なんか光を吸収するとかいう黒い素材あるらしいよね、名前知らんが
海に行った日から7日過ぎた8月24日。既に海は堪能し切って帰って来ている。ちなみに紫悠に伝えたら海に行ってて狡い!とか言われてしまった。まぁキングプロテアの姿で行ったので許してほしい。君の欲しがってた海の魔物の素材はレイカを通じて渡したからね………
「ウロボロスメタル開けるか」
今日は丁度、『ウロボロスメタル精製機構』によるウロボロスメタルの精製に必要な期間ピッタリな日。魔力によって自在にその形を変形させられて、変形後は壊れなくなるという、めちゃめちゃに万能な金属が出来上がったのだ。特に何かウロボロスメタルの使い道がある訳では無いのだが、とりあえず作って
そも、ウロボロスメタルが出来上がるとは言っても、インゴット一つ分、重量にして1kg丁度だけ。出来る限りウロボロスメタルを薄く伸ばして鎧にしてもいいのだが、もし足りなかったら、二度と変形させられないし壊せないとかいう魔法の金属が、50億とかいう馬鹿みたいな魔力量を消費した金属が、40日とかいう1ヶ月以上の期間をかけて待っていた金属が、完全に無駄になってしまう。そうなると勿体ないとかいうレベルではないので、どうせならもっと溜め込んで、それから金属を使って作りたい何かを明確に思いついたら、使う事にしよう。
というか、どれだけ薄くても絶対に壊れないとか言う金属なんだから、めちゃめちゃに良い性能のロケットとか飛行機とか作れるのでは?ほんの数ミリでも絶対に壊れないんだから、乗り物なら簡単に重量がめちゃめちゃ軽減できる。それだけでもかなり性能良くなりそうじゃね?いやまぁ、飛行機もロケットも作り方なんて知らないから作れないけども、もし作れたら性能凄そうだよねって。
あぁいや、別に空を飛ぶものに限らず戦車とかでもいいのか。戦車が鈍重なのは装甲の為の金属が馬鹿みたいに重いからであって、その装甲が薄皮一枚レベルでも十分だと言うのなら、内部のスペースは広く取れるし、燃料も沢山積める、エンジンだって今より大きなものを積めるだろう。それでいて絶対に壊れないとか無敵じゃん?
「ではオープン………おぉ」
『ウロボロスメタル精製機構』の蓋を開けると、プシューという少し気の抜けるような空気の音が鳴り、SF映画に出てくる凄い化学製品みたいな感じで蓋が開いた。そんな演出の後に見えてきたのは、たった一本のインゴット。色は真っ黒なのだが、金属光沢のおかげで所々が光って見えている。正しく想像していた通りの"金属"というビジュアルで、私は正直感動した。
だって、元の世界で実物のインゴットとか見たことないぞ。そして予想よりデカい。いやまぁ窪みの大きさ的にある程度はデカくはなるんだろうなぁとは前々から思っていたが、大きめなティッシュ箱くらいの大きさはあるかもしれないサイズとは思ってもいなかった。これで1kgってマジ?物理学とかに真正面から喧嘩売ってないか?まぁ売ってたところで私には一切の関係は無いけどな!
「ふむ………」
にしてもウロボロスメタル、本当に真っ黒だな。直接触れてしまうと何かの事故で魔力を流してしまう可能性があるので、決して触らずにそのフォルムをじっくりと確認してみるが………まぁなんというか、非常に黒い。黒いのに光沢がある。あれだな、スマホの液晶画面の電源が落ちている時みたいな感じ。黒は黒なんだけど、光が反射して自分の顔が写る程度には光沢がある。触ったら指紋で汚れそうだな………
「………うん、仕舞うか」
このままここに置いておくのもあんまり良くないので、
そう思ったので即座に
「………ん?」
待てよ?
「ウロボロスメタルって………」
魔力を込めると変形するんだよな………?
「………あっ」
待って待って、ちょっとやらかしたかもしれない。いやちょっととかいうレベルじゃなくやらかしたかもしれない。私は急いでスマホの画面を投影して、即座に
「あっこれは」
そこにあったのは。
「あっ」
──
さて、ここでウロボロスメタルの性質を思い出してもらおう。ウロボロスメタルとは、魔力を流し込んで、その魔力操作によってその形を変形する金属だ。そして、魔力供給が停止した後の形になると、その後は不壊化する。つまり、壊れなくなる。その形状が元素レベルで変わらなくなるのである。
では。
魔力を込めたら魔力の通りに変形するウロボロスメタルと、魔力を対象に込めて分解して情報体に変換している
「まぁまぁまぁまぁ、まぁ?」
──元素レベル、むしろそれ以下の認識不可能なレベルにまで分解され尽くした、変形途中のウロボロスメタル。
「まぁまだリカバリー効く範囲内では?」
今気が付いて良かった………と言うべきか。気が付かずにウロボロスメタルを
「………でもこれ、
キッツ。
普通に無理だが??そんな技術持ってないが??
「いや、まぁ………」
本物のプログラムよりはまだマシなんだよ。これはどこまで行っても魔法の産物であって、別にガチでプログラム言語とかそういうのを覚える必要はないから。まだ魔法の範疇だからイメージで構築できるのよ。ただ、そのイメージの元がね?プログラム云々みたいな、よくある感じの0と1だけで構築された世界みたいなイメージなのが問題なの。いやまぁ元を辿れば私がそんなイメージしたのが悪いんだけどね?でもさぁ、イメージしたのがそれだったんだから許してほしいかなー、って。魔法でイメージは大切だからね。
ただそれは
でも、
「うん、無理」
まぁ今の私じゃ何もできないけどな!ゴミが!
「………………いや、いけるか?」
第九アップデートと魔力的なパスを作って、魔力的な方向から無理矢理にインゴットの形に変形させるとか………これならプログラム系の技能の必要皆無だし、割と強引だけどなんか………どう?
「いや、うん、その方向で行ってみよう」
とりあえず第九アップデートとウロボロスメタルの間に魔力的なパスを構築………うん、構築成功。パスを繋げるのは契約属性の得意分野ってね。んじゃ次は無理矢理インゴットに、する!
「………お?」
いけた?いけたっぽい?あ、いけてるみたい!てな訳でそのままインゴットの形に再構築!私君ちゃん最高かー??
「このまま
「しゃー!私の勝ち!」
自分で負けそうになってから勝ってるから実質マッチポンプみたいな所あるがな!それはそれこれはこれ!
「………次からウロボロスメタルは
そんな感じで私は新しい経験をしたのでした、まる。
ウロボロスメタル
なのでまぁ、大体暇である。やろうと思えば幾らでも時間は潰せるが、それはそれとして暇である。ベッドに横になって寝転がって第五アップデートでスマホを開く。画面の投影は無数に出来るので、複数のアプリゲームを並列して起動する。ほんの少しでも手が空いたら他のゲームへ、という感じで複数のゲームをやり続ける。ただし、対人系のゲームは並列してやらない、というか出来ない。操作そのものは私の思考操作で可能ではあるのだが、流石に複数の対人ゲームを同時にやるとかは無理過ぎる。並列思考は天才でもなければ不可能だっての。いやまぁ並列思考をする為の魔法でも作ればいいのかもしれないが、作るのが面倒過ぎるし。
何よりも。
「並列思考のイメージできねぇ………」
何度も言うが、魔法とはイメージの産物である。鮮明なイメージによって魔法は構築され、詳細なイメージによって魔法は展開される。故に、発動するべき魔法のイメージを出来なければ使えないのも当たり前で、それはオリジナルの魔法を作ろうとしている時にも適用される。曖昧なイメージなのではなく、鮮明なイメージによって魔法を構築しなければ、新しい魔法も生まれないのである。
そして、なのだが。ちょっとよく考えてみて欲しい。並列思考ってどんなもの?って。言葉の意味とかじゃ無くて、イメージするとどんな感じ?って話だ。私はそのイメージが分からないから、並列思考の魔法は作れない。精々が出来て二重人格くらいだろうか。こちらは自分とは別の人格を生み出すと言う事からイメージは簡単だ。何より、アニメ、漫画、小説などでよく見るからな。イメージは並列思考よりも容易い。本当に作れるかどうかは兎も角として、だが。
しかし、並列思考とは?一応、一度で複数の事柄を思考するという事だと私は認識しているが、具体的にはどうやってやるというのだ?私にはそれがイメージ出来ない、イメージ出来ないから魔法も作れない、という事である。むしろ並列思考のイメージがあるなら教えてほしい。同時に複数の思考を行うイメージ………なのは分かるのだが、それがどんなものなのか、具体的なものが分からない。何も分からないから、何も作れない。私が元から使えていれば作れるのだろうが、そうなるともう作る意味が無い。
「思考方法じゃなくて外付けでどうにかするか………?」
例えば、純粋な思考加速でどうにかするとか。バティンの韋駄天スキルによる思考速度、反射速度、認識速度のみを100倍に加えて、更なる強化倍率を求める………とか。ただ、韋駄天による高速化を行った後に発生する各種反動や負担の全てをどうにかしないと、多分私が死ぬので、その辺りの不調?を軽減する魔法を組み込むか、もしくは自分以外の何かに負担や反動を押し付けるようにしなければヤバいだろう。具体的には私の頭が。割としっかりとした方法を考えないと、唐突にパーンって頭がしめやかに爆発四散してしまうかもしれない。怖いね。………怖いね、ではないが??
あぁでも、思考加速による擬似的な並列思考、という方向性は良いかもしれない。私には並列思考が作れないというのなら、並列思考以外の何かで、並列思考に似た何かとして代替し代用する。複数の属性によって適性外の属性を模倣して代替するのとほぼ同じだ。思考加速による擬似的な並列思考が無理そうなら、自分とはほぼ同じ別人格を作って並列思考擬きをさせてもいい。やりようは、幾らでもある。
「まぁ………」
並列思考の為の魔法を作るより先に作ろうと思ってる魔法があるんですけどね、初見さん。そもそも並列思考の為の魔法は作ろうと思ってすらいませんけど。
「ふわぁ………んー………」
軽く欠伸をしてから伸びをする。というか、もし並列思考の魔法を作るとなっても、並列思考の魔法を作るより先に放射線属性を使って複合魔法を作ると思う。だって、折角新しい属性を発見したのに使わないのって勿体無いじやない?それか新しい牛乳魔法の開発をやるくらい?正直言ってオリジナル魔法はその時の気分で作っている感が否めないというかそのまんまな為、予定は未定みたいな感じである。まぁ私の人生の予定も大体そんなもんですが。
私は予定を立てる事をした事が殆どない。それは予定そのものがあまり無いというのもあるが、カレンダーに書き込んだりとか、カレンダーアプリとかに予定を記入したりとか、そういう感じの、予定を立てた事が皆無なのだ。遊びの予定くらいなら立てるが、それだって頭の片隅で覚えるくらいだし、何より複数の予定を立てない。だって複数同時に覚えるのは忘れるから。
「………まぁ、でも」
予定の無い何でもない1日というのも、良いものだと思う。勿論、予定があった方が無駄ではないのだろうが………この世界は、元の世界とは違って、時間にガチガチに縛られてはいない。時計はあるものの、別に何処でも正確な時刻を確認出来る訳じゃないからだ。万人が、あらゆる人間が時刻を確認する術を持たないからこそ、時間という概念に縛られていない世界が形作り上げられている。まぁ、縛られていないだけで普通に遅刻とかはあるので、その辺はしっかりしないと駄目なのだが。でもまぁ、うん。予定を立てなくてもよくない?駄目?というかね、私は毎日お仕事してるのよ。毎日ちゃんと休憩はあるけど毎日お仕事な訳よ。わかる?だから別にダラダラしても良くない?ただでさえ体力ゴミなんだから仕事外ではゆったりしてもええやん!許してや!
いやまぁ、そもそも誰に責められる訳でもないけど。
「んー………うん」
………やる事無いし、もう寝よ。昼寝しよ。おやすみグンナイ。
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