切実にガチャ運が欲しい…ガチャの神様とかいるのかな…


私が深夜テンションみたいなテンションで毒物を全て消去してから1週間。なんと、何故かは知らないが・・・・・・・・・、街中の病気の蔓延が止まったらしい。男性陣も着々と回復してきて、今では重症だった人以外は元に戻ったそうだ。重症の人も魔法で治るようなレベルらしく、後は平気、だそうだ。ちなみに、病気の原因、つまり感染源は、騎士団も冒険者ギルドもわからないそうだ。いやぁ、不思議なこともあるものですね?私がちょっと探しただけで100個もあったのになぁ。


………というか、私が回収した100個だけしかなかったのか………?残りとかあるんじゃないか………?


………まぁ、私的にはどうでもいい。残っていても、実際病人の数はかなり減ってきているし、何かあっても今後は騎士団や冒険者ギルドの男性陣も率先して動くだろう。誰かが言っていたが、『人が増えれば手数が増える。手数が増えれば手段が増える。手段が増えれば方法が増える。方法が増えれば選択肢が増える。』らしいし、多分後はなんとでもなるだろう。私のするべきことでは無い。


というか、今更私が毒を消しましたとか言っても、欠片も私がやったという証拠が無いので証明することができない。例え私が地面の奥に向かって物質転移アポートを使っているところを見られていても、ただの変人扱いされるだけだろう。そもそも、あの時期はわざわざ外にいる人なんて殆どいなかったし、見られている可能性すら薄い。きっとここで私が証言しても面倒事になるだけだ。だから、私が証言する必要性は無い。というかしたくない。わざわざ注目を浴びたくない。自分から面倒事に突っ込みたくない。


そもそも、今回あの毒塊を集めたのだって、純粋に気になっただけである。毒物が自分たちが普段生活している地面の下にあるとか、普通に気になるだろう。現代で言うなら、地雷原を歩いている気分と言えばわかるだろうか?それは嫌だろう。私も嫌だ。だから取り出して消去したのだ。だって、地面の下にあるとあると気になるし………視界の外にチラついて邪魔、みたいな感覚なのだ。………実際、かなりうざかったし………何回か攻撃魔法を地面に向けてブッパして消してやろうかと思ったよね。ハハハ。


「お母さんお母さん、ニヤついてるけどどうしたの?」


「ん?いや、ちょっと思い出し笑いをね。ははは」


「凄い棒読みだし、乾いた笑いだね!」


うるせぇやい。可愛い顔と仕草しやがってこんにゃろ。早く私の膝の上に座るのだ!頭を撫でてやろう!


「?なあに?」


私はレイカに対して手招きする。すると、レイカが私の両手を伸ばして届く範囲まで来たので、レイカの身体を掴み、私の膝の上に乗せる。


「うおっと、ちょっと、お母さん?」


そして、そのまま私は、手触りが非常に素晴らしいレイカの髪をゆっくりゆったりと撫で始める。撫で心地があり得ないくらい気持ちいいし、非常に素晴らしい。


「んー………んぅ………どうしたのさ、お母さん………あったかい………えへへ………」


グワーッ!!娘の可愛さが私の全身に刺さる!!娘の可愛さに殺されてしまうっ!!


「くっ………我が娘、強いっ………!」


「お、お母さん、突然どうしたの?私が強いって………」


「娘の可愛さにやられるっ………!」


「………………………あっそ」


なんか凄いどうでもいいみたいな声を出されたんだが。どうでもよくないんですけど?可愛い娘にやられてるんですけど?可愛さの暴力なんですけど?


「レイカは可愛いなぁ………」


「んぅ、褒められるのは好き………」


可愛い(確信)。


「あ、そうだお母さん。さっき、店長さんが外に出てくるって言ってたよ。大変だね」


「外?この土砂降りの中・・・・・・にか?」


私がレイカを膝に乗せながら窓越しに外を見ると、打ち付ける雨水のせいで何も見えなくなっている。それ程に強い雨が、この街中に降っているわけである。


この世界、というかこの辺りの地域は、基本的にポカポカとした気候である。体感的には春と夏の中間くらいだ。更に言えば、年がら年中同じような気候である。元の世界の日本のように、四季がしっかりと分けられていて、温度の変化が激しい地域では無いのである。毎日毎日どんな日であっても、基本的には暖かい気候であり、そして晴れている。稀に曇るが、基本的に天候は晴れである。が、年に数回だけ、この辺りの地域には雨が降る。しかも、バケツをひっくり返したかのような土砂降りが降るのである。台風とかではなく、純粋な雨で、だ。何気にこの世界の雨を直接見たのも、今日が初だったりする。それくらいに珍しい事柄なのだ。


そんな風に、この辺りの地域にはかなりの勢いとかなりの量の雨が降る。だが、この辺りの地域には傘なんて売ってはいない。雨具、つまりカッパくらいならあるが、それも気休め程度のものしかない。それは何故か?簡単な事だ。そんな事をしても無駄なのだ。どれだけ雨を防ごうとしようが、雨の勢いが強すぎて雨具は簡単に壊れ、雨の量が多すぎて雨具は気休めにもならない。故に、この世界に、というかこの辺りの地域には、傘などの雨具は殆ど無い。少なくとも私は一度しか見かけた事がない。需要が無い物をわざわざ売る意味もないのだから、仕方のない事なのだろうが。ちなみにだが、この辺りの地域の雨の日に外に出る場合、何かしらの魔法で全身が濡れないように工夫しないと、普通の雨具なら例え何を着ていようがなんだろうが、それすら貫通してびしょ濡れになってしまうらしい。それ程に雨が降るのだ。


勿論、そんな物凄い勢いの雨を防ぐ手段だって存在している。それこそ、雨避けの魔法道具である。確かリリーさんの魔法道具店にもいくつか置いてあった筈だ。いくつか種類があって、水属性の魔法を用いて水だけを吸収するだとか、風属性の魔法を用いて雨を全て弾くようにするだとか、炎属性の魔法を用いて触れそうになる雨全てを蒸発させるだとか、色々な種類があったのを覚えている。………ちなみに、雨避けの魔法道具の値段は、確か白金貨1枚、円換算で100万円くらいだったりする。私にはあまりにも高過ぎて買えないやつだ。


更に言えば、魔法道具に頼らずとも、各々が己の意思で新しい単一魔法、もしくは複合魔法を作り上げる事で、雨を防いだり凌いだりする事もあるだろう。私がするならこっちの方だ。なんせ、わざわざ魔法道具を買うより自分で作った方がどうしても安上がりだしな。


………こういう時、異世界転生とか異世界転移系の小説の主人公だと、自分でそういうの作ったりして、それで金儲けする人とか居そうだよね。こう、前世だとか前の世界の知識とかでさ。いや、私の場合はスマホあるし、調べようと思えば、相当変なのじゃなきゃ作り方くらい載ってそうだけど………ただこの世界、世界観は中世くらいなのに、マヨネーズとか簡単に作れる調味料は既にいくつもあるし、私のような一般人が簡単に手を出せて、尚且つお金を稼げるようなものって大抵あるんだよな………女性受けする美容品も割と充実してるらしい(ミナに聞いた)し、石鹸どころかシャンプーとリンスとボディーソープも普通に流通してるしなぁ。私が手を出せるような隙はないらしい。まぁ、そんな面倒な事する気もそこまで無いからいいんだけど。私は流通とかそういう商売関係の知識は無いからやり方も知らないし、そもそも何を売ろうにも物の適正価格とかも詳しく知らないし、何よりんな事をする必要が無い。別にお金には困っていないのだ。欲しいっちゃ欲しいけど、別に今すぐ欲しいわけでもない。


まぁ、今はそんな事よりソシャゲだソシャゲ。今私はこのソシャゲのピックアップガチャで欲しいキャラが居るのだ。しかも割と本気で。そのキャラの為、私は今日まで、ガチャに必要なモノを毎日コツコツと貯めていたのだ。クエストを地道に行い、今日という日のために貯めに貯めていた、私の地道な努力の結晶を!私のガチャ運と共に!喰らうがいい我がスマホよ!全て持っていくがいい!!100連だぁ!!まずは10連からいけー!!


おっおっお?………おぉ?ま、まぁ?最初の10連は参加費みたいなとこあるし?目当ての星5はいないし星4もいないけど別に良いし?次あるし?さぁ次!20連目!次こそ来い…!………まぁ別に?20連目に来ないのも当たり前って感じするし?むしろこれからって言うかね?さぁ次だ行けっ!!







………結局、目当てのキャラは出なかった。







2日後、私は未だにガチャで欲しいキャラを引けなかった事を引き摺りつつも、それ以上に私のガチャ運の無さを呪っていた。追加で私に内蔵されていると思われる物欲センサーという悪しき機能の事も呪っていた。また、このような不運(ピックアップのキャラクターが出ない不具合、とも言う)をどうにかするために幸運の女神様に神頼みをしてみたが、性別神の時のようなわかりやすい反応が無かったので、今回の事を神頼みの方向でどうにかするのは止めることにした。いやまぁ、最初からそこまで信用も信頼もしてないけども。そも、私はそこまで神頼みをちゃんとした訳でもないし。適当に祈ってみただけだし。むしろ適当に祈ってみて加護なんて貰えた性別神の時のケースが稀だったんだよなぁ………


まぁ、そんな叶うはずもない事はどうでもいい。欲しいキャラが出なくて少し、でもなく普通に未練タラタラだが………まぁ、別にゲームのキャラが出ないと私が死ぬわけじゃないし?別に?別にそこまで気にしていませんが?………うぅ………全力で愛でたかったのに………!!私ができる全力を持って愛でて愛でて愛でて愛でまくるのに………!!!!!!うがー!!!!あ゛ー!!!!くそー!!!!………………………正直、まだまだ未練はタラタラだけど、ずっとこの状態でいる訳にもいかんしな。切り替えて行こう。ピックアップはきっとまたあるから………正月とか年末とかに何か配布とかあるかもだから………まだ希望はあるから………


………うし、そろそろ本当に切り替えよう。このまま未練タラタラだと普通に疲れるし。


「ん、ミナ」


「ねぇアオイ、少し聞いてもいいかしら?」


私が気持ちを切り替えた直後に、ミナが普段通りにノックも無しに私の部屋の中に入ってきた。ちなみに今、レイカは下の階でマリンちゃんと何かの絵を描いてるそうだ。何を描いてるのかは教えてくれなかった。まぁ別に気にならないからいいけども。


「聞く、と言われても。何を?」


至極当然な疑問を口に出しておく。私が何かをやらかした覚えは無いので、多分普通の質問なのだろうけど。


「アオイの彼氏さんのことよ」


「???????」


かれ、し?


「貴女、この数ヶ月で1回も生理、来てないでしょ?妊娠してるんじゃないかしら?」


「???????」


にん、しん?


「だから、貴女の彼氏さんに言っておいた方がいいんじゃないかしら」


「???????」


かれし?にんしん?


「貴女の彼氏さんが誰かは全く知らないけど、子供が出来るってなったら色々と準備だとか必要になるし、それに貴女も仕事を休まないといけないし………」


「???????」


こども?こど、も?


「………………………ごめん。何の話?」


「?だから、貴女の妊娠の話よ、貴女の。この数ヶ月、1回も生理来てないでしょ?当て布とか洗った覚えも、下着に血が付いてた時も無いし。だから妊娠してるんじゃない?って」


………………あっ、そっか。普通、女性って月経来るんだっけ。………私、1回も来たことないな………む?神様に貰った知識の中に、生理とか月経についての知識が無い………?


「………あーっと………えー………」


………さて、どうやって訂正しようかな。今回ばかりは理論的な正論ぶつける事ができないから………まぁ、頭使うの面倒だし、本当の事を言うしかないな。


「………ミナ。私は妊娠なんてしてないぞ」


「でも、数ヶ月生理は来てないでしょ?」


「元からだ。元から。元から無い」


別に嘘はついていない。私は元々というか今でも『男』だ。勿論ながら、生理や月経はやってくるような身体では無い。それは女性の身体特有の生理現象だからである。だから、全く嘘はついてはいない。


「………どういう事?」


「さぁ?知らん。元々そういう体質なのかもな」


これは私が適当言ってるだけだが、そこまで間違っている訳でも無さそうなんだよな。だって、この身体は女神様から賜った加護で手に入れた、言わば私に後付けされた身体だ。それなら、この身体が壊れている、という事は決してあり得ないだろう。もし壊れていたら、私は今度女神様と会った時に正面からクレームを入れるし。


「………魔力代用体質、だっけ?」


「?何それ?」


「えー、っと………確か、生理とか月経とか、本来女性に必要な機能が、魔力で代用される女性、だったような………?ご、ごめんなさい………流石に詳しくないわ………」


魔力代用体質。うむ、普通に初耳でびっくりだ。今度適当に図書館で調べてくるとしよう。


「まぁ、多分そんなやつだと思う。今度調べとくよ」


「………本当に、妊娠とかしてないのね?」


「してないしてない。してるように見えるの?というか既に娘は居るし………2人も養えないし、そもそもちっこい頃から育てるのは私には無理」


ちなみに娘とは、レイカ、つまり麗華の事である。


「………まぁ、そういう事なら………でも、何かあったらすぐに言いなさいよ?隠してないで。それもその時すぐに。わかった?」


「まぁ、善処する」


善処はしてやろう。確約はしないがな!


「………まぁ、これで用事は終わりだから………それじゃね」


「へいへい、おーけー」


ミナが部屋から出て行った。………うむ、暇になったな………気分転換になったし、ソシャゲの続きしよ。またガチャ用の石を貯めに貯めて、今度こそ、次のピックアップでは!愛しのあの子をゲットするのだ!ふーっはっはっはっはっは!!!!









3日後、私はどうにか私のガチャ運を上げる為、リリーさんの魔法道具店に行ったりしていた。なんか、運を底上げする魔法道具とかないかなって思って。無かったけど。ついでに図書館に寄って、契約したら幸運になる悪魔とか、運勢が上がるスキルとか、称号だとかも図書館に寄って探したりもした。私が取れるようなモノは何も無かったし、そんな悪魔居なかったけど。更には冒険者ギルドにも寄って、ミゼルに幸運になるような道具とか称号とかを探してみたりした。何も収穫は無かったけど。後、その後に街中を巡って、こう、幸運の壺的なやつを探してみたりした。何にも無かったけど。


………後で知ったが、この世界にそういうオカルト的なモノはほとんど無いらしい。なんせ、私の元の世界なら奇跡とも呼べる、当たり前の神秘である魔法が日常的に使われているほどにあるので、誰もそんなモノを信じないのだ。そもそもの話、魔法の中には運勢を上げる魔法がある。そして、そういう魔法は生物に対しては使えるが、物質に対しては決して使えないのだ。だから、そういう道具や家具は無い。そして、運勢や幸運に関する魔法やスキル、実績などは、その99%近くが先天的に覚えたり、特殊も特殊な複合魔法の一種だったりするらしい。そして、後から手に入る残りの1%は、英雄や勇者などの、まさしく歴史に残るような大英雄が手に入れる〈英雄〉の称号の中に、ほんの少し幸運になるスキルがあるレベルの話らしい。………うん、そんなの私には無理。


ちなみに、私が運勢を上げるようなモノを探していた理由だが、効果のあるなしは関係無く、私の気分的に運勢が上がらねーかなって思ってだ。………ついでに、私の物欲センサーが壊れるような道具とか称号とか、ないかなーって思ってたりもする。そうしたら、私のガチャ運とか関係無しに欲しいキャラ出てきてくれそうだし………いや、別に出てきてくれなくても死ぬわけじゃないからいいんだけど………でも欲しいキャラには出てきて欲しいし………


「………あー………お腹空いた………疲れたぁ………」


そんな私は今、今日一日街中を巡ったせいで疲れ果て、ベットの上でいつもの何十倍も気を抜いていた。なんせ、街中を巡って帰ってきて、すぐに仕事だったのだ。謎の感染病が5日前に完全に収まったとは言っても、やはりそれまで休んでいた分の仕事が溜まっているので客足は以前と比べで半分くらいだが、それでも半分くらいの仕事はあるのだ。私はただでさえ元々の体力が少ないのだ。具体的には、高校で行っていた持久走の3kmを走り切る頃には死にそうな顔になっているレベルである。最近は仕事もしているのでそこそこの体力は付いてきているが、それでも元の世界にいる本職のスポーツ選手とかと比べれば霞みたいなモノだと思う。いや、ゴミ以下かな。というか、そもそも他人の体力を測った事とか無いし、他人の体力の比較とかできねぇ。


まぁそもそも、自分と他人の体力の測り方も、自分と他人との体力の比較の仕方も知らないのだが。持久走は脚の体力だし、ダンベルとかは腕の体力だし………一応水泳なら全身運動だし、体力を測れるだろうか?いやでも、そもそも運動で使う体力と仕事で使う体力は方向性が違うから………魔力量みたいに数値で簡単にわかればいいんだけどなぁ。この世界、深淵属性で魔力量を数値化したり、称号が確認できたり、ユニークスキルを確認できたりする癖に、ゲームのステータスのような、筋力だとか耐久だとか俊敏のステータスは数値化されないんだよなぁ………自分に関するステータスの数値化するって感じのユニークスキルならあるらしいけど………私はそんなの持ってないし。私のユニークスキルは性転換だし。別に性転換のユニークスキル自体に文句は無いけど。


でもさ、ユニークスキルが自由に手に入るなら欲しいよね………具体的には五つくらい。だってさ、色んなチートスキル欲しいよね………異世界で生きるのが楽そうになるやつとか………欲しくない………?


「もう………ゴールしても寝ても………いいよね………?」


そうやって頭の中で色々と考えていると、少しずつ少しずつ、微睡の中に落ちていく感覚が頭の中に広がっていく。既に時刻は真夜中。眠くないはずがない。


「お母さん、眠そうだけどちょっといい………?」


「あぁ………?」


寝ようと思ったら、レイカが身体を揺らしてきた。なんだ。私は非常に眠いのだが。適当に部屋の灯りを付け、寝たいという欲を抑えてレイカを見る。


「別にいいけど………何?」


「えっと、実は………その、外で見つけちゃって………お母さんが眠いのはわかるんだけど、えっと、一応許可を………」


そう言ってレイカが見せてきたのは、人型の存在だった。レイカの手の中に収まるくらい小さな、人型の存在だった。小人、と呼んでもいいくらい、小さな人間がそこに居た。背中から4枚の羽が生えているが、その全ての羽が半ばから無くなっている。多分、羽が引き千切られている。


「妖精………?」


それは、妖精と言われる存在だった。決して人の前に姿を表さず、僅かな悪戯の代わりに些細な幸運を運んできてくれる、という存在だった筈である。本で見た。


「うん………えっと、お母さんが街中を回ってた時、変な魔力の感じがあって見てみたら、下水道の入り口の前を通って………それでそこを見たら、この子が倒れてて………えっと、どうすればいいのか、わからなくて………お母さんの知識の中にも、こんな状況の対処の仕方も無くって………だから、その………」


「………そりゃあ、私の知識の中に妖精を助ける方法は無いだろ………」


こういう話を聞いていると、やはり、レイカは私の知識を持っているのがわかる。が、その応用が全く出来ていない。レイカは知識を活用するのは得意だが、その応用が出来ていない。応用のやり方を知らないのだろう。


「………まぁ、わかった。とりあえず、試してみようか」


私はMICCミックの中から、以前、リリーさんの魔法道具店で購入した中傷治療ヒールの魔術符を取り出して使ってみる………が、効果はなし。次は継続治療キープヒールを取り出して使ってみるが、やはり効果は無し。確かに小さな怪我は治っているのだが、肝心の羽部分が欠片も治っていない。むぅ、これ以上の効力を持つ魔術符は無いのだが。どうするべきか………確か、妖精についての記述を、前スマホに書いた記憶があるのだが………そうだ、妖精って確か、神聖属性の魔力を好むんだっけ?


神聖属性とは、属性の中でも珍しい条件属性の属性である。ちなみに条件属性とは、何かしらの条件を満たさない限り使えない、特殊属性よりも珍しい属性である。例えば、男性のみが使える日属性、女性のみが使える月属性、星に詳しい者だけが使える星属性などが、有名な条件属性である。そして、条件属性を知る上で知っておかねばならないのは、条件属性を複合魔法の属性に加えられない、という事だろう。日も、月も、星も、特定の性質を持たないのだ。それ故に、複合魔法の属性に加えることができない………具体的には、条件属性の魔力はあまりにも複数の性質を持ち、その他の属性では可能であるような、性質を単一に絞るという事が出来ない為、加えられないのである。つまり、どうしても魔法が非常に不安定になってしまうのだ。


そして、そんな条件属性の中に含まれる、特に稀有な属性こそが、神聖属性である。何故ならば、神聖属性を扱う為に必要な条件が、『神から加護を賜る』というモノだからである。加護を持つ人間は一つの街に10人いればいい、というレベルで珍しいモノなので、使い手の母数が最初から少なく、そもそも神聖属性に手を出す人物も少ないのが現状、らしい。そもそも、神から加護を賜るのと、神聖属性の魔力を操作する能力は別である。つまり、神から加護を賜っていても、神聖属性が十全に扱えると言われれば、そうではないのだ。ただ、使えるだけで。


………うん。私ならバッチリ使えるね。【性別神の加護】なんて称号あるね。神聖属性の魔力、バッチリ使えるね。って事で、神聖属性の魔力を妖精に流してみよう。神聖属性の魔力を好むなら、神聖属性の魔力を食べたりするかもしれないし。


「………お?」


そうして、私が妖精に神聖属性の魔力を流してみると、妖精の身体が光り輝き、千切られていた羽が元通りになっていく。なんと、治療は成功したようだ。適当にやってみただけなのに成功するなんて………もしかして、私は天才なのでは?


「す、凄い!凄いよお母さん!ありがと!お母さん大好き!ありがと!」


「そうだろうそうだろう。もっと褒め称えるといい」


「大好き!凄い!ありがと!」


「うむ、愛い奴め。頭を撫でさせろ」


やはり、誰かに褒められるというのは気分が良い。クッソ眠くて頭がうまく回らないけど、とりあえずもう私寝て良いよね?


「レイカ、ちゃんと面倒みるんじゃぞ。私はもうお眠なのでな、寝ることにするぞい」


「うん!うん!わかった!ありがとね、お母さん!大好き!」


「うむうむ、静かにの」


そして、私は非常に嬉しそうなレイカの声を聞きながら、安らかな微睡の中に落ちて、そして、眠りにつくのだった。

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