予想外ノ出会イ
親友とは即ち、何をしても許される相手!
ピクニックをした日から、既に3週間が経過した。アリスも仕事に慣れ、今では私以上の看板娘になっている。それに合わせて私の仕事内容も変化し、フロアで食事を運ぶだけでなく、宿屋の方の仕事もする事になった。例えば、客室のシーツを交換したりだとか、客室に備え付けられている魔法道具の魔石の交換だとか、お客さんから何か用事がある際には対応をしたりだとか、チェックインとチェックアウトの処理をしたりだとか、他にも色々と細々とした仕事はあるが、とにかく私は仕事が増えたのだ。まぁ。仕事が増えたくらいで私に何があるわけでもなく、新しい宿屋の仕事という事で若干の目新しさを感じたくらいだ。
ちなみに、何故か未だに無料相談サービスは私がやっている。正直アリスの方が美少女だからいいのかなーとは思ったけど、お客さんはみんな私の方がいいらしい。私としては、美少女のアリスに相談する方がいい気もするんだが。お客さんの話を聞くに、確か、私が誰かに相談されてもその話に対して全く責任を持ってくれない所が良いらしい。なんで?って最初は思ったけど、私が良く相談を聞いているお客さんであるブレイブさんがそう言ってたのだ。あの人は私に対して割と素直なので、多分間違いない。例え嘘だったとしても私はそうとしか聞いていないので、正直その辺は割とどうでもいい。
ちなみにブレイブさんは、私の事が恋愛的に好きで、その為に毎度毎度色々な冒険の話をしたり、私にちょっとしたプレゼントをしたりしてくれる人だ。たまーに一緒に出かけたりもする。それらの為の相談を私にするのはどうなん?とも思ったが、彼なりに私の気を引こうと、そして私に好かれたくて頑張っているのだろう。何より、私と相談と称して会話したりしたいのだろう。私としても人と話すのは、というより他人の話を聞くのは別に嫌いではないので、邪険にしたりはしない。そもそも、私に対して好意を抱いている人間をわざわざ邪険にしたりしない。誰かに好かれるというのはどう考えても良いことだし、誰かに好かれるのは素直に嬉しい事だからな。嬉しくないわけがないだろう。ただ、その嬉しさが恋愛感情になるかどうかは別問題なので、その辺りはブレイブさん本人に頑張ってほしい。
とにかく一途で、それでいて目的や目標の為ならどんな事でもやってみせるブレイブさんの人柄は自体は、私も割と好きだから、フォージュさんとかリリーさんとかと同じようにさん付けして呼んでるわけだし。だって、ブレイブさんの頑張りは十分敬うに値するものだもの。まぁ、それを本人に言ったら物凄く嬉しそうにして、これからももっと頑張りますとか言ってるんだもの。本当、尊敬するよ。私にゃ無理だ。私は多分、簡単に挫けて簡単に諦めるからなぁ。私なんて所詮、心も体も強くもない普通の一般人だしね。
「んー」
「?、?」
「あれ、フェイ?」
仕事の合間に自室でゆったりしていると、フェイがふわふわと飛んで私の頭の上に乗ってきた。確か、今日はレイカとアリスの二人でお出かけ中(冒険者のお仕事で街の外にお出かけしている)なのだっけ。フェイも一緒に行ったと思ったんだけど………まぁ、なんかやる事でもあるんでしょ。気にせんでおこう。
「まぁ、いいか」
フェイが頭の上に居ようが、私はゆったりと過ごすだけなので。そうと決まれば、私はすぐにでもスマホの画面を投影してゲームを起動する。放置ゲーの進捗確認だ。すると、フェイも画面が見えるのか、私のスマホの投影された画面を見ていた──って、何故見えている?
「フェイも画面見えるの?」
「?、!、!」
見えるっぽい。しかし、何故画面が見えるのだろうか。私以外に見えないように契約属性を使っている筈なのだが………
「………レイカ経由か、神聖属性関係かな。レイカ経由なら右手、神聖属性関係なら左手に乗って?」
「?、!、!」
「お、ありがと」
左手に乗った、つまり神聖属性関係か。てーことは多分、私がフェイに食事として神聖属性の魔力を食べさせているから、何かしらの契約がフェイとの間に無意識的に完成してしまったのだろうか。私くらい高い契約属性の適性だと、無意識的に契約を行っててもおかしくないってフォージュさんが言ってたし。まぁ無意識的に出来てもすっごい軽い契約くらいだし、破ったとて怪我すら負わないようなレベルの契約だし、そこまで焦る必要も無いけど。多分契約内容は、私がフェイに神聖属性の魔力を食べさせる代わりに何かしらの非常に小さな対価──例えば、ほんのちょっとした幸運だとか、魔法の習得に僅かながら補正がかかったりだとか、魔力量が微量に増えたりだとか、多分そんなとこだろう。まぁデメリットの可能性も否めないが、不調な訳でもないし目に見えて困るような事が起こっているわけでも無い。わざわざ気にする必要も無いだろう。
「あ、もう頭の上に戻ってもいいよ」
「?、!」
そう言うと、フェイはふわふわと私の頭の上に戻った。そこが定位置になっちゃったりする?まぁ、頭の上に乗られるくらいじゃ私は死なないし、別にフェイは常に浮遊してて体重なんてほぼ感じないから重くないし、全然迷惑じゃないからいいんだけども。ある程度重かったら肩に移動して貰ってた。いや肩も肩で後から肩にきそうではあるけど。肩凝りそうだよね。
「………そういや」
マッサージ店ってこの世界で見たことないな。私が知らないだけか?まぁ、気になるしミナに聞いてみよ。視界の左上にある
「あ、フェイは………まいっか」
フェイを連れてくか今ちょっと悩んだけど、嫌なら自分から私の頭の上から降りるだろうし気にしないでいこう。何かあったら何かしらのリアクションを示してくれるだろうし、深く心配する程でもない。なんてったってフェイは魔法使いとしては最高クラスだと私は思ってるからな。正直、バティンがどのレベルかは知らないが、少なくともバティンより上だろう。まぁそもそも、バティンは魔法を使って敵を殺す典型的な後衛タイプではなく、肉体を使って敵を殺す前衛タイプなので、比べるのもどうかと思うが。ゲーム的に言うなら、フェイは完全な魔法職、バティンは魔法戦士ってところだろうか?いやまぁ、私が見た事が無いだけで、バティンも武器を使うのかもしれないが。まぁ、その辺はいつかバティンに聞いておこう。
「ミナー、入ってもいいー?」
私は色々と考えながら皆の部屋の前までやって来た。ぱっと思考を切り替え、扉をコンコンとノックしつつ中にいミナに声をかける。
『はーい。入っちゃっていいわよー』
許可を得たのでミナの部屋に入る。
ミナの部屋は、私の部屋(実際は、私の部屋兼レイカの部屋兼フェイの部屋兼アリスの部屋、みたいな感じなのだが、あそこはまだ私の部屋である)とは違い、私物も家具も多いし、何より部屋が一回りくらい広い。しかし、流石は宿屋の女将、女将か?まぁ女将か。流石は女将と言うべきか、帳簿というか家計簿みたいなのがシンプルでいて可愛らしい机の上に整頓されて置いてある。全体的に見ると、あからさまに女の子の部屋、という訳ではないが、しかしチャームポイントのように可愛らしいものがある。ミナも女の子という事だろう。いやそりゃそうなのだが。
「それで?どうしたの?アオイの方から訪ねてくるなんて珍しい、というより初めてじゃない?」
「そうだっけ………そうかも」
思い返すと、大抵用事があるのはミナの方だったものな。私は大体部屋でごろごろとしているだけだし。
「あそうそう、マッサージ店とか知らない?」
「マッサージ店?あー、そうねぇ………うーん、他の宿屋のサービスとしてならマッサージは聞くけど、マッサージ単体のお店は聞いたことないわね」
「あら、そうなんだ」
それはちょっと初耳。
「ほら、宿屋のサービスならマッサージを無料で提供する事も可能だもの。例えば、最初からマッサージ込みの値段設定にしておいて………とか出来るわよ」
おぉ、流石はミナ。宿屋の娘だ。
「宿屋のサービスなら宿泊と同時に出来るでしょ?そっちの方がお得感が出るし、何より安く提供できるわ。マッサージ単体で売り込むとなると、それ相応の技術と、何より金銭が少し高くなってしまうでしょう?そもそも、マッサージは回転率が非常に低いわ。複数の人間を確保出来れば別だけど、そうなると人件費が増えるから、その分代金も増えるし………みたいな感じで、一定の集客が常に確約できるならマッサージ店はいいけれど、そうでないならあまり売れないと思うわ。何より、人種によって凝る場所も違うし、何より文化が違うわ。マッサージをする為に何かしらの文化に抵触したら困るでしょう?だから、あらゆる人種に対応できるようにしないといけないわ。勿論、そういうマッサージ単体のお店が増えて、客層も変えられるくらいになったら特定の人種専用のマッサージ店を作ることもできるでしょうけど、この街は王都のように人種豊かではないでしょう?客層を一部に狙っても、お客さんが来なければ意味が無いもの。だからまぁ………話は長くなったけど、つまりマッサージ単体で行なっている店はこの街の中にもあるにはあるでしょうけど、私は見た事無いわね」
………ミナが凄い色々と言ってくれた。半分くらい聞き流したかもしれん。
「なるほど………まぁうん、つまりあるか分からないからとりあえず自分で探してみろって話ね?」
「そうなるわね」
「そっか、ありがとミナ」
「いいわよ、これくらい。友達だし、同じ職場の同僚でしょ?」
友達。なるほど、友達でよかったのか。よくて同僚くらいだと思ってたのだけれど………うむ、友達というのも悪くないな。控えめに言って最高かもしれない。
「んー、そっか。本当にありがとね」
「こちらこそどういたしまして」
少上機嫌になった私は、フェイを頭の上に乗っけたままミナの部屋を後にするのだった。
次の日の昼頃、私はいつも通り仕事をしている。宿屋の方の仕事がひと段落着いたので、ミナと一緒にフロアの方を回しているのだ。レイカとフェイ、そしてアリスは3人で冒険者の方の仕事をしに行っているので、今はここに居ない。店長さんはいつも通り、あまり声を出さずしかし素手際良く厨房で美味しそうな料理を作っている。前々から思っていたが、店長さんはあれだな、ダンディーで渋いイケメンって感じだな。バーのマスターとかにいるタイプの人だ。後は顔が良い。この世界の人は大抵顔が良いけど。
「いらっしゃいませ。何名様でございましょうか?」
「お、アオイちゃん。今日はパーティーの全員で来てるんだ。だから、4人だよ」
「4名様でごさいますね。ではお客様方、こちらへどうぞ」
「連れないなぁ、アオイちゃん」
「………一応、今は昼営業中なので。しっかりしてないと気が抜けるんです」
私は集中力が割と長続きするタイプだ。しかし、集中が切れると集中が再点火するまでにそこそこの時間がかかるタイプでもある。ここで普段の夜営業のような口調に一度でもしてしまったら………私の場合、すぐに気が抜ける。それに、私は割と不甲斐ないし誘惑にもすぐ負けるタイプの人間である。勉強中にゲームが見えたらそっちに手は伸びるし、本があったらそっちにも手が伸びる。一応、いつもは誘惑の気晴らしに音楽を聴きながら勉強して誘惑をどうにかしているのだが、それだって音楽につられたりするので完璧とは言えない。まぁつまり、今ここで口調を普通に戻して気を抜いたら、気が抜けて口調が崩れそうなのである。なんせ、私は割と意思が弱いからな!
「アオイちゃんも大変だなぁ」
「いえ………では、ご注文お決まりになりましたら、店員にお声かけくださいませ」
「おう、わかってるぜ」
知り合いのお客さん(しかし名前があやふやなのだが)の元から一旦離れ、完成した食事類を運ぶ仕事に入る。私には
「っと、これで今日の分は終わりかな」
そろそろ昼営業が終わる時間だ。視界端の第四アップデートで時間が確認できるのが楽過ぎるなぁ。まぁとりあえず、今はぱぱっと店の外の昼営業中の札を外してこよう。頼れる仲間であるミナは今、宿の方の仕事でいないみたいだしな。目が死んでるわけじゃないけど、ここ最近はアリスのお陰で昼夜問わずの営業の人が増え過ぎてて疲れているっぽいし、流石に私も心配する。というか、年がら年中の経営だからそりゃ疲れは溜まるだろうなって私は思うんだけど、前までは年中の経営でいけてたって事は多分、アリスの影響が凄いんだと思う。その分、ミナや店長さんの仕事は増える訳で………まぁ、疲れるのは当たり前だよねって。
一応、新しい従業員を雇ったら?って事を店長さんに言ってみたけど、そうなるとアリス目当てで来る奴が増えそうだから無理かもしれんみたいな事を言われたんだよね。実際、そんな感じだと思う。仕事をする為じゃなくて、アリスとの接点を持つ為に仕事しに来るやつの仕事効率が良いイメージが無い。むしろ態度が悪そうだから嫌だ。これが歴とした偏見なのはわかっているのだが、でも割とそんなイメージなんだよなぁ。だから嫌じゃよわし。しかし、従業員を追加で雇わない限りミナの疲れが取れる訳も無く、というか私も疲れてくるやつだと思うので、最低でも2人は雇いたい所だ。仕事を今までミナ、店長さん、そして私の3人で回していたのが、5人で回せるようになるだけでかなりの改善だと思うんだよ私。実際、レイカとフェイとアリスに手伝ってもらってる時の負担は、かなり減っている。ミナと店長さんが料理を作り、私が料理を運び、代金の回収や客対応をレイカとフェイがして、アリスはお客さんの対応やお皿洗い、料理の手伝いなどの雑務をこなす。そこで手の空いた人が宿屋の仕事をすれば、割と仕事は回せるのだ。そこに更に追加で2人来てくれたら、もう勝ちでしょ。コールドゲームで圧倒的勝利だよ。
「あのー、すみません」
外にかけてある昼営業中の札を外していると、私の背後から声をかけられた。なんか聞き覚えあるなと思って振り返ると、そこに居たのは──
「もしかして葵………浦松 葵ですか………?」
「そうですけ、ど………え………」
──
「………ア、アハハハハハッッッ!!どうしたその格好!!そんな趣味が………!これじゃあ本当に聖女様じゃ痛ぇ!!」
言葉を言い切る前に私は目の前の親友に無言で腹パンした。こいつは私の逆鱗に触れた。絶対に許さん。
「聖女と呼ぶな聖女と。マジで許さんぞ貴様」
私は腹パンした親友の手を雑に掴み、親友が押していた自転車と荷物類の全てを
「ミナ、ちょっと時間貰うね」
「いいけど、どうしたのー?その男誰?」
「アハハハハハッ!」
「阿呆な知り合い。ちょっと部屋行ってオハナシしてくる」
「はぁ、行ってらっしゃい」
腹を抱えて笑う馬鹿で愚かな親友を連れて、私は自室まで戻る。とりあえず、我が親友が落ち着くまで待つとしよう。というかもう笑うなよテメェ。
「アハハハハハっ………!や、ちょ、叩くな叩くな!」
「うるせぇ。笑うなテメェ」
「いや、でもそんな格好してるから、ついに女装癖に目覚めたのかと痛ぇ!」
今度は腹パンではなく普通に叩いた。でも私の手の方も痛い。くっそ、頭蓋骨かてぇなこいつ。
「今から私の状況を全部説明する。だからお前の今の状況も説明しろよ。今すぐだ」
「え、アハハッ痛って!お、おう、わかった、わかったから!叩くな!」
「とりあえず──」
「無視しないで?!」
50分後、私は一通りの説明を話し、目の前で魔法の存在知ってはしゃいでいる我が親友の話も聞き終わった。
なんでも、この目の前の我が親友──
「なるほどなぁ。性転換か………女装では無く正装だったと」
「うるせぇぞダボが」
「でも、確かに女性の方が良いかもしれないからそうするってのは良い考えかもしれないな。というか、誰かに言われるのは嫌なのに自分から言うのは良い訳?」
「駄目だわ………でも、そうでもしないと客足がうごご………後、今更元に戻れねぇ………」
「ぷっ、あ、アハハハハハハハハッ!」
「笑うなって言ってるやろがい」
こいつ、マジ私の魔法で消しとばしたろか?
「あーもう、とにかく!お前さんはこっからどうするんだ?冒険者とかやる?」
「その前に、ステータスってのを確認したい。俺の実績ってのが見てみたい」
「あー、なるほど。そりゃそうだ。じゃ、ちょっと待って。お前のステータス確認するから」
「おう」
よし。相手の許可を取ったから、
「
「魔法良いなぁ」
「ちょっと黙ってて」
気持ちはわかるが黙ってろ。さて、我が親友のステータスは、と………なるほど。どうせなら紙に書いておくか。さらさらーっと。うし。
「お前のステータスはこんなんやぞ」
って言って、私は親友のステータスを書いた紙を渡す。
名前:岩井 紫悠
性別:男
魔力量:1
ユニークスキル:
実績:
【病毒の王】
【人間嫌悪】
【動物愛好家】
【芸術家】
【化物】
【悪趣味】
「おー………おー?これ凄いの?」
「クソ雑魚だが?」
「なんか実績の名前酷いの多くね?いや確かに俺の性質っぽいけど」
「お前の性質がただゴミなだけでは?」
「ちなみに葵のステータスはどんな感じ?」
「ちょーっと待って、
お、おぉ。とりあえず紙に書いてしまおう。さらさらーっと。
「ほい、これ」
私のステータスを書いた紙も親友に渡す。
名前:松浦 葵
性別:女
魔力量:798
ユニークスキル:性転換(神の加護により隠蔽中)
実績:
【器用貧乏】
【悪魔の婚約者】
【一点集中】
【読書家】
【口撃者】
【看板娘】
【聖女】
【影悪魔の母】
【新技術開発者】
【謎の解決者】
【妖精の友人】
【擬似再現者】
【救人者】
【変転悪魔】
【幽閉王女攫いの悪鬼】
【見習い魔術師】
【魔術師】
【契約魔術師】
【上位契約魔術師】
【雷魔術師】
【上位雷魔術師】
【光魔術師】
【上位光魔術師】
【毒魔術師】
【上位毒魔術師】
【影魔術師】
【上位影魔術師】
【音魔術師】
【上位音魔術師】
【妖魔術師】
【上位妖魔術師】
【空間魔術師】
【上位空間魔術師】
【深淵魔術師】
【上位深淵魔術師】
【見習い契約者】
【契約者】
【悪魔契約者】
【上位悪魔契約者】
【公爵級悪魔契約者】
【見習い召喚師】
【召喚師】
【上位召喚師】
【悪魔召喚師】
【上位悪魔召喚師】
【公爵級悪魔召喚師】
【ソロモンの断片No.18】
【性別神の加護】(神の加護により隠蔽中)
なんか、【救人者】【変転悪魔】【幽閉王女攫いの悪鬼】って実績が増えてる。ついでに魔力量も少し増えてる。新しく増えた実績である【幽閉王女攫いの悪鬼】は付加実績、つまり誰かに言われたからついた実績らしい。キングプロテア・スカーレットの姿で幽閉されていたアリスを攫ったからだろうか?まぁいい次。【変転悪魔】はまぁ、
「魔力の量多っ。チートやんこんなん」
「王城の宮廷魔術師は最低魔力量5000越えらしいぞ」
「こんなのクソ雑魚じゃん」
手のひら扇風機の羽かよ。あり得ないくらいぐるんぐるん回るじゃん。………あー、駄目や駄目や。どうしてこの実績を手に入れたかなんて分からんのだから、考えないでいよう。面倒だし。
「というか今気が付いたけど紫悠お前、何この【病毒の王】って実績何?」
「知らないけど」
まぁそりゃそうか。にしてもこの【病毒の王】という実績のスキル、紫悠の最初に確認した実績の中で1番強いな。〈毒無効〉と〈極化病気耐性〉の二つもある。つまり、毒物と毒属性を完全に無効化し、病気に対しての耐性が極限に増える実績って訳だな。なんだそれ狡い。私の実績の中にそんな強い効果のスキル無いぞ!毒無効は普通に強いやん!病気耐性も強いじゃん!絶対主人公とかが持ってるスキルだよそれ!………いや、他の実績がアレだからそうでも無いか。主人公は主人公でも魔王みたいなタイプのやつかな?
「なぁ、これって実績の詳しい内容とか見れないのか?」
「いや見れるけど………私が書けと?」
「うん」
「………しょうがないなぁ!」
私の親友だもの。流石にステータスは確認必須だから見せてやるよ。あー、えー、詳しく詳しく………描くの面倒なんやが?まぁいい。さらさらー、さらさらーっと。
「ういこれ」
【病毒の王】
〈毒無効〉〈極化病気耐性〉
毒物と毒属性を完全に無効化し、病気に対しての耐性が極限に増える。
【人間嫌悪】
〈関係困難〉
他者との関係性を築くのが困難になる。相性が良い者相手だと無効化される。
【動物愛好家】
〈動物誘引〉〈動物親和〉
動物を誘い引き付けるようになり、動物と仲良くなりやすくなる。
【芸術家】
〈想像力上昇〉〈集中力上昇〉〈器用増大〉
想像力と集中力が上昇し、器用さが少し増える。
【化物】
〈身体能力上昇〉〈魔力上昇〉〈嫌悪行動〉
身体能力と魔力が上昇し、人によっては嫌悪感を感じさせる行動をしてしまう事がある。
【悪趣味】
〈俗悪蓄積〉〈俗悪魔力〉
他人から悪趣味と思われる度にその対象から負のエネルギーを自動的に回収し、常に蓄積し続ける。また、蓄積した俗悪による負のエネルギーを魔力に変換する事が出来る。
んー、こうやって詳しく見ると、こいつ対人向いてないって思っちまった。〈関係困難〉と〈嫌悪行動〉が明らかに対人コミュニケーションの邪魔をしている。まぁこいつ友達居なさそうだし。実際こいつの友達割と少なめだし。しかしこいつの【悪趣味】の実績いいなぁ。何これ。負のエネルギーを回収して蓄積、それを魔力として使えるって………なーんか、どっかのアニメの主人公が持ってそうなスキルでムカつく。私のスキルはどっちかってーと何処かのエロゲでありそうな実績なのに………筆頭は【悪魔の婚約者】とかいう実績ね?後は【性別神の加護】。
「おぉー、おー………魔法良いなぁ」
「お前も覚えられるけど、後でな。今仕事中………じゃないか。一応終わってるのか。いやでも、ミナのとこ行かないと………とりあえず、お前さんはここで待ってて。私のモノじゃないのもあるから、勝手に漁るなよ。勝手に漁って死んでも知らんからな?」
「えっ死ぬの?」
「さぁ?死ぬかもってだけ。でも、異世界初心者のお前さんなら死ぬ可能性はゼロじゃない。とりあえず何も触るな。ベッドに寝転がって休んでるといい」
「おー、了解」
私は親友である紫悠を部屋に放置して、階下に降りるのだった。
また30分後、私が昼営業の後片付けをし終えた頃に、アリスとレイカとフェイの3人組が帰ってきた。お早いお帰り、と思ったけど、レイカとフェイの実力なら1時間あれば大抵の依頼はこなせそうなのでこんなもんかと勝手に納得しておく。
「お母さんただいまー!」
「!、!!」
「ただいまです、アオイ」
「ん、おかえり………そうだ。そこ行く美少女3人組、ちょっと待って」
そういや紫悠を部屋に置きっぱなしだったわ。危ねぇ。何も知らぬ美少女3人組が部屋に戻ったら見知らぬ男がベッドで寝てる、とかいう状況は流石にマズイ。いや、私の記憶持ちのレイカが居るから分かるかもしれないけど、でもなんか流石に私がした事で迷惑を掛けるのはちょっと違うかなって。
「?なーにお母さん。何か用事?」
「いや、うーん………用事かな?3人に」
「アオイ、どんな用事なんですか?」
「えーっと………まぁ、うん。ちょっと上行こうか」
私は美少女3人組である、レイカ、フェイ、アリスを引き連れ、自室の前までやってくる。
「ちょーっと、3人は部屋の前で待っててね?入っちゃ駄目ね?」
「何々?鶴の恩返しでもするの?」
「しないよ?」
鶴の姿になって機でも織れってか?いや魔法があれば出来るけど、しないよそんな事。
「鶴の恩返し?とは、何ですか?」
「ん、えっとね──」
私はそうして美少女3人組が部屋の前で会話しているその隙に部屋の中に入り、我が親友である紫悠の方を見る。
「………ぐぅ………」
「………」
寝てやがる。いやまぁこの街に来るまでで相当疲れてたんだろうけど。ベッドを使えと言ったのは私だけども。しかし今の優先順位は紫悠ではなく美少女3人組なので無理にでも起こす。
「起きろー」
「………あ゛ー?」
私が音魔法の
「………あ゛ー………うるさい………何?」
「ここの部屋を使ってる美少女3人組が戻って来たから、今すぐ起きて」
「あ゛ー………ちょっと待ってて」
紫悠は非常に気怠げに、そして非常に眠そうにしつつも、ベッドから身体を起こす。しかし動きが遅い。まぁ少しくらい待ってやるよ。
「あ゛ー………う゛ー………眠い゛………」
「起きろー、というかそこ私のベッドだから起きろー、起きなきゃ私が今から全てを無に還すレーザーぶっ放すぞー」
実際似たようなのは撃てる。無に還すというか全てを融解させるレーザーだけど、まぁ撃たれた存在はどっちも確実に死ぬから似たようなものでしょ。
「動くから………ちょっと待って………あ゛ー………」
「ちょっとだけ待つからねー」
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10………右手の人差し指と親指を伸ばして拳銃のような形にし、右手に魔力を集中させ、必要な文言を宣言。
「スタンガンド」
私の右手の人差し指の先から雷撃の弾丸が放たれ、紫悠の身体に被弾する。そうすると、すぐにでも紫悠の身体は硬直し、その動きを止める。
「あばっ?!」
「ちょっと待ったぞ。ちょっと待ってベッドから出ないこらお仕置きね」
「ほま、ほの………!」
「まぁちょっとの間だけ喋れないけど紫悠の目は覚めたからヨシ!」
って事にする!で、魔法耐性が殆どない紫悠が復活するのにかかった時間は約1分。私はその間に美少女3人組であるレイカ、フェイ、アリスに概要を伝えていた。即ち、私の友人が部屋の中にいて、疲れてたからベッドに寝かせてた事、その友人が私と同じ異世界人という事を伝えたのだ。レイカは勿論その説明で理解できたらしい。私の記憶あるしな。でも、フェイとアリスは異世界人って所にちょっとだけ混乱したらしい。まぁそう言われたら納得するレベルの混乱だったのだが。私そんな異世界の常識無いか?
「 ──コホン。レイカ、フェイ、アリス。こいつは紫悠。私の親友。紫悠。この3人は、右からレイカ、フェイ、アリス」
「ど、どうも」
「初めまして!私は松浦麗華!お母さんの娘だよ!」
「!!、!!」
「この子はフェイ!妖精なの!」
「私はアリスです。今はアオイと一緒に住んでいます。よろしくお願いします」
「あー、よろしくお願いします?」
うむうむ。自己紹介って割とこんな感じだよね。
「………ん?娘?レイカ、ちゃんは………え、誰の娘?」
「?松浦葵の娘だよ?」
「………マジで?」
「マジですが何か」
「………ぷっ、アハハハハハハ!マジか!アハハハハハハ!」
「それ以上笑ったら貴様を外に捨てる」
「………」
「よし」
よくわかってるじゃないか………私の今の一言が本気の言葉だったという事に………ちっ、命の危機に対しては勘が良いな。
「とりあえず、ミナ………あー、この宿屋の女将さん?みたいな人に、お前が泊まる部屋を確保できないか交渉してくるから、紫悠はちょっと待ってて。あ、流石に部屋の外ね」
「あー、面白………うん、わかったわかった」
私はそのまま階下に降りて、ミナへの交渉を開始するのだった。
次の日の朝になった。昨日はミナに、私の友人が泊まる場所が無くて困ってて、お金も無くて困ってるから、一部屋貸せないだろうか。金は後から友人自身に働かせて、利子ごと全部払わせるからと説得し、一時的に紫悠を宿泊させる事に成功した。まぁ普通に"私の友人がお金無くて困ってるからちょっとだけ泊めて"って説得してもOKだされただろうけど、私は割と薄情なので自分で金を稼いで貰うことにした。本人にそれを伝えるとあからさまに嫌そうな顔をされたが、"何もせず対価を得られると思うなよゴミ"と罵っておいたので仕事くらい見つけるだろう。それでも駄目なら紫悠の借金がどんどん増えるだけなので私は別に困らない。うーん、素晴らしい。素晴らしい嫌がらせだ。実に楽しいなぁ。
しっかし、まさか紫悠もこの世界にやってくるとは思ってもみなかった。しかも、私はこっちで既に半年以上過ごしてるっていうのに、紫悠に聞いた話だと私が行方不明になったみたいな話は全く聞いてないって話だし………もし生徒に何かあったら学校で言われてるだろうし、何より私の親友である紫悠が私の安否の確認をしないのはおかしい。即ち、紫悠がこっちの世界に来たのは、最低でも私が居なくなったという異変に気が付いていない程度の期間。最高でも数時間、最低でも数分しか差が無いわけだ。少なくとも、私に連絡は来るはずなのだ。私のスマホはインターネットに未だ接続しているのだから。つまり、この世界の半年以上(正確に測ると280日くらいだったりする)があっちでの数分、下手したら数秒なんて事になってる訳だ。恐らく時間単位では無いだろう。
まぁ、元の世界に帰れるような手段が確立出来た訳でも無し。取らぬ狸の皮算用をしていても所詮は無駄なのだから、何か別の事を考えよう。
「ん?どうぞー?」
なんて感じに部屋でゴロゴロしていると、部屋の扉を誰かがノックした。扉が開かれると、そこに立っていたのは紫悠、我が親友だった。
「何か御用?」
「あぁ、一個聞きたいことがあって」
「何?」
「なんかさっき、生命神?って人に、加護?ってやつとユニークスキル?ってのを貰ったんだけど………何か知らね?」
………はぁ?
10分くらいでちゃちゃっと調べてやった。なんとこいつ、異世界にやって来て2日目で加護を貰ったっぽい。なんかゲームのアナウンスみたいなのが頭の中に響いてきて、誰か聞いたら生命神だとか言ってたそうだ。んで、その人に加護を貰ったらしい。凄く機械的な喋り方をする神様だとか言ってた。なんか、誰かって質問に答える時に『回答。私の名称は生命神アニマ。万物の生命を司る神の一柱です。現在、信者名岩井紫悠による信仰を確認した為、私の加護を付与しました。私の加護により、岩井紫悠は生命に関するユニークスキルを獲得可能です』とか、声の抑揚なく、音程の強弱なく、棒読みどころか機械音声みたいな、ザ・機械みたいな喋り方でそう言われたそうだ。そら機械的やわな。
んで、唐突にんなもの貰っても加護なんて聞いたことないし、ユニークスキルも確認のしようがない、だから、何を言われたとしても(異世界関係の話的に)平気な私のとこまで来たそうだ。まぁすぐにでも
【生命神の加護】
〈魔獣創造〉
魔獣に分類される生物を魔力と空想により創造する。
『魔獣創造』
ユニークスキル。魔力紙に創造予定となる魔獣の容姿、能力を記載する、又は使用者の明確なイメージを想像してから、魔獣創造に必要となる魔力を魔力紙に与える、もしくはイメージを更に明確にして現実にするようなイメージを行う事で魔獣創造が可能。魔獣のスペックは付加された魔力の量と質により変化。適性属性は付加された魔力の属性により変質。創造した魔獣はユニークスキルの所持者を襲撃する習性を所有。抑制には、一度魔獣を戦闘不能状態へと移行し、契約を締結する事が必要。これにより、創造した魔獣を従属、使役する事が可能。魔獣創造時、魔力変貌生命体の肉体を生贄として使用する事で、消費魔力の軽減が可能。
とか書かれていた。文章を書くのが非常に疲れた、と言うのが私の本音である。文章が長え!
ちなみに、紫悠はこのユニークスキルを貰えてめっちゃ喜んでた。動物好きだからなぁ。自分の理想の動物が作れるってなったらそら嬉しいだろうよ。私だって自分の理想の美少女が作れたら嬉しいもの。というか思ったんだが、こいつのユニークスキル強すぎね?私の『性転換』のユニークスキルとは全く違うのだが?私のユニークスキルは性別を変える、しか出来ないのに、この『魔獣創造』ってユニークスキル、出来る事多過ぎでしょ!いやまぁそれに見合うようなデメリットもあるんでしょうけど、あるんでしょうけど!けど!でも1を1億に出来るようなユニークスキルは羨ましいじゃん!!私のユニークスキルなんて1を1にしか出来ないぞ!いやノーリスクだけども!魔力消費すら無いけど!
「にしても………」
生命神アニマ、か………生命神………生命を司る神様なんだろうけど。そうなると、私の性別神って生命神の部下みたいな感じなんだろうか。なんでって聞かれたら、勿論ながら、生命が無ければ性別なんて概念すら無いもの。無機物に、命宿らぬ物に性別は存在しないもの。だから、生命神の部下とまではいかなくても、生命神の系譜だと思うんだけどなぁ………まぁ調べた所でって話になりそうだけど………
「お礼くらい、言いたいし」
"ありがとう"の言葉を伝えるくらいは、いくら私が人間だろうと許されると思うのだ。あの女神様は私に加護を与える時、"一応信者だし"とか言っていたのだから、多分私も性別神の信者の1人と言う事になっているのだろう。何かしらの判定的には。
既に紫悠には帰ってもらっている。他人が居ると、心の底からゆったり出来ないからだ。しかし、レイカ、フェイ、アリスの3人(2人と1匹かもしれない)ならいいのである。何故ならあの3人は、既に私の大切な人々だからである。レイカは言わずもがな、私の娘だから。フェイも勿論私とレイカのペットだからである。そしてアリスは、何処まで行っても私のモノだから問題無い。というか、既に同じ部屋に住んでるんだから、んな些細な事を気にするような関係でも無い。流石に紫悠は親友、つまり友達なので、私は信頼もしているし信用も出来るのだが………薄情な言い方をすると、所詮は他人なのだ。流石の私も友人にだらけ切った姿を見られるのはあまりよろしくない。というか普通に恥ずかしい。だから帰らせたのだが。
「………お風呂入るか」
何かの運動した訳でもないし、別に汗をかいた訳でもない。疲れた訳でもないし、寒い訳でもない。ただただお風呂に入りたくなっただけだ。しかも、唐突に。ただし、朝のこの時間だと他のお客さんが入浴している可能性は普通にあるので、1人きりで湯船でゆったり、とは入れないだろうが………まぁいいじゃろう。この宿のお風呂は私だけのお風呂じゃ無いのだ。それくらい許容出来る。
「あ」
あっぶね、またタオル持ってくの忘れるとこだった。タオルは
「うし」
入浴開始。と言ってもまずは服を脱がねば。今日はまだ制服に着替えてないので私服、と言ってもいつも寝起きに着てる白い服の、袖も裾も私には合わないデカいやつだ。それと後下着だけだ。邪魔だったからブラはしてない。パンツだけだ。何故こんなの格好なのかと言われると、答えは一つ。私は最近気が付いたのだ。私はいつもパンツだけで寝ている。アリスが同じベットで寝て居ようが別に恥ずかしくも何ともない。というかここの所は毎日アリスを抱き枕にして寝ている。恥ずかしいなんて思う訳ないだろう。ちなみに、レイカとフェイは追加で買ってきた小さめのベッドにいつも2人仲良く寝ていたりする。偶に私の脚に抱きついて寝ていたりするが、基本的に仲良しな2人で寝ている事が多い。
話を戻すが、まぁ私はいつも下着、しかもパンツだけで寝ている訳です。そして起きたら階下に降りる為に服を着るのだが………前まで着ていたやつは私の身体よりも小さいサイズなので、胸が突っかかる。女性物を買ってきたような気がするのだが、私が適当に選んだやつだった筈だ。多分私の身体に合ってなかったのだろう。まぁ私は前までその服とパンツだけで階下に降りていた訳である。しかし、そうすると数回に一回の確率でミナに言われるのだ。もっと大きいサイズのものを買えと。
だから買いました。サイズは男性用の大きいやつ、私が着ると袖が大幅に余るし、裾も太ももの半分くらいまであるデカいやつを。デカいサイズだし、裾が長いから下着がある程度隠れるしで素晴らしいものである。しかしこれでもミナは若干納得がいっていなかったようだが、なんかもう諦めたらしい。ここ最近は朝の服装に関して何も言われなくなった。つまりこの服装でいい、と。
………いや、私も男だからわかってるよ?シンプルに何の捻りもなく下着ってかパンツが見えるより、チラリズム、即ち下着が見えそうで見えないという状況の方が興奮するの。この服装なんて特に、上はまだしも下は言わば都会のJKとかがしているような、割とガチで下着見えそうなミニスカートみたいな感じなのだと。そっから私の下着がチラチラ見えたら、そらまぁ気になるよなぁ。人間は見えない部分を勝手に補完する生き物だからな。水玉コラとかが良い例だ。だからこそチラリズムにエロスを感じるのだろう。私も男なのでそれくらい理解出来る。
でも別に私が恥ずかしくなければそれでよくない?
実際、特別羞恥心を覚えた事も無いし、この方が服一枚を着るだけで朝の支度終わりだから楽なのだよ。服を2枚着るより1枚だけの方が楽に決まってるんだよなぁ。
「ぬ」
頭の中で色々と考え過ぎた。今の私の目的は風呂だ。私は脱衣所で脱いだ白い服とパンツとバスタオルを籠の中に入れ、フェイスタオルを持ってお風呂の中に入る。一応、ちらっと籠の使用状況を雑に確認したが、私の分しか使われていないようでよかった。1人の方が精神的に楽なのだもの。仕方ないよね。
そのまま浴場に入ると、私は壁にある適当なシャワーのうちの一つを選び、お湯を出し始める。んー、あったかい。
「ふぅー………」
そだ、忘れるから先に髪洗っとこ。ちなみに今の私の髪は、ミナに伸ばせって言われてから割と経ってるからね、今はもう肩なんて越えて背中まで髪は届いてるぜ。邪魔な時とかお風呂の時とかはゴムで結ぶけど、普段は普通に流しっぱだ。面倒だし。ちなみに、湯船に髪をつけてはいけない理由は単純で、頭を洗う前なら汚れや脂が湯船に溶けてしまうし、頭を洗ってからも頭を洗った液体石鹸類が湯船に溶けてしまうからだそうだ。ミナに髪の毛を湯船につけないように注意された時に初めて知った。初めて聞いた時はそらそうだとは思ったが、思い返すとそんな単純な事に気が付かなかったのだ、私は。まぁつまり、身体や頭をを洗ってから湯船に入るってのは、湯船を汚さない為の工夫って訳だったのだ。あまりにもシンプルな理由だが、単純故に分からなかった。
と、頭も洗い終わったので次は身体だ。本音を言うなら男の身体に戻してから身体を洗いたいのだが、この時間帯だとお客さんが来る確率が非常に高いのでやめておく。夜中のお風呂入浴禁止の時間辺りだったら精々入るのはミナくらいだから、音に注意しときゃいいんだけどね。
「ん」
女性の身体は割と敏感らしい。特に胸と股間。男の時の感覚で身体を洗うと若干痛かったりするので、なるべく力を抜いて洗うと良い感じだ。しかし胸も股間も触れるとちょっぴりくすぐったいので、なるべく早く済ませる。
「んー」
そういや、アリスの胸は柔らかかったなぁ。毎日毎日抱き枕にしてるから割とふわふわとした感触がしてるけど、女性の胸って全員そんな感じなのだろうか?私のも似たような感触してるし………うん、今触ったけど似たような感触だな。あーくすぐったい。
アリスで思い出したけど、アリスとかレイカとフェイとかと入浴時間が重なる時っていつも一緒に入ってるんだけど、確かあの2人と1匹って私が性転換できるの知ってたよな。私、男なのだけれど。あの2人と1匹は一体私の事を何だと思っているのだろうか。まぁ気にならないけども。
「あー」
シャワーを浴びて液体石鹸を落として、さっぱりしてから私は立ち上がり、湯船に浸かる、前に髪を後ろで一纏めにして小さなポニテを作ってから湯船に浸かる。
「あ゛ー………」
あ゛ー………ぎもち゛ー………あー、湯船に浸かるのマジ最高………ふー………
「………」
誰もいない大きなお風呂を独り占め………最高かよ。
「………そろそろ上がるか」
私はそろそろのぼせそうなので、そろそろ湯船から上がるのだった。
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