悪魔も鬼も英訳が同じ…つまり同じ種族って事だね?(暴論)
もう1週間が経過した。アリスは既に私以上に仕事に慣れ、私以上の人気を誇るという、我が店自慢の看板娘となっている。仕事も早く、そして言葉が優しく、何より所作が清楚で静謐。しかしその笑顔から隠しきれぬ溌剌さを感じ、数多の話に興味津々。特に目新しいものや珍しいものに多くの興味を向ける。そして何より、そんな少女の容貌が非常に優れたものである事が、一番人気の秘訣というか明白な理由だろう。ちなみに、初給料も2日前に私と同じタイミングで貰ったが、その時は初めて自分で稼げたお金だと目に見えて嬉しそうにニコニコしていたレベルだ。一応、ある程度貯金するようには言ったが、アリスは毎日色んな物を買う。軽食類は勿論、比較的安価な小物類も沢山買い込むのだ。私と同じ部屋に住んでいるから、それが良く分かる。アリス専用スペースの物がどんどん増えていくのだ。しかも綺麗に整理整頓されて。
レイカの持ち物とフェイの持ち物は少なめ(そもそも2人の私物が殆ど無いし、2人は冒険者として武器防具の類もほぼ使わないからである)であり、私の荷物類は全て
「アオイ。私、今日もレイカちゃんとフェイちゃんと一緒に訓練しに行ってきますね。あ、そうだ。お買い物するものとかありますか?何かあれば私が買ってきますよ?」
アリスはここ最近、レイカに武術というか護身術を習い、フェイに基本的な魔法を習っているそうで、今日も今日とて冒険者ギルドの地下施設を利用しに行くらしい。私も一回だけ見に行った(ミゼルが買ってきた新作スイーツに釣られた)時にやっていたから事実だと思う。別にそれが事実でもなんでもなくて、レイカとフェイがアリスを連れて一緒に街に出て行く口実だったとしても、私には別に何の問題も無いが。だって、何をしようとアリスの人生はアリスのモノだ。その結果、アリスが勝手に自滅したとしても、私は助けを求められるまでは決して助けないスタンスなのだ。今は何も言われていないから問題無い。
ちなみに、アリスは着々とギルドの塩漬け依頼も普通の討伐系依頼も、とにかくアリスが出来る大抵の依頼をこなして、今はなんとFランク冒険者らしい。ちなみに、冒険者の最低ランクがGだ。GランクからFランクになるには、ある程度の戦闘能力──具体的にはゴブリン5匹と戦闘が可能かを確認して、駄目なら一生Gランクのままという事なので………つまりだ。少なくともアリスには、ゴブリン5匹と正面切って戦えるだけの戦闘能力があるという事である。アリスからは覚えた魔法を使ったと聞いたので、多分私の攻撃魔法みたいに出鱈目な威力ではないのだろう。………なんか、いいなぁ。私もこんな過剰威力の魔法より、使い勝手の良い魔法の方がいいなぁ………けど、一度確定したイメージを変えるのは凄い労力がかかるし、何よりあんな過剰火力の魔法のインパクトをそう簡単に忘れられる訳無いだろう。私の攻撃魔法のイメージは、もう既にあの過剰威力で過剰火力で無差別で出鱈目な魔法なのだ。
しょうがないじゃんどうしてもあの威力になるんだもん。私だってどうにかしたいよ。せめて威力を3分の1、いや10分の1、いや20分の1くらいにしたい。というか、威力よりも攻撃範囲をもっと小さくしたい。もっと小さくていい。もっと狭くていい。こう、小さいけれどその代わりに威力だけは過剰みたいなやつでいい。スタイリッシュに行こうよスタイリッシュに。細く、小さく、けれど威力は現状維持で、使いやすくしたい。………今のところ、一度も出来てないけど。やろうとしても極太から徐々に細くしていかないと駄目だけど。
「んー………私は特に無い、かな。ミナにも聞いといて」
「はい、そうしますね。ではアオイ、今日も行ってきますね!」
「ん、行ってらっしゃい。気を付けてねー」
「勿論です!行ってきます!」
「行ってらっしゃーい」
私はアリスにそう言って雑に手を振ると、アリスは小さくながらも丁寧に手を振りかえしてくれた。割と便利且つ見ているだけで楽しいという理由で日常的に展開し続けている
まぁ、私は読みかけの小説の続きでも読んでいよう。最近は第五アップデートのおかげでいつでもどこでもどんな時でも電子小説が読めるからな。勿論この世界の紙媒体の本もこの世界を知る為&純粋に私の興味を引くから色々と読むけど、元の世界の電子小説は物語なのでそれはそれで面白いのである。読書好きの私には、紙媒体だろうが電子媒体だろうが読まないという選択肢は無いというものだ。それが私の興味を引くようなナニカなら、例えどんな文章でも、例えどんな言語でも、例えどんな内容でも、私はあらゆる手を使って本を読む。英語文章の本も全力で翻訳ソフトで翻訳しまくりながら読む私にとって、それくらい割と朝飯前だ。
………そういや気が付いたというかふと思ったのだが、この世界の言語というか、少なくとも私の知り合い達の使う言語は、全員が日本語、もしくはそれに類する似たような言語なんだよな。東の国(アオナお姉ちゃんの話や本の内容を聞いたり読んだりした限りだと、推定昔の日本みたいな和の国っぽい)出身のアオナお姉ちゃんは勿論、地下に幽閉されていた美少女のアリスでさえ、ある日突然生まれたレイカも、魔法道具店店主のリリーさんも、冒険者ギルドのギルド長であるミゼルも、同僚であるミナも店長も、その全員が、日常的に使っている言語が日本語なのだ。書く文字も、読む文字も、聞く文字も、話す文字も、その全てが日本語である。よくあるような、転生とか転移系の主人公、この場合は私に何らかの翻訳能力が備わってる、とかでは無い………と、思う。少なくとも実績にもステータスにも何も書いていない。だからまぁ、恐らくは日本語だと思う。ステータスに書かれていなかったらどうしようも無いがな。
しかし、何故日本語がこの世界に存在するのか?という疑問はどうしたって浮上する。恐らくは、この国の建国前………もしかしたら、それよりも更に昔、文明が栄える前にこの世界にやってきた日本人が居るからかも、とは思ったが………この推測に何らかの証拠なんぞ1つもないので、確証は無い。しかし、あり得ない話でも無いだろう。実際、私が何故かこの世界にやってきている。私というある種の証拠というか物証があるのだ。私以外の存在がこの世界にやって来る事だってあるだろう。来たところで何がある訳でも無いが。むしろあってもらっては困る。
………ま、そんな事より続き読むかー。
次の日、私は外に出ていた。
………そう、外に出ていた。
引きこもりでインドア派な私が珍しい………という訳でもない。別に私だって外くらい出る。元の世界でも、学校とか、行かないと後から確実に悔やむような場所には、体調不良などの理由が無ければ絶対に行くようにしている。そっちの方が私の為になるからな。
でも別に、今日は絶対に外に出るという理由があった訳ではない。普通にやる事無くて暇になったから、図書館に本を借りに行こうと出歩いているだけだ。しかし、ただ図書館に行くだけでは、最高に可愛いコルトさんを見て、図書館で気に入った本を借りて、はちゃめちゃに可愛いコルトさんを見て、それで帰るだけだ。いや別にそれでもいいのだが、それだとあんまり時間がかからない。ただでさえ元の世界と時間の流れが違うのだ。元の世界と同じ時間感覚で居ると早すぎるのである。だから、元の世界でもある程度暇していたのに、この世界でも同じ感覚で居たら、確実に元の世界より『暇』の度合いが増えるに決まっている。元から余っていたのが更に余るなど………それがお金なら良いのに。暇な時間が余ってもそこまで嬉しくない………いや、別に嬉しく無い訳じゃ無いんだ。ただ、その暇な時間にする事が無いだけで。
まぁとにかく、私はそんな暇な時間を潰す為にも、図書館以外の色々な場所を、自分の脚で歩いて──
「主、どうかしたか?」
──違った。自分の脚ではなくて、バティンにお姫様抱っこで運んでもらっている。
………いや、だってしゃーないじゃないっすか。これめちゃくちゃ楽なんすよ。自分で歩かなくてもいいんすよ?あり得んくらい楽なんすよコレ。いうなれば目的地に向かってくれる歩く歩道みたいな感じなんすよ。自分で歩かなくて良いってのが最高なんだよなぁ。私マジで体力無いから、ちょっと軽めに走っただけで足とか身体とかに違和感があるとか普通よ?別に私、運動神経が全く無い訳じゃないんだけどね………基礎体力と全身の筋肉量がゴミみたいなだけで。
「いや、別に。ただ、私は自分の悪魔に足の代わりをしてもらってるんだなーって思っただけ」
「あぁ、そうだな。主に頼られるのは我としても嬉しい事だ。このまま我に惚れてもよいのだぞ?」
「それはないから安心して」
誰が惚れるか誰が。というか貴様、私の本来の性別を知っておろーに。何故そんなに惚れろ惚れろと言ってるんだ。女の身体になれば惚れるとでも思っているのか?アホじゃないか?いやまぁバティンは私が絡むと大抵アホみたいになるのは知ってるんだけど。
「主、恥ずかしがらずに本音を吐いても良いのだぞ?照れ隠しでそのような事を言っても我にはお見通しである。我の虜になっても良いのだ。それに、そんなに照れずとも安心するといい。我に惚れぬ人間の女はおらぬからな。恥ずかしがる必要は皆無だぞ?」
「違うんだが………」
まぁ、バティンがそう思うならそうしておこう。叶わぬ夢でも見ているがいい。私はどこまで行っても1人の男なのだ。身体が女になっても私は男なのだ。それは、それだけは、決して誰にも変えさせない。
「………とりあえず、あっち向かってみて。行った事ないし」
そう、そっち。そっちの道に進んで。………いや、厳密には病魔が蔓延した時に運搬作業で通った事はあるんだが、どんな店があるとかを詳しく見ていないので行っていない、という風に言ったのだ。まぁ、通っただけなぞ行っていないも同然だろう。そもそも、あの時は露天も何も見てなかったし、まず病魔のせいでお店なんてやってる所は少なかった。なんせ、女性店員がいなきゃまともに運営もできなかったのだから。いや、他の店の事なんて具体的には何も知らないけどね?私の体験談なだけだし。うちの店は、ミナと私の2人が(ここに私を入れるのは割と嫌なのだが、身体は女なので女1人として計算する)居たし、男が店長さんの1人だけだったので、まだ回ったのだ。他はどうかは知らない。多分その辺を知っているのはミナの方だ。近所付き合いとかも全部ミナがやってるっぽいしな。割と外で近所の人の輪の中で話してるのを私の部屋から偶に見かけたりするもの。
私?部屋に引きこもって本読んでるだけだが?この前ミナに教えて貰ったけど、近所の人が思う私の印象は『本の虫』とか『読書狂い』だとか『人見知りの子』だそうだ。実に不本意である。まぁ確かに?本を借りる時だけ外に出て、それ以外は殆ど家の中で本を読んでばかり、一応店で働いてはいるけど自分から積極的に話しかけたりもしないで受け身、そりゃそういう印象というか評価にもなるだろう。まぁそこまで間違っていないけど。けど別に人見知りじゃ無いんだが?私はただ、他人に対して何かしらの興味も何らかの関心も無いだけだから。それを人見知りと言われても別に間違いでは無いが、別に喋れない訳じゃない。他人と喋りたくないだけだ。だって面倒だし疲れるし嫌だし。緊張する訳じゃねぇんだよ。喋るの面倒なだけなんだ。まぁその辺はどうでもいいか。
「うむ、了解した」
バティンは私が指差した方向の道に進む。それと同時に、かなりというか割と周囲の人の目線を集めてしまうが、まぁ別に私は一向に困らないのでヨシとする。………王都なら
「………む」
私が指を差した道に(バティンのお姫様抱っこのまま)進んで行くと、大きな人溜まりが出来ていた。この前病魔が猛威を振るっていた時にはなかったものだが、一体なんの集まりなのだろうか。
「………人形?」
売られていたのは、遠目から見ても分かるくらいに精巧な球体関節の人形だった。まるで本物の美少女の如き美しさを持ちながらも、確かに人形であると明確に理解できる逸品だ。なるほど、ここは人形屋なのか。この世界には珍しいガラス張りの店のガラスの向こうに非常に綺麗で素晴らしい人形が飾られているのも、この人溜まりを生む原因なのだろう。物珍しさにお客さんが寄ってきているわけだ。しかし、こんな店あっただろうか?新しい店だったりする?だから人が集まってたりする?私の推理当たってる?当たってる?………あ、新設オープンって書かれてる看板あるやん!推理とか必要なかったな?
「バティン、アレ凄くない?あの人形凄くね?」
「………ふむ?………確かに、あの技術は素晴らしいモノがある。我々悪魔であっても再現は難しいだろう。あそこまで精巧な
………はい?今聞き捨てならない単語が聞こえてきたぞ?
「え?何?アレ動くの?」
「む?あぁ。あの店先に飾られているモノは動くだろうな。というか、アレは今も稼働はしている。己が身が何かしらの危険に遭遇しなければ決して動く事は無いだろうがな」
え、えぇ………?
「えぇっと………他の人形は………?」
「他の人形か?他のは普通の人形だな。一切の魔力を感じぬ」
え、えぇ?魔力………感じないが?私の魔力感知能力に引っかからないんだが?何?お前なんでわかるの?
「私分かんないんだけど………」
「ふむ、それは単純に鍛錬不足であろう。あの魔導人形は後付けの幻影属性により魔力の反応が隠蔽されているとは言え、隠蔽されている魔法の魔力自体に気が付けないというのは、単に技術が足りぬだけであるからな。主も更に精進すると良い」
「なるほど………」
つまり私の魔力感知能力がクソ雑魚なだけね?おーけーおーけー理解した。
「しかし、主は焦る必要などないぞ?我が居れば良いのだ。我と永遠に共に有れば主は何もせずとも良い。我が主の為に全てを為すのだからな。惚れてもよいのだぞ?」
「惚れないが」
「くっくっく、照れ隠しも愛いものよ………」
「そうっすか」
………こいつ、これが無くなれば完璧有能悪魔なのに………私も常に側に置きたくなるレベルなのに………これがあるから地味に嫌なんだよな………こいつ召喚するの。しかし………今考えると、私は元の世界の頃から『悪魔』との相性が良かったんだな、と思う。何言ってんだこの馬鹿と思うかもしれないが、強ち間違いでもなさそうな根拠がある。それは、ソシャゲのガチャだ。
ソシャゲとは、ソーシャルゲームの略称である。主にSNS上で提供されるオンラインゲームの事で、私もいくつかスマホにインストールしてやっているものだ。雑に言うなら、スマホで出来るゲームは大抵がソシャゲに分類されるかもしれない。そして、そんなソシャゲだが、大抵『ガチャ』と言うモノがある。ゲーム内のキャラクターやアイテムの類を、ゲーム内通貨によってランダムに購入するというモノだが………私は、そんな『ガチャ』の排出結果から、私の実績が元の世界からあるモノなのだと言う根拠を見つけ出したのだ。
なんと私、ソシャゲのガチャで出てくるキャラクターの内、その時に行ったガチャから排出可能なキャラクターであるならば、『悪魔』もしくは『鬼』のキャラクターを外した事が無い。というか、いつの間にか引いているのだ。何を思うのかと言われればそれまでなのだが、実際にそうなのだ。どんなゲームであっても、『悪魔』もしくは『鬼』のキャラクターを引けなかった事が無い。ちなみに何故『鬼』のキャラクターまで含まれているのかと言うと、『鬼』の英訳と『悪魔』の英訳がどちらも『demon』、つまり同一存在だからだと思われる。まぁ要するに、私は私が今まで引いてきたガチャの結果から、元の世界でも実績というモノが存在していたのだろうな、と推測した訳である。根拠も添えてだ。
まぁしかし、どこまで行っても所詮はゲーム内のシステムに過ぎないので、偶然の可能性はあるし、そもそもこの推測が間違っている可能性は十分にある。私の推測だもの。………しかし、だ。私は大抵そこまでの運が無い。ソシャゲでも、私が心の底から欲しいと思ったキャラクターは決して引けないという、あまりにも物欲センサーが仕事し過ぎるタイプの人間だ。しかし、しかしだ。『悪魔』もしくは『鬼』のキャラクターだけは、私が心の底から欲しいと願ってもポンポン出てくるのだ。これはもう私の推測で確定だろう。というか確定にしてほしい。でなければ、他のキャラクターが出ないのは何なんだとしか言いようが無い。むしろそうであってくれなければ困る。………むしろ、なんで他のキャラクターには物欲センサー働くんですか?!と言いたくなる。本当になんで?悪魔と鬼の引き運は最上級なのに!他のキャラクターはどう頑張っても!どれだけのお金をかけても出ないのおかしくありません?!私がどれだけの金額をかけても出ないのおかしいですよね?!3万円を使っても私の欲しいキャラクターは出ないのに、悪魔と鬼のキャラクターだけはポンポンと出まくるのおかしいですよね?!?!私何にも間違っちゃいないと思うんですけど!ですけど!!
………落ち着こう。こんな所で苛々しても意味は無い。それに、別にゲームのキャラクターが出てこないだけだ。死ぬわけじゃない………いやでも欲しいし………うん、ちょっと意識を切り替えよう。
「………うん。バティン、次はあっちに行ってみよう」
「そうか?了解したぞ、主」
私とバティンはそのまま人形屋の前から立ち去るのだった。
次の日、私はアリスと共に部屋の中でゆったりとした時間を過ごしていた。ミゼルから時々貰ってくるが食べる機会があんまり無い(というかいつもお腹いっぱいになってからある事を思い出す)、ちょっとお高めのお菓子を私の部屋にある机の上に並べ、リリーさんから瓶ごと貰って未だに消費し切れていない(というかわざわざ淹れるのが面倒であんまり飲まない)紅茶葉を使った安価だが美味しい紅茶を手に、2人でゆったりと過ごしていた。
「はふぅ………美味しいですね、これぇ………」
「お菓子はミゼルがお気に入りのやつだし、紅茶はリリーさんのお気に入りのやつだしね。まぁ貰い物の余り物なんだけど………わざわざお菓子とか食べないし、紅茶も自分で淹れるの面倒でわざわざ淹れないし………」
「勿体ないですよー。あ、それなら、今度からは私と一緒に食べましょう!アオイは口実があれば割と何でもやってくれますし!」
「私の扱い方を心得てくれて私は嬉しいよ」
実際、何か口実というか、するべき理由があるなら大抵の事は了承するし実行するんだよな、私。チョロいなぁーと自分で思いつつ、しかしそっちの方が楽だからどうしても流れてしまうんだよ。ま、人間なんて大抵楽な道を選ぶ愚かな種族だからね。私も同様に愚かだけど、楽しけりゃいいのだ楽しけりゃ。
「それにしても………アオイってば、ずーっとこうやって室内でごろごろしてるんですか?身体に悪いですよ?」
「や、図書館とか行くよ?」
バティンにお姫様抱っこされてだったり、自分で歩いてだったりはするけど、一応出歩くよ?
「もっと外行きましょう?外。冒険者のお仕事しましょう?」
「まぁ………危険なやつじゃなければいいかなぁ」
「安全なやつならいいんですね?」
「まぁ、うん。安全ならいいよ」
………私、前々から思ってたけど、アリスに対してはかなり甘いな。普段なら絶対こんなに安請け合いしないのに………ま、別に私は困らないからいいけど。
「それじゃあ、街の近くの平原に綺麗なお花畑があるんですけど、そこに行きませんか?レイカちゃんとフェイちゃんも連れて、4人でピクニックみたいにお弁当も持って行って、遊んだりして………とか、どうですか?」
「やる」
私含めた4人でピクニックだって?そんなのやるしかないではないか。可愛い娘たるレイカ、愛らしいペットであるフェイ、そして完璧美少女であるアリス達とのピクニックとか、やるに決まってるでしょーが。だって、レイカもフェイもアリスも、みーんな絶対に喜ぶじゃん。美少女達が喜ぶのがわかってるのに何もしないとか万死に値するし、紳士以前に男の風上にも置けない間抜けでしかない。私はこれでも(現在の身体が女性であり、服装すら女物であったとしても)1人の男なのだ。女性を喜ばせる事に理由などあるものか。それが、己が娘とそのペット、そして私が助けた美少女であったなら、彼女達を喜ばせない馬鹿が何処に居ると言うのか。少なくとも、私は彼女達を喜ばせ幸せにしたいなぁと漠然と思っている。しかし思っているだけで、普段自分から何かをしようと行動した事は殆どないのが実態だ。まぁ、男子高校生なんてこんなもんよね。勉強しようと思ってもやる気が出なくてやらねぇんだ。
「やった!それじゃ、明日………いいえ、明後日!明後日に行きましょう!お弁当は私が作ります!最近お料理も上手くなってきたので!」
「それは楽しみ」
まぁ私は作らないけど。いや、別に私は料理出来ない訳じゃないけど、折角アリスがこんなにハイテンションにやるって言ってるし、何より上手くなってきたらしいので、私も食べてみたいだけである。普段のご飯はミナか店長さんが作ったものだからな。忙しくない時にはミナとアリスが一緒に作ってたり、たまーにアリスとレイカとフェイの3人で作る事もあるけど、アリス1人ってのは初めてだからな。割と楽しみだ。ちなみに私も稀に作るよ、稀に。
「そうと決まればレイカちゃんとフェイちゃんにも教えないと!私、冒険者ギルド行ってきますね!2人に伝えてきます!」
「ん、行ってらっしゃい」
「はい!行ってきます!」
私はそのままテンションの高いアリスを見送ってから、アリス達が戻ってくるまで本を読んでいるのだった。
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