なんか嫌な予感する時ない?そういう時に限って何も無かったりするけど


CPPPシーピースリーをスマホに登録した日から3日後の、今日は12月25日。元の世界ならばクリスマスというイベントのある日だったが、この世界ではそんな事もなく。私の感覚的に今日は仕事をしたくなかったので、事前に今日一日は仕事をしない休日にさせてもらっている日でもある。いや、仕事をしたくなかったというか………元の世界だと今日はイベントの日でしょう?そういう日くらい休んでもいいんじゃねーかな、みたいな感じだったかもしれない。まぁとにかく、今日1日はお仕事も無くて暇なのである。


んじゃ!偶にしか出来ないってかあんまりした事ない二度寝、しますか!




……


………



⬛︎◇⬛︎◇⬛︎◇⬛︎


ある所に、1人の青年がおりました。その青年は、生まれた時から決して傷の付く事のない瞳を有しておりました。


それを青年が知ったのは、ある春の日の、山に入り野草を摘み集めていたある日のこと。


その日、山は連日続いた雨によって足場が悪く、青年はその為に慎重に山を歩いていましたが、しかしだからと言って避けられぬ運命というものはあるのでしょう。


青年は斜面とぬかるんだ地面に滑り、咄嗟に受け身を取ろうとしたものの、その数瞬後に寸分違わず青年の視界に映り込んだのは、地に落ちた枝葉の1本。その先端が鋭く尖り、青年の瞳の中に入り込もうとしたのです。


避けられない、と青年は思いましたが、次に襲ってくるであろう痛みに耐える為に目を閉じることさえ出来ぬほどに刹那の瞬間でした。そしてそのまま、その鋭い枝が、眼球に突き刺さり──ませんでした。


何の音もせず。何の不思議も無く。まるでそれが世界の当たり前であるかのように、青年の瞳に枝は刺さらず、むしろ眼球に触れた枝葉により、青年は転けずに済みました。


それが、青年が初めて自分の瞳の真実を知った日です。


それから青年は、自分の瞳が何なのかを調べましたが、何処にも決して傷付かない瞳の話なんてありません。当たり前です。瞳だけを傷付けられた戦士など滅多に居ませんし、瞳だけを狙って傷付ける戦士もこれまた居ません。そもそもの話、瞳に怪我を負う人物は、それほど多くないのです。


故に、誰も知らぬのです。


青年はその日から、自らの瞳について調べるのを諦めました。何故なら、こんなちっぽけな自分の瞳について知らなくても、生きていけるからです。分からない何かを調べるより、懸命に生きる事が大事だったのです。


青年はその後、自らの瞳について、決して誰も語りませんでした。それは自らの瞳の価値を知っていたからでもありますし、話したとしてもホラ話であると言われるのがオチだからです。


その後の青年は、とても平凡に生きました。恋人が出来て、結婚して妻が出来て、子供が出来て、子供が結婚して、そして孫も出来て………そして、最後に老いて死にました。


その果てで青年の瞳がどうなったかは、誰も知りません。知る筈もありません。何故なら青年は、誰にもその事実を伝えなかったからです。そして青年本人も、自らの死後を知る訳がないのです。故に、瞳がどうなったのかは、誰も知りません。


おしまい、おしまい。


⬛︎◇⬛︎◇⬛︎◇⬛︎



………目が、覚めた。………いや、まぁ。実のところ、イベント云々だから〜みたいな理由だけで今日を休みにした訳じゃないのよ。さっきみたいな【夢心の偶像】由来の夢を見る………なぁんか、嫌な予感………ではないか。何というか………嫌というか………変な予感、というか………?とにかく、何かがありそうな予感がしたので、今日は何となく休みにさせてもらったのだ。二度目だからか何なのかは知らないが………とにかく、そんな予感がしたのである。それにしても、【夢心の偶像】の夢を見るのは久しぶりだな。あんまりにも見ないから『性転換』のユニークスキルだけの特典かも知れねぇとか考察してたのに。全然そんなことはなく、ただただ時間が足りなかっただけっぽい。


あぁそれと、以前【夢心の偶像】のフレーバーテキストみたいなのの考察をした覚えがあるが、多分違う気がする。確か『あなたが見た夢の証。いつか辿る道行と、最果てに座するまでの物語』、みたいのだった筈。前はこれが、『始まりの謎の夢を見た証であり、ユニークスキル関連の夢を見る権利。いつかユニークスキル関連の夢を見るという忠告であり知らせ。始まりのユニークスキル保持者の生まれてから死ぬまでの物語』………みたいな考察をしていた気がするが、違う気がする。具体的なものは何もないから、ほぼ憶測ではあるんだけど。でもなんか、ユニークスキル関連の夢を見る度にちょっとずつ知れるっぽいから、後一回見てどうなるかって所だろう。まぁそんなよく知ってる訳でも分かってる訳でもないが、そもそも後一回分、つまり悪魔炉心の分しか【夢心の偶像】の夢を見れる機会無いしな!残り一回で全て理解出来ないとどうにも出来ねぇぜ。


もし私が更に新しくユニークスキルを獲得するってなっても、投下交換の泉くらいしか選択肢がないんだよなぁ。神様の加護とか色々他にも方法はあるけれど、私の意思で選べるのは投下交換の泉くらいしかない。その投下交換の泉だってユニークスキルの排出率ゴミだし、そもそもそう簡単に異能を手に出来る訳が無いんだわ。実際問題、ユニークスキルみたいな効果の実績及びスキルってのは割とある。【自然神の祝福】の〈自然の祝福〉とか、効果としてはかなり破格だ。私が望まない変化を跳ね除け、私が望む変化を受け入れ、私が望めば元へと戻り、私が望めばどこまでも変われる、というもの。これがもしフレーバーテキストの言葉の通りなら、これはユニークスキルの範疇だろう?しかし現実としてそうなっていない。とすれば、ユニークスキルなのかそうではないのか、という区別には、明確な何かがあるのだろう。


例えば、スキル一つにつき出力やリソースの量が違っていて、その何かしらの出力やリソースの量が一定ラインを超えた時、個々人のステータスはそれがユニークスキルであると判定して、ユニークスキルの欄に当該スキル名称をぶっ込んでる………とか。もしくは、初めからユニークスキルって区別されている箱の中にぶち込まれてるだけで、その出力とかリソースの量とかの中身は全く関係無く、ユニークスキルって箱に入っているからユニークスキル、みたいな分け方………とか。それか言葉の通りにユニークなスキル、つまり固有技能というか、現時点で世界に1人だけしか保有者の居ない、または世界に1人だけしか保有できないスキルがユニークスキルという分類になっている………とか。軽く考えるだけでこれくらいは思い付く。


まぁ、ここまで色々と言って来たが、どれが真相なのかとかは割とどうでもいい。知らなければ死ぬという訳でも無いのだし、わざわざ必要に駆られる事も無い。


「はぁ………二度寝しよ」


あぁいや、今寝たら三度寝か。でもまぁ、折角の休日だし、ゆったりまったり過ごすとしようかな………仕事がある日も似たような気がしなくもないけど、まぁうん、仕事が無い分長く休めるしね………普段から暇過ぎて割と高頻度で昼寝してるけども………












【夢心の偶像】の夢を見た次の日。元の世界的に言うならクリスマスの次の日。と言っても、別に靴下の中にプレゼントがあったりしているわけでも無いし、そもそもプレゼントは25日の朝にあるものだ。26日の朝ではない。それ以前に、もう既に昼過ぎだし。


「ちょっと良いですか?アオイ」


「んー、何か用?アリス」


「えーと………正義と悪って何なんでしょうね」


えぇ………?なんでそんな哲学的な事を私に聞くんすか………?まぁ、別に良いですけど。


「えー、何だろな………うーん、まぁ………いや、ほらね?正義とか悪ってさ、あれって所詮は人間が作った、人間だけに都合の良いルールみたいなものじゃない?大昔の人間が作ってから今の今にまで紡がれてきた、人間の倫理観を司る部分というか………だからさ、正義とか悪とかって………すっごい人間の勝手だよなぁ、って」


「確かに、そう言われるとそうです」


「ほら、ドラゴンって居るじゃん?物語で都合良く強くて村とか襲うやつ。あれさ、別に悪い事何にもしてないよね。だって弱肉強食してるだけだし。でも、人間から見るとそれがとても悪い存在に見えるのって、凄い変だよね。生きる為にしている事を悪い事って言われてるみたいで。それならドラゴンは村を襲って人を食べず、他の生き物を殺してればよかったの?か弱いのに数が多くて、比較的簡単に増える便利な生き物を無視して?そんなんあり得ないでしょ。強くて怪我するかもしれなくて抵抗してくる生き物より、弱くて怪我する可能性が皆無で抵抗もめっちゃ弱い生き物食べた方が早いし楽じゃん」


「あぁ、なるほど。確かにそうですね………ドラゴンは知性ある生き物ですが、知性があるからこそ、そういった選択をしますよね」


「例え本能だけの化け物でもそうなると思うよ。とにかく私が言いたいのはね?悪とか正義とか、そういうのは人間のエゴな訳よ。人間が勝手に言い出して、それを他の生命体に強要してるのって、凄い傲慢で愚か過ぎだよなぁーって」


「毎度思いますけど、アオイって捻くれてますよね」


「うるさいやい」


そんなん私も分かってらぁ。


「んで、役には立ったかい?」


「はい、バッチリです。これであのしつこい方々も論破出来るでしょう」


「善悪の哲学求めて来る人達論破するって何………?」


それは一体どんな賢人達を論破するつもりなの??というか賢人相手にこんな回答で大丈夫?もっと頭の良い人から引っ張って来た方が良くない?


「あぁいえ、少し野暮用で」


「まぁ、アリスがこれで良いってんなら別にそれで良いんだけど………気を付けてね?」


「はい、気を付けます。あ、私はこれからお茶でも淹れますけど、アオイは何か飲みたいものあります?」


「牛乳かな」


「では、コップだけ持って来ますね」


「ん、よろしくー」


アリスがコップだけで持って来るのは、私の場合、自分の牛乳魔法で無限に牛乳を飲むことが出来るからである。自前のコップは常に持参してはいるが、こうして私室に居る時はアリスがいつの間にか買って来ていたコップを使っているのである。常に携帯してるのは外に出て飲みたくなったら使う用だ。なんかこの前持参して携帯してる方のコップをこの部屋で使ったら拗ねたので。


「はい、どうぞ」


「ん、ありがと」


そう言いながらしれっと牛乳搾りミルキングを使用している辺り、私も随分と魔法のある生活に慣れてきているなぁとしみじみしてしまう。なんせ、まるで御伽噺に出てくる魔女みたいな手軽さで魔法を使っているからな。元の世界では考えられない。まるでスマホみたいなレベルで常用してるし………いやまぁ、こっちでもスマホは常用してますけどね?確か契約がどうとかなんとかでネットに繋がるので。何でだかの詳細は私にもよく分からないが使えるなら文句は無い。最悪ネットが使えなくなったとしても、まぁ情報処理装置としての機能さえあればなんとかなるので、実のところネットに繋がらなくてもそんなに支障は無いのだが。


いやまぁ、普段の暇潰しをどうするのかという疑問は残るけども、多分図書館に入り浸ってコルトさんのご尊顔を眺めてニヤニヤしながら好きな本漁りまくるとかすれば大丈夫じゃないかな。本自体も魔法でスキャンして文字コピペしてスマホに記録させちまえば紙媒体を持ち歩く必要も無いし。まぁ効率以上に紙媒体の本の方が50億倍くらい好きだから紙媒体持ち歩くけどね!一応電子媒体としてスキャンしてコピペして記録はしておくけれど、手元に紙媒体の本があるならそっち読みたいよね。私もね?元の世界の自分の部屋に本いっぱいあるんだよ。自分用の本棚みたいなやつ。てゆーか、我が家の2階には一面本棚の壁があるくらい、家族全員が本好きの家系だぜ?漫画も本もどっちも沢山あるんですよ。そんな家庭で本とか文章が嫌いな訳無いんだよなぁ。いやまぁ家庭状況によってはそうでもなかったりするかもしれんけども、私のところは特に何も無かったので。


「あ、アオイ、こっちにも牛乳ください」


「ん、はい」


「ありがとうございますね」


「こんくらい手間でもないよ」


牛乳搾りミルキングを使うって意識しつつ、私の脳内イメージから抽出した『牛乳』って情報を私の体内で生成してる魔力で具現化してるだけだし。こんなの私本人が実際に身体を動かす訳でも無いんだから、別に大した手間でもない。いやまぁ………私の場合、スマホを使って魔法使用の補助を常に行なっているから、多分普通の人の数十倍くらい簡単に魔法を扱えるってのもあるんだろうけども。


「んー、やっぱりアオイの牛乳は美味しいですねー」


「そりゃどうも?」


それは多分、私がこれまで飲んできた牛乳が美味しいんじゃないかなぁ?魔法を使ったのは私だけれど、その大元は元の世界の牛乳だし。世界中のあちこちに居る多くの人々が、沢山の種類の乳牛達の品種改良を重ねに重ねて、その果てで一般人が安価で購入出来る程になった、正しく人間の叡智の結晶なんだよ?そんな叡智の結晶の一部とも言える牛乳だよ?そんなん美味しいに決まってるんだよなぁ。そもそも、一定ライン以上に美味しくないとスーパーとかで売りに出ないだろうし。特に日本とかそういう感じだよね。何だっけ、消費者庁?みたいな所が管理してるとかなんとか?まぁそんな感じの所が消費物の品質管理をしてるとか………違うっけ?そういうの詳しくないし、かと言って調べる気も起きないからよう分からん。


「そだ。1月の1日、どっか遊び行く?」


「あら、アオイから何処かへ出掛けるなんて言われるのは珍しいですね」


「それは自覚してる。で、返答は?」


「良いですよ。その日は特に予定もありませんから」


「私も事前に完全に休みの日にして貰ってるから暇なのよね」


だったらほら、出掛けるとかした方がいいじゃない?確かに私はインドア派で引きこもり気質ではあるけれど、別に外出ない訳じゃないし。後、流石の私もずーっと家でぬくぬくしてるのはキツい。家の中だけだと娯楽が皆無過ぎてエグい。いやまぁ、割とボリュームのあるRPG系統のスマホゲームとかあるから、まぁお家に篭ってずっとゲームってのも出来なくはないけれど、何というか………精神的に?暖かな陽の光を浴びていたいというか………ほら、日光を浴びるのは生活習慣病に効くとか言うじゃん?知らんけど、まぁ多分そんなもんじゃない?そもそも私、外に出るのが苦手なだけで、別に日の光は苦手でも嫌いでも何でもないし。むしろ日光浴は好きな方だし。窓から差し込んでくる日の光とか普通に好きだよ?外に出たくないだけで。まぁ日の光は外じゃないと上手く当たれないけど。


でも正直言って、多分私は外の方が好きだと思う。私がインドア派で引きこもり気質なのは、単純に外が『家の外』って場所に対して恐怖とか危機感を抱いているのがあると思う。や、だって考えてみてよ。元の世界もこの世界も、家の外には危険がいっぱいなんだよ?上下左右、正面背後、ありとあらゆる方向から危険がやって来る可能性なんてゼロじゃないでしょ?勿論家の中でも同じだけれど、家ってなんか、自分の世界って感じがしない?その世界の中でなら安心したり出来るでしょ?だから多分、私は家ってモノに安全を求めてるんだと思うんだ。つまり私は、『陽の光を浴びることが出来て、その上で安心できる屋外』って空間が1番好きなのかもしれない。だから何だって話かもしれないけど。


「それで、何処か行く宛てはあるんですか?」


「カモタサの街とか行く?泉でガチャする?」


「あ、いいですね!お金持って行きましょう!私白銅貨沢山ありますよ!」


「私も金貨100枚越えたし、そんなお金使わないから50枚くらい使っていいよね」


「何か凄いアイテムを大量ゲット出来るかもしれません!まだ見ぬアイテムを求めてガチャしましょう!」


「排出率分かんねーガチャ不親切過ぎて怖いなぁ………やるけど」


そんな感じに緩くお茶をする、私とアリスなのであった。

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