牛乳魔法ってマジであるんだね………めっちゃびっくりした


私が軽い風邪を引いた日から1週間経過した4月25日。第五アップデートの追加機能であるイヤホン機能で、雑に私専用の音楽リストを無限再生しながらベッドでごろごろしていると。特にこれと言った理由無くふと窓の外を見ると、なんか、外の人混みが普段の何倍も増えている事に気が付いた。そういや昼営業の時、お客さんの回転率が何故かえぐかったなぁと他人事のように思いつつ、人の数がかなり増えている事の原因を突き止めるのは面倒なので私はもう一度ベッドに倒れる。今の私は音楽のせいで外部の音が遮断されている為、特に外の音が煩いという悩みも無い。そもそも、この宿屋は客室一つ一つに防音用の魔法道具が備え付けられている為、いざとなったらその魔法道具を発動すればいいだけである。


そういや最近気が付いたが、魔法道具は種類が2種類存在しているらしい。所有者の魔力を消費して効果を発揮するタイプの魔法道具と、魔石のような外部タンクを用いて効果を発揮するタイプの魔法道具だ。前者は持ち運びが楽で使い勝手がいいものが多いが魔力量の少ない存在には向かないが、後者は持ち運びが難しく使い勝手もものによるが魔力量が少ない存在でも利用できるというのである。基本的に、前者は装備や道具である事が多く、後者は家具や設備である事が多い。というこの事実に、私は割と最近気が付いた。だって興味薄かったから………元の世界の電化製品も特に調べずに機能だけ把握してたし………こうやって使えるものって事だけ理解してたし………うん、こう考えるとなんか仕方なくない?興味無くてごめんなさいね。


「♪〜」


テンションが上がってくると鼻歌も歌いたくなってもんである。こうして第五アップデートで動画サイトと検索サイトを同時展開する事で一つのスマホで二つの画面を両立するという謎の技術を使って音楽を聴きながら小説を読むという器用な事をしている私ではあるが、実は私、歌うのもまぁ好きである。そこまで上手くはないだろうが、高校の授業選択で、美術、家庭科、音楽の内一つなら音楽を選択するくらいには音楽が好きだ。いやまぁ、美術は私に絵を描くセンスが皆無なので除外、家庭科は私が満足する程度の裁縫と料理くらいなら既にできるので除外、音楽は歌を歌うのも聞くのも好きだしまぁいけるやろ、みたいな感じで決めたのだが。でもまぁ家庭科か音楽の2択なら音楽を選ぶくらいは好きだ。美術は私が幾ら器用でもセンスが皆無なので私の頭の中のイメージを上手く絵に出来ないだけである。


あれだ、頭の中でイメージしている美少女と描いた美少女を見比べると、イメージした美少女の方が可愛いって現象だ。頭の中の美少女はこんなんじゃない!ってなるやつ。模写くらいなら見て描くだけなので割と出来るのだが、完全オリジナルは無理だ。現代アートとかでもなく普通に下手なので。が、音楽なら割となんとでもなる。美術は技術が求められるが、音楽はまぁ、技術が無くても楽しければよくない?とか思ってしまう。勿論ながら絵を描くのが好きな人は絵を描いて楽しければよくない?とか言うかもしれないが私の話ではないので無視する。私の自論として、絵は上手いってのと価値があるってのは違う事である事も多いので描く側も見る側も私的には分からないのだが、音楽は歌詞の言葉が分からなくても曲自体が良ければ伝わりそうなイメージを私は持っているので。ほら、言葉の壁すら乗り越えるらしいから。まぁ私は外国語の曲でも全然聞くし、実際どんな歌詞なのかいまいち分かってない曲多いけど、まぁ曲自体が好きなのでね。


でも、うーん。なんで人の人数が今日に限って増えているのだろうか。原因を突き止めるのは面倒なのでやらないが、推測するくらいならまぁまぁ面白そうだ。机上の空論はお茶会のお供ってね。いや本当にお茶会のお供なのかは知らないし、そもそもこの言葉私が適当言ってるだけの可能性も全然あるけど、まぁそれはどうでもいい。


「♪〜」


さて、さて。こうして人混みが溢れるほどに人間が集まるものとは何か。控えめな声で歌いつつ思考しようじゃないか。とりあえず、まずは一つお試しに。凡そ人間という種族は一体何に対して集まるのか?まぁこれは簡単だ。世間一般的な意見を言わせて貰えば、人間は楽しい場所、もしくは金稼ぎのいい場所に集まる傾向がある。つまり娯楽と金に集まるのだ。娯楽は主に祭りや大会のような一般人も自由に気軽に参加観戦が容易く可能なもので、金は何かしらの仕事かもしれないし、砂金のような俗物的で高価で誰でも得られる可能性のあるものかもしれない。人によっては娯楽でも金でも無いのに集まる事もあるだろうが、それは今考慮しない事にする。そんな細かな事まで考慮してたら話ズレそうだし。もしかしたら他にも人が集まるようなものがあるかもしれないが、私には思いつかないのでそれは別にいい。


では、次は少々本格的に。この街に元から存在する娯楽もしくは金になるモノはあるか?答えだが、私は特に思いつかない。アリスなら何か知っているかもしれないが、少なくとも私の活動範囲内にそんな感じのものはない。そもそも私が行くとしても基本的に冒険者ギルドか図書館の二択だし。でも、少なくとも去年までやっていたお祭りや大会のようなものの話は特に聞いた事がない。いやまぁ、去年はなんか病魔に見舞われてたからその期間に何かあったのかもしれないが、でも、私はこの町で何かしらのお祭りがあるとかいう話を私は聞いた事がない。この辺りは基本的に温暖な気候で四季が存在せず、雨だけは降雨量がゲリラ豪雨越えをするものの、年がら年中似たような気候である為か、冬の間の暇な期間にお祭りとかそういうのは聞いた事がない。また、私の愚かな頭ではこの街に存在する、またはこの街付近に存在する仕事や金になるようなものも特に思いつかない。この辺で砂金とか金塊とかって取れたっけな………


うーん、こうして雑に推察して考えてみても、特に人が集まる理由がいまいち分からん。特にこの街に集まる意味が分からん。私の知識不足だなこりゃ。アリスが居れば理由も原因も簡単に分かりそうなものなのだが、アリス本人は今冒険者ギルドでお仕事をしに行っているので流石に居ない。や、依頼の内容によっては直ぐにでも帰ってくる可能性は無きにしも非ずといった所なのだが、そこに期待するのはちょっと無理があるだろう。誰も受けない塩漬け依頼は片っ端から全部受けるらしい我が娘とそのパートナー兼ペットの2人組にアリスの動向を聞く限り、アリスは私の目の届かない所でもいつも通りらしいので。まぁそういう事ですよね。つまり、未知に向かってまっしぐらな猫ちゃんの如き興奮をしている訳ですよ。


「♪ー………♪〜」


スマホから流している曲動画が終わった途端、一旦広告を挟んでから次の曲動画に変わる。これこそが私の無限再生リストである。ランダム再生を使ってループ機能をONにしてから垂れ流しにするだけで数時間は削れる私専用の再生リストだ。一曲一動画を約4分であると仮定して、今現在の動画数が300ちょい。となると大体1200分くらいか。こっちの世界基準だと12時間か。元の世界基準だと20時間か。うーん、ただ垂れ流してるだけでもこんだけ時間潰せるのか………なんだ20時間って。私そんなに起きてないんですが………こっちの時間だとしても12時間でしょ?長すぎぃ!そんなに垂れ流しにしてたら充電切れるって。いやまぁ、スマホの充電は私が改良に改良を施した充電魔法のおかげで、2分ちょっとで0%から100%まで充電し切るようにはなっているので、途中途中で充電をすれば出来なくはないだろうが。


あ、そうだ(唐突)。






思いついたので作りましたオリジナル魔法。制作時間10分ちょいです。まぁ構造的にはめっちゃ簡単だし割と流用出来たしね。そんで、今回作成した魔法の名称は『充電量拡大アップデート』であり、第七アップデートである。スマホの充電量を限りなく増やすアップデートで、どうせなら一気に充電してやろうと充電できる量を増やした魔法だ。ほら、さっきそういう事を考えてた記憶あるし。内容としては光、空間、契約の複合魔法で、空間によって純粋な充電量を増やし、光によって倍増、契約による条件付けによってその全てを底上げしているのである。スマホの充電量が数百倍にまで増えるが、数値的には変わらず100%のままで、ただ充電の減る速度がめちゃめちゃ遅くなるだけである。これこそが私の新しいオリジナル魔法である。ただ、充電魔法で充電するのに必要な時間が10分近くかかってしまうようになった。が、そもそもスマホの充電消費がスマホの画面の数値的に馬鹿みたいに遅いので全く気にならない。


ちなみに先ほどから言っている充電魔法とは、文字通り充電するだけの魔法である。元々は静電エレクトロというただ静電気を起こす魔法を使用していたが、オリジナル魔法を覚えてからは改良に改良を加えて充電魔法にまでしたのである。これでも一応魔法という法則の元で充電している為、普通のスマホは静電気では充電出来ないと思う。いや知らんけど。


「うむうむ、素晴らしきかな」


まぁ、スマホの充電最大量が増えるのはいい事だ。私の自動魔法という名の各種アップデート系魔法は全てがスマホそのものに依存している為、スマホの充電が切れると全て使えなくなるのだ。しっかり使えるように毎日充電を切らさないようにこまめに充電してたくらいだし。でも、今回の思い付きで新しく作成したオリジナル魔法でスマホの充電という最大の懸念点がなんとかなったので、今の私は割と上機嫌である。いやまぁ上機嫌と言っても、やってる事は普段と変わらずベッドの上で寝転がっているだけではあるのだが。


あそうだ(唐突)。そういやなんか面白い内容の本を借りてたっけ、忘れてたわ。MICCミックMICCミックっと………えーと、お、あったあった。ててててーん(猫型ロボット風)、『固有属性のすすめ』〜。固有属性という初耳単語が表紙?違う。なんだっけ本のこう、あの場所。背?そう、背!その部分にそんな感じの初耳、いや初見単語が見えたので適当に借りてきた一冊なのである!いや初耳でも間違っちゃいないか。そうそう、この本の内容を試そうと思って完全に忘れてたよね。と、その前に、内容をしっかりと思い出す為にもちょっと読み返しつつ、固有属性について解説してみよう。知識のインプットの後は知識のアウトプットをする事で物事は忘れにくく覚えやすくなるからね!まぁ今教える相手とか居ないけどな!


ではまず、『"固有属性"とは何か』という部分から復習しましょうかね。確か、ある生命体が常軌を逸脱する程に同じ何かを繰り返し続けた先に発生する条件属性の一つ、だとか何とか。個々人で発生する属性の特性が大きく変化するものの、発生条件がある特定の行動などを繰り返すというモノである為に、一纏めに固有属性と言われているとか。しかし、固有属性というだけでは個々人の使用する魔法の内容が把握できないので、使用可能な魔法の内容に応じて名称を決定し、大抵は〇〇魔法と表現するんだとか。


有名なのは『鍛治魔法』だろうか。いやこの本にそう書いてあるだけなんだけで有名ってのはこの本を読んで初めて知ったんだけども、それはともかくとして。何でも大昔に、魔術師でありながら鍛冶屋を営んでいた1人の山人族ドワーフが偶然にも固有属性の魔法を行使した事により発見され、固有属性という新しい条件属性が世間に知られるようになったんだとか。現在は多くの研究が重ねられ、特定の行動を繰り返し続ける事で固有属性という条件属性を得られるようになる事が証明されているらしい。ただし、注意が必要なのは、固有属性の魔法を扱う為に必要な条件が、最低でも1000を越える魔力量を有している事である事だろう。固有属性自体は同じことを繰り返し行い続ければ発生はするのだが、肝心の魔法行使の条件が高い魔力量という、少しばかり変則的な属性なのである。


どんな魔法が主にあるのかと気になる存在も居るだろう。先程の鍛冶魔法を例に挙げるなら、その効果は単純明快。文字通りの鍛冶の魔法である。鍛冶魔法の場合は基本的に鍛冶に必要な作業時間を減らしたり、はたまた工程自体をスキップしたり、完成した鍛冶製品の性能を底上げしたり、完成品に特殊な効果を付与したり、何処までもその特性は鍛冶の為の魔法なのだとか。他にこの本に例として載っているのは『酒魔法』で、大酒飲みの魔術師がこれまた偶然にも発見した魔法で、魔法の効果としてはこれまた文字通り、飲酒時の酔いを抑えたり、酒を分解する肝臓の機能を強化したり、アルコール中毒を消したり、少し特殊なものだと酒を飲む事で状態異常への耐性を得るとか、最終的には魔力から酒を生み出すなど、鍛治魔法と同じく、酒に関する魔法を扱えるそうだ。


固有魔法には大まかに分けて2種類あり、一つは行動。何かしらの行動をし続ける事で発現する固有魔法であり、これには鍛治魔法が入る。もう一つは摂取。何かしらを摂取し続けて発現する固有魔法であり、これには酒魔法が入る。主に行動系の固有魔法はその行動の補助が魔法の効果であり、どこまで極めても鍛冶によって得られる、この場合は鍛冶の完成品は生み出せない。摂取系の固有魔法はその摂取するものに関連する魔法の効果であり、こちらは行動系とは違ってそれそのものを生み出す事もできるそうだ。


さて、ここまで来たらこの壮大(そうでもない)前フリが分かるだろうか。まぁ誰に向けて話している訳でも無いけれど、こういう感じの演出は好きなのでノリと勢いって事で最後までやってしまう。


そう、実はこの固有属性と固有魔法、私も扱えるのだ。魔力量の方は少し前に1000を越えたから固有魔法もバッチリ扱えるという訳である。まぁ、この本を読んで初めて固有属性の話を聞いて、もしかしたら私もなんかあるんじゃね?って事で試してたら発見しただけなんですけどね。でも見つけた事自体は嬉しい事なので気にしない気にしない。そして1番気になるのは、私は一体どんな固有魔法なのか?という所だろう。特に引き伸ばすこともなく言うと、私の固有魔法は『牛乳魔法』だ。何だそれって言われるかもしれないが、実際そういう魔法なのだ。いやまぁ私がそういう名前を付けたのだが、でも出来る事的にそう名付けるしかなかったので。


牛乳魔法は文字通りに牛乳に関係する魔法だ。分類としては摂取系であり、既に幾つかの魔法は使用できる。使用できるってかほぼ新しく作り上げている。なんでも、基本的に固有魔法は術者独自のものである為、特定の魔法などは存在せず、術者自身が新しく魔法を作らなければならないそうだ。ただし、固有属性は基本的にその術者が好きなもの、又は何度も繰り返してきたものである為、それが魔法になっても行使自体はかなり簡単だとか。まぁ、魔力量が1000になった魔術師である事も原因ではあろうが。まぁそれはともかく、私が今使える牛乳魔法を紹介しようではないか。いやまぁ、紹介ってかそもそもこれらの魔法作ったのは私なんだけど、まぁそこまで気にしなくてもいい。


まず一つ目は『牛乳搾りミルキング』。この魔法は、私の魔力を元に牛乳を生み出す魔法である。味は基本的に私が今まで飲んできた中で1番美味しいと私が思った牛乳の味が再現されるらしく、実際に飲んでみたがかなり美味しかった。お試しとばかりに『牛乳搾りミルキング』で生み出した牛乳を使って料理をしてみたが特に問題は無かったので、魔力から生み出したという点のみ以外はただの牛乳らしい。ちなみに、牛乳の味の調整も魔力操作を上手い具合に駆使すれば出来そうだが、どう頑張っても美味しさを底上げする事は出来なかった。不味くする方向性なら割と出来そうではあったが、それをしても一切の得が私に存在しないのでやっていない。誰が自分から不味いものを飲むかよ。また、牛乳自体の温度を変更する事も可能だったので、冷たい牛乳もホットミルクもどちらも飲む事ができた。


二つ目は『強化レインフォー骨骼スド・ボーン』。この魔法は、私の全身の骨のあらゆる能力を倍増する魔法である。本来発生するであろうデメリットの一切を得る事なく、骨の強度、硬度、柔軟性、弾性、再生速度などのメリットのみを倍増させる事が可能な、実に魔法的な効果を発揮する事ができるのだ。牛乳飲んだら骨強くなるよね?という実に単純な思考によって生まれた魔法である。私もまさかそんな簡単に行けるとは思わなかったのでびっくりした。その最低強化倍率は10倍で、最高強化倍率は100倍以上である事もびっくりした事実に拍車をかけている。適当に100倍まではやってみたのだが、その先はまぁ別にやらなくてもいいかな、と思ってやっていない。体感的には無限の魔力さえあるなら強化倍率無限で永遠に強化し続けられそうではあるが、流石に私の魔力は有限なので難しいだろう。強化倍率100倍で既に魔力の半分近くを消費したので、今の私ではおおよそ200倍が限界なのではないだろうか?まぁそれでも普通に考えてあり得ないメリットを得られるようだが。ちなみに、この魔法は一度行使すると最低でも1時間は効果が持続する事も確認済みである。効果時間が長くて私的には割とグッド。骨折をした事がない私に使う機会があるのか、という疑問は残るが。いやでも突き指くらいならした事あるしな………でも突き指の痛みの原因って別に骨じゃなくて関節とかも普通にあるし………まぁ、その辺は気にしないでおこう。魔法が使える、というだけで良いのだから。


三つ目は『黒魔術:ブラックマジッ牛乳魔法ク・スティール』。この魔法は元の世界に存在した黒魔術を参考にしているというか偶然ネットで牛乳魔法って調べたらこれが出てきたから、どうせなら再現してやろーってやってたら出来上がった魔法である。昔、元の世界のある地域では、この世の富には一定の限界が存在し、誰かが豊かになればその分誰かが不幸になると言われていたそうだ。言い方を変えれば、誰かが誰かの富を盗んだから豊かな家と貧しくなった家が生まれる、という思想が存在したのだとか。そして、その盗む手段こそが牛乳魔法と呼ばれる窃盗の魔法であり、今回私はこの魔法を再現したのである。再現というか流用に近いだろうか。元の世界の黒魔術である方の牛乳魔法は言わば、概念的に表現するなら対象の富を盗む魔法である。元の世界では、その富こそが農耕社会であった場所では牛乳だったのだろう。ならばこの黒魔術:ブラックマジック牛乳魔法・ミルクスティールという魔法の効果は単純明快、対象1人の富を盗む魔法である。富は個々人によって変動し変化する為、何を盗めるかは個々人によるだろうが、富そのものが収納ストレージのような亜空間に存在しない限り、力だろうが物品だろうが生物だろうが存在だろうが、それが富でさえあるならば、問答無用で盗めるのがこの魔法である。ちなみに、今のところ人間相手に使った事は一度も無い。だって変なの盗んできたら怖いし。


だってこの魔法は、問答無用で対象が富であると思考している何かを盗む魔法だ。そして、富かどうかは個々人の価値観によって変化する。路傍に落ちているゴミが富であると認識しているものもいるだろうし、美術館の芸術品がゴミのように思える存在も勿論居るだろう。だからこそこの魔法は怖いのだ。奴隷にとって隷属契約が富であると認識していれば、私はその契約を盗む事になる。契約を盗んだらその契約の対象は私に移る。つまり、私が奴隷になるのだ。この魔法の肝は、富の価値観が私に依存しない、という所にあるだろう。逆に言えば、私には要らないゴミでも対象には至上の富である場合もあるのだ。使い勝手が良いとは決して言えないしそもそも使ったら犯罪者まっしぐらだが、時と場合をしっかりと見極めれば十分に有用な魔法であると断言できる。でも私は人間相手にしか使いたくない。少なくとも意思疎通出来るやつにしか使いたくない。意思疎通できない奴から富とかいう曖昧な概念に則って何かを盗むの怖いし………


以上三つが、私が今のところ覚えている牛乳魔法である。ちなみに解析理解アナライズでステータスを確認するとこのような実績が追加されていたりした。



【固有属性:牛乳】

〈牛乳魔法〉

牛乳に由来する魔法を行使する。



内容としては、ただ本当に牛乳魔法が使えるようになったよ、みたいな内容だ。にしても、牛乳魔法って字面があれだなぁ。嫌ではないよ?そりゃ私の好きなものだもの。でもだからって牛乳魔法なんて単語は聞きたくなかったなぁ。いやまぁ魔法の効果自体は素晴らしいんだけどもね?だからって納得できるような事でも無いんだよなぁ。


牛乳搾りミルキング


ベッドの近くにあった何も入れずに持ってきたコップに注ぐように牛乳搾りミルキングを発動すると、特に何も考えずに使用したので冷たさバツグンな美味しい牛乳が完成した。私はその牛乳を飲み干して、一言。


「………うん、今日も頑張ろう」


全く面白味のない事を言ってしまった気がするが、まぁ別に私は気にしないので問題ありません。

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