双子って共感云々みたいのあるらしいけど本当なの?


マスターに召喚されてノクスさんと色々あった次の日の8月30日。私は今日、マスターと妹様の2人と一緒に出掛けている最中だったりする。ちなみに、目的地は特に無い。好きな方にフラフラするだけの散歩みたいな感じだ。私はマスターと妹様に着いていくだけである。


「テアお姉ちゃん、早く早く!」


「テア、早く行こっ!」


「ちょっと二人、危ないから街中で走らないでくださいな」


ちなみに、私はテアの姿として2人に着いていくつもりだ。アオイのまま着いて行ってもよかったかもしれないが、私とマスターと妹様との関係性を街の人々に覚えてもらう為にこうしている。この二人には私という悪魔がいるのだと、周囲に知らせているのだ。まぁパッと見で私が悪魔だって分かるような要素ほぼ無いけどな!それでも関連を仄めかすだけで大分変わってくるのだろうなと思うので念の為だ。後、子供二人の体力に人間の私では追いつけない、という理由もあったりする。むしろこっちが本命かもしれない。


それはそれとしてマスターと妹様のテンションが高過ぎてアリスみたいだ………普段のアリスは兎も角、テンションが高い時のアリスはちゃんと反面教師にしなきゃダメだよ?落ち着こう?私は一人しか居ないのよ。マスターと妹様が手を繋いで仲良く私の前で走ってるからいいけど、手を離して二人が別々の方向に行ったら私対応できないのよ。どんだけ身体能力が高くても身体を分裂させるのは無理なのよ。私はそこまでびっくり人間ではない。そもそも悪魔だし。


「テアお姉ちゃん!今度はあっち!」


「行くよテア!あっち!」


「あぁ、もう。分かりましたからゆっくり向かってくださいまし」


まぁ、なんというか、テンションの高い人と街中を歩くのは慣れているので、別にマスターと妹様のテンションが高いのはいいのだ。この慣れは確実にアリスのおかげだろう。アリスのせいと言った方が正しいのかもしれないが。


まぁ、私は仲良く手を繋いでいるマスターと妹様の後ろを歩いて着いて行くだけだ。マスターと妹様は私に比べたらまだまだ子供で、その体躯は小さめ。故にその歩幅も小さいので、アリスのように走らずとも私は二人に追いつけるという訳である。てくてくと私の前を仲睦まじく歩く二人組の幼女という光景は、なんというか実に素晴らしい。この光景を見る為だけにお金を払う人が居そうなくらい素晴らしい。アリスと同じくらいこの散歩を楽しんでいるのが言動から理解できるからこそ、だろうか。無垢で純粋な少女姉妹二人が楽しそうに歩く姿は、とても可愛らしく愛らしいものである。


………うーん。思い返すと、私はよくマスターを助ける事が出来たな。あれだけの致命傷だったのに。というか、あの一瞬で擬似回復属性を生み出して怪我を治す私………やはり天才なのではー?褒め称えられてもよくない?マスターと妹様に褒められるのはちょっとマッチポンプ感があるので、今度時間がある時にでもアリスに褒めてもらおう。頑張ったね、偉いね、って。褒めて伸びるタイプなのかよくわかってないけど、まぁ褒められるのは嬉しいし。別に美少女に罵られるのもそれはそれで楽しいけど。


「ねぇテアお姉ちゃん!これ似合う?」


「テア、私も似合う?」


そう言われてマスターと妹様の方を見ると、二人は仲良く露店に売っている髪飾りを頭に着けていた。マスターの選んだ髪飾りはシンプルなデザインのカチューシャで、その色は黒と少しの赤。マスターの持つ白い髪との対比からかカチューシャ自体が全く埋もれず、しかし目立ち過ぎる訳でもなく、非常に可愛らしいアクセントになっている。妹様が選んだ髪飾りは可愛らしい赤色のハートマーク付きのシュシュで、髪を人間状態の時の私みたいにポニーテールにしているのが非常に可愛らしい。


総評。二人とも女神。


「二人とも、とても似合っていますわ」


「!そう?似合ってる?」


「!お姉ちゃんのも選んだげる!」


「えっ、ありがとうございますわ………?」


そんな事を言われてマスターと妹様に髪飾りを選ばれ始めた。咄嗟にお礼が出てきた辺り私の育ちの良さを感じますね………まぁ育ちの良さとか言っても、どこにでもあっていつでもあるような、全く珍しくもない普通の家庭の生まれなんですけどね私。


「テアお姉ちゃん!これ着けてみて!」


「これ着けてテア!」


「え、えぇ」


そう言ってマスターと妹様から渡されたのは、所謂バレッタとかいうやつだ。そのバレッタに赤いリボンが付いており、このバレッタを着けると側からはリボンが頭に付いているように見える事だろう。縁が黒になっているので、私の今の髪色である金髪や今の服装である黒と赤のドレスとも非常にマッチしている。正直言ってこのバレッタを悪魔変身時の基本衣装にしてセットしておきたいくらいだ。小さなリボンが一つだけってのもアクセントとしてとてもGOODだろう。少なくとも私は良いと思っている。そして実際に着けてみて、露店の端にあった鏡で自分の姿を確認すると………確かに、素晴らしく似合っている。あっ私の顔凛々しさと可愛らしさが混ざっててカッコ可愛いっ!私の造形に狂いは無かったのね!!


「どう、どう?」


「テアお姉ちゃんに似合うでしょ?」


「えぇ………えぇ、似合いますわね。買いましょう。店主さん、この三つを買いますわ。お幾らですの?」


「この三つ合わせて小銀貨3枚さ」


「ではどうぞ。ありがとうございましたわ」


「ん、丁度だね。まいど」


私は素早くお金を支払うと、非常に満足したまま店を後にした。いやぁ、本当に素晴らしい買い物だった。こんな気分の買い物をしたのは本当に久しぶりだ。具体的には、この世界にやってくる前に行った本屋で偶然見つけたアニメ化してたやつを見たことのある漫画を買って家に帰って読んだら、なんかもうあり得ないくらいハマったから追加で16巻くらいまで一気に買い込んだ時みたいな気分である。それかちょっとだけ電子書籍の方で内容を見たことがあった漫画がクソ程面白かったから紙媒体の漫画も買っちまった感じに似ている。まぁつまり、私は買った物に心の底から満足したのだ。他人が選んだ物でここまでの境地に至れるのはもう勝ちだろう。流石はマイマスターとその妹。私の事大好きじゃん。


「あー!私達が奢ってあげようと思ってたのにー!」


「テアずるいー!私達が払うつもりだったのにー!」


「早い者勝ちですわよこんなの。わたくしはマスターと妹様の契約悪魔ですわよ?これくらいお安い御用です」


というか。


わたくし、マスターと妹様より大人ですわよ?払うに決まっているではありませんの。幼子ならば大人しく奢られなさいな」


「そうじゃないのー!テアお姉ちゃんにお礼するのー!」


「日頃のお礼なんだから私達に支払わせて!」


「んー………でも………いいえ。えぇ、それじゃあ、次のお支払いは任せますわよ?」


「「うん!任せて!」」


うーん、反応が双子!いやマスターと妹様は別に双子でもなんでもない普通の姉妹なんですけどね?でもさ、こうして二人仲良さそうにはしゃいでさ、発言がハモったりしてるのを見てると、こう、双子みたいじゃない?髪色が白と銀っていう比較的似たような色合いなのも相まって双子感が増してる。でも双子ではあるんだけど姉と妹みたいな関係性っていうか実際に姉妹で………まぁとにかく可愛らしい事に変わりはないです!はい!


今ふと思ったんだけど(唐突)、異世界エレベーターってあるじゃん?あれって何処の異世界に繋がってるんだろうね。地獄とか煉獄とか冥府とかにでも繋がってるんだろうか?本当にそんなものがあるのかは兎も角として、異世界はあるのだろう。今居るし。となると異世界云々みたいな都市伝説みたいなのは、まぁ全てが本当にあるとまでは言わないが、幾つかは本当だったりするのだろうか。いやまぁ異世界エレベーター以外に異世界への道が示されている都市伝説なんて、私は詳しく知らないのだが。でもなんかあるでしょ?きっと。多分あるよね?


「あ、テア!これ買ってあげる!私達のお気に入りなの」


「テアお姉ちゃんにこれ食べさせたげる!いつも買ってるもん!」


私がちょっと思考の坩堝に落ちていた間にマスターと妹様は近場の露店へちょっと小走りで同じ場所へ向かう。"これ"だけじゃさしもの私でも流石に何のことか分からないので、露店の方へと意識を向けると、そこはクレープ屋らしい。話を聞く限り、マスターと妹様もちょくちょく買うくらいには美味しいクレープらしい。いや二人にとっては美味しいだけで私の舌には合わない可能性も十二分にあるのだが、まぁ、その辺まで気にしていたら何も出来ないので適当に流しておく。そもそもこういうのは万人受けするようなものが売っているものだ。そうしないと売れないからな。いやまぁ、最初っからキワモノ売ってる可能性も否めないけど、流石のマスターと妹様も私にそんな露店に通ったりしない、よね………?


………まぁ、無いか。マスターと妹様がそんな事をするとは思えない。純粋な好意って感じでこの露店のクレープの事を私に教えてくれてるし、私がぐーたらしてる時の二人の反応は中々に雑なものの、別に私の事を嫌っているようには見えなかった。というかこんなに良い子二人組だと思ってた姉妹が実はあり得ないくらい腹黒いやべーやつだったら………今それでも良いなとちょっと思ってしまったけれど、そんな事が本当にあるのだとしたら私は人を信じられなくなりそうだよ。ついでにロリ二人組を見たらちょっとトラウマになっちまいそうだ。それか条件反射で興奮し始める可能性がある。いや、ほら、美少女の裏の顔って控えめに言って最高じゃない?私は最高だと思う。別に被虐趣味がある訳じゃないんですけどね。


「はい!これ!」


「二人で買ったよ!テアお姉ちゃん食べて食べてー!」


いつもより2割増しくらいテンションの高いマスターと妹様が差し出してきたのは普通のクレープ。苺とクリームがふんだんに使われているとても美味しそうなクレープだ。ふむ、個人的にはバナナとかの方が好きなのだけれど………まぁ、苺嫌いって訳じゃ無いし、アレルギーとかで食べられないって訳でもないし、別にいっか。いただきまーす。


「ん、あーん………むぐむぐ………んー、美味しいですわね」


「でしょでしょー?」


「美味しいでしょー?」


マスターと妹様のリアクションがいちいち可愛いの好き(唐突)。………ハッ、マスターと妹様があまりにも美少女過ぎて語彙力を失っていた………これが仲良し姉妹の尊さぢから………?やっぱり尊さと可愛さは世界を救うんだよなぁ!


「むぐ、むぐ、むぐ………ふぅ、ご馳走様ですわ」


「えへへ、美味しかった?」


「美味しかった?テア」


「えぇ、とても美味しかったですわ」


私がそういうと、マスターと妹様はとても嬉しそうな顔になっていく。元から大分ニコニコしていたが、更にニコニコしていく。


この日、マスターと妹様は同じベッドで眠るくらいには私に対してべたべたでした。まぁめちゃめちゃに可愛らしかったからヨシ!

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