが、それらを宇宙に並べて銀河系、更に広げて宇宙、としていき、最終的には宇宙の"外側"まで、観測出来た限りの全てをラプラスの悪魔により電子的な情報として、世界を再現したのだが………うーん、これで良いのだろうか?世界を作った事とか無いから分からん…………


世界構築のやり方としては単純明快。例を挙げるなら万有引力や慣性の法則など、一つの現象に対してラプラスの悪魔を一体。一体一体が世界全体における現象の一つを完璧に適用し続け、それらの現象が同時に発生しうる場合は同時に己の法則を使用し続ければいい。また、物質にも似たような方法を用いており、一つの元素に一体のラプラスの悪魔を適用し、状態変化や合成などを行うのである。プログラムの処理のように上が優先、みたいな事も無く、全てが同時に発揮されるので、現実と全く同じように世界を運営出来る筈なのだが………うーん、凄い不安。


「とりあえず宇宙の始まりから現代まで超倍速で運営してみましたけれど………」


ワールドシュミレーター内における生命、つまりゲームで言う所のNPCは、これまた全てラプラスの悪魔が一つの生命につき一体、配備されている。動物から植物、果ては微生物一体一体まで、全てにラプラスの悪魔が付いているのだ。それ故に、生き物達の動作は完璧。ワールドシュミレーター内の地球にも現実社会と同じような社会が構築されているのが見て取れるので、まぁ多分、地球の環境的には似たような結果になっているのだろうな。いやまぁ、所々違ったりしなくもないけど、そこまで調べるのは普通に面倒だし。


ただなぁ………


「現実そのままというのは………」


ワールドシュミレーターを作ってみたは良いものの、少し、いや、あまりにも変わり映えが無さ過ぎる。なんだ、このまま100年後の世界でも構築してみればいいのか?100年後の地球に文明の火が灯っていなければ世界が何処かで終了している証左だったりする?でも別になぁ………世界が終わった所で私に解決とか無理だし………


「………あ、そうですわ」


一つ良いことを思いついた。


「とりあえず世界は一度リセットして、と………」


ワールドシュミレーターを一度リセットする。………うーん、私が作った世界における世界シュミレーション仮説が証明されてしまった………そうなると世界5分前仮説って本当にありそうで怖いなぁ。例えそうだったとしてもどうにもならないけどさぁ。


「で、魔力の蔓延る世界に、と………」


まぁだから何という感じで気にもせず、普通に世界を再構築する。その際、新しくラプラスの悪魔を一万体程増員し、世界構築のデータの元になったイ型世界に乏しい魔力という資源を増強し、ロ型世界に程近い魔力が蔓延る世界にしてしまう。そう。私の思い付いた良いこととは、イ型世界をロ型世界のように、魔法の存在する世界にする事である。


これはやり甲斐がある。魔力というのは万能性に富んだ資源なのでラプラスの悪魔を一万体を増員したが、それでも足りるか分からないぞ。いや、むしろ生命体一つ一つに配備されているラプラスの悪魔が魔力による現象改変を補助して、魔力担当のラプラスの悪魔達は魔力の動きそのものだけを行えばいけるのでは………?ふふ、テンション上がってきた。


「やはりわたくし天才では………?」


そうして自画自賛で自惚れながらも、私はワールドシュミレーターをどんどん改良していくのだった。












ワールドシュミレーターを改良し始めてから2週間後の5月28日。前々からちまちまと魔力を注ぎ続けている第七回目のウロボロスメタルが精製が完了し、第八回目のウロボロス精製が始まったこの日。私はついに、一つの世界を作り上げたのだ。もうやってる事が神様と同じなのだが、まぁ権能とか使えてるし実質神様みたいなもんではある。


「んー………処理も良好、バグは発見出来ませんし………デバッグもうちの子達にやらせて完璧ですし………」


元々構築されていた世界に魔法的な要素を司るラプラスの悪魔達を投入してから世界を再構築しただけではあるが、たったそれだけだと言うのに地球の文明がまるっきり違っていて、内心ちょっとだけびっくりしている。どこぞの神様が7日間で世界を作ったのは凄かったんだなぁ。


あそうだ。何となくただカッコいいからという理由………だけでは無いが、現象、法則、属性、概念などを司るラプラスの悪魔達を、ワールドシュミレーター内で"神"として確立させていたりする。例えば、万有引力を司るラプラスの悪魔が居るとする。つまりそいつは重力を司る神(ラプラスの悪魔)という事になる。また、重力属性の魔法を司る神(ラプラスの悪魔)も同じく重力を司る神として確立させている。八百万の神的な感じにしようかと思って。


まぁ、同じように"重力を司る神"であったとしても得意分野が違ってくるので問題無いだろう。具体例を挙げるとするなら、万有引力が由来となる重力神は由来に関連する"落下"という性質が強く出ており、重力属性由来の重力神は元々が魔法由来であると言う事で"重力操作"という性質が強く出ている、と言った感じである。こういう風にしたら棲み分けが出来るじゃろ〜とかいう軽い気持ちでやってみたが、案外上手くいったものだ。


「これ………ワールドシュミレーターの中に入りたいですわね………」


そうして私の作り上げた世界を覗いていると、少しずつ、この目の前の世界の内側に入りたくなってくるのは不思議な感覚である。例えるなら、人形の家を作ってその中に入ってみたくなる、みたいな感じだろうか。それか、建築ゲームでめちゃめちゃ上手な建築というか一つの街みたいな世界を見つけて実際に入ってみたくなる、みたいな………?まぁ兎に角、そういう感じなのだ。


「まぁ………入れるとは思いますけれど………」


ワールドシュミレーターの本体そのものは転移悪魔アップデート由来の、というか転移悪魔アップデートそのものの悪魔の内部に存在する亜空間にワールドシュミレーターは存在しており、その内部にあるラプラスの悪魔の塊こそがワールドシュミレーターの本体である。その外見は………控えめに言って、肉塊である。悪魔は精神の方が優先される種族ではあるが、現世へ物理的な接触を行う為の肉体が存在しているので、ワールドシュミレーターの本体は無数のラプラスの悪魔そのものが犇めき合った肉の塊なのである。見せられないよとかいう次元ではないので亜空間内部にあるのだ。


んで、ワールドシュミレーターの内部には一つの世界が広がっているが、その内部を見る方法は単純明快。ワールドシュミレーターを構成するラプラスの悪魔の内の一体を監視要員として、第五アップデートに世界内部の映像を映すだけである。わざわざワールドシュミレーターの内部を把握する為だけに、何かしらの新しい魔法を作るまでもない。


閑話休題。それで、結局の所ワールドシュミレーターの内部に入れるかどうかだが………多分、普通に入れる。ワールドシュミレーターの内側は、概念的には一つの"世界"そのものだ。第二の現実、と言っても良いかもしれない。ロ型世界における魔界のような、同じ世界の内側にありながらもアクセス方法が限られている異空間のような、ちょっと複雑な立ち位置にあるのが、今のワールドシュミレーターの内部空間なのである。


つまり、転移悪魔アップデートで入れるのだ。これと言った抵抗も無く、かなりすんなりと。何せ、私はワールドシュミレーターという"一つの世界"を作り出した神そのものだ。私が作ったモノの中に入るのだから、私に不利な世界では無いだろう。むしろ、ワールドシュミレーター内部の万象全てを司るラプラスの悪魔達を支配出来る私がこのワールドシュミレーター内部で負ける要因など、皆無。絶対と言い切って良いほどに、存在しない。私の領域のような世界だしな、ワールドシュミレーターの中。


「後は………もう少し、ですわね」


………実は、なんというか。特に大層な目的もなくワールドシュミレーターを作ったので、実は作り始めの頃、作ったは良いもののどうやって活用しようか全く考えていなかったのだ。………しかし今は、一つ、面白い使い方を思いついている。


初めは世界の把握の為にデータが欲しくて作っていた。そのデータを活用して何かが出来ないかとワールドシュミレーターが出来上がり、それじゃあつまらないからと魔力に満ちた世界にしてみた。そうして試行錯誤したこの世界は、紛れもなく偽りの世界。内部は一種の亜空間、異世界転移が出来るなら誰でも入れる、そんな簡素な擬似世界。しかし、そんな世界だからこそ出来る事というものもあるだろう?


「ふふふ………ステータスシステムも良好ですわね」


このワールドシュミレーターの内部世界には、ロ型世界にも無かったシステムが存在している。それこそがステータスシステム。RPGのゲームのようなレベルアップと、それに伴うステータスパラメーターの振り分けが可能となる、そんなシステムである。


かつての私は嘆いた。ステータスパラメーターとか、具体的には相手の筋力の総合力とか素早さを示すのは何処を指針にすりゃいいのかとか、一体どうやって表示するの無理じゃん………みたいな事を。レベルアップみたいなのも何を指針にしてレベルアップさせればいいのさ基準が皆無過ぎてエグい。魔法じゃそんなの作るの嫌過ぎるし面倒過ぎるだろ、と。じゃあどうするか。そんなもん簡単だ。一言で済む。


権能で作ってしまえばいい。それだけ。


仕組みは簡単。まずレベルアップの方だが、イ型世界のロ型世界に共通して存在している『ステータス』のうち、『魔力量』というステータスを参考にして作っている。ちなみに、魔力量が10増加する事にレベルが一つ上昇する仕組みだ。今の私のステータスは後で確認しておこう。でも1000以上あるのは既に確定なので、私がワールドシュミレーター内部に入ると最低でも100レベルという事になるので、まぁ多分もっと行くだろう。


そしてステータスパラメーターの方だが、こちらはもう基準となる値、というのを作るのをやめた。そして物理的な強化、というのもやめた。行われるのは概念的な強化である。と言っても、そのやる事は単純明快。生き物一つ一つに配備されているラプラスの悪魔が、その配備された生き物の数値を書き換えるだけである。例えばSTRというパラメーターがあったとして、その値が一つ増えるごとに筋力という数値が×0.1ずつ強化されるのだ。元々の値を1.0として、少しずつ少しずつ掛け算の値が増えていくのである。勿論ながら元の値、即ち元の筋力が増えれば、その分だけ強化は更に効果を発揮していくのである。こうすれば、皆で共通すべき一定の基準は皆無だし、純粋な強化の倍率のみを扱えばいいので仕組みとしても分かりやすい。


ちなみに予定では、ステータスパラメーターを値の最大値を上昇させられるようにした値である『parameter point』略してPPが、1回のレベルアップにつき10ポイント分得られるような設定になっている。つまり私の場合、最低でも1000ポイント分は得られる訳である。そして、例えばそれをSTRに全て突っ込んだ場合、その際の強化倍率は私の素の筋力×100。つまり100倍の筋力を手に入れられる訳である。例え元の私の身体能力がゴミのようであったとしても、100倍もの強化が行われれば相当なものだ。


「まぁ………魔法使いの方がレベルが高くなってしまうのは仕様上仕方ないですけれど、戦士系は身体能力強化系のスキルのお陰で元の数値が高いですし………まぁ、良い塩梅なのではなくって?」


100倍なんて値を出せる術など、私の持つ固有属性である牛乳魔法、その内の一つである強化レインフォー骨骼スド・ボーンの骨強化の魔法くらいしか存在していない領域である。そもそも強化レインフォー骨骼スド・ボーンは、"骨"という限られた部位のみを強化するという限定があるが故にそれだけの強化率を叩き出せるのだ。そうでないのに100倍とか………普通に破格でしょ??


話を戻すが、PPにより割り振れるステータスは全部で8つ。筋力のSTR、耐久のEND、敏捷のAGI、器用のDEX、知性のINT、精神のMND、抵抗のRES、そして幸運のLUCである。全て初期値は1だ。ただし、これらの値は全て割り振れるパラメーター群の話であり、他にもマスクデータとして魅力のCHAなどが、割り振れるパラメーターによって値が変動するHP、MP、SPなども、当然ながら存在している。


ちなみにステータス割り振りが行えるのは一定以上の、具体的には言語を用いて最低でも同種族との意思疎通を行い、ほんの僅かであろうと文明を持つ者にのみ限り、自分の意思でステータスを割り振れる仕組みになっている。それ以外の生物はステータスを理解できないと判断し、配備されているラプラスの悪魔が好き勝手にステータスを割り振るシステムになっている。そうしないとどうにもならないしな。


「スキル表記も………まぁ、こんなもんですわね」


そして、ゲームによくあるスキルだが、これはもうロ型世界及びイ型世界のステータスで閲覧可能な実績を、もうそのまま使用する事にした。具体的には実績に内包されたスキルを分割し、例えば魔力上昇系のスキル群で一つに纏めるとするならば、〈魔力強化Lv〇〇〉みたいにするのである。また、私で言うなら〈狼王恐乱〉のような特殊な系統のスキルはレベルの存在しないスキルとして扱われ、ユニークスキルもその範疇として扱う事とする。この辺の分け方が面倒だったので一纏めにしたのだ。


また、ワールドシュミレーター外部の存在が何かしら仮初の身体を使ってその内部に入り、その中で何かしらの言動を認められてスキルを獲得した場合、【擬似世界の加護】という形で微々たる補正をワールドシュミレーターの外でも受けられれようにしてある。言ってしまうなら、ゲームの中で得られた経験を現実にも引っ張ってこれるようなモノである。まぁ加護の補正は本来の効果の100分の1になるので、持ち出せたところでなぁという感じではあるのだが。


………何故、ワールドシュミレーター内部に仮初の身体で入る、などと言う話をしているのか。それはまぁ、仮初の身体で内部に入る予定があるからで。私1人だけ入るなら、別にそんな仕様は要らない訳で。


その理由は。


「VRMMO『Second Reality Online』。サービス開始準備、完了ですわねぇ………疲れましたわー」


VRMMOとは、仮想空間内の世界に専用デバイスで入り、実際に五感を使って一人称視点で遊ぶゲームのことだ。日本語での正式名称は「仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインゲーム」というらしく、仮想現実オンラインゲームの一種なのだとか。


私は、それを運営する側になろうと思う。


何故そんな事になったかと言えば、それは少し実験がしたかったからだ。実験といっても直接干渉する類の実験ではなく、どちらかと言えばデータを確保するタイプの実験である。つまり私は、ワールドシュミレーター内部に外部からの人を呼び込む為に、わざわざVRMMOと偽って世間の注目を浴び、多くのデータを得ようと画策している訳である。


何のデータが欲しいのかと言われたら、それは"人間"のデータ、そして"権能"のデータである。多くの人間を擬似世界に誘い込み、仮初の身体でゲームタイトル通りの第二の現実を送って貰い、その果てで『権能』を手に入れる人間はどれだけ居るのか。そしてどのような権能が存在するのか。私は、それが知りたいのだ。


だって、私が手に入れられたんだぞ?私みたいな一般人が、特に何かを考えている訳でも無い平凡な人間が、たった1人で権能に到達したのだぞ?なら、他の誰かもそうならないか気になるじゃないか。一応、ワールドシュミレーター内部世界には、各地に私がイ型世界で読んだ権能についての書物を丸々コピーして置いてある。しかしそれは"神"の権能について書かれた書物であり、人間が権能を扱う術を書いた書物じゃない。そもそも権能の使い方なんて書かれてないし。


あの本に書かれていたのは『権能とは、神が生まれ持って扱うことの出来る技術である』、という話だけ。しかし私は、その一文から権能へ到達した。ならば、他の人物も出来るのではないか?私に出来たのだから、他の人物にも扱えるのでは?そう思ったから、私はこうしてゲームを運営することにしたのである。ようは、私と同じく権能を扱える人間の仲間が欲しいと思ったのだ。いやまぁ、個人的にはこのゲームをソフィアにやらせて権能へ到達して欲しいという想いも無くは無いが、建前としては人間の権能保有者が欲しいという部分である。別に壮大なツンデレみたいなのでは無い。無いったら無い。


「ふふ………これでソフィアが真の権能に至ってくれれば………きひっ………あぁいえ、落ち着きなさいわたくし………ちょっと一回、バティンと戦った方が良いかしら………?」


プレイヤー達は全員、私がラプラスの悪魔やその他の悪魔群を融合させつつ機械のような形に改造して作ったヘッドセットを装着してもらい、ワールドシュミレーター内部に入ってもらうのだ。


具体的な機能の内部説明としては五段階ある。


①まずプレイヤーには個体識別用やセーフティ、データ管理などを統括するラプラスの悪魔を一番上としたヘッドセットを装着してもらう。


②ヘッドセット装着時にプレイヤーとヘッドセットでの契約、つまり悪魔との取引を行ってもらい、代償としてプレイヤーの魂の扱いを限定的な範囲で可能と出来るようにする。


③その契約の代償によって得られた魂の限定的な範囲で扱える権利によってプレイヤーの魂を複製、そしてワールドシュミレーター内部の仮初の肉体、アバターという名前のラプラスの悪魔に複製した魂を転写する。


④プレイヤーの意識を一時的に停止。その後、ワールドシュミレーター内に肉体、魂魄が揃っているという事実を用いて、プレイヤーの精神をワールドシュミレーター内部のアバターへと移す。ゲーム内で精神破壊などを行われる、精神誘導を行使される、洗脳させられる、などの万が一に備えて契約をする事で精神保護を行う為、精神を移しても魔法的な干渉による精神負荷は問題無し。物理的精神負荷は無視。


⑤仮初の肉体、移された精神、転写複製された魂の同期を行い、ワールドシュミレーター内部での活動を開始する。


といった感じの手順を10秒程度で完了し、ゲーム内という名の亜空間内へ侵入するのである。後はもう、ログアウト時に精神だけを移せばログインログアウトが自由に可能である。つまりこの五段階の手順は、初回ログインの時の手順なのである。


ちなみに私のゲームである『Second Reality Online』に"キャラメイク"とかいう機能は存在しない。プレイヤーの設定として、異世界転移者である、というものがあるからだ。ゲームタイトルが"第二の現実"であるのはそういう意味なのである。いやまぁ、髪の色とか瞳の色とかくらいは変更させてあげるけれど、身体の形は変えません。プレイヤー本人とワールドシュミレーター内部のアバターとの間で身体の形に差異があると、精神の移行が上手くいかないんだよ。だからやらせねぇ。嫌がらせとか私がやりたく無いとかじゃなくて、安全の為に出来ねぇからな!


そしてゲームとして重要なリスポーン機能もバッチリだ。アバターはラプラスの悪魔、ならば私の権能の範疇、そうであるなら私の権能により蘇生が可能、という訳である。ワールドシュミレーター内部は何処までも私の世界、私の領域である為、蘇生だろうがなんだろうが私の消費するエネルギーはゼロである。現実で悪魔達を無限リスポーンさせる際に消費ゼロは無理だがな!まぁ消費って言ってもそこまで多い消費でも無いから、現実でも数千万体くらいなら蘇生し続けられるけど。


ちなみにだが、私のゲームにデスペナルティはちゃんとある。まず、死んだらその場で死体が残る。他のゲームにあるようなインベントリ機能が存在しないので、死亡時点でアイテムロストみたいなもんだ。しかも人に殺されたら死体が残るので、アイテムを盗まれたりするのである。収納ストレージとかの魔法を使って保管しているものは盗もうにも盗めないけど。ゲーム難易度が高いと思われるかもしれないが、このゲームのコンセプトは"第二の現実"。蘇生できるだけありがたいと思って欲しい。初めはプレイヤーも死んだらキャラロストにしてやろうかと思ったくらいだが、流石に鬼畜ゲーム過ぎてやる人が居なくなりそうなのでやめたのだ。


「まずは………宣伝ですわね」


宣伝、宣伝か………どうやってやれば良いだろう………?むしろこういう宣伝ってどうやってするべきなのだろう………?


「………うーん………面倒ですし、ヘッドセットだけ売りつけましょう」


宣伝は面倒なのでヘッドセット(悪魔改造融合体)を売りつけることにする。値段は………あー、1万円とかでどうかな。特に作る苦労とか無いし………そうだ。新しく『Second Reality Online』のホームページをラプラスの悪魔を介して作って個人情報を偽装しつつ、そこで購入手続きをして1万円を払ったら、全自動で生産して1時間後にでも転移でパパッと宅配するようなシステムを作ってしまおう。そうすりゃ私が追加を直接作る必要もないし。まぁ売上は、ちまちま確認する感じで………うん、まぁそんな感じで。


さーて………ホームページってどう作りゃいいのかな………調べよーっと。









ちまちま確認するのを忘れた1週間後、私は驚愕したのだった。

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