体動かすの嫌いなだけで苦手じゃないんだよ、わかる?
跳び、走る。普段の人間の姿の私なら絶対にやらないし、絶対に出来ないような事をする。屋根の上を次々に跳び移り、1秒で300mすら踏破可能な走りで街の上を駆ける。そんな事をしたら人々に見られるだろう、こんな事をしたら群衆に見つかるだろう。まだ今の時刻は昼間だし、私の服装は黒を基調とするゴスロリドレス。私自身の長く美しい金髪だって陽光を浴びて目立つのは明白。何より、街の上を疾走する何者かなんて、目立たない訳がない。でもそんな事、今は心底どうでもいい。今の姿も何もかも、あらゆる全てが変装なのだから関係無い。例え何があっても助けてみせる。
──嫌、だよぉ…
きっとこの行動は、人間の私よりも強い悪魔の私だから出来る行動だ。人間の姿ならこんな事絶対にやらない。それはあまりにも私のリスクが高過ぎる。私は己が1番だし、私は自分が最高だ。だからきっと、人間の姿ならこんな事しない。やりたくない。
── 死にたく、ないよぉ…
でも、でも。今の私なら何でもできる。普段の私がやらない事だって出来る。この私は、悪魔の私は、私が作り上げた最高傑作。今の私なら、きっと何でもやれる。
── でも、でも…
悪魔の身体は人間とは段違いだ。人間はただ立っているだけでも身体が揺れ、指先が細かく震える。何もしていなくても、だ。しかし悪魔の身体は違う。悪魔は精神生命体に近い存在であり、精神が死ななければ再誕する事すら容易である。だからこそ、肉体由来の存在ではないからこそ、思考の中でイメージした通りに身体を動かせる。己の身体を細胞単位ですら自在に操れる絶対的な肉体操作能力。それこそが悪魔の肉体。だからこそ私は、街中を縦横無尽に駆け回れる。悪魔の圧倒的な動体視力と知覚能力、絶対的な肉体操作能力を組み合わせて、私が思った通りに自分の身体を動かして、日に照らされた街を跳ぶ。
──そんな、事より…私より、も…
イメージ通りに身体が動くなら、なんとでもなる。私がどれだけ幼い頃から妄想を、想像を、イメージを繰り返してきたと思ってるの?私がどれだけのアニメを、映像を、空想を見てきたと思ってるの?参考資料は無限にある。経験だって無数にある。なら後は、ただイメージし続けるだけ。それだけでいい。
── 悪魔、でも…なんでも、いいから…
そうして跳び続けた先にあるのは、目的の豪邸。あまり大規模な破壊は出来ない。そうすると白髪の彼女ごと殺してしまう。こんなに目立ちながら跳んでいて隠れるなんて事も既に出来ない。ならば後に残るのは、正面突破のみ。
「なっ、何者だ!ここはマルルーク様の」
「邪魔ですわ」
──この子、を…私の妹を…
豪邸の側にあった庭へと落下して、そこに居た衛兵らしき人物を完璧な肉体操作により、鋼の鎧を貫きながらぶん殴りつつ、しかし肉体に触れる瞬間には絶妙な力加減を施してぶん殴って、外傷を一切与えずにその意識を奪う。騒ぎはもう抑えられない。何故なら、落下時の爆音をわざと消していないから。でも私は速い。音に迫る勢いで走り去れる。だからわざわざうるさく地上に降りたのは、ただの陽動。
私は豪邸内部の道を通る訳もなく、足元に対して
──誰か…
穴の方向を真下から真横へと変える。後はもう、真っ直ぐに走り抜くだけ。もう少しだけ。
──誰でも、いいから…
後、後、もう少しだけ待って。
──助けて…あげて…
その声が聞こえた直後、私は牢屋の部屋にまで到着していた。少女以外に人の気配は無いし、人の影は見えない。
「おねえ、ちゃん………おねが、い………へんじ、してよぉ………わたしを、ひとりに、しないって………いったのに………いやぁ………いやだよぉ………」
「………っ」
少女は居た。この部屋、この牢屋の中央に居た。自らの姉の亡骸を抱えて、血濡れになって、それでも泣き腫らしている、1人の少女。横倒れる己の姉の手を握って、抱きついている少女。
「………少々、よろしいかしら?」
彼女は助けを求めたのだ。なら、聞かなければ。その真意を、その真実を、事細かでなくてもいいから、その一端を。
「っ!や、やめて………!お姉ちゃんに、これ以上、手を、出さないで………!」
少女はこちらを一瞥する事なく懇願し始めた。
「別に、危害は加えませんわ」
「………?」
少女はその時、初めて私を見た。そしてその顔に浮かんだのは、一体何だったろうか。
「だ、れ………?」
「
「あく、ま………?………っ!」
少女は、何か決意した目で私を見た。
「おねがい、します………なんでも………わたし、が………なんでも、するから………お姉ちゃん、を………助けて………お姉ちゃんを………生き返らせて………!」
でも、それは今の私に向けるモノじゃない。
「………ごめんなさいな。
「………なん、で………なんで………おねえちゃん、は………わるいこと、なんて………なにも、して、ないのに………いい子、だったのに………なんで………?」
少女の顔が絶望に歪む。希望を目の前にして、しかし希望に手が届かなかったような、絶望に歪んだ顔に。
「………そもそも、
「………ぇ?」
姉に抱きつく少女の髪色は
しかし、白髪の彼女が私をここに呼んだのだ。ならば私は、その白髪の彼女に話を聞くのみ。
「白髪の貴女。貴女の念話が
──助け、て…
──妹を…
──可愛い、この子を…
──救って、あげて…
「貴女は?」
──悪魔さんが、言ったのに…
──治せないし、生き返らない…
──なら…
──この子だけでも、助けてあげて…
──救ってあげて…
「………貴女はそれで構わないと?」
──それで、いいの…
──私は、貴女を呼べた…
──だから、私が、決める…
──この子だけは、救ってみせる…
──だって…
──大切な、妹だもの。
「………では、では。ここに契約を誓うと、宣言なさい」
──誓う。
──私の全てをあげるから。
──この子を。
──可愛くて、小さくて、大好きで。
──私の大切な、最愛の妹を。
──救って、あげて?
「えぇ、えぇ。了解いたしましたわ、
契約は、今ここに成された。以前の私は悪魔に成り立てだったからやらなかったけれど、悪魔とは本来契約によって形を成すモノ。己を欲望をコントロールする主人を見つけて契約し、欲望の発露を見出すモノ。アリスの時とは違う。あの時の私は悪魔に染まっていなかった。悪魔擬きに過ぎなかった。でも、今の私はもう違う。私は悪魔だ。人間でもあるけれど、でもそれ以上に悪魔だ。ならば契約はしなければ。………こんなものは建前ではあるが、それでいい。私が納得出来ればそれでいい。
私の本音は。
「では、再度契約内容を確認させて貰いますわ」
「私のマスターとの契約内容はただ一つ。マスターの全てを
「でしたら一つ問いましょう。銀髪の貴女、マスターの妹様?」
「貴女は、どうしたら救われますの?」
銀髪の少女は惚けた顔から、もう一度決意の籠った目で私を見る。私も笑う。今度こそその願いが叶うのだと、知らしめる為に。今度こそ希望をその手で掴む為に。
「おねえちゃん、を………助けて………!」
「えぇ、えぇ。了解しましたわ」
私はマスターの肉体に触れる。
──
──
──メインエンジン:悪魔炉心。
── サブエンジン:魔力蓄積保管アップデート。
──エンジンから魔力エネルギー供給開始。
──妖属性奮起。
──
──光属性奮起。
──
──影属性奮起。
──
──契約属性奮起。
──
──治療中…
──治療中…
──治療終了。
──肉体の仮構築を解除。
──自然治癒力の強化を終了。
──欠損部位の補完を停止。
──身体負荷の抑制を破棄。
──
──
──増設用魔力ラインを切断。
「っ、あ………」
「お、お姉ちゃん!」
「あぁ………これで、完治しましたわー………」
私の本音はただ一つ。
「か、ふ………わた、し………生きて、る………?」
「おね、お姉ちゃん………!よかった、良かったよぉ………!!」
「あわ、ちょ、ちょっとマリエット。もう、もう………よかった、よかった………貴女が生きていてくれて、良かった………」
「それはっ、私のセリフだよぉ!ぐすっ、うぐっ、ひぐっ」
「もう、もう。愛しいマリエット、可愛らしい私のマリー。泣かないで、貴女の姉はここにいる。シャルティナはここにある。頼りない姉だけど、これからも慕ってくれると嬉しいなぁ………ダメかなぁ?」
「大好きだよっ、大好きだからぁ!だから………もう、どこにも、いかない、で………」
「………ありがとう、悪魔さん。私と妹を助けてくれてありがとう」
「いえ。それが
「そっか………そうだよね。えーと………自己紹介もまだだよね?私は、シャルティナ。この子、マリエットのお姉ちゃん。貴女は?」
シャルティナはマリエットの頭を優しく撫でながら、こちらを見る。
「
「あく、ま………そっか、そうだっけ。ごめんなさい、さっきは意識が朦朧としてて、あんまり覚えてなくて………私、貴女とどんな契約を結んだの?」
「私のマスターとの契約内容はただ一つですわ。マスターの全てを
だって私は、マスターを救う為にここに来たのだ。どれだけ曲解しようがなんだろうが、基準は全て私にある。全てをあげるというのなら、私のモノだと言うのなら、治してやろう。マスターの妹様が姉の蘇生によって救われると言うのなら、生き返らせてやろう。私はそう理解した。だから私はそうした。
「あははっ。なんかあれだね、屁理屈みたい」
「契約内容をどう理解するかは
「うん、そうだね。………ね、私ってこのまま生きてていいの?貴女のモノなのに」
「ご自由にどうぞ。なんなら、再契約して貴女の悪魔になってもよろしいですわ」
「うーん………別に、マリーと生きられるならそれでいいかなぁ。あ、でも、私かマリーが困難に直面した時にさ、召喚させてもらって、そのまま手助けしてくれると嬉しいかも。どんな契約なら、私とマリーに手助けしてくれる?」
私のマスターは思ったより強かだな。ま、いいけども。むしろこれくらい強かじゃなきゃ。それに、ちょっとだけ実験したい事あるんだよね。悪魔状態で行った契約は人間状態に引き継がれるのか?それが
「んー………では、召喚前に一度連絡してくださいな。
そういうことにしてしまおう。私のマスターには私が悪魔のフリをしている人間ではなく、人間のフリをしている悪魔だと思わせよう。………そっちの方が都合が良いし、そういう設定は何かに使うかもと思って想定してはいたけど、練習はまだなので。今ここで作ってしまおう。
「人間の姿で?普段は何してるの?」
「宿屋の従業員ですわ」
「え、びっくり。冒険者さんかと思ったのに」
マスターの小さな顔がちょっとだけ驚愕に染まる。まぁ悪魔が宿屋の従業員やってたら驚くよね、わかる。私もバティンが従業員やってたら吹くもん。
「人間の時は精神も人間風にしていますの。己の根源たる欲望を反転させて。それに、悪魔の時に有している身体能力を一時的に分解して魔力量に変換しておりますので、割とか弱いですわ。それに、戦いならこの姿で出来ますもの」
「へー………なんか、貴女って悪魔っぽくないね」
「そうですかしら?」
まぁ元は人間だし。でも確かに、悪魔らしくはないよなぁ。そういう個体って事にするけども。
「うん、なんか、言葉には出来ないけどね」
マスターはそう言ってから、妹様の身体を一度起こして背負い始める。私も近付いてそれを手伝ってあげると、小さくて可愛らしい顔で微笑んで、私にありがとうとお礼を言ってくれる。ふむ、マスターは可愛らしいな。控えめに言って美少女だ。いやまぁマスターの妹様も美少女だけどね?後は純粋に私が白髪美少女好きなのもあると思うけど。それに特に髪の長い白髪美少女はね、もう大好きよ。しかも姉属性?そんなの最高だが?もうね、私の心にどストライクよ。そんな美少女の為なら何でもするんだよなぁ!というか契約する。します。事前の連絡さえあればマジで何でもします。
こうして契約をしたのもマスターと何か繋がりが欲しかったのもあるんだよ。もう一目惚れだよね。ってか、あんなに死にかけてたのに自分より妹様を助けてとか。普通に考えて言えないから。その精神性も実にGOOD。私そういう人大好き。キャラクターとしてじゃなくて、純粋に1人の人として大好き。だから私はこの人をマスターにしよう、って思った訳よ。
「とりあえず、契約云々はここから逃げてから。それじゃダメ?」
「それでよろしいですわ。ただマスター、それなら失礼いたします」
「おわっ?!」
2人の首に着いていた首輪を破壊して外してから、私はマスターの妹様をお姫様抱っこし、マスターを背中で背負う。2人とも小脇に抱えてもいいのだけれど、そうすると妹様が目を覚ましてしまうので。それはちょっとよろしくないだろうし、こうする事にする。
「逃げるなら、
「………あはっ、そっか。そうだよね。ね、マリーを起こさないで逃げたりとかできる?」
「そんなの余裕も余裕ですわ。捕まっていなさい、マスター。飛ばしますわよ」
私は
「わっ!横穴作ったの?凄っ!」
「こんなの序の口ですわ。マスター、速度は落としますけれど、かなり速く動きますわ。絶対に
走り出す。最高速度よりも速度を落として、ちょっとした車の速度程度に調整して。しかしマスターの目にはきっと、眼前の土石がどんどん消えて、背後の土石はどんどん埋められていく光景が見えるだろう。
「はっ、速い!」
「あまり喋らないように。舌を噛みますわよ?もし会話をしたいのなら、今は念話の方がいいですわ」
『………これで、いいのかな?ごめんね、
「聞こえてますわ。えぇ、使えるならばそれで結構。マスターは魔法を扱えるんですのね」
『図書館に通って勉強したから。最低限、マリーの事だけでも守れるように、って………私とマリー、孤児だからさ。孤児院で暮らしてたけど、孤児院って15歳までしか居られないの。私が14歳で、マリーは10歳でね。兄弟姉妹が居ても孤児院には15歳までしか居られないし、マリーの事も凄い心配だったから………それなら、私が出るのと一緒にマリーも連れてこうって。マリーもそうしたいって。それで、孤児院から出た時に自衛の手段くらい欲しかったから、魔法を覚えようってマリーと一緒にお勉強したの』
「思ってたよりハードな人生送ってますわねぇ」
『そうかな?………それでね、私の魔法適性は音、木、無、回復、記憶、契約、補助の6つで、マリーの魔法適性は水、光、木、回復、記憶、補助、時間の7つなの。それでね?私は妹のマリーを守る誰かが欲しくて、特に契約属性を練習してたんだよ。でも、あんまり上手くいかなくて………誰も、召喚できないの。契約は出来るんだけど、呼べないの。契約した相手を召喚するのは出来るんだけど………召喚出来なくて』
「割と致命的ですわね………」
『でしょ?だから契約属性の魔法は使う機会があんまり無くてさ。でも、他の属性ならちゃんと使えるんだー。本職の魔術師さんとか冒険者さんと比べたら弱いけど、使えるだけで十分だもの。そうやって努力して頑張ろう………って時に、攫われちゃって。何か変な儀式?をする為とかで、お腹パックリ切られちゃって………マリーの事も、泣かせちゃった。死んじゃやだ、死なないで、って………沢山心配させちゃって………お姉ちゃん失格なのかなぁ、私………』
「それはないでしょう。マスター、妹様のあの反応を見ても姉失格とかほざいてるなら一回死んだ方が良いですわ」
むしろあれで姉失格とか何を言ってるんだよ。あれ以上のお姉ちゃんは居ないだろ。妹の為に死ねるとか下手な覚悟で言えないぞ。少なくとも私は弟と妹の為に死ねないし、自分以外の為にわざわざ命をかけられない。だから、マスターは姉失格なんて訳がない。
『割と手厳しいね?!………でも、そっか。まだマリーのお姉ちゃんでいいんだ………』
「むしろ貴女は姉の鏡でしょうに。自分の妹の為に命を差し出すとか普通やれません。覚悟決まり過ぎですわ」
『キングプロテアさんって割と辛辣だよね………マリーのお願い無視して私と会話してたし』
「
『うーん、そうなんだけどさぁ』
少しだけ不服そうにマスターは答える。ここまで来ても妹様の心配をするなんて、本当に凄いや。
「ん、上に登りますわよ。衝撃の方向と種類が変化いたしますけれど、決して喋らない事に専念を。念話なら良いですけれど」
『わ、わかった』
「では、行きます」
「っ………!」
跳ぶ。ただただ真上に跳ぶ。私の上にある土石全ては
そうして出た地上は我が家、私の働く宿屋にある所の庭。まだ昼間なので跳躍はある程度抑え気味にしたので、決して目立つ事も無かっただろう。
「マスター、直ぐに移動いたしますわ。こちらへ」
「ね、ねぇ。ここは何処?」
「
「うぇえ?ここで働いてるの?!すっごい普通の宿屋!」
「奇抜な宿屋な訳がないでしょうに」
少しだけ小走りで宿屋の中を移動する。お客さんが居ないタイミング、ミナと店長さんに見られなさそうなタイミングを選んで、そのまま自室にまで素早く戻る。マスターは背負ったままだし、マスターの妹様もお姫様抱っこしたまんまだけど、悪魔の姿である今の私ならこれくらい余裕も余裕だ。
「あ、テア。準備は万端ですよ?」
「それは良かった。あぁそれと。アリス、ただいまですわ」
「はい、お帰りなさい。それで、その子達が?」
私はお姫様抱っこをしたままの妹様をベッドの上に優しく降ろして、次にマスターをと思ったら自力で降りていた。
「えぇ。マスター、彼女はアリス。貴女と同じように、この
「えっと、私はシャルティナです。この子はマリエットで………えーと、よろしくお願いします?」
「はい、よろしくお願いします、シャルティナちゃん」
アリスはいつもと同じように微笑んで声をかける。マスターはちょっとだけ現状の把握に時間が掛かっているらしい。それもそれで致し方ない事かもしれないが、まぁ直ぐにでも現実を直視するだろう。気にする必要は無い。
「さ、シャルティナちゃん。ここに座ってくださいな」
「え、えっと?」
「お食事ですよ!私が作ったんです。食べてくださいな」
アリスが今回作ったのは野菜メインで肉類は少なめという、かなり軽そうなスープ。しかしマスターとその妹様にはこういうスープが今は必要だろう。栄養失調になる前に栄養を取り込むにはこういう色々と入ってるやつがいいからな。
「あ、はい、いただきます………」
マスターはちょっとだけ躊躇したものの、自分の身体が感じる空腹感には逆らえなかったのか、それとも美味しそうな食事を目の前にして思わず手が伸びてしまったのかは分からないしどうでもいいが、静かにアリス作のスープを飲み始める。ちょっとだけ放置しているとマスターは目を輝かせてスープを啜り始め、最後には皿に注がれていたスープの全てを食べ切ったらしい。食べ終わった皿をこちらに向けて。
「っ、美味しいっ!これ美味しいです!」
「ふふっ、それならよかったです」
うむ、それにしては実に美味しそうだな。私野菜ってあんまり好きじゃないんだけどね。いやまぁ絶対に食べれない訳じゃないけど。そもそも今回のは野菜スープって言ってたし、私もそれくらいなら食べられるだろう。野菜はなぁ、なんか歯ごたえが好きじゃないんだよ。まぁ食べられない訳じゃ無いけども。
「アリス、少しだけ2人を任せますわ。ちょっと外に行きますの」
「出来る限り早く帰ってきてくださいね?」
「分かってますわ、そんなの」
私はそれだけを言って、宿屋の中でも特に人の居ない倉庫にまで誰にも見つからずに移動するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます