夢幻って夢と幻って意味なんだね。なんかもっとカッコいいのかと思ってたよ


⬛︎◇⬛︎◇⬛︎◇⬛︎


その少女は、紛れもない才能を持つ天才だった。


彼女は、生まれた時から魔力が即座に回復する体質だった。呼吸するごとに、歩き出すごとに、莫大な魔力を生み出す才能があった。


魔力によってあらゆる機械が動き、魔力のパスであらゆる機械が管理されているその世界において、彼女はその世界をたった1人で補える程の才能を持っていた。


彼女は住う国で保護され、国によって祭り上げられ、"救世主"だと謳われる程に持ち上げられた。


しかし。本人である少女の自由は、完全に取り除かれた。


幼馴染と公園で遊びたいと言えば、外に出るのはとても危険だからと拒否された。こうなってから連絡の出来ない幼馴染と話したかっただけなのに。


息抜きにゲームをしたいと言えば、その前に多くの勉学を済ませてからだと拒否された。それは有名な高校のレベルと同じくらいだった。少女はまだ小学生なのに。


大好きな家族と会いたいと言えば、そんなものより各国の偉い人と挨拶をするべきだと拒否された。そんなものより愛しい家族と触れ合いたかったのに。


普通の暮らしに戻りたいと言えば、そんな事をして自分勝手だとは思わないのか。お前にはまだ救う人が残っていると拒否された。そんな事、したくないのに。


けれど少女は、こうして自由が無くなる前、偉い人達に前に言われた事を覚えていた。


『世界中の人々を救ったなら、貴女は解放されます』


と。


ならば。


失われた自由を取り戻せるのならば、奪われた自由を取り戻せるのならば。それなら、もうさっさと救ってしまおう。少女はそう考え、行動し始めた。


そしてその日から、少女は努力した。


幼馴染に会いたい気持ちを封印した。


ゲームで楽しく遊ぶ事を諦めた。


大切な家族を思い出さないようにした。


普通の暮らしに憧れないようにした。


全て全て、偉い大人達に望まれるような振る舞いをして、莫大な魔力の全てを世界へと捧げ、そして。


『貴女は世界を救いました』


そう言われて。


『では、さようなら』


その腹を、ナイフで貫かれた。


少女には何も分からなかった。何故ナイフで刺されたのかも、何も、分からなかった。


けれど、ただ一つだけ。


救った人々に裏切られたという事実だけは、理解した。


ならば、ならば。


「………殺してやる………」


救った全てを、殺してやる。


だって、ぜーんぶ私が救ったんでしょう?

私が世界も、人も、この星だって救ったんでしょう?

それなのに、救ったのに裏切ったんでしょう?

私を裏切ったんでしょう?


なら。


私が救った人々が、私を殺すというのなら。


私を救った人々を、私が殺して死んでやる。


彼女はそして、己の魔力を暴走させました。少女1人だけで世界の全てを、人類の全てを、一つの惑星すらも救ったその魔力を、その世界の全てを殺すためだけに使いました。


その後、どうなったのかは誰にも分かりません。生命は滅んだのか、それとも生き残りがいたのか………しかし、それはとても些細な事です。


何故なら。


少女は死の瞬間、自由を奪われたその日から、初めて。


心の底から笑ったのですから。


心の底から神を嘲笑う、神話における"悪魔"のように。


⬛︎◇⬛︎◇⬛︎◇⬛︎



………はい。


私がユニークスキル同士のシナジーを考えたりした日から4日後の1月6日。私はこの日の朝、夢を見ました。………はい、また【夢心の偶像】由来の、ユニークスキル関連の夢でした。今回は〈悪魔炉心〉の夢らしい。にしても今回も〈性転換〉の時と同じくらいクソみたいな夢だった。胸糞悪いというか苦しい。いやまぁ、胸が苦しいのは多分夢の中で心臓ブッ刺されたからだけども。


〈性転換〉の時の胸糞さはなんというか、救えない物語を見ているが故のものだったけれど、〈悪魔炉心〉のこの苦しさは………そう。人々の為に、強制的ではあったものの全力で努力をして、頑張った果てで得られたのが己の死という、報われないなんてものではないこの胸糞悪さからだろう。夢の中の少女を刺した奴には心底反吐が出る。例えそれが世界を救う為の手段だったとしても反吐が出る。私は別にバッドエンドの物語が嫌いな人種ではないけれど………努力が報われないというのは、なんというか、嫌いだ。努力をした実感を得たことがない私が言うのも変かもしれないが。


いや、むしろそういう努力の実感をした事がないからこそ、努力という未知を過大評価しているのかもしれない。努力をキレイなモノだと思っているのかもしれない。努力をすれば報われる訳では決して無いけれど、世界を救った少女の報酬が、望まない死というのは………本当に、心底イライラする。世界を救ったという偉業がどれだけ素晴らしいモノかは知らない。知る訳がない。しかし、仮にも世界を救ったと言われているのなら、相応の報酬くらいあってもいいじゃないか。他の誰にも到達出来なかった場所にまで歩いた子に対して、その場所ごと壊すような事しなくていいじゃないか。


あークソ、言ってしまえばこんなの他人の事だから無視すればいいのに………あー、やっぱり無理。何だろうとどうだろうと、この夢は、私の夢のように思えてしまっている。私に起こったモノだと錯覚してるのか。だからこんなにも胸が痛いのだろう。実際は怪我なんてしてないのに。


………あぁ、3回目だからなんとなく分かってきた。多分これ、やっぱりというかなんというか、私が持ってるユニークスキルをあらゆる世界で初めて手に入れた人達の、生まれてから死ぬまでの物語なんだろう。


『あなたが見た夢の証。いつか辿る道行と、最果てに座するまでの物語』


このフレーバーテキストみたいなのも、やっと、なんとなく理解した。あなたが見た夢の証ってのは、やっぱり始まりの謎の夢の事だ。あの、訳の分からない謎の夢。誰かを殺したのに自分の心臓を捧げたとかいう、本当に謎な夢。あれは多分、私の辿るかもしれない未来だ。これは次の文言に続くのだが、このいつか辿る道行ってのは、多分これ、私が進む道の先のどこかに始まりの謎の夢みたいな光景があるっていう、まぁつまり予知夢みたいなものだ。つまり私は、何かの武器を持って、謎の少女を追いかけ回して殺して、その後で心臓を捧げる………そんな未来もあり得る、という事だ。最果てに座するってのは、やっぱり死ぬのだろう。けれどこれは人としての死であり………多分、として生まれるのだ。


そう、つまり。あの始まりの謎の夢は、私が"神"へ至る為の唯一の手段と方法とその未来、というべきだろう。そしてこの実績のフレーバーテキストはそれを示している。実績に内包しているスキルが〈権能適性〉なのも納得がいった。神へ至る可能性を夢で見たんだ。そりゃあ、権能を扱う適性も手に入るだろう。しかも私が神に至る夢だ。自分の未来を夢で見たのだ。ほんの少しでも自己投影したら自分にその断片が入り込んだりもするだろう。


恐らく、ユニークスキル関連の夢を見るのは、私がそんな神へ至る可能性の夢を見たからだ。自分が神に至る夢とかいう夢としてのランクMAX最高峰みたいなやつを呼び水にして、私ではない、しかし私に内包されている人々の断片的な世界を垣間見ているのが、このユニークスキル関連の夢なのだと思われる。つまり、改めてフレーバーテキストを詳細に表現するなら、こうだ。


『あなたが神へ至るまでの夢を見た、その証』


たったこれだけ。本当にこれだけなんだ。


「はぁ………」


ずっとわからなかった疑問は解けた。しかしそのきっかけとなった夢があまりにも胸糞過ぎて気分が良くない。あぁいや、別に物理的に吐きそうとかいうベクトルに気持ち悪い訳じゃない。精神的に気分が良くないというだけである。………いや、それはそれでダメか。あー、今日はなるべくゆったりしとこ………精神的な治療に最も効果的なのはリラックスとリフレッシュだってどっかの誰かが言ってたような記憶ある………ふぅー………


「神ねぇ………」


神になる為の道があの謎の夢なのか………私はどうやら、わざわざ神に心臓を捧げないと神にはなれないらしい。何さ。私の心を神に捧げないと神にはなれないってか?うるせー………比喩でも何でもなく本当に心臓を捧げちゃったら死ぬでしょうが………いや、神になるってんなら死なないのか?でも別に神になった所で私の自意識が引き継がれるのかと言う疑問はあるんだよなぁ。あくまでもあの夢は、私が神へ至るまでの道筋であって、神へ至った後の光景じゃねーんだもん。私と言う存在が神になる・・だけで、私自身が神になれる・・・訳じゃないもんなぁ。


「………ん?これもしかして〈魔炎粘液体質〉の分もある?」


ふと思ったが、つい先日手に入れた〈魔炎粘液体質〉の夢も見ることになるのだろうか。その夢ってスライムの夢じゃないよね?大丈夫だよね?いやでもユニークスキルは人間の特権じゃないしな………いやまぁ、スライムなのに〈魔炎粘液体質〉持ってるのも変だけどね?元々スライムの体質なのにプラスでスライムの体質とか訳分からんし。となるとどっかの誰かの人間の夢でも見るのだろうか………?


あそうだ。〈魔炎粘液体質〉で思い出したが、スキルにおける〇〇耐性と〇〇無効の違いってのがあったな。スキルにおける耐性と無効の違いは単純で、耐性は特定の何かに対する防御力、無効は特定の何かに対するシールド、みたいな感じらしい。相手方の出力次第では無効を突破されたり、貫通なんてのもあったりするが、その場合、その特定の何かは無効化も威力の軽減もされないが、その点耐性は防御力なので、無効が貫通されても威力の軽減が可能ではあるが、完全に無傷とまではいかないのだとか。


私の場合、〈夢干渉無効〉のスキルは夢を媒介にした干渉を無効化出来るが、一定の出力以上だと普通に通用する事になるのだ。いやまぁ、〇〇無効みたいなタイプのスキルって、範囲が限られれば限られる程に強力なモノらしいから、〈夢干渉無効〉はちょっとくらい強いんじゃないかな?そんで夢無効とかになると、シールドで守られる範囲が広いけどその分耐えられる最大パワーみたいのが落ちるんだと思う。多分〈純銀製戦槌氷属性打撃無効〉とかだと、純銀製の戦槌による氷属性と打撃の複合攻撃を無効化、みたいになるじゃん?んで、めっちゃ範囲が限定されてるから耐えられる最大パワーもめちゃめちゃに高いわけよ。


まぁだからって、そう簡単に無効系スキルを突破して攻撃が出来るわけじゃない。そもそも無効系スキルの突破は結構難しい、らしい。私は食らったこと無いから知らないけども。そもそも夢への干渉って自覚できるようなものなのだろうか?出来ない可能性の方が高そうなんだが。いやまぁその辺は………なんかこう、いい感じに分かったりしないかなぁ。行動一つ一つが言語化されるみたいな世界観なら分かるかもしれないけど、流石に無理かな………ログ漁りの魔法でも作る?絶対面倒だけど。


「いや、発言見返すのは楽そうかも………」


自分の発言ってあんまり覚えてないし。や、覚えてないっていうか、興味が皆無というか。正直自分の発言を事細かく覚えてる人ってあんまり居なくない?少なくとも私は覚えてねぇ。そもそも他人の発言だって一字一句覚えている人は居ないだろう。大体のニュアンスくらいは覚えているかもしれないが………もし一字一句完璧に覚えていられると言うのなら、それはきっと記憶力の化け物なのだろう。なんかそういう人居たよね。ハイパーサイメシアなんとかみたいな………ごめん。普通によく知らないし、この単語が合ってるのかどうかも分かんない。


でもね?発言とか行動のログを確認できる魔法があったらそんな記憶力とか全く要らない訳よ。ほら、メッセージアプリとかって自分の発言も相手の発言も見返せるじゃない。結局あれって普通に便利でしょ?後から何を言ってたのか一字一句確認出来るの、良いじゃない?それを現実でも出来たらそりゃ便利だろうね。しかも行動のログまで出来たらそりゃもう完璧のぺきよ。自分があの日あの時に一体何してたか一目でわかるんだもん。これでもう昨日何食べたっけとか言わなくなるな!


「ま、作らないんですけどね」


だぁって。絶対面倒なんだもん。文字に起こすってのがもう面倒なのが明白過ぎて………便利なのは分かるんだよ、便利なのは。でも………それ以上の面倒が私の気力を奪って行くし………それ故に生まれる怠惰的な感情の嵐が私を襲うんだよ………七つの大罪の中に怠惰があるんだなぁって納得するくらいにはやる気出ないんだ………これには怠惰の悪魔もびっくり。そんなのが居るか知らないけど。


いやまぁね?私この前そんな感じの、なんというか、七つの大罪の中であなたは何?みたいな診断で自己診断した時に出てきたの、怠惰じゃなくて色欲だったけどね。ちなみにえっちな方向性ではなくて愛云々みたいな方向性だったので、そこは勘違いしないように。………いやそれもそれで勘違いされるか。いやね?具体的に言ってしまうと、診断結果で私は『愛し愛されたいタイプ。他人との関係性を重視してる傾向にある。でも欲求自体は薄め』って出てきたのよ。まぁかなり雑ではあるけどそんな感じだったのよ。


いやぁ、確かになぁって思ったよね。愛し愛されは良く分からんけど、関係性を重視してるのは確かにそうだし。欲求自体は薄めの意味が分からんかったけど、まぁそういう事もあるんでしょう。知らんけど。


「ふー………よし」


そろそろ夢のせいで混乱しそうになっていた頭の中を一旦リセット出来たかな、という事で。ちょーっと外歩いて来ましょ。気分転換気分転換。気分が悪い夢の内容は全く忘れられないというか、神に至る為の最初の夢以外のこれまでに見てきた夢3つは、割と情景込みで完璧に記憶しているというか………魂に刻まれた記憶みたいな?なんというかそんな感じなので、ユニークスキル関連の夢は結構事細かに思い出せたりする。


ただし、幾らその内容を完璧に記憶しているとは言ってもあれは純然たる"夢"の一種であり、元々の前提から曖昧なモノである為に、しっかり全てがそうだったのかは分からない。なんて形容すべきだろうか………そうだなぁ………うーん、なんというか………料理の材料とか作り方とかはなんか曖昧だから分からないけど………完成品なら分かる、みたいな感じ?夢の中の物語の具体的な内容は分からないけど、夢の中の結果だけは明白………みたいな?説明が難しい………


例えるなら………完成品であるフランスパンという存在が分かっても、フランスパンの材料と作り方が分からない、みたいな感じかなぁ。どっかに居るっぽいユニークスキルの保有者が生きて死ぬまでという物語の結果は明白に分かるけれど、その保有者達の具体的な関係性や能力と言った材料は知らないし、生きて死ぬ最中の心情の変化や物語の中で得られた筈の成長なども分からない、って訳である。よく分からんが私にもよく分からんのだ。許せ。


「んー………きもちー………」


そうして家の外に出てきたのだが………うん。やはり、散歩は気持ちいいな。幾ら私が引きこもりのインドア派であっても、こうして暖かい太陽の光を浴びて、のんびりと過ごす事の出来る日常………素晴らしい。


「………そーいや着替え忘れてた………」


普段は店の制服+ラピスラズリのペンダントとヘアピン(魔法道具製のもの)が最強なのでそれを着ているが………今私、首から下に着てる服装、白いワンピースと下着くらいだな………着やすいから仕方ないんですけどね。


「今………まだ日も出てないし時間帯だし………」


多少改善されたとは言え、私の睡眠時間は元の世界では6時間きっかり。しかし、それはこの世界において2時間半ちょっとしか眠らない、という事に他ならない。最近は改造自己睡眠セルフスリープを使って睡眠時間を調節してはいたのだが………それはそれで寝過ぎて辛いのだ。


私は普段、25時に仕事を終えると、風呂入ったり夜ご飯を食べたりして、そっから大体1時くらいには眠りにつく。そのまま普通に寝ると元の世界換算では6時間なのだが、こちらの世界だと私は4時半の辺りに起きる事になる。しかしだからと言って改造自己睡眠セルフスリープを使って朝6時辺りまで強制的に眠るとなると、今度は逆に寝過ぎて疲れるのだ。私に長時間睡眠の才能が無いからである。だからまぁ、普段は5時辺りに起きている事が多い。それでも、元の世界的に考えるなら凡そ+1時間となるのだが。


そして今、現在時刻は大体5時15分程度。早起きして読書する本が無くなった暇な時に調べたが、この辺りの日の出の時間帯は大抵5時半程度。変動してもプラスマイナスで10分程度の誤差でしかない。まぁ、こっちの世界の10分って事はつまり、元の世界の時間で換算すると15分ちょっとくらいなんですけどね。もう1年以上過ごしてるんでね、こんくらいの計算余裕も余裕ですよ………メモ帳に時間毎の元の世界換算を書いてるだけだとしても、まぁ他人からは読めないし、そもそも他人に使う機会も披露する機会も皆無だから、別にいいのである。


「ミナに見られたらまた怒られそうだなぁ………」


言いたい事はまぁ分かるのだ。女の子がはしたない格好をするなという言い分も分かる。はしたない格好というのは無防備な格好という意味であり、そういった仕草が男性を興奮させ、何かの拍子に性的に襲われる事がゼロとは言えない………というのを防ぐ為に生まれたのがはしたないという言葉なのも、なんとなーく分かる。ちなみにこれは100%私の推測なので確実に正解では無いだろうが、しかしそういう事なのは事実なのだから正解ではなくても間違えても居ないはずだ。


でもそれはそれとしてミナに怒られるような服装はする。私の自意識は何処までも男性のモノだ。幾ら女性の身体になって1年以上が経とうと言えど、そう簡単に割り切れるモノでも無いし、そもそも初めから割り切ろうなどとは思っていない。だから服装とか心底どうでもいい。流石に全裸は私が裸を見られて恥ずかしいので嫌だが、下着の上に何か着てれば良いんじゃないかかとは思っている。もしそれで動いたりして下着を見られたとて、別に見られて減るもんでは無いし、見られても別に不快ではない。元々人の視線には興味も無いし、私に対して直接手を出さずに見てくるだけなら私は別に構わない。


まぁだからと言ってあからさまにジロジロと見てくるのも違うだろうが。それは男の時にやられても普通に嫌である。


「私に欲情するやつ………ブレイブさんならしそう」


一瞬私に欲情する奴とか居らんやろとか思ったが、ブレイブさんは私の事が好きらしいので多分欲情する。というか、好きな異性の際どい服装を見て興奮しない人間は居ないだろう。私そんなの居たこと無いし興奮した事無いけど、まぁ男も女も究極的には性的興奮の虜だ。


というか、私みたいに本能というか欲求がうっすい方が稀有である。読書したいって欲が本能的な欲求よりも強いから、食事中に本読みたくなるし、眠いのに本の続きが気になるし、異性と云々よりも本を読みたくなるのだろう。………もしかしてこれが、自己診断的なやつに出てきた私の『欲求がうすめ』という事なのだろうか………?


「ブレイブさんって良い人だよなぁ………」


ブレイブさんは金髪で青眼の弓使いの人なのだが………まぁ顔は普通にカッコいいと思う。イケメンというとまた違うが、カッコいい。私は基本的にゲームのキャラで女キャラを好む傾向にあるが、男性キャラもカッコいいと普通に推しとか言うタイプだ。だから今回のカッコいいのニュアンスは推しみたいでGOODという意味である。


そして次は性格だが………なんというか、優しい人である。自分の事を考えずに好きな人に一途で、他人の為に自分を蔑ろに出来る人でもある。私にはそんな事できないからこそ、私はブレイブさんをさん付けしている程度には、尊敬している。


正直、もし私が初めから女の子だったら………惚れては居ないだろうけれど、結婚して欲しいってプロポーズされたら、少し考えてから許可しちゃうかもと思う程度には、その人柄を信頼している。以前も似たような事を言ったと思うが、なんというか………歳の離れた親友のような感覚なのだ。


たださ。最近気が付いたんだけどね?私に対して恋愛的な好意を抱いている相手と一緒に過ごしてる癖に、私の方からの好意は尊敬や友人関係的なものであるっていうの………これ、普通に失礼では??元の世界で言うところの、オタク君達が被害に遭ってるという『この子は私に気があるのかな』みたいな………そう、思わせぶりな態度ってやつだ。もしかしなくてもそれなのではないか?という事実に、私は最近読んでる物語を見てて気が付いたよね。


「でもなぁ………」


でもなぁ。裏切るようで申し訳ないんだけど、今のところブレイブさんと男女の関係になりたいなー、と思える程に好感度は上がっていない。多分恋人ゲージ的な恋愛好感度みたいのではなく、友達ゲージ的な親友好感度みたいのが上がってるんだと思う。


しかしだからと言って、私は自分からはどうにもしない。例え後からブレイブさんに嫌われたとて、私は私のスタンスを変えたりなど、決してしない。私は私の好きなように生きる。ブレイブさんとこれからも食事には行くし遊びにも行くし話もするけれど、私の恋愛対象にブレイブさんが追加されるかどうかは、正しくブレイブさん次第であるのだ。


「んー………そろそろ日の出かー」


あんまり散歩し過ぎるのも疲れてしまうので、キリの良い時間に私は家に帰るのであった。

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