お前達もガチャの沼に落ちろ


3日後、本日の日付はカウスの月の1日。つまり4月1日。元の世界基準で言うならエイプリルフールの日。そんな今日なのだが、私は特にこれと言った嘘を吐く事もなく、いつもと全く変わらない日常を過ごしていた。何故かと言われれば、そんなものは至極単純だ。多分、誰でも分かる。


「アオイ、出掛けませんか?」


この子アリスが居るからだ。アリスの両眼は真理の瞳という、厨二病的に言うなら魔眼のようなモノだ。その瞳はあらゆる真実のみを見通す瞳であり、あらゆる欺瞞に虚偽に秘匿、隠匿に大嘘に隠蔽は勿論、幻影に幻惑、果ては現実改竄まで、この世に存在する真実のみだけを見通す、真実のみしか見えない瞳、真実だけを見通す瞳。それが、私のアリスの瞳である。こんな彼女に対して嘘を吐いた所でそんなものは無意味であるのは明白。であるなら、最初から嘘を吐く事をしなければいいのみである。アリスの真偽判定の能力は非常に強力で、それが真実でないのなら、その発言の本人が真実と心の底から信じていようと、言葉自体が真実でなく嘘の話であるならば、聞こえる言葉と見える文字は別物になってしまう。その人物にとっての真偽判定ではなく、その言葉についての真偽判定が行われる、という訳だ。多分、アリスの瞳はアカシックレコードとかそういう、世界の知識みたいなのに繋がってるんだと思う。いや知らないけども、でも多分似たような感じだ。何故なら、アリスの知識でも相手の知識でもない、決して知り得ない事を知り得るというのだから、確実に外部からの知識提供が行われているのは明白だからだ。まぁ、だから何がある訳でも無いのだが。


「出掛けるっても、何処に?」


「カモタサの街ですよ。この前は依頼の後で直ぐに帰ることになっちゃいましたからね。最近になってフェイちゃんが転移魔法を覚えたそうなので、どうせなら一緒に行きませんか?」


「なるほど」


長距離転移ならうちのバティンの集団転移でも良いんだが、なぁ。あいつ呼ぶと面倒だからな。いやまぁ、普通に会話してる分にはこれと言って不満は無いんだけど、あの癖みたいに惚れた云々言ってくるのが嫌なんだよな………それ以外は本当に完璧なのに………惜しい人材だ。人じゃなくて悪魔だけど。


「それで、アオイも一緒に行きませんか?」


「………ん、まぁ、別にいいよ。一緒に行こっか」


一瞬だけ面倒だなーとか思ったけど、興奮したアリスを放っておく方が面倒そうだしな。面倒というか、大変?その辺のニュアンスはよくわからんけど、まぁ、そんな感じ。だから、私も一緒に行った方が良いと思う。ほら、行動しなかった時より、行動した時の方が後悔は少ないって言うじゃない?行動せずにしておけばよかったって後悔するより、行動してからしなきゃよかったって後悔する方が良いって。いやまぁ、聞いたことあるだけで実践した事はあんまりないんだけどね?でも、まぁ。別に一緒に出掛けるくらいならいいよね。というか、ゲームのスタミナ使い尽くしたので暇なのよね。本はまだ新しいの無いし。読み直そうにも、もう既に読み直したのばっかりだし。この世界の本もコピペして書籍風にしてるけど、それも読んじゃったしなぁ。いやまぁ、異世界の本は知識として読んでるから、物語と違って何度でも読み直してしっかり覚えた方が良いんだろうけど、流石の私も飽きるよ。単純作業は好きだけど、暗記系は単純にやるより細々と暗記するものを変え続ける方が覚えやすいんだ。まぁ頭の中がごちゃごちゃするから、あんまりオススメはしないけども。


「そうですか!………んんっ、はい、ありがとうございます、アオイ」


今ちょっと嬉しくて声出ちゃいましたね?私には分かります。鈍感系主人公とまでは行きませんが人の機敏も人並みには分かるので。………いやまぁ、嬉しさの起点は、私と出掛けるって事より、出掛けた先の事を思ってだけども。でもそれはそれとして私と出掛ける事自体にも嬉しさを感じてくれているのだろう。そうでなければこの場面で無意識の声など出る筈もないので。私は詳しい訳でも無いけど無知って訳でも無いんだ。正直言ってこれくらいの観察ならいつでも出来ると思うけど、いつもやってると疲れるのでやらない。やらないってかやりたくない。普段から些細な事にまで気を使ってると疲れるから。


「で、いつ行くの?」


「明日、昼営業が終わった後らしいですよ。その後は夜営業に間に合うくらいには帰るそうです」


「なるほど、了解」


それくらいなら仕事を休む必要も無いだろう。流石に転移して帰ってきたら普通に疲れはするだろうが、でもそれくらいなら大丈夫なくらいには慣れたからな。なんせ、この異世界の1年を秒換算すると9000万秒、元の世界の1年を秒換算すると3153万6000秒なので、差は5846万4000秒となる。つまり私は元の世界基準で考えるなら、この世界で2年と数ヶ月はこの店で働いているのだ。そうなると実際の勤務時間は9000万秒より少ないけど、でもまぁその内の半分の半分くらいの時間は仕事してる時間だと思う。いやまぁよく知らんけど。


でもまぁ半分の半分でも2200万秒くらいだし、元の世界換算でも1年よりちょっと少ないくらいでしょ?それくらいの時間働いてるなら、割といい感じでは?元の世界で1日8時間労働だとして、毎日ずっと働いてるなら1051万2000秒になるんだけど、私の場合は2200万秒だよ?大体2倍くらい働いてるんだぜ?元の世界で考えれば2年分の仕事をしてきた事になるんだよ?………そう考えると、私は、1年で2年分の仕事量をした事になるのか………凄いな私………よくやったな私………これはもう褒められてもいいのではないか?後でアリスかレイカ、駄目そうならフェイに褒めてもらおう。それでも無理ならミナとかコルトさんとかアオナお姉ちゃんとかミゼルとかリリーさんとかフォージュさんとかマリンちゃんとか、もうとにかく知り合いの人片っ端から褒めてもらおう。私結構頑張ったし、褒められてもいいよね?


「アオイ、アオイ。それはそれとして、今日も少しだけ出かけて、私と一緒に散歩をしませんか?」


「散歩?………まぁ、いいよ。行こうか」


拒む理由も無い。強いて言うなら外に行きたくないなーっていう引きこもり特有の外に行きたくない病みたいなのがあるけど、まぁ正直なんとなく嫌だなーってだけで、私は別に外に行かない訳ではないので。自分からはあんまり行きたくないけど、誰かに誘われたくらいなら行くよ。ついでに言うなら散歩くらいなら別に行くよ?暇なので。


「ふふっ。では、行きましょうか」


アリスが私に向けて手を伸ばすので、私はその手を握って立ち上がる。そうして立ち上がると、私はなんとなく収まりが悪いので手の組み方を変えつつ、しかしアリスとの手は離さぬまま部屋の外に向かうのだった。











次の日、私は昨日アリスに言われた通り、フェイの魔法による空間転移でカモタサの街にまでやって来ていた。空間転移はバティンの転移と同じ感覚だったので特に何も言う事はない。


が。


「アオイ!今度はあっちに行きましょう!あちらにも、あっちにも、それとそっちにも行きますよ!!」


「まってアリス、まって」


やはりと言うか何というか、予想は出来ても回避は出来なかったので、アリスは興奮したので使い物になりません本当にありがとうございました。レイカとフェイは2人でどっかに行ったのでアリスと2人きりなので、いつものようにアリスとは手を繋いではいるものの、アリスは冒険者として鍛えているので私より力が強くなっているので私1人では抑えきれない。


「ほらアオイ!あちらにも行きますよ!!」


「まって、まって」


しかし、アリスも強くなったなぁ。こうしてカモタサの街中を引っ張られているとそれをよく感じられる。身体能力だけで見るなら私が抵抗できないくらいに強くなったみたい。冒険者として頑張ってるんだろうなー、って。あ、いや、冒険者として頑張ってるっていうのは違うか。アリスが強くなってるのは、知らない事を知る時に起こるあらゆる危険を跳ね除ける力を身に付ける為だもの。そのついでとして、そして力を身に付けたと言うのが誰にでも分かる様に、後は力を身に付けつつ未知を買う事ができるようにお金も集める為に、アリスは冒険者になってるんだもの。


「アリス、おちついて」


「アオイ!アオイ!!ほら行きますよアオイ!!未知なる世界が私達を待っています!!」


未知なる世界が待ってるから何だってんだよ。ちょっとは止まれってば。せめてこの繋いだ手を離してくれ。そして私の事を引っ張らないでくれ。単独行動させろとは言わないし普通に一緒には行くから、とりあえず離してくれない?話はそこからだ。いや今そんな余裕ないから話してないけど。離すだけに。あークソつまらない事言ったな今。いやまぁ言葉としては出してませんけどね?


「アオイ、アオイ!この街一番の名物を見に行きましょう!!先程道はそこ行くお姉さんにお聞きしました!さぁ行きますよアオイ!!」


「ちょ、まって、おちついて」


街一番の名物は分かったから、ほんともう許して欲しい。何でか知らないけど、樽の中に詰められて外から釘を樽に打たれてそのまま馬車で引っ張られる拷問兼処刑みたいなやつを思い出しちゃったから。それか、なんかどっかの女王様が綺麗な装飾付きの鎖で拘束されたまま街中を歩かされた話を思い出すから。その場合は樽に詰められてるのも街中を拘束されて歩かされてるのも私になるけど、でもまぁそんな感じのイメージしちゃったから仕方ないよね。後はそうだなぁ………犬の散歩?別に犬でも猫でも鰐でも何でもいいけど、何かの散歩って感じ。そうなると今度はアリスの方が何かしらのペット系の動物って事になるんだが………アリスって、人間以外の動物で見立てたら何なんだろう。私、こういうのクソ苦手なんだよね。だってさ、人間は人間だし、犬は犬で猫は猫でしょ?人間以外で例えると?そんなん知らんが?としか言えないから。


だって、人間は人間であって、それ以外の動物はそれ以外の動物でしょ?まんまだけどそういう事じゃん。例えろって言われても無理でしょ?だって、人型でも無いし会話すら成り立たない人間未満の動物なんて知らないし。精々何かしら例えられる動物って犬猫くらいだよ?犬は従順、猫は自由、くらいのクソ浅い感想しか浮かばないけど。動物自体の名前はそりゃ知ってるよ?でも人間で例えるとかは無理でしょ。そんなんどうでもいいし。


「ほら、ここです!」


アリスにそう言われて連れてこられたというか引き摺られて来たのは、街中にあるには異様な光景の場所だった。異様な光景というか異様な場所というか。


「なにこれ………池?」


「投下交換の泉という、カモタサの街一番の観光名所且つ名物なんです!!」


街中に、突如として大きな水場がある。しかも家々はこの水場からかなり離れており、その水場をぐるっと一周出来るように道が出来上がっている。公園の池とか貯水池とか、なんかそういうのじゃないらしい。


そして。


「この泉の中に通貨を投げ入れるんです!そうすると、投下した通貨と同価値から100倍の価値の何かを貰える、摩訶不思議な泉なんですよ!!」


その泉に向けて、まるで狂った様に金銭の袋を何度も投入し続ける一団があれば、流石の私も引く。場所はまぁ納得できるんだが、その場所で起こっている光景が異様過ぎて引くわこんなん。


「………なるほど?」


アリスの話をしっかりと聞くと、なんとなく概要がわかってきた。この泉は、所有者本人が通貨であると認識している物品を投入する事でそれぞれの価値に見合ったナニカと交換出来る、摩訶不思議な泉らしい。歴代勇者の数人はその泉をガチャの泉と呼称していたそうだ。もうここで私はなんとなく察した。


その泉から出現するのは、主に投下した金額と同価値〜100倍の価値の物品だそうだ。価値の基準は通貨投下者の認識によって変動するらしい。貴族の金貨1枚と孤児の金貨1枚では価値観に変動が起こる、という感じだろう。また、この泉の凄い所は、稀にユニークスキルなどの特殊な能力、適性属性などの才能、更には種族など、半ば概念的なモノまで与えられる事もある所だ。ヤバい。ちなみに、出現するモノは、あらゆるメリットとデメリットが無関係に排出される為、呪いの道具やデメリットオンリーのユニークスキルが排出される事もあるので、そこは注意らしい。まぁデメリット尽くしの物品ならまだいいが、能力系だと終わりだな。また、あまりにも大きな物品が排出される場合、特殊な掌サイズの箱として排出され、十分な範囲の場所にその箱を置くと展開、箱に戻れと念じると箱に戻るという感じで、割とサービスもしっかりしているそうだ。


使用方法としては、その泉に硬貨を投げ入れるだけだそうだ。一つの袋に通貨を詰めて入れれば、それが投入された通貨と見なされて、袋に詰まっている内容量の金額の最大100倍の物品が出てくるらしい。そうして投げ入れると、その硬貨を投げ入れた者の側、もしくは手元か手の中に、交換結果が出現するそうだ。特異能力や適性や才能の場合は即座に獲得、種族の場合はその場で種族が変化するらしい。また、この泉を利用すると【泉の祝福】の実績を獲得するそうだ。効果は〈幸運上昇〉のみで、特に別にデメリットは皆無らしい。うむ、これはむしろやるべきだな。ついでに言うなら幸運上昇欲しい。この前調べた時に出て来なかったが、あれは冒険者に必要な場所だからな………観光パンフレットになら載っているそうだ。クソが。


「………あぁ、なるほど」


つまり、あの異様な一団はガチャの沼に落ちた人なのか………ソシャゲでガチャやってる時の私みたいだ………


「アオイ、私達も投げ入れましょう!!」


「えー、えー?まぁ、いいけど………」


リアルマネーが消えていく光景、なんか嫌だなぁ………いやまぁ、ソシャゲの課金も似たようなものだけど。………幾ら入れようかな。正直、お金自体はあんまり使ってないんだよなぁ。衣食住でお金はかかってないし。たまーに欲しい物にお金を使ってるくらいで、そこまで減ってないし………あ、そうだ。


「これって白金貨でもいいの?」


「はい!アオイが通貨だと認識しているなら何でも大丈夫です!」


じゃあ白金貨でもいいのか。あの異様な一団は金貨を袋詰めにしてぶん投げてるっぽいから金貨が限界なのかと思ってた。ま、いいや。投げまーす。


「ほいっと」


「私も、せやーっ!」


私は白金貨1枚を落とすように、アリスは金貨1枚を全力投擲で、泉の中に通貨を投入した。全力投擲はすっぽ抜けた時に誰かに当たったら危ないからやめなー?金貨は一応金属の塊なんだよー?いやまぁいいけどさー。


「っと、あん?」


なんて、アリスの投擲危ないなーとか思っていると、いつの間にか、アリスの手には人が1人覆える程に大きな綺麗な盾があった。盾、と言われて誰であっても想像できるタイプの形の、所謂盾型って形の盾だ。………しかし、なんで大盾?


「アオイ!大盾です!凄いですね!」


「凄い、けど」


私の景品は???何も無い事を鑑みるに、能力系の景品か?それとも才能?というか良く出たなそんなの。あれかな、始めたばっかりのソシャゲのガチャやったら謎に最高ランクのキャラが出てくる現象。物欲センサーが働いていないから良いキャラが出るんだよね………私も今まで続けてるソシャゲの最初の方はガチャ運良いからなぁ。最初の方は。今?今はゴミだよ。全力で課金するか無課金だけど全力で周回しまくるかしないと欲しいキャラなんて出ないから。あーゴミゴミ。


「アオイ、能力系と才能系の景品は実績に現れるらしいですよ!」


「なるほど?」


つまりステータスを確認しろ、と。了解了解。


解析理解アナライズ


私は深く考える事も無く、ただ単に自分のステータスを確認した。



名前:松浦 葵

性別:女

魔力量:1012

ユニークスキル:性転換(神の加護により隠蔽中)、無窮の瞳

実績:

【器用貧乏】

【悪魔の婚約者】

【一点集中】

【読書家】

【口撃者】

【聖女】

【看板娘】

【影悪魔の母】

【新技術開発者】

【謎の解決者】

【妖精の友人】

【擬似再現者】

【救人者】

【変転悪魔】

【幽閉王女攫いの悪鬼】

【夢心の偶像】

【恐乱の象徴】

【泉の祝福】

【見習い魔術師】

【魔術師】

【上位魔術師】

【契約魔術師】

【上位契約魔術師】

【高位契約魔術師】

【雷魔術師】

【上位雷魔術師】

【光魔術師】

【上位光魔術師】

【毒魔術師】

【上位毒魔術師】

【音魔術師】

【上位音属性魔術師】

【影魔術師】

【上位影魔術師】

【妖魔術師】

【上位妖魔術師】

【空間魔術師】

【上位空間魔術師】

【深淵魔術師】

【上位深淵魔術師】

【見習い契約者】

【契約者】

【悪魔契約者】

【上位悪魔契約者】

【公爵級悪魔契約者】

【見習い召喚師】

【召喚師】

【上位召喚師】

【悪魔召喚師】

【上位悪魔召喚師】

【公爵級悪魔召喚師】

【見習い狩人】

【見習い狙撃手】

【ソロモンの断片No.18】

【性別神の加護】(神の加護により隠蔽中)



あ、魔力量が1000越えてる。って事は………おお!【上位魔術師】の実績も獲得出来たのか!やったぁ。他にも【見習い狩人】とか【見習い狙撃手】とかも増えてる。ついでに言うならこの新しいユニークスキルの原因であろう【泉の祝福】も、なんかすっごい怖い名称の【恐乱の象徴】も、新しく手に入れたのは全部、確認の為にも解析理解アナライズを使ってスキルも確認しておこう。



【上位魔術師】

〈魔力回復力上昇〉〈魔力倍増〉

魔力の回復力が上昇し、魔力の量が増える。


【見習い狩人】

〈器用増大〉

器用さが少し増える。


【見習い狙撃手】

〈器用上昇〉〈忍耐力上昇〉

器用さと忍耐力が上昇する。


【恐乱の象徴】

〈狼王恐乱〉

狼系の存在に対して恐怖と混乱を与えやすくなる。


【泉の祝福】

〈幸運上昇〉〈無窮の瞳〉

幸運が上昇し、両目に対して行われるあらゆる干渉を完全に無効化する。



やったぜ、魔力の回復力が上昇してる。これでとりあえずの目標は達成出来たな。それから、見習い系の二つのお陰で器用さも上がったっぽい。流石に実感湧かないけど、多分糸通しとかが1発でしやすくなったんだろうな。この【恐乱の象徴】ってのは付加実績だけど………これ多分、この前狩り殺した狼王が関係してるよね?内包されてるスキルの内容からしてそんな感じする。まぁ別にあって困らないからいいけど。んで、【泉の祝福】で幸運が上昇したのは物凄く、いやめっちゃくちゃありがたい。んで?何このユニークスキル。『無窮の瞳』?文字通りのものとして受け取るなら、私の両目だけ無敵になるユニークスキルっぽいけど。………一瞬これがあって何が困るかなーって思ったけど、別に困らなくね?白金貨1枚でユニークスキル一つ、しかも使えない訳では無くちゃんと使い道があるようなユニークスキルが手に入ったんだよ?大抵は物らしいのに。控えめに言って普通に勝ち確では?使う機会があるかどうかはともかくとして、別に『性転換』のユニークスキルとは違ってパッシブスキルだしな。困る要素が皆無だ。これと言ったデメリットも今のところ無いし………無いよね?少なくとも大丈夫だと思うけど………ま、そんときゃそん時か。


「アオイ、この盾を確認してみた所、1日に一度だけあらゆる攻撃を無効化できる魔法の効果が付与されているみたいです!凄いですよ!」


「私はなんか、無窮の瞳とか言うユニークスキルだった。両目に対するあらゆる干渉を無効化するスキルらしい」


「ふぉー!いいですね、いいです!!凄いです!幸運に恵まれてますね!私もアオイも!ひゃっほーう!」


なんか、アリスのテンションが上がり過ぎたのか段々壊れてきたな。一応、そろそろ強制的にでも落ち着いてもらおう。だってなんか怖いし。


鎮静レスト


「ひゃっほー………う?」


「どう?落ち着いた?」


「えーと………はい。とても落ち着いてます。これは、魔法ですか?」


「そう、私の複合魔法」


それも、興奮したアリスを止める為の魔法だ。この魔法は『鎮静レスト』という魔法で、対象を落ち着かせる毒を侵食させる魔法である。光、毒、契約属性の複合魔法だ。対象に触れているという契約属性による条件を満たしている時、光属性によって倍にされた毒属性によって鎮静効果を付与される。つまり、接触している対象の精神を強制的に落ち着かせる魔法なのである。毒と言いつつその効果的には薬に近いが、毒と薬は配分が違うだけで同じ物なので気にする必要はない。いつも興奮し過ぎるアリスをどうにかしたくて作り上げた魔法でもある。スマホによる演算補助はあるものの、魔法使用自体は私本人がしているので、半自動魔法であるガンドとは違うのが特徴だ。


鎮静レストって魔法なんだけど、接触している対象に限って鎮静効果………つまり、精神を強制的に落ち着かせる効果を発揮する魔法なんだよ。アリスって興奮してても私から手を離さないじゃない?だったら、離さない事を逆手に取って落ち着かせればいいんじゃね?って思って。一回使うとある程度効果が続くから、もう少しだけ強制的に落ち着くと思うけど」


「はい………ごめんなさい、アオイ。あまりにも興奮し過ぎて………テンションがおかしく………」


「アリスが楽しそうなのは私も見てて嬉しいから、今みたいにテンションが振り切れた時だけ使うようにするね」


これは別に嘘じゃない。というか嘘を吐く意味が無い。実際、アリスが全力で楽しんで興奮している姿は、見ていて嬉しいのだ。今まで世界を知らなかった美少女が全力で楽しんでいる光景とか、まぁ普通に考えても尊過ぎだよね。マジありがとうって感じ。でも、あんまりにも興奮し過ぎてると他の人の迷惑にもなるし、何よりアリスが疲れてしまうかもしれないから、振り切れた時にだけ使うようにする。これも嘘じゃない。


「ん、んー。おー、少しずつ効果が抜けてきました」


「そう?じゃ、あんまり興奮し過ぎないようにね。他の人の迷惑になっちゃうからさ」


「はい、わかりました。気を付けつつ楽しみますね?」


「んー、まぁそれでいいか。気を付けてね」


「はいっ」


迷惑にさえならなきゃいいし、何よりアリス本人が楽しそうならそれでいっか。

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