私は散策なんて誰かに連れられないとしないよ?


昼食を終えた私達は、一旦部屋まで戻って来た。そうしないとフェイにご飯である魔力をあげられないのだ。なんせ、見る人が見れば神聖属性の魔力だと簡単にバレてしまうので、室内の誰もいない部屋の中でフェイの食事をするしかないのだ。加護持ちだとバレるのは色んな意味で怖いからね………主に教会関係が頭おかし過ぎて。


「ん。美味しいか?」


「!、!!」


「あーはいはい、美味しそうなのはいいから人差し指をしゃぶらないでおくれ」


「?、?」


「だからやめれ」


「?、!」


「薬指ならいいって訳じゃ無いんだが」


「!、!!」


「左手ならいいって訳じゃ無いんだが?」


なんだこの妖精。私で遊んでるんか?………まぁ、なんでか知らないけど、唾液が無くて汚れなかったからいいか。割と可愛いし。見る人が見たらえっちに見えなくも無いけど。まぁ私には割とえっちに見えるんだけどね?だってこんな姿(女性の身体)でも立派な男子高校生なので。まぁえっちに見えるだけで欲情も興奮も特に無いが。


「あはははっ!フェイ可愛い!」


「まぁ可愛いけども」


「!、!!」


くそう、可愛いじゃねぇか。これじゃ怒るに怒れない。………指をしゃぶられるのが不快だったら普通に怒るけど、別にこれくらいで不快感とか無いしなぁ。なんかちょっとえっちなだけだし。多分それといった不快感が無いのは、フェイの口の中に唾液やそれに類するものが無いからかもしれない。というか、初めてフェイの口の中を触ったけど、なんか奥の方が塞がってるっぽい。やっぱり食事が魔力だからかなぁ。………それならどうしてわざわざこんな場所にこんな窪みがあるんだって話になるけど、そこは気にしない方向で。


「あ、そうだお母さん。お昼食べたし、ちょっとだけお出かけしようよ。王都散策しに行こ!」


「ん、わかった」


私はインドア派である。が、それだと運動不足になるのは明白だ。故に私は、外に出るような用事を断る事はあまりしないようにしている。まぁ、普通の人相手なら5割くらいの確率で断るがな。しかし、レイカのお願いは出来るだけ叶えてあげたいので即答しておく。レイカなら私が危険な事はしないだろうし、そもそも散策なんてちょっとした散歩と変わらないだろうから問題無いでしょう。体力的に駄目そうだったらレイカにお姫様抱っこでもしてもらうとしよう。………最悪バティンに運んでもらうって事で。


「じゃ、レッツゴー!」


「!!、!!」












王都はとにかく広い。道も広い、建物の敷地も広い、土地も広い。とにかく色々と広い。空間に余裕がある、というべきだろうか。本当に色々なモノが広い。なのに、広い道は大勢の人で埋め尽くされ、広い敷地も大勢の人で満杯で、広い土地も人の波に呑まれている。空間に余裕はあるのに、それを上回る程の人間達が居る。それ程に栄えている街なのだろう。


更に言うなら、純粋な人間以外にも他種族の人々が大勢居る。純人族ヒューマンは勿論、森人族エルフ山人族ドワーフ獣人族ビーストなどの基本種族は勿論、小人族ミニマム巨人族ギカントのような体躯に偏りのある種族に、魔人族マジカルのような一見悪そうな見た目の(実際の悪人の数は他種族に比べて断トツに少ない種族らしい)種族や、個体数が明らかに少ない種族である竜人族ドラゴニュート、他にもちらほらと、本来殆ど故郷の外に出向かないらしい蟲人族バグマン植人族プラントマンも見えた。他にも、天使族エンジェル悪魔族デーモン精霊族スピリット幽人族ゴースト、本当に珍しい種族の神族ゴッドなども見かけた。しかも、私が見たことも聞いたことも無いようなわからない種族も居たのだからびっくりである。本にも載って無いような珍しい種族だからだろうか。それとも純粋に外との交流が少ない地域の種族だったりするのだろうか。


しかし、多種多様なのは人だけでは無い。建物もあまりに多種多様である。各々の種族専用のような形状だったりする建物もあれば、大抵の種族に対応できるような余裕のあるような建物もある。建物だけではなく、露店自体もかなり多種多様だ。例えば食べ物関係の露店だけ見ても、かなりの数がある。種族によって食事も食べ方も味覚も違うので、様々な種族に対応できるようになっているのだろう。アクセサリーや武器防具の類もその種類が豊富だし、街全体が多種多様な種族に対応できるようになっているみたいである。本当に凄い街だと思う。正に多種多様の極みを体現した街だろう。


「お母さんお母さん!あれも買おう!美味しそう!」


「なんだあれ………クレープか………?クレープっぽいな………私、ツナマヨのおかずクレープしか食った事無いんだが………」


「!!、!!」


「あーはいはい行きます行きます。行くから髪は引っ張らないで………地味に痛い………髪抜けるからやめな?」


………が、しかし。街中は人も建物も確かに非常に凄いのだが、私にはあまり向いていないらしい。人混みで少し疲れてきた。ついでに人混みで酔いそう。まだ出掛けてから30分も経ってないんだけどなぁ………私の体力が無さ過ぎてびっくりだぜ………というか、なんか最近フェイの私への対応が雑になってきてない?凄い引っ張ってくるじゃん。服も髪も引っ張ってくるじゃん。抵抗しない私が悪いんだろうけども。引っ張ったら引っ張られた方向に行くと思われてるんだろうけども。だからと言って髪を引っ張るのはやめないか?引っ張られると普通に頭皮が痛いんだが?髪の毛抜けちゃうからやめな?


「お母さん、はいこれ。クレープ!」


「何クレープ?」


「バナナ!」


「ギリギリ許容範囲内かな………うめっ」


私は果物類が苦手である。特定の一つが食べられるとかではない。普通に果物全般が苦手である。純粋に食べたくないのである。だが、別に私にはアレルギーがあって食べられない、とかでは無いので、食べる時は食べるのだ。いつもは絶対食べないが、レイカがわざわざ買ってきたものを食べない選択肢なんて私には無い。強制イベントだ。そしてバナナクレープは普通に美味しかったから許してやろう。割ともう一つ欲しいタイプの味付けだ。しっかりとした味で、甘過ぎずしかしバナナの味がほんのりと香るのが素晴らしい。恐らく、クレープの生地とホイップクリームにバナナが入っているのだろう。果物類のが苦手な私でもこれは食べやすい。ちょっとお気に入りだ。このクレープの工夫もやはり、多種多様なお客さんに対応する為の工夫なのだろうか?


「!、!、!!」


「あー、フェイは帰ったらな。流石にバレる」


こんな人混みの中で神聖属性の魔力なんぞ使ったら速攻でバレるわアホか。というか、貴様は毎度毎度私の魔力量ギリギリまで魔力を吸っていくだろうに。あれって割と疲れるからやめて欲しいのだが。途中でやめても無理矢理吸い取ってくるし。貴様は鬼か悪魔なのか。や、妖精ってモノによっては悪魔みたいな感じに呼ばれるようなやつも居るし、間違っちゃいないんだろうけど………や、そもそも妖精って悪戯とかのイメージの方が強いな………まぁとにかく、街中の人混みの中でお前にご飯神聖属性の魔力はやらんからな。指を吸っても駄目だぞ。意識してればお前さんの『魔力吸収(仮)』は魔力操作だけで簡単に防げるからな!ふははは!


「ね、ね!お母さんは欲しいものとかある?」


「ん?んー………特に無いかなぁ………」


強いて言うなら本くらいだが、本は一度借りてMICCミックの中にぶち込んでから、コピペを応用した『ワンボタン内容記録』を使えば自動で本の内容を記録し、自動で電子媒体として読む事ができるようにしているので、別にわざわざ本を買う必要は無い。むしろ借りる必要も無い。やろうと思えば、図書館内の本全てを収納して取り出すだけで全ての内容を記録できるのだから。まぁ、やると無駄に容量を喰うので必要なもの以外はやらない。なんせ、容量に空きが無いとMICCミックが使えないからな。無駄なものは要らないのだよ。


「えー?何も無いの?」


「?、?」


「んー………強いて言うなら………白紙の魔導書かな………?」


魔導書。それは、魔法を記録する媒体の一つである。1ページにつき1つの魔法を記録する事が可能で、触れているページに魔力を流す事で、無詠唱で、更には普通の魔法より高威力な魔法を放てるという、割と特殊な記録媒体である。例え自分の適性の無い属性の魔法でも、魔導書内に記録されている魔法なら適性属性を完全に無視して威力の高い魔法を扱えるようになるなど、世の中の魔法使いにとって夢のようなモノでもあるのだ。無論、私だってこれでも魔法使いの端くれだ。端くれというか素人なのだが。しかし魔法使いである事に変わりはないので、普通に欲しいに決まっているだろう。ただ、魔導書は迷宮やダンジョンと呼ばれる危険地帯からしか産出せず、作成は不可能、その産出数自体もかなり少ない為非常に高価で、更には例えオークションなどで売りに出されても金や権力を持つ富豪などにその大半を掻っ攫われてしまう為、私のような一般人には関わりの無いモノでもある。


まぁ、別に買っても何かに使う予定も無いので、今すぐ必要な訳では無いのだが。純粋に持ってたいなーというだけである。わからないけど、なんか欲しいじゃん?魔法使いと言えば杖か魔導書だし。というか、私がそんなモノ使ったら、今でも過剰な程の威力の魔法が更に強力になってしまうだろう。ただでさえ森一つ分くらい簡単に吹き飛ばしそうな威力の魔法が上がったら………山一つ分くらい吹き飛ぶのではないだろうか。それはあまりにも過剰である。むしろ魔法によっては惑星自体におっきな穴開けられそう。


「あー、魔導書は流石に持ってないや。それに、私の貯金で買えるかどうかもわからないしなー………ごめんね?」


「別に謝る必要は無いだろ。欲しいつっても、別に今すぐ手に入らないと死ぬ訳じゃあるまいし」


むしろ何故謝る必要があるのだ。謝るならどっちかというと私の方だろ。いやまぁ比喩だから絶対に謝らないけど。


「そっか。そうだよね。………お母さん!あっちの露店でネックレスがあったの!お揃いのやつ買いに行こ!」


「ん、りょうかーい」


うむうむ、流石は我が娘。切り替えが早い。まぁ、元々がそこまで気にするような事でも無いし、誰でもこんなもんだろうけど。










次の日、今日の私がいる場所は、王都の冒険者ギルドの一室である。レイカとフェイに『模擬戦するから見に来て!』と言われたので素直に着いて行ったら、なんか模擬戦の準備があるから、参加者でも無いただの観戦者である私は待機、という事らしい。大体30分後くらいに模擬戦を開始するらしいので、それまで待機だ。ちなみに何故模擬戦をするのかというと、Aランク冒険者に見合う戦闘能力があるかどうか見る為、だそうだ。


「んー………」


待機しているのは、まぁ、応接室的な部屋なのだろう。複数人が座ることのできる大きなソファと、広々とした机、壁の絵画などの装飾品など、明らかに外部の人間用、みたいな部屋である。面白味が無い。………いやまぁ、ここは一応王都の冒険者ギルドだし、王族だとか貴族だとかも大勢やってくるからこれくらいは必要なんだろうけども。まぁ、いくら綺麗で凄くても、すげーって感想しか出ないが。私に芸術のセンスはそこまで無いので………絵とか模写くらいしか出来ないし。歌くらいならまぁ出来なくはないけど、カラオケで90点取れるくらいじゃないかな。カラオケ行かないから何点とかは知らないけど。まぁ過剰に考えてるのは割とあるから、実際計測したら70点くらいの可能性普通にあるけど。まぁ気にしない気にしない。


「30分………割とあるなぁ………」


しかし暇だ。実に暇である。暇潰しのために読書をしようにも、外で使う用の紙媒体の本がない。昨日王都の王立図書館って名前の、なんか凄い感じの大きな図書館で一冊くらい本を借りておけばよかったと思うくらいには後悔している。王都の用事がいつ終わるかいまいちよくわからないから一冊も借りなかったけど、こんな事になるくらいなら素直に借りときゃよかった。くそぅ。『魔力操作による身体能力強化魔力技術理論』とか『魔界転移魔力技術理論』とか『複合属性による新たな魔法属性の創造』とか『魔力技術による物質風化現象の再現』とか。………全部面白そうだったなぁ。借りときゃよかった………あまりにも暇過ぎてやばい………


「失礼する」


「えあ、はい。どうぞ?」


なんて、私が1人寂しく(勿論比喩である。精神的には寂しくない)ソファに座って待機していると、渋めの男性の声が聞こえてきたので反射で答えてしまった。そのまま背筋を伸ばして待機していると、部屋の中に体躯の大きい、数値にして180cmは軽く越えていそうな男性1人と、つり目で少し厳しそうな雰囲気を纏う女性1人が部屋まで入ってきた。2人とも強そう(小並感)。


「お前さんが今回実技試験を受ける『フェアリーズ』の保護者、で合ってるか?」


「まぁ、保護者………保護者で間違いないと思います」


保護者なのかは怪しい所だ。むしろ保護されているのは私の方だと思われる。元に宿代はあの子達が払ってるので………


「うむ。俺はニード・テンクルート。この王都の冒険者ギルドでギルド長をしている者だ。それでこっちは」


「私は副ギルド長兼秘書のミニス・テンクルートです。ギルド長は兄ですので、兄妹となります」


「あ、はい。私は松浦葵です」


兄妹なのか、この2人。………似て、る、か?………私、他人にカケラも興味無いから、血縁だとか顔が似てるとか全くわからないんだよな。知り合いの双子の区別も付かなかったし。区別を付ける気が無かったとも言うがな!


「うむ。ルナートの方のミゼルからいくつか聞いておる。何でも、Sランク級の悪魔と契約しているCランク冒険者であり、冒険者は副業だとな」


「まぁ………そうですね」


間違っちゃいないけど、ミゼルは私の個人情報をぽんぽんと渡すのやめてくれないかなぁ。個人情報保護法が働いてないぞ。多分、そんなものこの世界のこの国には無いんだろうけど!


「今回、マツウラレイカとその使い魔であるフェイのAランク試験の為の模擬戦を、という事だが………アオイ殿はあの2人のパーティーで戦闘を行わぬのか?」


「まぁ、そりゃ戦えないので」


冒険者は基本的に、10人以下からなる一つのパーティーというモノを組み、様々な依頼をこなしていくのだ。それぞれの得意分野で依頼をこなし、苦手分野は仲間が補うといった感じで、助け合う仲間、のようなモノらしい。戦うだけが冒険者の仕事では無い為、交渉事を行うメンバーや、生産や製作を行うメンバーなど、一つのパーティーで大抵の事はこなせるようにするのが冒険者の基本だとかなんとか。ただ、パーティーは別に最初から組むわけでは無い。新人の頃に集まった冒険者が、成り行きやらなんやらで組むものらしい。故に、低ランクの冒険者の依頼はわかりやすく誰でもできるようなモノが多く、高ランクになればなるほど専門的且つ多種多様な人材が必要な依頼になりやすいらしい。そうしなければ人材が育たないからな。


そして、パーティーが10人以下、という事になっているのは、それ以上の人数だと、戦闘面はともかく、金銭面や仲間内の関係性に問題があるから制限がかけられてるらしい。なんせ、人が多くなれば勿論ながら依頼料は分割されてしまうし、人が多くなれば不平不満は出やすくなるモノだ。故に、パーティーは基本的に10人以下なんだとか。勿論例外はあって、1番多い所だと500人越えみたいなアホみたいな人数のパーティーがあるらしいが私は良く知らない。レイカとフェイがそんな事言ってたなーくらいの情報だ。


ちなみにだが、私は一応『フェアリーズ』の3人目のパーティーとして冒険者ギルドに登録されているらしい。ただし、パーティーの戦闘員じゃなくて、戦闘の無い後方で味方への物資補給をする特殊な人材、みたいなポジションらしが。MICCミックがあるから間違いではあながち無いが………レイカとフェイに勝手にパーティーとして登録されたので、私もいまいちよくわかっていないんだよな。


「特殊な後方支援員兼物資補給員というのは、アオイ殿のパーティーメンバーである2人から聞いておる。故に、あの2人のパーティーメンバーである以上、アオイ殿にも試験を受けてもらわねばならぬ」


「………はい?」


はい?


「む?聞いておらぬか?」


「え、はい。特に何も」


本当に何も知らないが?


「ミゼルからもか?」


「ええ、まぁ。何も聞いてませんね」


ミゼルから何も聞いてないが?


「………ちなみに、試験内容って何ですか?」


「む?試験内容か?それならば、『フェアリーズ』の2人の模擬戦後に説明致す。それまでは待っていておくれ。………にしても、事前説明無しとは………ミゼルの事だ。ちょっとした悪戯と言うやつだろうな………」


悪戯?はぁ?悪戯とかのレベルじゃねーぞ………?帰ったらあいつの紅茶に塩とか入れてやろ。MICCミック使って遠隔から紅茶の中に塩をぶち込めるからなぁ!私の目の前で紅茶を吹き出す光景が………それだと吹き出した紅茶を私が被ってしまう。さりげなく真横に座るか………?いや、そうするとバレるな………さりげなく魔法を使って………でもミゼルはSランク冒険者………既存の魔法くらい簡単に見破りそう………というか、よく考えなくても普通にMICCミックの発動も見破られそうだな………隙を見てやるかな。こう、トイレとかで席を立った時とかに、ちょいっと………


「うむ。まぁ、今知れただけ良いではないか。それよりも、そろそろ模擬戦が始まる。着いてまいれ」


「あ、はい」


私は何も考えず、ギルド長であるニードさんと副ギルド長であるミニスの後を着いていくのだった。







時間にしておよそ5分ほど歩くと、模擬戦を行う闘技場が見えてきた。なんでも、自分より上の次元、自分より上の冒険者の力量を測るために、誰でも観戦可能な開放型闘技場なんだとか。ランクを上げる為の試験がある時とか、何かあった時の戦闘フィールドは大抵ここが使われるので、割と色んな冒険者が観戦するらしい。ちなみに、今回模擬戦を行うレイカとフェイだが、何故か王都でもかなり有名な2人らしく、既に闘技場の席は全て埋まっているそうだ。うちの娘が人気過ぎてヤバい。


そんな私の席だが、何故か貴族が観戦する用のボックス席的な場所という、かなりの特等席で観戦できるらしい。なんという贅沢なのだろうか。まぁ、ボックス席という身内のみで使うような場所である以上、私の居る部屋の中には今現在私1人しかいないので、ちょっと寂しかったりはするのだが………まぁ、見知らぬ人が同室というか側に居るより精神状態は億倍はマシなので良しとする。


さて、模擬戦だが………そろそろ始まるのか。レイカとフェイが並んで立って(フェイは浮いているが)いる。それだけでなんかもう可愛い。しかも、私の事を見つけたのか、大きくこっちに向けて満面の笑みで手を振ってきた。それも非常に可愛いので振り返しておこう。あっ反応したっ!可愛いっ!うちの子可愛いんですけどっ!可愛いくて強いとかほんと最強!可愛い!


なんて事をしていると、レイカとフェイの相手が闘技場の対面から入ってきた。なんと、女性らしい。武器は片手剣を両手に持っているようだ。どちらも白に光る綺麗な刀身で、持ち主と合わせて非常に映えている。片手剣が2本という事は、彼女は二刀流なのだろうか。防具の方だが、淡い藍色に光る謎の金属製ながら、急所だけを的確に防護するという、なんというか非常に軽装な防具だった。身体の動きを阻害せず、純粋に素早く動くために軽量化されたような防具は、彼女に非常に似合っている。相手の人も人で素晴らしいな。うむ、あの対戦相手の彼女は清楚さと扇情さが混じり合っていてとても良い。そこ?と思われるかもしれないが、私あの相手の事良く知らないので………知らないので外見から判断するしかないので………外見から判断するとそう言う感想になるので………


『それでは、只今より、『フェアリーズ』の2人、マツウラレイカとフェイのAランク昇格模擬戦闘試験を開始する。試験官だが…今回は特例として、Sランク冒険者のミリア様に試験官を行ってもらう事となった。『フェアリーズ』は存分に力を振るうと良い』


Sランク冒険者?って確か、ミゼルと同じランクの冒険者………か?それってかなり強いんじゃなかったっけ?や、どれだけ強いか私が具体的に知ってる訳ではないんだけど………いまいちわからないんだよなぁ。比較的平和な世界から来た(どっちかと言うと事故みたいな感じにだが)人間としては、こう、ランクだけ見ても強いって事にいまいち実感が湧かないというか………強いのは分かるのだ、強いのは。具体的に何処が強いんだろうとか、そういうのはわからないって言うか………


『それでは………模擬戦、開始っ!』


──直後、私の目に全く留まらない素早さで動いたであろうレイカと、対戦相手のミリアさんが、闘技場の中央で、レイカはその拳で、ミリアさんはその剣で、本来拳と剣という鍔迫り合いの起こるはずの無い二つのモノ同士で、まるでというか本当に火花の散る鍔迫り合いが起こっていた。なんだその物理法則どころか人体の神秘にすら真っ向から刃向かうような現象は、と脳内でツッコミしている内に、レイカとミリアさんはどんどん加速していく。


そういえばと後方に待機しているフェイの方を見ると、なんと、フェイはレイカへの補助と援護、敵対者であるミリアへの攻撃と妨害、そして闘技場内という平面の地形を完全に変更する為の工作など、多岐に渡る魔法を扱っていた。およそ10〜30程度の魔法を同時に行使している。複数思考とか並列思考とかそういうレベルじゃないぞなんだあれ。そもそも魔法とはイメージを魔力によって形作る現象だ。明確なイメージが無ければ、例え無限の魔力があっても魔法は決して使えないのに………何あれ?本当に何?複数の強固なイメージを同時に10〜30個くらい展開しつつ、しかも個別の魔法に適切な魔力量を決めているとでも?何それ?私初めて見る技術だが?私は基本的に魔法は同時に一つしか使えないが?使えないからスマホを使って自動化してるんだが?


なんて、私がフェイの魔法に困惑というかなんかよくわからない感情を感じている間に、既に闘技場内の地形は大幅に変更されていた。地属性魔法によって平面だった地形に明確な高低差を作り、木属性魔法によってその地面に無数の雑草と障害物になり得る多岐に渡る種類の木々が生え、更には氷属性と風属性の二属性を複合して闘技場内部だけに吹雪を吹き荒らし、錬金属性で2人の装備類を白く変化させ、妖属性で2人の肌や姿の大半を白く変化させ、そして幻影属性と毒属性の二属性を複合する事によって相手の視界に侵食し視界内をぼやける程度に白く染め、音属性によって無数の爆音を闘技場内のあちこちから発生させる事で聴覚すらも奪っている。更に、フェイはそれら全ての魔法と並行してレイカに対して強化や支援などの所謂バフ系の魔法を複数同時に使用しつつ、相手には弱体や低下などの所謂デバフ系の魔法をこちらも複数同時に使用して、そしてそれらに加え単一属性の攻撃魔法を平均して3つは同時に発射し続けてレイカの援護を完璧にこなしている………という、なんというか………あまりにも容赦が無さすぎてびっくりな布陣だ。地形の全て支配し、視覚と聴覚の大半を奪い、味方を強化し、敵を弱体化させ、そして完璧な援護をこなす。


………完璧だ。あまりにも完成している。しかも、この布陣は少し破られたくらいじゃびくともしないのだろう。一つ一つの魔法だけでもかなりのアドバンテージを生むことができるのに、それらを組み合わせる事でそもそも策自体を壊されにくくし、例え一つ二つの策だけを打破しても敵が有利にならず、そこに新たな策を埋め込む事すら可能だ。これは、あれだな。私がレイカに話した、理想の国云々の話の活用だろうか?例えば、君臨し支配する国の頂点が完璧でも、それは人だ。いずれ死ぬ。そして、君臨し支配する王には変えが効かない。しかし、複数の平凡な人間が国を回すなら幾らでも変えが効く。天才的な能力の持ち主は滅多に出ないが、平凡的な能力の人間を育成して使えるようにした方が、国としては良いのだ。長く、容易く続くのだから。特別な1人が国を回すより、平凡な複数人が国を回す方が、変えが効く。つまり、特別な策を一つ使うより、平凡的で埋め合わせが効く策を複数使う方が、長く、容易く、敵を殺せるだろう。


ちなみに、レイカはそんな風にフェイに作られた酷な環境の中であってもいつも通りに活動し、ミリアさんと鍔迫り合いをしているようだった。ちなみにミリアさんの方だが、あんまりというかかなり余裕が無さそうに見える。なんか普通に心配になってきた。大丈夫かな。まだ模擬戦を開始してから10分も経ってない筈なのだが、闘技場内の環境だけがあまりにも変わりすぎてびっくりだ。観客席側もかなり困惑しているみたいだった。当たりめーだよ私もしてんだから。


………というか、今回フェイが使用した魔法の大半………あれ、元々は私が暇な時にメモ紙に書いていた魔法群じゃないか?今回使った魔法の大半が私の考えた魔法じゃないか?適当な白紙に書いて『これいつかやりてー!』とかはしゃいでたやつじゃないか?地形変化も、森林化も、豪雪の吹雪も、白色の迷彩も、白色の変身も、視界のハッキングも、爆音聴覚封印も、全部私が寝る前に適当に考えてメモ紙に書いたやつでは?あれ無くしたか捨てたかと思ってたんだけど2人が持ってたの?というかあの布陣、もしかして私が『今まで考えてきた雑魔法でなんかできねーかな』って考えた吹雪山脈みたいな名前だった布陣では?というか別にあの魔法群、元々は全部戦闘に関係無い魔法群だったと思うんだが………?そもそも私が考えた魔法の大半は戦闘用では無いのだが?


地形変化は既存の魔法に無かったから適当に構想練ったやつだし、森林化も植林とかこれでできそうだよねって適当に練ったやつでしょ?豪雪の吹雪も天気操作の魔法とか作れないかなーって思って出来なさそうだったから直接天気を作る魔法にしちまえと適当に練ったやつじゃんね。それに、白色の迷彩と変身はその延長戦上として、雪の中で真っ白になったら姿見えなくね?とか考えて適当に練ったやつだし。それに、視界ハッキングと爆音聴覚封印は戦闘というか逃走用なんだけど………?


いやね?確かにそれらの魔法群でかなり凶悪なコンボ決まるなーって適当に思って策を適当に練ったのは事実だよ?けどまさか本当に現実でその策をやるとは思わないじゃん?なんか知らないけどレイカとフェイが普通に優勢になってきてるし?ミリアさん負けそうですが?レイカもヤバいけどフェイもヤバくね?しかも、環境の変化と同時に魔法援護しまくってるし………あっミリアさんの剣吹き飛ばされたぞ!しかもレイカがミリアさんのお腹殴った!流石は私の娘だ!相手が女だろうが一切の容赦が無い!それも可愛い!いや可愛いか?まぁ可愛いなヨシ!


『──そこまで!勝者、『フェアリーズ』!』


あっ2人が勝ったぞやったー!!


レイカが模擬戦で勝利をもぎ取った。闘技場内の環境変化は既に終わりを告げており、全てが元に戻っているので、闘技場内が非常に見やすい。あっレイカがこっち向いて笑った可愛いっ!その笑顔プライスレス、とか言うレベルじゃないっ!可愛いっ!可愛いが最強過ぎるっ!なんかもうあの魔法私のやつじゃねーかなとかそんなのどうでもいいくらい可愛いっ!可愛いよー!レイカは勿論フェイも可愛いぞー!


『お母さーん!お母さんの魔法で勝てたよー!!』


んんんんんん????なーに大声で言っちゃってくれてんですかレイカちゃん????なんか視線が私の方に向いてるのだが????何故????


でもまぁうちの子が可愛いから万事OK!!









模擬戦後、私はまたニードさんとミニスさんに連れられて何処かへと向かっていた。一度魔法陣である程度の距離を転移したので、殊更何処に向かっているのかがわからないが………まぁ、いざとなればバティンにどうにかして貰えばいいので無問題である。ちなみに、私の背中には安らかに眠るレイカと、私の頭の上にも安らかに眠るフェイが居る。流石の2人も緊張の糸が解れたのだろうか、それとも単純に疲れたのだろうか。まぁとにかく2人は頑張った訳なので、無下に扱う訳にもいかず、私は何故かレイカを背負い、フェイを頭に乗せて歩いていた訳である。まぁ私の背中ですやすやと眠るレイカの寝顔も、頭の上でゆったりと寝ているフェイも、どっちも非常に可愛いからOKだ。体重も子供1人分だからそこまで重く………いや割と重いけど、まぁ背負うくらいなら出来なくはない。


「む。着いたな。ここがアオイ殿の試験会場である」


そうして辿り着いたのは、パッと見だけでも闘技場より広い敷地だとわかるような、広大な場所であった。………本当に、呆れるくらいデカい敷地である。サッカーとか余裕で出来そうなレベルだ………なんて思っていると、レイカとフェイの抱っこをミニスさんが変わってくれた。まぁこれから私の試験らしいしね。ありがてぇ。


「えっと、ここは?」


「む、ここか?ここは王都から6つの山を越えた先にある街、サミリエルである。この場所はとにかく土地の値段が安く、そして維持費もかなり安くてな。色々な所の冒険者ギルドが利用する共有スペース、という事になっている。今回は試験の為、ほぼ貸し切りだがな」


………6つ山を越えた街だと?私の感覚的にはもっと短めだと思っていたのだが………完全に予想が外れたな。というか、魔法陣に消費された魔力量から転移距離を逆算してみただけだったのだが………通常の転移魔法を元にしたのが駄目だったんだろうな。しかし、適切な魔法陣を使うと使用する魔法の魔力消費量がここまで減るのか。いつか使うかもしれないし、これは覚えておこう。


なんて風に色々と雑に考えながら歩いていると、視線の先に大量の木箱と木樽が見えてきた。………なんだあの塊。


「ふむ、到着したな。………ではこれより、『フェアリーズ』の特殊員、マツウラアオイ殿の昇格試験を行う」


なんだって?昇格試験?はい?


「現在、アオイ殿はCランクだが、今回の試験をクリアする事でBランクへと昇格するだろう。では、試験内容を説明するとしよう。試験内容は単純明快。ここにある木箱と木樽全てを、運搬地点である赤旗の元まで運搬する事だ。また。今回、契約術魔術師達や魔物使役者達、そして木属性、水属性、地属性の魔術師達の手を借り、この敷地内はAランクに格付けされる魔境へと変貌している。事前情報はこれまでだ」


………つまり?赤旗の所まで物資を運べばいいと。ちなみに道中は魔物だらけだけどな、って事?後Aランク魔境って何?割と初耳なんだけど………


「………そして、試験時間だが………無い。終わるまでこの敷地内から出てはならない事になっている。また、試験概要として、アオイ殿は魔境内で味方の元に物資を運搬する、という事になっている。試験に関する情報はこれまでだが………ここまでの内容はしっかりと理解しただろうか?」


「………理解しました」


とりあえず、赤旗を探す事から始めないとな………未だにやりたくは無いけど、やらないと帰らせてもらえなさそうだしな………腹括らないとな。


「では──試験開始である」


「んじゃ………バティン、アク、召喚」


試験開始直後、すぐに私はバティンとアクを召喚する。ここは危険な魔境?というモノの側、もしくは内部だ。開始直後と同時に襲われる可能性もあったので、とにかく私が呼び出せる最高戦力を呼び出しておく。


「主か。今回はどのような用事なのだ?離れている間に我に惚れでもしたか?それならば仕方ない。我が責任を持って主を抱いて──」


「バティン、私のことお姫様抱っこでもなんでもいいからとにかく運んで。できるね?あと守って」


「了解だ、主」


「アク、この敷地内にある赤旗ってのを探してこれる?………いけそうだね。何かあったらすぐに教えて」


とりあえず、バティンはともかくアクとは会話が成り立たないので、魔力線マジックラインは最初から繋いでおく。これで有事の際にすぐ反応できるだろう。なんて考えてるうちに、私はバティンにお姫様抱っこをされていた。確かに例えにお姫様抱っこを出したが、本当にやってくるとは思わなかった。まぁいい。


「バティン、あの木箱と木樽の側に移動して」


「うむ、了解した。ところで主、このような格好を望んだと言うことは、我に抱かれるという事でよいのか?ならば仕方ない。召喚の代償として仕方なく主を娶ってやろ──」


バティンの冗談(本気)を半ば無視しながら(完全に無視しないのは適当に相槌を打っていると何かボロを出しそうなので不安だからだったりする)、私は木箱と木樽を全てMICCミックの中に収納する。とりあえず、後は赤旗を探すだけだが………アク1人じゃ足りないな。私らも探すべき………か?いやでも、魔境らしいし、あんまり森の中に足を踏み込みたく無いなぁ。危険みたいだし………


「大丈夫だ主、初めてなのだろう?恐れずとも、我は相応に優しくするとも。紳士故にな」


「バティン、冗談は存在だけにしろ。なんか前よりエスカレートしてないかお前?


「別に我は冗談で言っている訳では無いのだがな。それで、以前よりエスカレートしている理由か?そんなもの単純だ。長らく主に呼び出されていなかったからな。異界アナザーワールド魔線・マジックラインで話す事はあっても、所詮は声だけだろう?我は主の御手に触れ、主の姿を目に焼き付け、主の命を聞くのが、今の我の使命であるが故に。主的に言うならば、生き甲斐を奪われているような状態であろうか?」


「………なるほど。程々に呼び出した方がいいのはわかった」


つまりあれだ、時々でいいから余裕がある時に呼べと言うことだろう。でなければ今日の今みたいにハッスルすると………それはそれで嫌だな………


『主様!赤い旗を発見しました!』


「む、了解。バティン、アクの居る場所に転移できる?」


「転移ならば余裕である。………うむ、こちらもアクの角を捕捉した。では──」


バティンがカッコつけるように(多分必要無い)綺麗な音の指パッチンをすると、私の視界は一瞬にして切り替わった。さっきまでは草原の上で、そしてニードさんとミニスさんが離れた場所に居たのだが、ここには本当に誰も居ないようだ。


「あ、アク」


『主様!』


私が周囲を見回していると、アクがこちらにやって来ていた。なのにぱたぱたという羽ばたきが聞こえないのは、アクの権能のお陰だろう。消音飛行だとか言うやつ。


「赤旗は──っと、あそこか。バティン、あそこまで連れてってくれ。なんか紙が挟まってるからついでに回収しろ」


「うむ、了解した」


私は未だにバティンにお姫様抱っこをされたままだが、自分で動かなくてもバティンがこうして動いてくれるというのは実に楽な事に気が付いてしまった。バティンなら私の命令ならなんでも聞いてくれるだろうし、何より全力で甘やかしてきそうだからな………なんかもうこのままでも良いかも、と思ったが、そんな事をしたら私はバティンに孕まされてしまうかもしれないので少し頭を振って思考を切り替える事にした。割と本気でそうなる可能性があるのが怖い所だ。


バティンが赤旗に挟まるように置いてあった紙を回収すると、私はその紙をバティンから受け取る。何が書いてあるのか見てみると、紙にはこう書かれていた。


『物資運搬後、味方が逃走又は回復できるまでに30分を必要とする。この紙に触れると同時に赤旗の周囲にある程度の虫除け結界が、赤旗を包み込むように展開されるので、その結界を壊さぬように30分間その場に留まる事』


と書いてあった。赤旗の方を見ると、薄赤色の結界が赤旗の周囲に展開し始めている。これを壊してはいけないようだ。


「バティン、私を抱えたまま戦えるんか?」


「主、我をみくびらないで貰おうか。この森に潜む奴らごときなら、主を抱えたままでも、主に怪我一つ無く、余裕で勝利できよう。無論、この森全てを滅ぼすことすら可能だぞ?」


「あー、この虫除け用の結界を壊さないならなんでもいい。とりあえず、この場で30分待機で」


「うむ、了解した」











それから30分、特に何がある訳でも無かった。もっとこう、魑魅魍魎が跋扈してくるような展開を予想してたので、自動防御が発動するように目を閉じてバティンの腕の中で待ってただけなんだけど………途中から暇すぎて寝たくらいには何も無かった、少なくとも私から見れば何も無かったように見えたので、まぁヨシとする。ちなみに魔物の死体も見当たらないので、バティンが森に引火しないように焼き尽くしたか、そもそもやって来なかったと言った所だろう。


「バティン、帰ろっか」


「む、もう終わりか?ならば仕方ない」


またパチンという綺麗な指パッチンが聴こえてきたかと思うと、私の視界は最初の草原にまで戻ってきていた。アクは既に元の場所に帰しているので、転移で移動したとしても特に問題は無い。


「む?なんと、非常に早かったな。もう達成したのか?」


集中が切れて一息ついていた私がバティンにお姫様抱っこのままでいると、ニードさんとミニスさん、ついでに未だにぐっすりなレイカとフェイがこっちまでやって来ていた。あ、この状態で話し始めるんですかニードさん。


「はい、まぁ、もう終わりましたね。バティンは私の事降ろしていいよ」


「うむ、わかったぞ主」


バティンが私の事を素直に降ろしてくれて私はとても嬉しいよ。なんせ、私のイメージだともうちょい渋るかと思ったから。あれだね、普段の行いがアレだから信頼が無さ過ぎるよね。バティンの事は信用はしてるんだけど、いささか言動がアレだからあんまり信頼出来ないんだよなぁ。ま、信用はしてるからなんとかなるだろうけど。


「………報告を受けた。では、試験結果を発表する。マツウラアオイ殿………合格だ。これて、晴れてBランク冒険者である」


Bランク………そういや昇格とかなんとか言ってたな。まぁ、別にそういうのが貰えるなら貰っとくから、別にいいんだけど………話の途中から、どう試験をクリアするのか悩んでたからな………その辺の話はあんまり気にしてなかったや。

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