私にとってのアルコールは牛乳だからお酒はいりません。まず未成年なので


私は家に帰って来るとささっとシャワーを浴びて、家族に今日は友達と外で食べてくるって伝えてから、悪魔の姿と服装になってからソフィアの家のリビングに転移する。


「ソフィアー、遊びに来ましたわよー」


「おぉテア!歓迎するぞ!」


転移先は大きなマンションの一室。ここはセキュリティが非常に高くて部屋が広い、割とお高いマンションなのだが、ソフィアは割と高収入らしいのでこんな所に住めるのだろう。悪魔もそうだけど、吸血鬼も人間のスペックとか普通に越えてるし、そら人間並みの仕事宛てがわれても余裕でしょうよ。


「んー、これから出かけるんじゃないんですの?」


「そうじゃな。しかし、出かけるまで時間はあるからの。ほれ、お主もやるか?」


「やりますわー」


そんなリビングのソファにだらしなく寝転がっていたのは、私がここ最近出会ったこのイ型世界産の吸血鬼、ソフィア・アマリリス=レッドライオンだ。腰まで伸びる程に長く煌めくような美しさの金髪を結ぶこともなく雑に流し、まるで幼子のようなぷにロリ体型のイカっ腹を惜しげもなく見せつけるようなゆるーいシャツ、下は下着も着けないみたいな服装をしている、絶世の美幼女みたいなのが、私の新しい友人?友吸血鬼?なのである。別に格好へのツッコミはしない。それは私にもカウンターがくるので。


私はナチュラルにリビングに複数台設置されているソフィアのパソコンと映像出力用のテレビのうちの一つずつを起動して、ナチュラルにソフィアの隣に座り込む。ソフィアの家のソファは結構大きいので、こうして横に2人で並んでも全然余裕がある。ソフィアがロリなのもあるだろうけど。


「妾は『VERTEX』の世界1位じゃからなー。テア1人くらいキャリーしてやるわい」


「そんなん言われても………わたくしだって、一応は『VERTEX』の世界2位なのですけれど?」


説明しよう!『VERTEX』とは!最近流行りのFPSバトルロワイヤルゲームの事である!"ヒーロー"と呼ばれるキャラを1人だけ選択し、オンラインでランダムに選出された味方パーティー3人で頂点、つまりチャンピオンを目指すゲームの事である!キャラの一人一人にアクティブスキルとパッシブスキル、そして必殺技のスペシャルスキルが存在しており、それが他のFPSやバトルロワイヤルとの相違点だろう!ヒーローの組み合わせによってはシナジーを発揮したりするので凄い楽しいぞ!


ちなみにランキングも存在しており、下からカッパー、シルバー、ゴールド、ダイヤモンド、オブシディアン、ビクターとなっている。んで、そんな大人気ゲームであるので、当然ながらランキングの上位はかなり熾烈だ。合計ポイントが多い人程にランキングが高いので、つまりそこに至るまでの時間と経験、そして強さが如実に現れる指針でもあろう。そして、そんな大人気ゲームで私はビクターの2位、ソフィアはビクターの1位、つまり世界1位と世界2位という訳である。


悪魔の身体能力に反射速度、『器用』の権能による超絶技巧が組み合わさった私は無敵である。しかも私、戦闘関連はチーターと真正面からでも戦えるぞ?ソフィアとの正面戦闘でも全然勝てる。なのに順位がソフィアの下なのは、単純にやってる時間が違うからだろうけど。だって、ねぇ?ソフィアの家にわざわざ向かわないとゲーム出来ないから、ゲームの総時間に差があるんですよね。なにせ私、マイパソコンを持ってないので。普段使ってるのもソフィアが買ってくれたやつで、ソフィアの家に置いてあるし。


「じゃけどお主、基本特攻ではないか。マップ把握もしておらんし、敵の動きの予測もしとらん。安置読みもしとらんし………だから妾よりキル数が低いんじゃよー?」


「脳筋で悪かったですわね」


「まぁその分、テアは操作が妾以上に完璧じゃからの。エイムはまるで頭に吸い込まれるよう、回避行動や移動は側から見たら動きが人外過ぎてキモい、ウォールハックでもしとるのかと言いたくなるような本能索敵。戦闘極振りじゃな。流石、世界1位の妾よりチートみたいな動きだと掲示板で言われるだけはある」


「それを言ったら、ソフィアは戦略とか予測とかがエグ過ぎて卵になったとか言われてるではありませんか。エイムも操作もわたくし並みにキモいと書かれてるの見ましたわよー?」


「お主のよりマシじゃろ。お主の動きはあり得んくらい器用過ぎてキモいんじゃ」


「ありがとうございますわー。部隊参加しましたわよー」


「よーし!時間的に3回までは行けるぞ!」


「なんならわたくしが転移でもして差し上げましょうか?」


「おほー!それならば5回は行けるな!オールチャンピオンじゃ!クソチーター共をぶっ殺して5連勝するぞ!」


「まぁチーターはデストロイオブデストロイですけれど、マジで5回やるんですの?この後飲みに行くんじゃありませんの?大丈夫ですの?」


「ま、多分大丈夫じゃろ!遅れても死ぬわけじゃないしの!妾ってば不老不死じゃし!」


わたくしは死にますけれど………」


「不老なんじゃろ?後は不死になるんじゃな!妾のレベルまでやって来ると良い!」


「レベルたっけぇ要求ですわねぇ………」


まぁ今の私は確かに不老ではある。悪魔の肉体に種族毎変化していた影響なのか老化が非常に遅くなっているらしいとアリスに言われたし自分でも調べたら本当にそうらしいし、更には無制限に生成される魔力のせいで肉体の老化が回復しているらしいので、実質不老みたいなもんである。不死に関しては今どうにかしてるので待ってほしい。


「む?今倒したこやつ、チーターではないか?弾が妾の頭に吸い込まれてきよったぞ」


「そうなんですのねぇ」


「お主はお主でホーミングをナチュラルに避けるでないわ。相手のチーターが驚いて止まっておるではないか」


「むしろホーミングの方が避けやすいまでありますわ」


だって同じ所しか狙われないし。狙われる場所が常に同じなんだったら、そんなん避けられるでしょ?まぁ2割くらい『器用』の権能による器用さ超絶強化のお陰だけど、残り8割は悪魔の身体能力と反射神経と身体操作能力の賜物だ。戦闘と勝利の欲望に身を任せればこれくらいは自然に避けられるんですわねぇ。


つーか、ゲームの中身を究極的に言うと、それはプログラムと言う名の数字と文字の羅列式でしょう?そこを改竄したり介入したり想定外を入れ込んだりするのがチートってやつで、そしてそういうチートだって所詮は数字と文字の羅列な訳。それじゃあ後はもう、そのゲームの発揮できる最大限の数式と文字式を組み合わせて使い、相手の違法な数式と文字式を上回れば良いわけでしょ?しかも相手はチートを使ってるから立ち回りとか操作が単純に下手な奴らだぜ?


相手がゲームのスペックを100%引き出さずにいるんだから、こっちが100%を引き出してしまえばそれで勝てる。分かりやすいでしょ?想定されてる最大限のスペックで、ズルをしてる相手を真正面から殺す。たまーにチートとかいう外付けのスペックを持ち出してる奴がいるけれど、それだって相手のスペック以上を叩き出せばいいだけ。


ふふ、『器用』でしょ?これが権能の実力よ。


「というか、チーターの方達は立ち回りと操作が下手くそなんですのよ。その分避けやすいんですわ」


「妾は精々、チーターの側にグレネードを放り投げるくらいしか出来ないんじゃよなぁ」


「加速チートとかウォールハックとか相手によくそんなこと出来ますわねぇ………わたくし、真正面からエイムのゴリ押ししか出来ませんわ」


「こんなんただの予測じゃし。プロゲーマーでも出来るじゃろ、多分」


「無理だと思いますけれどねぇ………」


瞬間移動みたいってかマジで瞬間移動してる加速チートの動きを完璧に読んで行き先にグレネード三つくらい投げ込んだり、完全にウォールハックでこっちを見つけてる相手の位置を把握してグレネードをぶち込んだりするの、普通にすっごい殺意高いと思いますけど。まぁ私は私で身体能力と反射速度のゴリ押しで真正面から殺しますけれど。


「ソフィアは毎度毎度、銃の弾より投擲物の方が多いですわよねぇ」


「グレネード特化のキャラじゃしなぁ。そんなん言うたらテア、お主は分身作るだけの評価ひっくいキャラ使うとるではないか」


「だって楽しいんですものー。ほら、相手がわたくしの策で貶められてるのって………興奮しませんこと?」


「こやつやはりドSなんじゃよなぁ………」


そんな風にゲームをしていたら、段々と飲みに行く事を半ば忘れてしまうのは既定路線であるようで………


「………おっ?!やべっ!テア!飲みに行く時間じゃ!」


「えっ?!嘘っ!?もうそんな時間なんですの?!」


「あっぶなかったわ!試合始まる前で助かったのじゃ!」


「え、それでわたくしは何処に転移すればよろしくて?!」


「妾の会社の屋上で頼む!無論隠蔽はバッチリでの!」


「了解しましたわ!さぁ行きますわよ!!」


そうして私とソフィアは、マジで急いで目的地まで向かうのだった。













「………それで、こうして遅れたわけねぇ?」


「そうなのじゃ………滅相もない………」


「んー、これ美味そうですわね………」


「おいテア、お主のせいでもあるのじゃぞ。ちっとは申し訳なくならんか」


「えー、だってわたくし〜、ソフィアに連れてこられただけの未成年ですし〜。責任は大人が取ってくださいまし〜」


「ちょ、お主なぁ!お主は学生で妾は社会人かもしれんがの、妾とお主の年齢そんな変わらんじゃろ!ちゅーか同じじゃろ!」


「やーい、ロリババア詐欺〜」


「うるさいわぁ!」


私とソフィアがめっちゃ急いで辿り着いたのは割と普通の居酒屋で、私はソフィアに連れられるまま指定の席に着くと、そこには、まるで綺麗で透き通った海のような水色の長いポニーテールと、深海のような深くも恐ろしいように感じられる紺色の瞳、顔には緑色の可愛らしい眼鏡を掛けて、服装は白と水色がグラデーションになっている美しいワンピースを着ている、まさに美女という人が居た。


彼女は『八尾美やおび 睡蓮すいれん』というらしく、ソフィアと同じく幻想の存在であり、尚且つ人間大好きな人らしい。まぁ今は私も似たようなもんだけど。ちなみに彼女の種族は"人魚"。中でも特に日本の人魚としての特性を強く保有しているらしく、彼女の肉を食べた存在は不老不死になる………らしい。食べさせたことがないので分からないそうだ。当人は不老不死なので多分不老不死みたいなモノになるとは思うが。


そして、彼女は私やソフィアより圧倒的に歳上。現在の彼女は200歳以上なのだとか。ちなみにソフィアは私と同い年の16歳である。16年前という比較的近い年代に生まれたから、ソフィアはこんなに人間大好きで人間の欲望そのままみたいな姿なのだろう。それに反して八尾美さんは200年前の人間達のイメージを元に海の中の霊脈で生まれたらしいが、それでも人間の事を段々と好きになっていったそうで、今はこうして人間社会に紛れて生活する程度には好きらしい。


んで、ね。到着してすぐ、ソフィアが八尾美さんの顔を見て、一旦目を閉じて深呼吸してからもう一回八尾美さんの顔を見て、そんで頭を抱えて唸り、最後には自分から正座になって座って、遅れてしまった理由を話し始めた………のが、さっきのソフィアの発言だ。私はソフィアに呼ばれただけで責任はソフィアにあるので反省はしない。


「2人とも、周りのお客さんの迷惑になっちゃうから、あんまり声を荒げないでねぇ?」


「了解なのじゃお母さん」


「分かりましたわお母さん」


「私は2人のお母さんじゃないのですけれどぉ………」


いや、ついママみを感じたから、身体と口が勝手に。ソフィアも同じ思考回路してるし許してほしい。


「それで、貴女がソフィアちゃんの、新しいお友達なのかしらぁ?」


「えぇ、はい。わたくしはキングプロテア・スカーレットですわ」


「ちなみに、ご種族はぁ?」


「ご職業みたいに聞かれましたわね………悪魔ですわ、悪魔。神に仇なす魔なる悪。まぁわたくし、悪事とか働きませんし、別に神にも恨みはありませんけれど」


ただし勝利と戦闘だけは本気でやる。


「まぁ、悪魔さんですか。私も初めて見ましたねぇ………」


「あら、そうなんですの?200年間で見たこととか無かったり?」


「えぇ、1人も………そもそも、私は人魚ですからぁ………しかも、生まれて100年くらいは、海の中で引きこもっていたのでぇ………最近になって、人間達が海を調べ始めるまでは、ちょくちょく陸を観察したりはしてましたけれどぉ………」


「あぁ、そういう事なんですのね」


この惑星の科学がどんどん発達して、未知の世界であった海の中の奥深くをまでを調べられるようにまでなってしまったから、陸に上がって見つからないようにしたって事ね。そら大変だなぁ。


「致し方ない、というべきですかしら」


「そうですねぇ。私としても、人間達が海の世界に進出したのは嬉しいですよぉ?」


そんな周りの人が聞いたら頭の上にハテナマーク量産しそうな話をしていると、私達はまぁ大体注文したいものが決まったという事で、八尾美さんが手を挙げて店員さんを呼んで、八尾美さんはビールは2本、海鮮サラダ、海老の天ぷらを、ソフィアは焼き鳥と赤ワインを、私はざるそばを注文する。私は夕食の代わりでもあるので食事を一つ頼んでおこうと思って蕎麦にした。他に欲しいものがあるなら追加で注文すりゃいいし。


そうして注文して待っていれば、そんなに時間がかかるまでもなく注文の品が届き、私達の座っている机の上が幾つもの皿で埋められていく。うーん、居酒屋来るの初めてだけど、こんな感じなのね。


「じゃ、みんなの注文したものが来たし、乾杯しましょうかぁ?」


「うむ!乾杯じゃ!」


「まぁわたくしは水ですけれどねー」


かんぱーい、とグラスを合わせてから、私達は自分の飲み物を飲んでいく。八尾美さんはビール、ソフィアは赤ワイン、私は水だ。私未成年なんでお酒は飲みません。お酒飲むくらいなら自分で牛乳買ってきて飲みますよ。いや買うまでもないか。自分で生成出来るし。


「っぷはー!美味しいですねぇ!」


「うむ………やはり赤ワインは良い………吸血衝動が誤魔化せる………」


「ソフィアのそれ、大変ですわよねぇ」


「む、お主に言われたくないぞお主に。戦闘狂の負けず嫌いの癖して」


「あら、やっぱりキングプロテアちゃんも衝動とかあったりするのねぇ」


「ん、八尾美さんはどうなんですの?」


「私はー、水中に居ないと落ち着かないんですよねぇ。だから、借りてるマンションはお風呂が大っきくて、プールを借りれる場所を選んでますぅ」


「うーむ、我ら幻想の存在に課せられた使命のような物なのだろうか………」


「まぁ、恐らくですけれど、人間達のイメージ………というか、決めつけみたいなのがあるんだと思いますわ。吸血鬼は血を飲むものだし、人魚は水の中に居るもの………みたいな感じなんですわ」


「うむ?そうなるとテアの衝動はどうなるのだ?悪魔と戦いなどあまり関係なかろう?」


「うーん………多分、悪魔のイメージが、人間毎で結構違ってて………こう、形になる時に、混ぜこぜになって………人間の根源的な、こう、暴力的な………?のが、現れた、とか………?ごめんなさい。よく分かりませんわ」


「なんとなく言いたい事は分かったがの。もうちっとどうにかならんかったのか?」


「うるせーですわ」






そうして飲んだり食べたり駄弁ったりする事、数時間。現在時刻は凡そ9時。7時くらいからここに居るので2時間はここに居る事になる。


「んー、わたくし、そろそろ帰りますわ」


「おぉ、そうじゃったな。テアは早寝早起きなんじゃった」


「あらぁ〜、偉い子ねぇ」


ソフィアはお酒が入っていても特に言動も正確も変わらず特にアルコールの影響は無いように見えるが、八尾美さんはもう何本分ものアルコールを摂取しているせいか、元から最後の言葉がふわふわへにゃへにゃしてたのに、なんか更にふにゃふにゃになっている。言葉だけでなく表情もふにふにだ。こんな酔ってる美女とかお持ち帰りされちゃうねぇ。


「なんか、八尾美さんは帰り道でお持ち帰りされそうですわね」


「大丈夫じゃろ。これでも200年生きた人魚じゃぞ?物語と違って自力で自分の下半身を変化させて、それを1日中常に、寝てても酔ってても維持してるくらいじゃぞ?酔っていようがその辺のチンピラに負けるとは思えん」


「いえ、わたくしがお持ち帰りますわ」


「なんじゃ、悪魔と人魚のハーフでも作るのかの?」


「あらぁ〜、私、テアちゃんのお嫁さんになっちゃう〜」


「あ、わたくしが旦那側なんですのね………」


まぁ男だから旦那で間違ってないけども。


「ん〜、ソフィアちゃんも一緒に作りましょ〜。悪魔と吸血鬼のハーフも作っちゃいましょ〜?」


「え、悪魔の子など孕みとうないとでも返せば良いのか?」


「一体何処の妖狐のロリババアなんですかしらねぇ」


そんな会話をしている最中も私は帰宅準備を進め、もう時間だからとそそくさと家へ帰る事にした。


「それじゃあ、わたくしはこの辺でお暇したしますわね」


「む、テア、もう行くのか?まぁよい。また明日じゃ!」


「またねぇ〜、テアちゃーん」


「えぇ。またお会いしましょう、八尾美さん。ソフィアも、また明日ですわ〜」


私はそのまま居酒屋を後にして、路地裏の方の一目のない場所に移動してから家まで転移で帰るのだった。











んで、居酒屋で同族(という事になっているが、人のイメージから生まれた存在という部分的に間違っていない。違いはイメージの元になった人数が惑星規模か1人かの違い)と話し合ったりした日の翌日、特に何事も無い5月11日の土曜日。私は朝っぱら、具体的には朝5時にソフィアのマンションにまで転移する。


「ソフィア、来ましたわ」


「お、よく来たの、テアよ」


転移先は当然リビング。ソフィアがいつも通りにソファできぐだーっとしているのを無視して、いつもゲームをする私の定位置に座り込む。全然ソフィアの所有物なのだが、なんかもう私のモノみたいだよね。


「ソフィア………貴女、いつものように寝てませんわね?」


「当たり前じゃ。こちとら夜の支配者、血を喰らう怪物じゃぞ。まぁ最悪、妾は寝なくても良いからの………いやまぁ眠らんと普通に眠いし、今夜は普通に徹夜しただけじゃし、今思っくそ眠いがの」


「あぁ、血を喰らう怪物が纏めて吸血鬼でしたわね。ソフィアは首から吸ったりするんですの?」


「血の吸い方なぞ無限にある。何なら視線を向けるだけで血くらい吸えるからの」


「あぁ、確か首から吸うのって民間伝承に無いんでしたっけ?」


「そうじゃのう。なんなら妾、血液の塊が人の形をしてるだけじゃし」


「あ、そうなんですのね………いえ、まぁ、わたくしも精神体が主なので、この肉体は人の形を模しただけの肉の塊ですけれども」


「悪魔というのも、やはり常識では計れぬ存在じゃよなぁ」


「何ならわたくし、やろうと思えば神とかになれますわよ」


実際の原点において、"悪魔"という存在は、その宗教における邪神などを示す言葉でもある。それは自らの信奉する神と相反する、又は受け入れられない宗教観で形作られる他宗教の神を、一方的に貶める際に使用される。故に、結構有名な神が悪魔と呼ばれていたりする。まぁ私としては、誰かが何処かの神を悪魔と呼称する分だけ、その神の模造を悪魔として生誕させられるから、私を実質その神以上の存在へ昇華させられるので、むしろもっとやって欲しい。


極論を言うなら、この世界の誰かが、何処かで、ほんの少しでも神を"悪魔"と呼んだなら、その時点で私の権能は力を発揮できるんだよ。最悪の場合、私自身が悪魔の設定みたいなのを作ってしまえばそれだけで良いのだ。ただし沢山の人にそう呼ばれてた方が単体だけで高出力であるので、自分で作ったりとか有名じゃないのはあまり使わない。何より、コスパの悪い悪魔を創造するのはあまりにもリソースの無駄なのだ。確かに私は無限の魔力を得られるようにしているが、それは決して無制限という訳では無い。精製に使用された魔力以上の魔力を精製して、その魔力を溜め込んでいるだけなのだ。あまりに無駄遣いをし過ぎると枯渇するのは目に見えている。だからこそ、コスパの悪い悪魔を創造する事は滅多に無いのである。


「神で連想いたしましたけれど、ソフィアは十字架とか銀とか聖水とか、平気なんですの?」


「平気に決まっておるだろう。十字架なんぞ罪の意識が無ければ無意味じゃ。初めっから吸血鬼なんじゃし、人も殺した事などない妾に罪の意識も何も無いわい。例え殺したとてそんなもんもないが。聖水も同じく無意味じゃよ。こちとらただの血の塊じゃぞ?水などかけられたところで痛くも痒くもないわ。銀も同じ理由で平気じゃな」


「まぁそんなもんですわよね」


ソフィア達は確かに、人間達のイメージを元に誕生した存在だ。しかしそれは、多くの人がこうである、という決めつけのようなイメージを元に、史実における伝承などの逸話や伝説などを加味して生まれた存在だ。一から百の全てが人間達の妄想の具現化という事は、決して無い。精々、人々の妄想が6割、伝説や伝承由来が4割とかだろう。本当にそうなのかは知らないが、少なくとも私はそうであると認識している。


「あ、そうじゃ。お主の性癖とか聞いてみたいんじゃが」


「えー………?」


「妾も教えるから、の?ダメ?」


「いえ、まぁ………良いですけれど………性癖、性癖………うーん………長い白髪で、姉属性で、妹が大好きで、例え死の淵でも妹を優先する子で、精神性やら心がやたら強くて………」


「なぁテアよ。もしかしなくてもそれ、特定の個人じゃよね??」


「特定の個人ですけれど??」


マイマスターですが何か??マスターは世界一可愛いが??


「お主がそんな風になる人間がおるんじゃのぉ………」


「マイマスターですわよ」


「マイマスター………マイマスター!?お主にご主人様が居ったのか?!」


「ふふん、妹様も可愛らしいですわよ」


実は私、銀髪美少女も好きなんだ………!それに、マスターの姉属性を補強する為にも、ちゃあんとマスター妹様の2人が揃ってなきゃね!というか、私が助けたんだぜ?私に助けられたんなら私の言うことを聞くべきだろ?だったら素直にペアで居るべきだよなぁ?へへっ、私は仲の良い姉妹も好きなんだ………!


………いや、まぁ。こんな雑な建前ではなく、私の本心や本音としても………あの可愛いらしい姉妹には、最後の最後、転生し続けてその魂が尽き果てて、彼女達が真の"果て"に至るまで。例え私が道半ばで朽ちようとも、あの2人にはとことんまでに幸せになってもらう義務があるのでね。絶対に逃しはしない。幸せになり尽くすまで幸せを味わい続けるのだな!ふはは!ま、私の扱いの分類としてはアリスも同じだし。私に助けられたのだから、最後の最後まで助けられ続けろって話だ。そうでなきゃ、何の為に助けたのか分からなくなるし。


「むぅ………一瞥くらいはしてみたいの………」


「ダメですわー」


あの美少女姉妹は私のモノですよ!渡しませんよ!まぁアリスもレイカもフェイも、誰一人として他人に渡す気はありませんけどね!みんな私のモノです!


「むー、見てみたいのぉ………」


「はいはいダメですわよ。それより、次はソフィアの番ですわよ。ほら、逃げないで性癖開示しなさいな」


「いや、逃げぬわ………妾はリョナとかが好きじゃの」


「え、性癖ってそっちですの??」


「いやまぁ、妾はお主みたいに特定の個人とかおらんしの。これはもう性的に興奮するジャンルの暴露をすべきじゃろ」


「すべきではないと思いますけれど」


しかも性的な興奮するジャンルで出てきたのリョナかよ。


「いやな?この前エロゲを漁っておったらな………そこで、それはそれは良い作品があったんじゃよ。不死身である吸血鬼の少女が、流血的な意味でも性的な意味でも酷い目に遭いながらダンジョン攻略するみたいなやつなんじゃけど………いやぁ、あれは良かった。正直あの子が現実に居てくれたら妾が娶っておったかもしれん。ぐちゃぐちゃにしながらえっちな事とかするかもしれん………!かわいい………!」


「うわぁ」


業の深い人間………じゃない吸血鬼だ。性癖偏差値65以上ありそう。引くわー。


「引くでないわ!そういうお主は何かないのかの?!」


「えー、そう言われましても………わたくし、戦闘と勝利以外で興奮できない女ですので………」


「うわぁ」


「え、何ですの」


何でこんなに引かれてるんだ。別に分からなくもないだろ。


「流石の妾も、現象に興奮するのは分からん………」


「………そもそもの話、悪魔は人間と精神構造から違いますので、性癖云々など言われましても………」


「あぁ………そういやそうじゃったの」


悪魔の精神構造は単純だ。欲求と呼べるモノがたった一つ、もしくは二つしか存在していない。しかしそれ程までに単純であるが故に、その欲求の大きさが桁違いに大きいのである。例えるのなら、ダムの水を蛇口として分散するか、ダムの水門から一気に放出するか、だろうか。最終的に使用される水量は一切変わらないが、しかし一度に放出される水の量と勢いがあまりにも違うのである。そういうもんなのだ。


「この話はここまでにしておこうかの………」


「それがいいですわ………」


まぁ今回の勝負ですが、私達が互いにダメージを受け合ったので引き分けだと思います。まる。

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