魔法の詠唱って他人のはカッコいいけど、なんか自分でやると違うんだよなぁ
心理テストをアリスと一緒にやった日から3日経過した4月30日、私はとある事を思い立ったのと、お目当ての食材を図書館へ向かう道で偶然にも見つけたので、自分からキッチンに立っていた。ちなみに仕事時間外なので料理を誰かに出すわけでは無い。純粋に私が食べたいから作るのだ。他人に出すつもりもあんまり無い。まぁ食べさせてほしいなーってアリスとかレイカとかフェイとかミナあたりに頼まれたら食べさせるかもしれないが。まぁ紫悠に頼まれても、まぁ同郷のよしみという事で食べさせてやろう。今から作る物は、紫悠も確実に食べられるものなら食べたいと思うようなものだろうからな。
「んー」
材料を台所の上に置いていく。材料は、味噌、わかめ、豆腐、ネギ、これだけ。まぁ何を作るのかと言われたら、この材料のラインナップで味噌汁以外に何があるのかと私は問いたい。いやまぁ他にもなんかあるかもだけど、私には味噌汁の材料にしか見えない。見えないってか味噌汁作るために買ったんだから当たり前だが。そう、私は偶然にも見つけたのである。アオナお姉ちゃんの出身だと言う東の国の方から来た行商人が売っていった食材なのだが、この辺りでは味噌、豆腐、わかめなどを用いた料理を出来る人間はおらず、買う人はチャレンジャーだったそうで。私は友人(アオナお姉ちゃん)から作り方を聞けるかもしれないという事で、売れ残っていた味噌たちをちょっと安めに買わせてもらった。もうけもうけ。
では、最初は材料の下準備。ネギは微塵切りというか小さく細かくする。大切りのネギってあんまり好きじゃないので。また、豆腐も適度な大きさに切り分ける。わかめは乾燥し切って干しわかめになっているっぽいので、水に浸して水分を取り戻しておく。次は鍋に水ぶち込んで火にかけて、豆腐とわかめも投入しつつ煮立たせる。んで水が沸騰したら火を止めて、味噌を取り出して溶きつつ鍋の中にぶち込む。あんまり煮立たないようにしつつ火力調整を行いつつして、まぁ適当に切り上げてから最後に微塵切りなネギをぶち込んで、適当な器、中でもお椀っぽい形状のやつに味噌汁を注ぎ込んだら完成である。余った味噌汁は味噌汁のみを
「いただきまーす」
お味噌汁は箸で食べるものであると私は認識している。が、この店に箸なんてある訳がない。ここは日本では無いのだから。なので、普通にスプーンで飲んでおく。味噌汁を英訳したらミソスープだしスープっぽくスプーンで飲んでも全然許されると思うし。スーなんたらなんたら五月蝿いな私。
「んー、うまっ」
懐かしの味だ。美味しい。なんかイメージと味が若干違う気がしなくもないが、まぁ味噌汁って感じなのでこれはこれでいいだろう。でも、正直食べたところで何がある訳でも無いんだよなぁ。いやまぁ故郷の国の味ではあるんだけど、基本的に牛乳さえあればそれでいいかなって思ってるし………正直そんなに感動しないなぁ。なんでだろ。感情でも死んでるのかな………それは無いか。例え死んでたとしても一部でしょ。流石に全部死んでる訳………無いよね?あーでも………自分の感情を全部無視して常に客観視してると、感情が死んでる風には見えるよね。私の場合は損得勘定を優先して、出来る限り合理的に生きているだけだけだけども。
「あったかーい」
にしても、味噌汁などのスープ系料理は飲むだけで身体の芯からぽかぽかしてくるな。美味しい。というか味噌があるなら豚汁とか味噌煮込みとかも作れるな………今のところ作る気は皆無だけど。だって料理作るの疲れたし。味噌汁程度の手間であっても私にとっては滅多にしない料理なのに代わりはないのだから、そりゃ慣れている人より疲れますとも。
「んー」
ずるずると味噌汁を啜る。熱過ぎると舌を火傷するのは目に見えているので、少しばかり冷ましてから啜っている。流石に100℃の味噌汁は熱い。決して火傷せず、それでいて冷め過ぎず、安全に飲めるのは精々が60℃くらいだろう。中学校の頃によく熱々の味噌汁を飲んで舌先を火傷していたからな。流石の私も身体で覚えれば飲んで火傷する温度くらい覚えるとも。………そうしなければ覚えないってのはどう考えても馬鹿なんだけども、でもそれが私なので仕方ない。直そうと思ったこともあるが、自分の性質を矯正するのは私にゃ無理だった。なんせ、私には根性も忍耐も皆無なので。いやまぁ、だから努力したことないとかほざいてるんだが。ま、無駄に器用で努力せずに色々と出来るから努力が必要ないってのも割とあるけど。
「ふはー、ごちそうさま」
とりあえず味噌汁は美味しかったのでヨシとする。
次の日の5月1日、私はちょっとした検証というか実験がしたくて、冒険者ギルドの地下施設にまでやってきていた。
「
私が今使用したのは影属性の
「ふむ、100秒ジャスト」
1回目の
「あ、
2回目の
「あい、
3回目は110秒。
「あいう、
4回目は115秒。
「あいうえ、
5回目は120秒。
「あいうえお、
6回目は125秒。なるほど、なるほど。
「1文字につき5秒の延長。つまり、魔法効果は詠唱1文字毎に5%追加、か?」
そう、今回の検証はズバリ、『詠唱』というものの実験である。今回ならば
「となると、平仮名最後まで言ったら、えーと50音だから、
という推測が立てられたので最後まで試してみると、最終的な
「ってことは、1文字につき5%の効果増幅はほぼ確実。じゃ次、詠唱そのものに意味を持たせたら?」
検証+実験なのでどんどん行こう。次は、詠唱に意味を持たせてみることにする。さーて、どんな言葉が良いだろうか。そもそも文章の方がいいかな?どうせなら厨二病全開で詠唱してみよう。折角魔法が使えるんだから、それくらいいいよね。別に誰に聞かせる訳でもないし、どうせならカッコいい詠唱が良いだろうし。んー、んー。
「現れよ影の分身、
詠唱の文字数は12文字。先程の法則を当てはめるなら秒数は+60秒、つまり魔法が消滅するのは160秒後。そうした推測を立て、正確に時間を測ると。
「180秒?」
結果として+80秒。推測として立てた+60秒を20秒も、数値にして+20%も効果が増幅されていた。これは
「ふむ、じゃ今度は真反対な詠唱でやろう」
今度はそれっぽいのではなく、およそ言葉の意味が噛み合うことのないような詠唱にしてみよう。最初に行ったあいうえお詠唱が既にその条件を満たしているようにも感じるが、今回のこれは言葉そのものに意味が存在しているものだ。何か別の反応をするかもしれないし、しないかもしれない。それを確かめるのが実験それであり検証というものだろう。やれる事はやるだけだ。どうせ今日もというか毎日暇だし。それが素晴らしいんだけども。
「消滅せよ光の形、
それっぽい詠唱を大体反対にしてみた詠唱で
「135秒??」
減っていた。増幅される筈だった秒数が半減している。闇属性の使い手でもないのに。むしろ光属性の使い手なのに。魔法効果そのものが半減している。
「なるほど………次は関係のない魔法の詠唱をしてみるか」
詠唱は………まぁ、特に考えなくてもいいか。なんかそれっぽいやつならいけそうだし。
「咲き誇れ栄華の花よ、
特に考えることもなく思いついた詠唱をしてみる。文字数は12文字、となると予報では+60秒になるだろうか?さて、何秒になるだろうか。
「ふむ、160秒」
やっぱり文字数に比例してるのか。基本的には文字数×5%の魔法効果が増幅されてて、相性が良さそうなのは+20%、相性が悪そうなのは詠唱効果半減、相性が良くも悪くもないのは特に追加無し、って感じだろうか。となると、詠唱は基本的に長文の方がいいし、詠唱の言葉は魔法との相性が良い詠唱をした方が効果は高いって事なのだろう。
まぁ、うん。ここまでやっておきながらなんなんだけど。
「結局の所詠唱使わないっていうね」
だって詠唱するの面倒だから………
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