妖精をペットにするのは法律上禁止じゃないのか?


「お母さん!この子、凄い可愛いね!」


「そうだなぁ。可愛いなぁ」


「!、!」


「お母さん見て!この子、お母さんに懐いてるんじゃない?」


「そうかもなぁ。可愛いなぁ」


「?、!、!」


………私は、少し頭を抱えていた。レイカの連れてきた妖精の怪我を治した次の日の朝。私は、少しだけ頭を抱えて唸っていた。


「?」


原因はこいつ妖精である。どう考えても引き千切られていた羽、下水道の前に倒れていた事実………どう考えても、それが偶然なんて訳が無いだろう。何か変な事件に首を突っ込んだ可能性がある。なので、今の私は現実逃避をしているのだ。


「ねぇお母さん、この子に名前を付けてあげようよ。何がいいかな?」


「………んー………フェイ、とか?」


「!!、!!」


「お母さんお母さん!フェイもフェイが良いって!」


「そっかぁ」


どうしようかなぁ。………………ま、いっか(適当)。多分どうにかなるでしょ。そもそも私は別に悪くないし?というか、助けを求めたいなら私じゃなくて冒険者にするべきだし。まぁ、いざとなっならバティン呼び出してどうにかするだけだし。うん、解決だな!(馬鹿)


その妖精──フェイを改めて観察する。小さな人間、と昨日は思っていたのだが、少し違うらしい。まず、人間で言う所の白眼が黒眼で、黒眼が金眼になっている。そして、耳がエルフのように尖っている。後は羽だが、これは昨日は気が付かなかったが、淡くぼんやりと光っているらしい。むしろなんで暗闇で気が付かなかったんだろうってくらいだ。ちなみに髪色は薄ピンクだ。この世界でも殆ど見ないような、非常に珍しい髪色をしている。


後、裸だ。ついでに言うと女の子らしい。いやだって、胸が膨らんでいるし、普通に下半身で丸わかりである。レイカの教育に悪いので服を着てほしい。………売ってないだろうし、私が作るしかないか………今日はフェイの服を作る事にしよう。


「レイカ、フェイの服、作ろうか」


「?………あ、そっか。気にしてなかったけど、フェイ、裸だもんね。これじゃ外に出られないや。?でもさ、妖精って誰にでも見えるの?誰にでも見えるなら、妖精がいるーって感じで気が付きそうなものだけど………」


「………そういや、その辺はどうなんだろう」


本にも書いてなかった気がする。少なくとも、私の記憶違いでなければ、そんな事は書いてなかったと思う。………記憶違いの可能性も否めないな………私、覚えるの苦手だし、興味無いことすぐに忘れるし………まぁそん時はそん時だ。


「まぁ、どうでもいっか。とりあえず、布と糸は欲しいな………服屋に行けば売ってるか………?それか手芸店………?」


型は要らないし作らない。何故かと問われれば、私は料理も裁縫も、基本的に手本を見ないからである。いや、1回目は見るのだ、1回目は。けど、2回目からは基本的に見ないのだ。そういうのは少し面倒だし、そもそも私はこういう作業のようなものは、頭ではなく身体で覚える性格たちだ。食事処や酒場の仕事も感覚で覚えているのが良い証拠である。故に、私は手本を見ない。手本となる型を作らない。


まぁ、普通に型を作るのが面倒ってのが1番なんだけど。


「手芸店だったっけ………まぁいい。レイカはフェイと待機しといて。流石にフェイを外に出せるような勇気は無い」


「はーい!フェイ、一緒に遊ぼ!」


「!、!」


レイカはともかく、フェイは順応し過ぎじゃね?










とりあえず、ミナには事情を話さず適当な事を言って昼営業の方を休ませてもらって、フェイの服は完成させた。作ったのは簡単なワンピースだ。上下で個別に作っても着せるのが面倒だったので、もうどうせならと袖を通すだけで終わりな服にしておいた。ちなみにフェイの下着は無い。だってそんなの作り方知らないから。だから適当に作ったズボンっぽいのを作って履かせている。胸の方はそもそもフェイはあってないようなレベルの大きさだが下着が無いと困るのは知っているので、一応包帯を小さくして着けさせている。


「フェイが可愛くなってる!」


「!!、!!」


「可愛い!ありがとお母さん!!」


「どいたまして」


適当に作っただけだから粗は普通にあるのだろうが、今の私にはこれが限界、というかこれ以上は面倒だから真面目にやりたくないというのが本音だ。それでもレイカがやりたいと言うのなら、私がお金を払うから適当な専門家にでも任せりゃいいと思う。人形の服だとか言えば作ってくれるやろ。知らんけど。


「!、!、!」


「お母さん!フェイがありがとうだって!」


「ん、気にすることないぞ。仕事サボれたしな」


厳密にはサボったのではなく休んだのだが、まぁ理由が理由なのでサボったと言っても過言ではないだろう。妖精の服を作る為に休むとか、元の世界でんな事言ったら冗談としてとられるか、精神科の受診をオススメされるだけだろう。それか、妖精=人形だと思われて、人形好きだと見られるかも………好意的解釈のし過ぎだな。普通に引かれて終わりだろう。


「お母さん!お母さんもフェイと一緒に遊びましょう!」


「私も?別にいいけど………」


「ついでにフェイにご飯を食べさせてあげて!」


「ご飯?」


まずフェイは何を食べるんだ?


「フェイは神聖属性の魔力を食べるみたいなの。だから、昨日の怪我も治ったんだよ?」


「なるほど?」


とりあえず、フェイが神聖属性の魔力を食べる事だけはわかった。怪我が治る理由は知らんが………まぁ、自然治癒力みたいなものだろう。うむ、そうしよう。


「とりあえず、フェイは私の手に触れてくれ」


私はそう言って、フェイに向かって右手を差し出した。


「?、!」


すると、フェイは私の言葉を理解したのか、それとも、理解していないがなんとなく適当にそうしたのかはわからないが、とりあえず私の右手に触れたのでヨシ。それから、私は殆ど使わないせいで扱い辛い神聖属性の魔力を右手付近に集めると、それをフェイに向けて流してみる。


昨日はあまりにも眠くて何にも考えず、つまりほぼ無意識的に使っていたが、普段から使わない属性の魔力なんてそう簡単に扱える訳がないだろう。例えるなら、利き手とは反対の手で文字を綺麗に書くようなものだろうか。使えない訳ではないが、非常に使いにくい、みたいな感じだ。確か、無意識下だと思考が真っ白になっているからイメージ力が極端に上がってるんだとかなんとか、どっかの本に書いてあったような気がする。


「!、!」


「お母さん!フェイが魔力美味しいってさ!」


「それならよかった」


なんだかよくわからんが私は褒められたらしい。まぁ、褒められたなら素直に喜んでおこう。どんな形であろうと喜ばれるのは心地良いからな。というか、神聖属性の魔力を食べる必要があるって、妖精って普段はどうやって生活してるんだろう。教会付近で神聖属性の魔力に集ってるのかな?街頭の光に群がる虫みたいな感じで。確か、教会近くって微弱な神聖属性の魔力が漂ってるらしいし。………だとしたら、何故フェイは下水道の出入り口の前に?下水道の出入り口なんて、教会から割と遠いのに。………まぁ、別にどうでもいいか。私そこまで関係ないし。


「それじゃ、3人で一緒に遊ぼ!」


「!!」


「まぁいいけど………何やんの?」


遊び、と言われても。最近本を読んでばっかり………というか、小学生高学年辺りからは既に本を読んでばっかりだからな………しかも、流石にフェイを連れて外に出られないから、大きく身体を動かすような遊びは出来ないし。室内遊戯って何があるんだろうか。


「午前中は、フェイと一緒に魔力で遊んでたよ!」


「魔力で遊んでた?」


どうやって遊ぶんだ。と思っていたら、レイカは右手から可視化した魔力を放出して、その魔力で1匹の鳥を形作っていた。


「こうやって、魔力で動物の形を作るの!」


この子………中々の高等技術で遊んでる………!


「フェイもできるんだよ!」


「!、!」


フェイは何かを呟く?と、レイカと同じように可視化した魔力を1匹──ではなく、10匹以上の鳥にした。何だその魔力操作能力と並行処理能力。すげぇ。


「お母さんもやろう?」


「まぁいいけど………それ、何気に高等技術なんだけどな………んー………ん?」


私もレイカやフェイと同じように、可視化した魔力を放出して、試しにと、部屋の天井ギリギリまでの樹木を魔力で作り出してみる。止まり木みたいな感じをイメージしてやってみたのだが………あんまり上手く無いな。木目が無くてのっぺりとしている。後、葉っぱの模様ものっぺりとしている。うむ、やはり私にこういう芸術的なのは向いてないな………


「うーん、なんか………のっぺりとしてるね?」


「?、!」


「んー………見本がないとこんなもんか」


私に芸術センスは欠片も無いので、見本は必要不可欠である。見本がないと絵も描けないのだ。


「でも、木があれば鳥さん達も休めるね!ありがとお母さん!」


「んー、ちょっと納得いかないから木を見に街の外行ってくる。レイカはフェイと待って………あーいや、別にやんなくてもいいか」


適当にスマホで四方から撮影すれば、いい感じのモデルになるだろう。近場、だと他の人がいる可能性があるな………いや、外でスマホ出したくないな。せめて、スマホを隠蔽する手段を得てからでないと………後、そろそろスマホの時間と現在時刻がズレてるのが面倒というか鬱陶しいというかなので、魔法でどうにかしたいな………うむ。やるしかないな。決まりだ。


「そうと決まればやるしかない」


「?何を?」


「勿論、新しい複合魔法だ」


「?、?」









その2週間後。私はやっと、スマホの時刻を正確にできるような複合魔法と、スマホを外でも使えるようにする為の複合魔法を作ることが出来たのであった。相当な時間がかかったのは、主に前者の方の複合魔法である。今回作成した複合魔法は二つ。二つともMICCミックと同じようにスマホアプリとして落とし込んでいる為、スマホが無ければ使えないが、その分自動で使えたりする魔法である。


一つ目の複合魔法の名前は『異世界時刻表示アップデート』。通称、四アップデートである。スマホに1日の流れを記憶し、その時の時刻をVRゲームとかホログラムのように視界の端の方(位置は自由に設定可能)に表示する魔法である。その構成上、その大部分が契約属性の魔法として構成されているのだが、その工程がかなり複雑な魔法となっているのだ。


なんせ、契約属性で空間属性の性質に対して条件付けを幾重にも使用することで、擬似的な時間属性の魔法を再現しているからである。言語化するなら、空間と時間が密接な関係にある事を利用し、契約属性によって性質の条件を絞って適切なモノに変えるだけだが、少なくとも私はスマホが無いと出来ないレベルの演算を要求されるのである。ちなみに、どんな本にも載って居なかったので、おそらく私のオリジナル属性だろうと思われる。名付けて『擬似時間属性』だ。今のところ、現在時刻を確認する程度の再現しか出来ていないが。


そう。私の第四アップデートは、この『擬似時間属性』を使う事で、スマホの時間を正確に表示できるようにしたのだ。これを考えるだけで10日近く経過してしまったくらいには、非常に複雑な構成をしている。ちなみに視界の端のホログラムのような映像は、光属性を利用して投影しているだけの簡単なモノである。勿論、光属性と契約属性によって強化や消費軽減を行なっているのはいつもの事である。更には、契約属性でホログラムと自分の視界を契約によって連結させる事で、私以外に見えないようにさせる事も可能としている。つまり、隠蔽の性質を持つ幻影属性すら模倣したのだ。私は天才なのかと思ったくらいである。



二つ目の複合魔法は『スマホ画面投影操作アップデート』通称、第五アップデートである。こちらは第四アップデートの技術を応用して作られた、私にしか認識できないホログラムのスマホ画面を空間自体に投影し、亜空間内のスマホを遠隔操作する魔法である。これさえあれば、街中でスマホを使ってもバレないのである。あまりにも画期的すぎて私の事を褒め称えたくなるな!


この魔法は光、契約、空間の複合魔法だ。光属性によって空間にスマホの現在の画面を投影し、空間属性と契約属性によって亜空間内のスマホと投影したホログラムのスマホの画面を連動・連結させて、スマホが亜空間内にあってもアプリを使用できるようになるのだ。しかも、私が使いたい時に頭の中で念じるだけで、基本的に空いている方の手元にスマホの画面がホログラムのようにパッと表示されるのだ。両手が空いてなければそこら辺の空中に投影されるのも便利な所である。


ちなみに、この魔法を使用している間、スマホ本体の充電は殆ど消費されない。が、MICCなどの魔法スマホアプリを使用すると、ちょびっとだけ充電が消費されてしまうので、こまめな充電は必須である。流石に充電を無くすような魔法は作れなかった。また、いつもの事ながら、契約属性と光属性によって効果を引き上げ、魔力消費を抑えている為、燃費はかなり良い魔法でもある。まぁ、日常的に使うのは目に見えているので、当然なのだが。


しかも、『擬似時間属性』を作成した時の複雑な条件付けの技術を利用して、これまで作成した全ての複合魔法の魔力消費を限りなく抑え、その効果をできる限り底上げするようにもしたのだ。私、ちょっと天才かもしれないぜ………まぁ、普通に構想はアニメとかラノベとか小説から貰ったんだけども。


「お母さん、この2週間で『擬似時間属性』なんて作ってたの?普通そういうのって、もっと時間が必要だと思うんだけどなぁ………ね、フェイもそう思うでしょ?」


「!、!」


「お母さん、フェイもそう思うってさ」


なんか、私の娘とそのペット?から色々と言われたんだが。………フェイはペットでいいのか?………まぁ、別にペットでもいいか。他に形容出来ないし。


「ね、お母さん。ちなみにだけど、今は何時?」


「今?」


私はレイカに質問されたので、第五アップデートを利用してスマホ画面を投影し、第四アップデートのおかげで正確な時刻が確認できるスマホの待機画面を見る。と、そこには3時81分という文字が。


「3時81分だって。合ってる?」


「外の時計とおんなじだから合ってると思うよ?」


そりゃよかった。これで間違ってたら最初からやり直しだからな。トライ&エラーがあらゆる研究の基本と言っても、流石に何度も何度もやりまくってたら心折れるからね。特に私なんか、精神的な忍耐力も無いし、精神的な持久力も無いから、大抵の事にすぐ飽きるし。集中すれば割と長続きするんだけど。


「あ、そうだ。フェイ、ちょっとこっちにおいで」


「?、?」


私がふわふわと浮遊しているフェイに手招きすると、フェイはその小さな首を傾げながらも私の右手の上に乗ってくれた。うむ、なんというか、愛でたくなるな。そこはかとなく小動物っぽい。フェイの方が普通の小動物の数万倍は可愛いけど。まぁ私、人型じゃ無いと可愛いって思えないからなぁ。4本足の動物を可愛いって思った事、多分今まで一度も無いし。人型で意思疎通出来る存在じゃないと可愛いって思えないんだよねぇ。その分、フェイは人型で、会話は出来ないけど意思疎通は出来るし、十分可愛いと思うんだよ私。


「ほれ、これ着けてみ?」


私がMICCミックの中から取り出したのは、妖精サイズの黒いリボンである。


「?、?」


「あ、フェイ、私が着けたげる。動かないでね?」


「!、!」


フェイはリボンを渡されて首を傾げていたが、レイカがフェイの髪をリボンで纏めてあげるようだった。いつの間に覚えたのか、レイカの綺麗な手捌きでフェイの髪がある程度まとめられた。ポニーテールというやつだろう。元々フェイの髪はフェイの腰に届くほどに長かったのだが、一つにまとめた事で随分と楽そうだ。私も背中の中腹あたりに髪が届いているのだが、未だに結んですらいない。でも、いざ髪を切ろうとすると、私と髪型を同じにしたいらしいミナが文句を言ってくるので放置している。別に髪の長さは気にならんしな。


「フェイ!似合ってるよ!」


「!、!!」


私がフェイに渡したリボンは、私が魔法道具店を経営しているリリーさんから前に教えてもらった、非常に簡素な魔法道具の一種である。本来魔法道具とは、媒体となる素材に記録属性によって魔法を記録というか刻む事で魔法の構築を行い、魔力を流す事で記録された魔法を自動で発動する魔法道具だ。勿論、高度な魔法道具には記録属性を使用する事が必須なのだが、今回の物程に簡素な魔法道具程度なら、別に記録属性の適性が無くても魔法道具として成立するのである。それが、素材で魔法を記録させる技術である。わかりやすく言えば、記録属性の魔法で素材に魔法を刻むのでは無く、素材を彫ったり削ったり加工したり手を加えたり、つまりは素材自体に魔法の構築に必要な回路のようなモノを作る事で、記録属性の代用を行うのがその技術なのだ。ちなみに『魔力回路』という技術である。今回はリボン。つまり、その原材料は糸や布だ。その糸や布を使って上手に魔法の回路の模様を作る事で、効果は弱いが魔法道具として完成するのである。


今回フェイに渡したリボンには、ほんの僅かだけ身体能力を上昇させる効果と、契約属性の効果を僅かに底上げする効果の二つが付与されている。前者はリリーさんに教えてもらったので試しにと、後者は私の得意な契約属性の効果を付与してみたいと思って色々図書館とかで調べて付けてみた効果である。まぁ、どちらの上昇率も本当に僅かも僅かなので、そこまでの変化は無いのだが。具体的には、50mを6.799秒で走るのと、50mを6.798秒で走るか、くらいの差だ。本当に誤差でしかない。勿論、魔法道具は沢山身に着ければ身に着けるだけその分の効果は増していくが、どれだけ高額な魔法道具だろうと、魔法道具同士の魔法が互いに干渉し合ってしまうと全ての魔法道具の効果が発揮されなくなってしまう危険性がある為、魔法道具は身に着けても精々が三つ四つくらいが限度らしい。まぁ、魔法道具同士の相性が良ければ10個以上着ける事も出来るらしいので、その基準も曖昧でそこまで目安になっていないが。ちなみに、私のスマホは分類的には魔法道具だが、魔法を情報として管理している為に他の魔法道具の魔法が干渉し合わないので、干渉を気にする心配が無い。そうなるとうちのスマホ君凄いね?


「フェイ、お母さんにお礼!ありがとって言うのよ?」


「?、!!」


「フェイがありがとうって!」


「どいたまして」


やはり、誰かから褒められるのは嬉しい事だ。別に自分から褒められに行こうとは思わないが、相手側から勝手に褒められる分には気分が良い。というか、さっきからちょくちょく思ってたんだけど、なんでレイカはフェイと意思疎通とれてるの?………まぁ、そこまで気にする事でも無いか。人生にはそういう事もあるだろう。………高校生の私が言うような事でも無いだろうが。


「フェイ、よかったね!」


「!、!」


フェイやレイカが喜んでくれるとこっちも嬉しいのでもっと喜んで欲しい。しかも、喜んでいるのがちっこくて(片方は小人サイズ)可愛い2人組だというのも素晴らしい。勿論ゴツい身体の人物が喜んでいても私は普通に嬉しいが、やはり子供達(片方は妖精)に喜ばれる方が嬉しいだろう。少なくとも私は嬉しい。なんというか、純粋に喜んでいるのがわかるのがいい。欺瞞や虚偽、嘘も偽りも何もない、純白の精神。そんな子供達に喜んでもらうからこそ、私も純粋に喜べるというものである。そこに嘘偽りの介入は存在しないのだからな。


まぁ、レイカは私の知識や記憶を持っている癖に、変なところで純粋だ。いや、違うな。なんというか………そう、『何も無い』のだと思う。例えるなら、レイカの身体という魂無き空の器に、私の知識と記憶を埋め込んで、すこーし付け足した魂で全体を補強しただけ………みたいな感じがする。いや、具体的にこうなってる!とかじゃ無くて、その雰囲気が、なんだけど。なんせ、昔………この場合はレイカを見つけた日だ。あの日から、レイカは私以上の成長を遂げている。あらゆる面で、私以上の成長をしている。そう思わざるを得ない。


そして、初期の頃のレイカは、私そのものだった。私と似たような、というかまんま一緒な行動ばかりして、性格も人格も記憶も、その全てが私──だったが、おそらく、今は違うだろう。自分なりの性格があり、自分という人格があり、自分だけの記憶がある。普通の子供のように知識を吸収し、学び、知る。その過程で『自分』を見つけている………そんな、感じがする。まぁ、全て感覚で、別にレイカに聞いた訳でも無いので、本当に合っているのかどうかは特に知らないが。


フェイ?妖精って感じかな(適当)。………………出会ってから2週間近く経っているとは言え、フェイは意思疎通が取れるだけで喋れないのだ。性格とかわかる訳ないだろう。


「ね、フェイ。そこでくるっと回ってみて?そう!ねぇお母さん!フェイ可愛いよ!」


「!、!」


「フェイもお母さんに見て欲しいって!」


なんか、レイカは意思疎通どころか普通にフェイと会話出来てるっぽいが。だからあんなに仲が良いのだろう。更に言えば、ここ2週間くらいはマリンちゃんの実家のお婆ちゃんの用事だとかなんとかでマリンちゃんが来ていないから、仲良くなる機会が多かったというのもあるだろう。確か、マリンちゃんのお婆ちゃんは昔に凄い魔法使いだったとかなんとか言っていたような覚えがある。宮廷魔導師とか言う、国に仕える魔法使いだとかなんとか言っていたような………その辺はあんまり覚えていないな。そこまでの興味が無かったし、そこまで覚える気も無かった。そもそも、確かあん時はレイカとマリンちゃんの会話を聞きながらベットに倒れ込んでただけだし………まぁいいか。私、マリンちゃんのお婆ちゃんと全く関係無いし。会った事もないし。


「………明日暇だし、ミゼル辺りに相談しに行くか」


フェイの事をな。………ついでに茶菓子と紅茶を貰いに行くけど。


あ、そうそう。妖精を普段見ない理由だけど、フェイの姿は他人に見せるか見せないかフェイ自身の意思で変えられるらしいよ。神聖属性持ちは見せない状態でも見えるそうだけどね!………私が見た事ない理由は、純粋に興味が無かっただけだと思うよ?

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