幕間 sideアリス・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎・⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
どうして2人に見えるの?とか、どうしてここにいるの?とか、どうして私の前にいるの?とか、色々と聞きたい気持ちでいっぱいだったけど………私は一言、
そして、
『貴女、書きましたわよね?"助けて"と。その事について、貴女は肯定しますの?それとも否定しますの?貴女の事情なんてどうでもよいので、できるだけ早く、
なんて、そんな風に。私に対して、何も取り繕う事もなく、真正面からそう問いました。
私はその言葉を聞いて、ほんの少しだけ迷いました。
でも。でも、
………それだけで、私は
『私を、助けて。──助けてください。ここから出してください。この楽園から、私を地獄に連れて行ってください。私は、それを望みます』
そんな風に、私はそう答えました。
そうしたら、
その言葉を聞いて、その瞳を見て………私は、
どこまでも強引に助けてくれる訳じゃなくて、私の事を考えて助けてくれようとする、心優しい人なのです。私が外に踏み出すのが怖いのならそのままで、外に踏み出す勇気を振り絞れるなら手助けでしてくれると、そう言ってくれたのですから。中途半端な想いのまま連れ出すのではなく、私の覚悟が決まらなければ外には連れて行かないと。
だから。私は覚悟を決めたのです。私はもう一度、
『私を、助けて』
って。頭を下げて、私の誠意が伝わるように。誰にでもわかりやすく。
そうしたら。
そして。
『あはははっ!!ええ、ええ!!助けてあげましょう!貴女をこの詰まらない楽園から、楽しい楽しい地獄へ連れて行って差し上げましょう!貴女が望んだんですもの!貴女自身が!外へ出たいと望んだんですもの!あははははははっ!!』
私は。その言葉を聞いて、改めてこう思ったのです。
『あぁ、この人はとっても優しい人なんだ』って
だって。誰にだってわかるように言ってくれているのですもの。"貴女が望んだんですもの"って。そう、そうなのです。これは私が決めた事であり、私が決めた覚悟の結果なのだと、そう
その時でしょう。きっと
私は、私という存在の全ては、全て
ですから。私はいつの間にか、彼女であり彼であるという性質を持つ1人の人間──『松浦葵』という優しい人間の"モノ"になったのです。えぇ、それだけです。他に何がある訳でもありません。ある訳がありません。
『私はアオイのモノ』
それだけで、私は心の底から嬉しいのですから。
「あ、アリス。ちょっと出かけない?具体的には一緒に図書館に行かない?」
「図書館ですか?良いですね、行きましょう!」
私は今日も、こうして日々を過ごすのです。昔の私が夢見た空の下で、これまでは幻想であった地上の世界を、私の脚で歩くのです。それもこれも、今隣に居る彼であり彼女であるアオイのおかげです。
「アリスと出かけるの嬉しいなぁ」
本当に。こうしていられるのは、全てアオイのおかげです。だから、私はきっと、いつまでもアオイに感謝し続けるでしょう。いつでもアオイの力になりましょう。アオイがしてくれた優しさと同じくらい、私もアオイに優しくしてあげたいのですから。
「私も嬉しいですよ、アオイ」
だから、私はアオイに何度だって言うのです。
「………ありがとうございます、アオイ」
「?どういたしまして?」
──願わくば、この幸せが最期の時まで、ずーっと続きますように。私の神様に──
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