元ノ世界デ過ゴス日々

時差ボケならぬ異世界時差ボケみたいなのは無かったです


私と紫悠が元の世界へ帰る事の出来た日から3ヶ月後の5月9日。ちなみにこの日付は異世界でのモノであり、元の世界は2月とかその辺りだ。すまねぇ、私のスマホの日付と時間は異世界の日付にチューニングされてるんだ………一応元の世界のも見れるようにしてるけど、元の世界の方はあんまり見ないんだ………


ちなみに、私は事前にミナへ大体2年くらい宿の仕事が出来なくなるという旨を伝えてある。異世界というのは言っていないが遠く離れた異界出身であるとは教えており、その場所で2年近く居なくなっていたからその分の補填が2年くらいあるので、お仕事はその後になる、みたいな感じに濁しつつ嘘は吐かず伝えている。まぁ最悪5年くらいになる可能性もあるけどーとか言ったけど、その分はアリスとかレイカちゃんとかに補填して貰うわとか言われた。まぁそれは存分に使ってもろて。というかマスターと妹様は昼営業くらいしてもいいのでは?と思ったりする。お客さんが多いのって最近だと昼らしいから。


いやなんかね、私が夜営業で店に出なくなってから、夜営業のお客さんが減ってるらしいんだよね。私を見るのを楽しみにしていたお客さんだったり、私の相談サービスを利用する為に来てた人だったりがごっそり減った訳だ。まぁ今でも土日の夜は暇なのでたまに入ったりするんだけど、そん時はお客さんが一気に増えるらしいよ?まぁ私の次のシフトはミナがみんなに教えてるらしいから、私が店に出るタイミングでお客さん達がみんな来てるんだろう。いやぁ、私もちょっとした人気者ですなぁ………まぁ、改めてそういうのを把握するの、結構恥ずかしいけど。


「うぁー………」


ちょっと思い出して恥ずかしくなってきたので、話を切り替えよう。


………今の私が居るのは、紛れもない元の世界。魔法が一般的な能力として普及しておらず、科学という一般的な技術が発展した世界だ。しかし世界間の転移現象が起きている事から、恐らくは私と紫悠の転移してしまったあの異世界………紫悠と話し合った結果、元の世界を『イ型世界』、アリス達のいる異世界を『ロ型世界』といったように分類することになった。まぁ言うまでもなく"いろはにほへと"の順番である。


話を戻すが、恐らく『イ型世界』と『ロ型世界』は世界を構築するシステムというか、ルールが同じなのだと思われる。そうなると魔法の適性や実績関連のシステムも全く同じであり、となればこの世界にも魔法や実績やステータスはあるのだろうと推測している。というか、その辺歩いてる人に対してステータスの解析をして確認した。あ、勿論解析はアリスにしてもらいましたよ?この前ちょっと四連休が出来たので、その4日間丸ごと使って『ロ型世界』の人物を『イ型世界』へ転移させられるかという実験してたので、そのついでに。


ま、好奇心の塊であるアリスさんがこうして転移で『イ型世界』に来たら………ね。4日間ずーっと気になるモノがあったらしくって………私その4日間、ずーっとアリスさんに付き合って街中を探索してましたね………キングプロテア・スカーレットの姿で。


いやね?私はさ、ほら。『イ型世界』に居る時、人間の私って男なんすよ。んでね?私を4日間連れ回してたアリスさんはね、美形の多い異世界の基準で見てもトップレベルの、言ってしまえばあえかな美少女なんすよ。まぁ実際は触れたら落ちそうとかじゃなくて触れたら引っ張られそうな感じだけど。兎に角、そんな美少女(めちゃめちゃ楽しそう)と4日間もずーっと一緒に居るとか………無理です。知り合いに見られたら弄られること確定です。だからキングプロテアの姿になる必要があったんですね。


「んー………ちょっと雨降りそう………?」


ちなみに私は今、普通に学校の授業中である。さっきからボソボソ呟いているが、まぁ小声も小声なので大丈夫だろう。ちなみに異世界転移して戻って来た時とは違い、学年が一つ上がって高校2年生になっていたりする。大体私と紫悠が異世界転移したのが一月後半辺り………だったような?そっから3ヶ月ってか90日経過してるから、今は大体5月辺りだ。いやまぁ、スマホ見れば1発で分かるんだけどね?


「むぅ………次は体育………」


体育はまぁ、別に嫌いではないんだが。運動神経はある方だし、私は元から不器用でもない。今は『器用』の権能を獲得した影響で器用さは更に増しているし、何なら光属性の魔法で身体能力を強化してもいいし、最悪『悪魔』の権能で外骨格みたいな悪魔を創造して装備したっていい。方法なら幾らでもある。


ただ私、体力ないんですよねぇ………いえまぁ、ウェイトレスみたいな事をする程度の体力はあるんですよ。あれ割と体力勝負なんで。でもあれって、別に運動を全力でしてる訳じゃないでしょう?私は多分、スタミナのパラメーターの最大値が低いんですよ。回復はまぁまぁ早いかもしれませんが。だからだとは思いますけど、短いスパンで結構なスタミナを消費する運動は回復が追いつかないから向いていなくて、ほんの少しのスタミナをずーっと消費し続けるウェイトレスは出来る、みたいな感じなんだと思います。


ま、運動自体は嫌いじゃないですし?スポーツだってどちらかといえば好きな部類ですので、やりたくない訳じゃないんですけどね?ただし持久走、テメーは許さん。高校1年生の終わりにやらされたけど、あれは辛かった………辛かったから『悪魔』の権能を使って、透明で私以外からの物理的な接触が不可能な外骨格型の悪魔を創造し、自転車にした細工と同じように自動で走り続けてくれるようにしてたりした。ま、持久走の動きは実質走るだけなので、自動化も楽でしたね。私の意思に応じて動く機能は常備してたから怪しまれもしないだろう………怪しまれた所で、ファンタジーのアレコレをイ型世界の人達にどうにかできのかという話ではあったが。そも、ズルとは言うまい。何せどう解釈しても私の力だしな!


「ん、ありがとうございました」


そんな風にゆったりしていたら、いつの間にか今やっていた授業が終わったらしい。ま、最後の挨拶的なのをしたが、まだ授業中なので教室の外には出られない。私の高校では授業中に教室の外に出るのはダメなのだ。


また次は体育なので、私ら生徒は少ない休憩時間という名の授業の合間にさっさと着替えておかねばいけない。我が高校には更衣室が教員用のものしか無い為、女子は教室、男子は体育の実施場所で着替えるという事になっている。その為、授業終わりに女子の着替えが遅いと教室の中に男子が1人も入れないという事態が発生しかねない。女子は私達が着替えてても実施場所に来るのにね。不公平だよ。


っていうか、別に女子の着替えとか見ないよ。異世界行く前から見ないし、今となっては尚更見ないよ。女子の裸とか別に自分で見れるし………他人の全裸が見たいなら『悪魔』の権能で淫悪魔とか作るし。権能で作った悪魔は私の子供だから実質娘の全裸を観察する事になるけれど、まぁ自分の子だし。


「んー」


そんな感じに思考を雑に巡らせながら、私は体育の授業をしに向かうのだった。ちなみにやるのはバドミントンでした。楽しかったです、まる。













時間は跳んでその日の下校の時間。私は一応、アニメ部とかいう名前のただ自分達の好きな事をするだけの部活に所属しており、実は紫悠も美術部と兼任しつつアニメ部に所属している。が、今日は部活自体が無い。部活のある日は火曜と金曜の放課後だけなのだ。実にゆるくて個人的には好きである。


私は登下校に自転車を使っている。ちなみにマイ自転車は私の悪魔の改造により、完璧に安全な全自動運転が可能な自転車へと変貌している。最近のマイブームは自転車に乗りながら投影したスマホの画面を覗いて小説の続きを読む事だ。なんせ自転車に乗ってるだけでいいので暇なのだ。目新しい場所ならまだしも、既に1年は同じ道を通り続けているしな。道を変更すると帰るのに時間かかるからやりたくないし。


初めは転移で登下校しようと思ったのだが、改めて考えてそんな事をしたら転移してるのいつかバレそうだなーっと思ったので、登下校だけは素直にすることにしている。


ちなみに新しく『転移悪魔アップデート』、別名は第十二アップデートというのを作ってたりもする。"悪魔の門"を用いた空間転移システムだ。空間属性の適性を持つ悪魔一万体の融合体に、何ら異世界転移とは関連のない"悪魔の門"という概念を付与した事により、門というモノに内包されている"出入口"という概念で以って、空間属性の方向性を転移能力に特化したものがこれである。


また、このアップデートは他者にも異世界転移すら可能な転移権限を与えることができるのだ。むしろこれが本命まである。まぁ、魔力の消費や術式の構築は私側が行い、転移先の指定は使用者のイメージに左右される事になるが、そうしないと特定の場所にしか転移できなくなっちゃうしなぁ。まぁこの転移能力の貸出機能は紫悠にも異世界転移が出来るようにする為に作ったと言っても過言ではないので。こっちが本命とも言える。


それに私、転移自体は別にこんなアップデートにしなくても魔法使えば普通に転移出来るし、異世界転移だって今となっては単独で行使できるし。いやまぁ紫悠も空間属性の適性はあった筈だから、同じ世界同士での転移くらいなら出来そうではあるけれど。


「あれ、紫悠じゃん。部活は?」


「今日は無し。先生が用事あって出来ないっぽい」


「じゃあ一緒に帰るか」


「了解」


私が自転車を自転車置き場から出して帰ろうとした矢先に紫悠の姿が見えたので話しかけると、なんと今日は美術部の方の部活も無くなったらしい。ので、どうせなら一緒に帰る事にした。どうせならって言うか一緒に帰れるなら帰るようにしてるけども。


「うっし帰るぞー、早くー」


「ちょいと待っておれ………おし行くぞー」


「レッツゴー」


そう言いながら、私と紫悠は自転車を漕ぎ出した。私は自分で漕いでないし運転もしていないけど、兎に角漕ぎ出した。


そのまま軽い雑談を交えながら自転車を漕ぐ事数分程度。私と紫悠の登下校方向に帰る人はそこまで多くなく、既にちらほらと見かける程度に人は減っている。


「紫悠、そういや転移悪魔アップデートの調子はどう?」


「まぁ快適。割と気軽にあっち行けるし」


「まぁそういうコンセプトで作ったし。気軽な異世界転移を、ってイメージで」


「これって一度行った場所なら行けるんだよな?」


「まぁ行けますけど」


やろうと思えば一切行ったことの無い異世界に転移出来るとは言わない。そもそもの話、そんな事ををするには権能クラスの干渉力が必要だし、話しても意味は無い。ちなみにやり方としては、自分の司る概念を縁として異世界転移する感じだ。自身の司る概念が転移先に存在している限り、何処へでも転移可能………だと思う。ちょっとこれはまだ試していないので。いやまぁ、夏休みくらいになったら実験しますけどね?長期休みの間に異世界満喫しちゃいます。その為に宿題は私の子供達にやらせておくのでそちらも心配ご無用。ほら、私の子供達は実質私みたいな所あるし………だから自分でやってるみたいな所あるし………だって私の性質複製して生み出してるし………


「犯罪とかに使えそうだなぁ………」


「まぁ私に被害出ないなら何してもいいけど、この世界も一応魔法あるっぽいからね?魔法使いとかいるからね?」


「あれっ、そうなん?」


「まぁ、私が雑に調べた結果ではあるけど………多分ね」


私は今、この世界の全てに向けて私の子供達を派遣している。それは、この世界の把握の為の処置だ。そして当然ながら世界の把握にはこの地球という惑星も入っている。まぁ正直世界把握の本命は宇宙の方なんだけど、うちの子達はワープ航法が出来るので宇宙の果てまで到達するのも直ぐだろう。宇宙の外に何があるのかも気になるしね。


「だからまぁ、迂闊に魔法を使ってしまうと、もしかしたら魔法的な防衛に引っかかるかもだから、やめといた方が良いと思うよ。つーか、他人の技術を使って犯罪を犯すのはやめてね」


紫悠には『転移悪魔アップデート』の具体的な説明は出来ない。それはつまり他者の技術や知識を利用しているのがモロバレという事であり、そうなるとこの転移門は一体誰が作ったんだ?という疑惑に繋がる。そうなると私は紫悠の友人だから、謂れのない(ある)監視の目が私に対して向くかもしれないからやめてほしい。


「やらねぇって流石に」


「まぁ、そもそもこの世界、元々の魔力生成量が少ないから、紫悠は魔力回復しづらいだろうし………大丈夫か」


「葵は何かしてるから平気なんだっけか」


「まぁね」


今更言うまでもなく、悪魔炉心と永久悪魔アップデートのお陰である。本来の魔力回復は空間中に存在する魔力の素、研究者間では"魔素"と呼ばれるモノを皮膚から取り込み、取り込んだ魔素を使って魔力を生成する事により回復する………みたいな感じらしい。魔力回復量の高さとはつまり、体内に魔素を取り込む量と、取り込んだ魔素を魔力に変換する効率の事らしい。例えば【上位魔術師】の実績に内包されている〈魔力回復力上昇〉のスキルの場合、これは魔素を魔力に変換する効率を上げるタイプのスキルらしい。


ロ型世界だと世界的に魔素が豊富な為、凡そ6時間程度の睡眠を取っていれば魔力は回復しきっている。しかしイ型世界は魔素が薄く数少ない為、20日以上の時間をかけてゆっくりとしか回復しないようなのだ。私はちょっと参考にならなかったが紫悠を使って確認したので間違いはない。最低でもその程度の差がある訳だ。


「ま、エネルギー問題は自分で解決してくれたまえ」


『魔獣創造』のユニークスキルを上手に使えば、まぁそれくらいなら余裕だろうしね。様々な条件を満たす必要のある事を除けば、実質私の『悪魔』の権能と似たような事は出来そうだし。摂取したエネルギー以上のエネルギーを蓄える魔獣を作って、そのエネルギーを魔力に変換する魔獣を作って………みたいな感じで。まぁ本当に作れるのかどうかは知らないけれど、何とかなるんじゃねーかな。知らんけど。


権能で連想したけれど、実は最近、権能を行使する時に私の性別が女性の状態だと魔力消費が抑えられる事を発見した。これは恐らく、私の権能が悪魔を"生み出すモノ"であり、そして多くの神話においての"生み出すモノ"が女神である事に由来している影響だと思われる。由来というか、私が女神とは生み出すモノ、という認識があるのだろう。多分アニメとゲームのせいです。後は、権能を使う時に女の姿だったから女の姿の方がデフォルトなのだと認識されたか。まぁ正直、これはどっちもな気がしなくもないけれど。


兎に角、男の時の権能の魔力消費を10割とした時、女の時の魔力消費は8割程度になるのだ。権能レベルの魔力量で2割の削減が出来るのは、例え色々な細工のお陰で無制限の魔力があるとしても非常に嬉しい事である。10と8ならそこまでの差異は無いけれど、1000万と800万じゃかなり違うでしょう?桁数が増えると更に差異が増えてくんだから、そりゃあ出来るだけ魔力を抑えて使いたいでしょ。


「んーじゃ、またなー」


「おーう」


いつもと同じ文言を言いながら二手に別れ、私は一直線に家まで帰るルートを進んでいく。紫悠と私の家って割と遠いので、こうなってしまうのだ。通っていた中学校は同じだったが、小学校は違う程度に住んでいる場所が違うのである。何なら、私は距離だけで言うなら中学校は近い方がもう一つあったくらいだ。まぁ区域が違ってたのでそっちには行かなかったけど。


「にしても………」


この3ヶ月間、私が子供達をこの惑星中に派遣して陸海空を調べ尽くして分かったが………この世界、結構面白い。


まず前提として、私が世界中に派遣している子供達だが、この子達は『偵察悪魔アップデート』、別名を第十三アップデートと言う。体長1mmの大きさながらも秒速100m程度の速度を発揮し、保護色のように周囲の光景へ溶け込みつつ、どんな環境であっても適合し、更には魔法により強固な認識妨害能力を持つという完全に斥候型の悪魔群と、それを一括管理する機能が、このアップデートだ。まぁ管理と言っても、この子達からUWASウワスに送られた地図情報を元にUWASウワスの地図範囲を増やしたり、そのUWASウワスで詳細な位置を把握する程度のものだけど。


ま、そんな子達を大量に放って宇宙の果てまで全力で把握しようとしてるわけだ。例え宇宙空間でもビクともしないからそんな事が可能な訳である。ちなみにこの子達は私の魔力を食べるようにしたので、私が死ぬまで永遠に斥候し続けられる。どんなカメラよりも確実に世界を捉え、どんな探査機よりも深く世界を覗く、私の新しい子供達である。


そんな偵察悪魔アップデートの子供達でこの惑星の隅々までを見て回ったら、UMAを発見出来た程度には面白い。ちなみにそのUMAはジャージー・デビルとかいうので、そいつは名前のせいなのか悪魔の範疇らしく、普通に権能の力で知覚出来たので今度からは無限に創造出来る。いやまぁ、デビルって名前付いてるし、別に実物居なかったとしてもネットで名前見かけたら普通に造れたと思うけども。


「ヴァンパイアっぽい奴も居たし………この世界も割とファンタジーだよなぁ」


UMAで思い出したが、ヨーロッパの辺りで吸血鬼に会ったんだった。まぁ吸血鬼って言っても、多分あれは世界中の人間の認識によって構築されたイメージを元に、霊脈とか言われる魔素溜まりの魔素が集まりに集まって生まれた、言ってしまえば"魔法"のような存在だったけれど。ちなみに、その生態は典型的な吸血鬼そのもので、生き物の血液を吸い、日光を嫌い、水面の上を歩き、ニンニクが苦手で、若い女の子が好きで、瞳が赤くて、赤ワインで吸血衝動を誤魔化していた………美少女だったのだ。


………はい、美少女でした。『妾は吸血鬼なるぞ!』って日本語で言ってました。ロリっ娘でした。金髪ロリでした。服装も何故か露出が多かったです。鏡に姿が写らないから自分の姿を見たことがないって言うから光属性の魔法で見せたげたらめっちゃ自分の可愛さを自画自賛するようになりました。今の実家は日本だそうで、私が合った当時は故郷のヨーロッパまで帰郷してたらしいっす。………なんかね、日本人が吸血鬼を金髪ロリにするあまり、吸血鬼ちゃんの姿もそんな感じになっちゃったっぽい。なんならスマホの連絡アプリで友達追加したからいつでも連絡出来るし。


いやぁ、まさか偵察悪魔アップデートの子達に気が付くとは思わなんだ。どうせだから会ってみようって私がなって、あっちが吸血鬼だったから私もついつい悪魔の姿で会いに行ったら、なんかめっちゃ感動されたし。『妾と同じ幻想の存在ではないか〜!同族よ〜!』って言われながらひしっ!って抱きつかれて、思わず固まっちまったよ。しかも私から見てもかなりの怪力だったから結構痛かったし。ちなみに吸血鬼ちゃんの名前は『ソフィア・アマリリス=レッドライオン』というらしく、真っ赤な色のアマリリスの名の通り、ソフィアは輝くほどの美しさだった。


私がキングプロテア・スカーレットって名乗ったら、『妾と同じように花の名前ではないか!運命ではないか?!』って言ってたのが鮮明に思い出せる………バリバリに金髪ロリだったけど。なんなら悪魔の時の私も金髪赤眼だから、2人で横に並んでると姉妹か母娘に見えそうだけど。しかもソフィア、太陽の光は嫌いなだけで浴びても死なない昔ながらの吸血鬼の方の特性を有しているらしく、普通に真っ昼間、日傘してるソフィアと偵察悪魔群が出会ったし。


あぁ後ね、多分ソフィア私と同じくらい強いんだよ。私の悪魔の姿みたいにたった1人の空想から生まれ出たモノじゃなく、世界中の人間の集合知から生まれた吸血鬼だからか、権能に近いレベルの能力まで持ってるんだね。具体的に言うなら、『血液』の権能かな?血液を持つ存在に対しての絶対的な支配権と、吸血による回復と治療と強化と解析ってとこだろう。なんなら血液を持つ存在への概念的な特攻もあるかもしれない。ま、本人が人間大好きな女の子なので、今まで人間は襲った事ないらしいけど。


まぁ、ソフィアは世界の把握が甘いからか自分の内側でしか十全に発揮できてないみたいだし、支配権だって直接目を合わせないと無理みたいだし。ま、悪魔の時の私の肉体は血液みたいな色の魔力を流してるだけで血液無いから、悪魔の姿である限りは支配される事とか無いんですけどね。


「ソフィア………まぁ元気やろなぁ………」


ソフィアは若い女の子が好きらしくって、何ならキングプロテアの時の私も普通に対象になるらしく、しかも自分と同じような幻想の種族で、なんならソフィアと同じく人間社会に紛れて生活してる(キングプロテアは人間の事が好きなので人間の社外に紛れて生活していると言う設定にしておいた。実際前から考えてた設定なので穴はなかった)など、ソフィアにとっては自分と同じ存在が自分と同じ存在が好きで、だから自分と同じように人間社会に紛れて生活してる………って所がもう、『これはもしかしなくても運命なのでは?!』って言うくらい、悪魔の私はどストライクだったらしい。


まぁ、別に嘘付いてないからなぁ………普通に人間は好きだし、好きだから人間社会で異世界に行ったって事とか、自分が悪魔になれる事とかを隠して過ごしてるんだし、なんなら幻想の存在である事に間違いは無いし………まぁ、ソフィア本人がロリだから、悪魔の私と絡むとなると、どうやっても百合にしかならんのだけれど。


あ、そういやソフィアと今度一緒にゲームする約束してたっけ。あっぶねぇすっぽかすとこだった。今のうちにカレンダーに書いとかなきゃ忘れる………日光嫌いだから割と引きこもり気質らしいソフィアとのゲームは普通に楽しいからな………住んでる所が若干遠いけど、まぁ私なら転移出来るから距離とか時間とか関係無いんだよ。ただ、ソフィアはロリ体型なのに社会人らしくって、仕事がある休日はあんまり遊べないんだよなぁ。本人は吸血鬼特有の超絶身体能力と反射神経とを駆使してFPSで無双してランキング掻っ攫ってるらしいんだけど、やっぱり仕事の忙しさには勝てない様子。


ちなみに、ちょっと前にソフィアと同じくらいの身体能力と反射神経を持つ私が『器用』の権能フル発動で同じくFPSで無双してランキングを掻っ攫ってったら、なんかネットの掲示板で騒がれてチート疑われたりした。まぁチートではなく私本人の実力(権能という反則行使済み)なので特に何もされなかったが。ふっ、権能に勝てると思うなよ人間どもめ!(実はちょっとイラッとしてたのでせいせいしている)


その事を連絡アプリでソフィアに話したら『妾も同じような事を味わった事がある………あの時はどうすればよいか分からず、ネットの掲示板に妾は書き込んでしまっての………インターネットとは怖い所であると知ってしまった。今では立派な掲示板の住人よ………』って返信がきて、その後に『今ではこうして色んなネットミームを使えてるんじゃよ〜、ほーらのじゃロリババアじゃぞ〜?ついでにメスガキもしちゃうぞ〜?ざーこざーこ♡』って返ってきたので、『性癖のラザニアみてぇですわね』って返信しておいた。


そしたら『お主も似たようなもんじゃろうが金髪お嬢様風毒舌ドS悪魔っ娘め』って返ってきてた。ちょっとイラッとしたので『なんですの金髪ロリババア吸血鬼っ娘のくせして』って返した。そしたら『やーい♡ざーこ♡性癖の図書館♡人間大好きな悪魔ちゃん♡』って返ってきたので『うるせぇですわよ人間大好きな吸血鬼ちゃんのくせして』って返したりして………なんかもう、普通に親友みたいな関係性になったよね。ちなみにこの後互いの返信にイラついたのだが、FPSだと正直どっちもゲームの性能の最高値を叩き出しているので決着付かない、という事で、パーティーゲームで決着を付けた。無論私が勝った。ふっ、パーティー系のゲームは私、得意だぞ。勝利を欲望とする悪魔として勝負事に負けるわけにもいかないのだ。だって負けると本当に心底から悔しくて泣くから。


「あ、ソフィアから通話」


なんて、自転車に乗りながらソフィアの事を思い出していると、今思い返していた本人から通話が来た。凄いタイミングだな………私の思考でも読めるんか??


「はーい、もしもーし。今テアちゃんは葵君になって学校から帰ってる途中でーす」


『うぇっ?!なんじゃびっくりさせるで無いわ!テアお主、男の姿で人間に紛れておるのか?!』


「あれ、言ってなかったっけ」


『聞いとらんわ!失礼かと思ったし!妾もお主に人間形態なんぞ教えておらんじゃろう!』


「まぁいいや。それより何の用?」


『よくはないんだが………用件じゃったな。いやな?実はこの後、会社の同僚と飲みに行くんじゃが、どうせならお主を連れて行こうかと………』


「未成年なんすけど」


『人間の方ではなく、悪魔の方で来るが良い。………その同僚も、妾達と同じ幻想の存在じゃからな』


「えっマジ??同じ会社に幻想の存在が2人も居るってマ??」


『マじゃよ。ちゅーか、本当に誰?みたいな変わりようだな………』


「ふふーん、変装って言うのはこういうものでしょー?悪魔の私とは全く違う、正反対の私がこの私って訳。ソフィアは変装とかしてないの?」


『しとるが、変装というか幻覚じゃ。流石にぷにロリ姿じゃと目立つからの。ロリではなく女の子くらいに見えるよう補正をかけておるだけじゃが、ロリ扱いよりマシじゃ』


「まぁいいよ。何時にソフィアの側に転移したらいい?」


『うむ。もう仕事は終わって帰宅済みじゃからの、我が家のリビングでよいぞ』


「りょうかーい。もう家着くからすぐそっち行くねー」


『むぅ。にしても、人間姿のお主は見てみたいのぉ………』


「いや、この時の私は種族まで人間だから、吸血鬼さんの目の前で血液のある生物になるのはちょっと………」


『お主もしかして種族まで変更しておるのか?!なんじゃその変装にかける執念?!もっと他にこだわる所があるじゃろ!常軌を逸するコスプレイヤーか????』


「それはごもっともで」


そんな風に、私は異世界から元の世界へ帰ってきた実感を味わうのだった………なーんか、元の世界も少しだけファンタジーが混じってる気がしなくもないけれど、元から割とファンタジー世界だったしね………多分似たようなもんだぞ。

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