筋肉ってすげぇよな、なんだって解決してくれんだもん
アクが空から探してくれたことにより、魔法道具の店は比較的簡単に見つかったので、私はあの後すぐに魔法道具の店まで来る事ができていた。やっぱり、こういう時こそアクが役に立つってもんよ。バティンは完全に戦闘向きだけど、アクは現地調査的な情報収集ならかなり強い。バティンの見た目じゃ普通に魔物扱いされるだろうし………まぁとにかく、アクが便利なのには変わりないので、多分これからもアクとは一緒にいることになるだろう。索敵に探査、調査と、そういう役目なら簡単にこなしてくれるからアクの事好きだよほんと。ま、戦いになると流石に駄目だけどね。私と同じでクソ弱いし。
「と、着いた。ここか、魔法道具店」
店の看板にも『魔法道具店 アトリエリリー』って書いてあるし、多分合ってる筈!むしろ、この名前で魔法道具の店じゃ無かったらびっくりだよ?バッチリと魔法道具店って書いてあるし………ま、私の見間違いとか、私がわざわざ幻覚を見せられてるとかじゃない限り、大丈夫でしょ。失礼しまーす。
「おー」
私がカランカランとそのお店の扉を開けると、中には私の見覚えがあるような魔法道具から、見たことも聞いたこともないような魔法道具が、とても綺麗に飾られている店内が、そこにはあった。前の世界とは違ってお店を外からわざわざ確認できるようなガラス張りではないので、やっぱりこうやってお店に入らないと確認できないから、いつも入るまで少し心配になるんだよねぇ。
「あらぁん、お客さんかしらぁ?」
──そして、そこに居たのは、私が予想していた店員さんの斜め上どころか、次元の違う店員さんが、そこにはいた。隆起した筋肉、がっしりとした体格、ゴツゴツとした骨格………まるで、ボディビルダーの選手のような姿の人物が、フリフリの可愛らしいワンピースのような服を着て、口調はまさかの女性口調。なんとも、私の視界情報がバクったのかと思うくらい凄い人が店員をしていた。
「あー、まぁ、そうですね」
ただまぁ、私は内心で驚いただけで、別に顔には出ていない………筈だ。そも、どんな人が店員だろうが、ちゃんと買えればそれでいい。いやまぁ、あんな物凄くキャラの濃い人は元の世界じゃテレビで見たことあるから、そこまで驚きはないしね。いや、リアルに見るのは流石に初だけどさ?
「あらぁん、そうなのぉ?それにしても可愛らしい子ねぇん。私の名前はリリーよぉん?よろしくねぇん?」
「あー、私はアオイです。よろしくお願いします」
「それでぇ?どんな魔法道具を買いにきたのかしらぁん?」
「あーっと、こう、魔法の威力を下げる魔法道具とか、無いですか?それか、魔力効率を下げる魔法道具とか」
「威力を下げるぅ?どういうことかしらぁん?」
「えっと、私、攻撃系の魔法の威力が、どうしても過剰になってしまうみたいで………人とか、生物相手に、過剰な怪我をさせないように使えないってのは、まぁ、使い勝手が悪いなぁと思いまして。だから、魔法道具にそういう、使用者の魔法の威力を下げるやつとか、無いですか?無くても、そういう話を聞いたこととかはありませんか?」
「うぅん………残念だけどぉ、そんな使う人が限られるような魔法道具は置いてないわねぇん………聞いたこともないしぃ………」
「あー、やっぱりですか」
「もしその魔法道具をオーダーメイドで作るとしてもぉ、まずは材料集めからだからぁん………軽く金貨50枚くらいはしちゃうしぃ………そもそも作れるかわからないわねぇん」
たっけぇ!私が今持ってる所持金の倍くらいある!
「なるほど………流石に買えませんね」
「ごめんなさいねぇん?」
「あぁいえ、別にいいんです。あるかなーって淡い期待だったので。私としてはまあ、十中八九無いと思ってましたし。むしろ、教えてくださってありがとうございます、リリーさん」
「あらぁん!アオイちゃんはとっても良い子ねぇ!」
えへへ、良い子だってさ。褒められるのは素直に嬉しいや。リリーさん、ぱっと見だけならキャラの濃いやばい人っぽいけど、性格は割と良い人そうだし、褒められると素直に嬉しいのには変わりないし………うん、やっぱり人間は外見だけじゃないよな。例え、今の私の姿は女でも、私はちゃんと男だしね。きっと、リリーさんも私とはちょっと違うけど、私と似たような感じなんだろう。うむ、そう思うと途端に親近感が湧いてきたな。
「えへへ」
「あぁんもう!アオイちゃんはとっても可愛いわねぇん!」
おっと、嬉しくてついつい思ってた事を言ってしまったみたいだ。ちょっと恥ずかしい。
「あ、えっと、それじゃあ、私の代わりに魔法を使ってくれるような魔法道具とか、無いですか?こう、一定の威力で」
「それならあるわねぇん」
お、代替案をと思って言ってみたら、そういう魔法道具があるみたいだ。私が使えないなら魔法道具に使って貰えば良いんじゃね?って事で言ってみたけど………とりあえず言ってみるもんだなぁ。
「どんなのですか?」
「すこーし待っててねぇん?」
そのままリリーさんは店の裏に行ってしまったようなので、私はその場に立って待つ。その数分後、リリーさんが大きな、多分私じゃ持ち上げられないくらい大きな木箱と一緒に帰ってきた。
「これならぁん、アオイちゃんの要望にお応えできそうよぉん?」
「これは?」
リリーさんが床に置いた木箱の中に入ってあるのは、沢山のお札のようなものだ。リリーさんに触っていいか許可を取ると、魔力を決してお札に対して使わなければ触れてみてもいいと言われたので、手に魔力が集まらないようにして少し触ってみる。手触りは紙っぽいけど、なんとなくだが、純粋な紙でも無さそうだ。
「それはねぇ、魔術符って名前の魔法道具なのよぉ。事前にそのお札に魔法を込めてぇ、使う時に魔力を流すとぉ、込めた使い捨ての魔法が使えるって代物よぉん?買う人が殆どいなくて倉庫に置きっぱなしになってたのよぉ。捨てずにとっておいてよかったわぁん」
魔術符って言うんだ、これ。魔力を込めれば魔法が使えるのはかなり便利だな。自分の適性の無い魔法だって使えるなら、かなり重宝しそうだけど………
「えっと、これって自分の適性以外の属性の魔法の魔術符も使えるんですか?」
「使えるわよぉん。けどぉ、そこまでおすすめはしないわねぇん」
「その理由って何です?」
「それはねぇん?適性以外の属性の魔法を使うのに2倍くらいの魔力が必要になっちゃうのよぉん。適性以外の属性に魔力が変質し慣れてないからぁん、なっちゃうらしいわよぉ?」
ふむ、だとしても、一応適性属性以外の魔法も使えなくは無いのか。まぁ、一切使えないわけじゃないならそれでいい。別に今から誰かと戦うわけでも無いしね。
「教えてくださってありがとうございます。早速ですけど、ここにある魔術符にはどんな種類がありますか?」
「そういうと思ってリストをもってきてるわよぉん。はぁい、どうぞぉ」
そう言われてリリーさんにリストの紙を手渡されたので、一通り内容を確認しておく。
──────────────────────────
【魔術符在庫一覧】
『基本属性 銅貨1枚』
『特殊属性 銀貨1枚』
──────────────────────────
うわ、種類めっちゃあるじゃん。しかも割とお手頃価格。私のこれまでのお給料でも沢山買えるぞこれ。
「まぁ、あんまり買う人もいないからぁ、最近は殆ど入荷してなくてぇ、あんまり在庫も種類もなかったけどねぇん」
「そうなんですか?結構種類はあると思いますけど………」
「前はいっぱいあったのよぉ?難しい魔法の魔術符とかぁ、いっぱいあったのよぉ。けどぉ、そういうのはすぐに売れちゃうのよぉん。だからぁ、今ここに残ってるのはぁ、売れ残っちゃったそこまで難しくもないものばっかりなのねぇん」
「ふむ………なるほど」
売れ残りなのにこんなあるのか、魔術符。まぁ、そこまで難しくもない魔法なら自分で覚えて方が安上がりだろうしなぁ………
「適性属性の魔法でもぉ、普通に魔法を使うより余分に魔力を使っちゃうからぁ、ここ2、3年くらいで魔術符の流行も廃れちゃったみたいなのねぇん。本格的に戦う人達にはあんまり合わなかったみたいなのよぉ」
「まぁ、そんなもんですよねぇ………」
魔法を使うのに普通より少し多い魔力を必要とする一回きりの魔術符より、普通に魔法を自力で使える人を雇ってパーティーの1人として魔法を使ってもらった方が安上がりなんだろう。本格的に戦う人は沢山戦うんだろうし、使う度にお金がかかるものは流石に使えないか。魔術符は使い切りで複数回使うような使い回しもできないみたいだし、有り体に言えばコスパが悪いんだろう。私の場合は別に本格的に戦う訳ではなく、単純にいざという時に使う魔法の威力を下げたいだけなので、常日頃から使う訳ではないから買っても損にはならないだろう。そんくらいなら使い切りで十分だろうし、そもそもが使うためではなくて念の為だしな。
「とりあえず………何買おっかな………」
私の所持金は、現在金貨だけなら26枚。この3ヶ月間、お金は必要最低限以外殆ど使ってこなかったので、かなり有り余っている。えーっと………うーんと………んー………?
「あー、あの、少し机を借りていいですか?計算したくて………」
「それくらい断らなくてもいいのよぉ?はい、どうぞぉ」
「あ、ありがとうございます」
リリーさんに了承してもらってから、私は
「んーと………」
とりあえず、私自身が魔法で使える、
となると………残った魔術符を全部10枚くらい買っておこかな。特に、
──なんて色々と考え込んだ結果、私が買ったのはこれらだ。
──────────────────────────
──────────────────────────
計、銀貨6枚と小銀貨3枚と銅貨2枚となった。銅貨10枚は小銀貨1枚、小銀貨10枚は銀貨1枚になるので、計算は間違っちゃいないはずだ。銅貨が500円だとかの円換算は私が勝手に頭を使わずに適当に当て嵌めているだけで正確とは限らないので、こうやってわっかりやすい矛盾が起こるのだ。別に私しか使ってないので別にどうでもいいけど。
「ひい、ふう、みい………うん、ちゃあんとお題はきっかりねぇん。それにしてもアオイちゃん、そんなに買ってもよかったのかしらぁん?宿代とか生活費だってあるでしょ?」
「あぁいえ、私今、住み込みで働いてて。だから生活費は無いんですよね。だからこんなにお金があるんですけど」
「あらぁ、どこで働いてるのかしらぁ?」
「えーっと、宿屋の『バードン』って所ですね。お昼の食事処と夜の酒場なら働いてますよ」
「あらぁ!あそこのお店で働いてたのねぇん?」
「知ってるんです?」
「知ってるわよぉ!あそこの店長さんはよくここに来るのよぉ?宿のサービスを増やしたいってねぇん」
「そうなんですか?初耳でした」
「そうねぇ、今度アオイちゃんが働いてるとこ見にいこうかしらぁん。その服ってあの宿屋の制服よねぇ?その姿で働いてるアオイちゃん、見たいわぁ………!」
「あはは、お待ちしてますね。まぁ、基本的に給仕してるだけですけどね」
そんなこんなでリリーさんとの会話を終えて、私は
「アオイちゃーん!」
その2日後、私が夜営業でせっせと働いたり、相談スペースで色んな相談を適当に聞いたりなんなりしていると、リリーさんが酒場に来てくれていたらしく、私に挨拶をしてくれたみたいだった。
「へぶっ」
「あぁんもう!可愛いわねぇん!」
挨拶をした勢いで私のことをハグしてきてくれたのだが、私とリリーさんでは体格差がありすぎて、私の顔がリリーさんの胸の筋肉に埋もれてしまった。私の脂肪がない代わりに筋肉もない運動不足なふにゃふにゃな身体とは段違いで、まるで筋肉が鋼のようにカチカチだ。勿論比喩なので、そこまで硬くはないが………なんというか、男として負けている気がするというか、普通に負けてる気がする。これじゃ、肉体面では惨敗どころか蹂躙されている。くそぅ。私もそういう筋肉欲しいなぁ………割と切実に。
「あはは、リリーさん、来てくれたんですね。ありがとうございます」
「あぁん、敬語じゃなくてぇ、私も他のお客さんみたいにタメ口でもいいのよぉん?」
「これは癖みたいなものなので、そこまで気にしなくてもいいんですけど………まぁ、なんとか、頑張ってみます」
「ほんとぉに、アオイちゃんは可愛いわねぇん」
可愛いって真っ正面から言われるのは恥ずかしいのでやめてくれないですかリリーさん。後リリーさん、私中身は歴とした男です。なのでせめてカッコいいでお願いしますリリーさん。私男なので。大事な事なので心の中で二回言いました。流石の私も直で言ったりはしません。
「とりあえず、空いている席にどうぞ。今日は私が注文を受けますから」
「あらぁん、今日だけかしらぁ?」
「勿論、リリーさんにならいくらでもやりますよ。色々と良くしてくれましたし」
「んもう!可愛いわねぇ!」
リリーさんは私に魔術符を売ってくれた。けど、私なら、多分それくらいの事ならリリーさんの事を普通に扱うだろう。あの時の人だってくらいで、多分、今後の事はそこまで考えたりしていないはずだ。私ならそうしている。けど、リリーさんは私に対して、何も考えていない人ならわからないくらい、とても小さな気遣いをいくつもしてくれた。私だってそれくらいわかる。というか、初めて行った店で、私があそこまで気楽に、しかも特に緊張もせずに買い物できたというのは、今までは殆ど無かったことだ。普段は少なからず緊張してしまう。
けど、リリーさんの店ではそんなこと一切なかった。きっと、リリーさんがお店の中でずっと小さな気遣いをしてくれたから、私は全く緊張せずに買い物ができた。こんなにお客さんをしっかり観察して、しかも気遣いのできる人を、どうして雑に扱えようか。私には無理だ。私は基本的に、どんな人にも初対面なら敬語だ。けどそれは、ただの癖である。そっから仲良くなれば、敬語は取れ、どんな人でもタメ口で話すことはできる。けど、そんな私が、仲良くなってからも敬語を付ける人が、世界には何人かいる。
それは、私が尊敬している相手だ。年上だろうが年下だろうが、私が心の底から尊敬している相手なら、私はちゃんと敬語になる。敬うべき相手に敬語を使わずに、私は一体誰に本当の敬語を使うというのだろうか。立場や年齢ではなく、その人一人一人を尊敬している相手にだけ、私は心の底からの敬語を使う。リリーさんはその1人だ。無論、尊敬している相手がタメ口を要求してきたら、まぁ、頑張ってみるけれど………まぁ、出来る限りやってみるけど、多分無理だ。なので、私は多分、リリーさんにタメ口は無理だと思う。………ま、いつかやるよ、いつか。
「リリーさん、何かご注文があったら言ってくださいね。私サボってますから」
私はリリーさんの座った机の反対側の椅子を引き、そこにまるで当たり前とでも言うように座り込む。
「あらぁん、サボっちゃうのぉ?」
「ええ、サボっちゃいます。リリーさんとお話する為にサボっちゃいます」
「んもう!本当に可愛いんだからぁん!」
そんなに私は可愛いのか?どこら辺が?そもそも可愛いじゃなくてカッコいいって言ってほしいんだけど………まぁ、それ言ったら多分バレるだろうし、別にいいや。他人にどう思われようが、私は私だし。いやまぁ、可愛いって一応褒め言葉だから、そこそこ嬉しくはあるんだけどさ………ちょっと、複雑だよね。褒め言葉だから嬉しいけど、私は男なのでカッコいいと言って欲しいのだけれど………まぁいいや、ゆったりしてよーっと。
「それじゃあねぇ………とりあえずぅ、ビールを2本注文しようかしらぁん」
「はーい、ビール2本ですね。ちょっと待っててくださいねー」
私が数分くらい席に座ってゆったりしていると、リリーさんの注文が入ったので、私は席を立ち上がってビールを取りに向かう。にしても、リリーさんもお酒は飲むんだなぁ。あれが大人ってやつか………ま、どうでもいいか。そうだ、ついでに私の飲む牛乳も一緒に取りに行くとしよう。私の担当してる相談スペースの人は今のところいないっぽいし、注文のピークは過ぎてるし………うむ、私がサボっててもミナ1人で十分対処できるな?よし、堂々とサボってやろう。
「リリーさん、はいどうぞ」
「あらぁん、アオイちゃんありがとうねぇん」
「まぁ、お仕事ですしね。仕事じゃなくてもリリーさんにならこれくらいしますけど」
「んもぅ、本当にアオイちゃんは可愛いんだからぁん」
うーん、もしかして私、さっきからリリーさんに可愛いしか言われてないな?いやまぁ、いいんですけどね?ですけど、私も歴とした男なんですよリリーさん。ですから、やはりこうやって公衆の面前で可愛い連呼されるのは、ちょっとどころか割と恥ずかしいんですが。まぁ多分、顔が妙に熱かったりはしませんから、多分顔が赤くなったりはしてないでしょうけど。多分耳くらいなら赤くなってますよ?………こう思うと褒め倒すのって会話のデッキとしてめっちゃ強くね?ちょっとくらいナーフしようよ
いや、だってさ、私の尊敬しているような人から褒め倒されるのやばいんだが?例え私の想定していた褒め方じゃなくても私が褒められてるのには変わりないんですよ?あーやべそう考えると更に恥ずかしくなってくるじゃん顔熱い!あーやべやべ牛乳飲んで落ち着こう………ビークールビークール。………ビークールってどんな綴りだっけ?Be coolだっけ?そもそもどんな意味だったっけ?やべぇ私の記憶が忘却の彼方なんだけどやべぇ。
「あっらぁん、顔真っ赤にしちゃってぇ………可愛いって言われて慣れてないのかしらぁん?」
「えっ?ええっと、まぁ、はい、そうですね。普段可愛いって言われ慣れてなくて。目指してるのはどっちかというとカッコいいとかそっちの方なので」
私そんな顔真っ赤?恥ずかしいよ?恥ずかしいっすよ?
「あらぁ、アオイちゃんはカッコよくなりたいのかしらぁん?」
「ええ、まぁ………カッコいい方がいいです。………どうですか?私、カッコいいですかね?」
「勿論よぉ!アオイちゃんはカッコよくて可愛いわぁん!」
えっやったリリーさんにカッコいいって褒められたやったー!!私今右手の拳を高く突き上げて立ち上がる自分の姿を幻視したよやったー!!やーったぁーーー!!!!異世界来てからマジで始めてカッコいいなんて言われたやったーー!!!!リリーさんマジ大好き愛してる!!!!カッコいいと一緒に可愛いも言われたから実質カッコ可愛いだけど嬉しい事に変わりないやったーー!!!!
………とりあえず、私は落ち着こうか。一口牛乳を飲んでから返答しよう。あ〜、牛乳が適度に冷たくて美味しい。
「えっと、ありがとうございますね。リリーさんもカッコよくて可愛いですよ?」
「あらぁ、ありがとねぇん」
むしろリリーさんがカッコ可愛くなくて、一体誰がカッコ可愛いというのだろうか?だってさ、考えてみ?リリーさんの筋肉に覆われた究極の肉体と、リリーさんに似合ってるかは私がそういうのよく知らなくてわからんが、まぁ多分誰が見ても可愛らしいと言うだろう服装を混ぜ合わせたら、そりゃ最高でしょ。リリーさんの持ってる筋肉の1%でも私にくれないかな。ついでに体力とかも。私は努力してまで筋肉は欲しくないけど、別に欲しくないわけじゃないんだ。だって筋肉は全てを解決するからな。実際解決する。私はゲームで攻撃力極振りとか筋力極振りとかするタイプの脳筋なので、やはり現実でも筋肉は欲しい。知ってるか?一撃で敵を殴り殺すのって楽しいんだぜ?というか、今の私なら魔法一発で小さな森くらいなら消し飛ばせるらしいから、実質これも脳筋と言っても過言ではないな!………若干虚しい気がするけど、気にしないでおこう。
「あ、リリーさん、ちょっと待っててください。お仕事してきます」
私とリリーさんが少しばかり談笑していると、相談スペースに人が座り込んできた。私のお仕事の合図だ。今はミナが宿屋のお仕事の方に言ってるから、ついでに注文も私のお仕事だったりする。今は注文無いけど。
「あ、ルミさん。またご相談ですか?」
「ええ、そうです。ご相談がありまして………」
私が相談スペースに移動すると、そこに居たのはルミさん。銀色の長い髪をポニーテールにしている、長身の人だ。何でも、ルミさんは冒険者では比較的珍しい女剣士らしいのだ。冒険者の女性は大抵が後衛らしい。勿論前衛の人も居るにはいるが、比率で見れば後衛の方が多いらしい。
そんなルミさん。普段はキリッとカッコよく決めている超絶クールなスレンダー美人さんなのだが、なんと同じパーティーである幼なじみさんの事が好きなんだとか。が、恋愛をこれまでしてこなかったので、その意中の彼にどうやってアプローチしたらいいかわからず、私に度々相談をしてくるのだ。恋愛をあまりというか殆どした事の無い私に恋愛相談をされても割と困るのだが、私の今まで培ってきたゲームや小説の知識をなんとか活用したお陰かせいかわからないが、今はその彼と割と上手くいっているらしい。この前告白してOKされたという報告を受けた記憶がある。ちなみに私はその報告を受けた時に内心でルミさんの彼氏さんに対して舌打ちをした事もある。
「また何かありました?」
「え、えぇと、はい。この前のアオイさんのアドバイス通りにしたら、デートは成功したんですよ。けど、次はその………夜伽の誘い方を、知りたくて………」
夜伽の誘い方かぁ。私にそういう相談しちゃう?私男だよ?外見は女の子だけど、中身男だよ?そういうのはちゃんとした女の子に聞いた方がいいんじゃないかなぁ。
「これ前も言いましたけど、私もそこまでというか欠片も恋愛経験ないのでこれまた全部憶測になっちゃいますけど、それでもいいんですね?」
「は、はい。お願いします」
うむ、ルミさんは私を信頼し過ぎじゃないかな?もうちょっと私を疑ってくれないか?私の方が不安になるんだが?
「それじゃとりあえず、彼さんの場合は遠回しに誘うんじゃなくて、なるべくどストレートにいきましょう。遠回しの場合だと、彼さんは鈍感ですから気が付かないです。こう、2人きりの時にぐいっと行きましょう」
「な、なるほど」
「ですが、これまでの彼さんの傾向的に最初は慌てふためくと思います。その場合は無理にでも抱きついて押し倒しちゃってください。大丈夫です、ルミさんならやれます」
だってルミさん美人さんだし。カッコいい感じの彼女さんに押し倒されたら彼さんだろうと吹っ切れるだろう。
「ふぁ、は、はい………」
「そしてそのまま自分の思いの丈をぶちまければ、彼さんもルミさんがそういう事をしたいって思ってることをわかってくれます。後は彼さんに身を任せれば多分上手くいきます。………どうですか?」
「あ、ふぁあ………しょ、そ、んなの、は、恥ずかししゅ、すぎる………!」
うーん、普段はクール美人なルミさんが極限まで恥ずかしがってる顔は実に可愛い。やっぱキリッとしてるクール系でも中身は乙女で女の子なんだよな………可愛い。
「こんなのでいいですか?私も誰かを誘った事なんて今まで一度も無いのでかなり適当言ってる気がしますけど、まぁ、行動指針の一つとして考えてくれれば幸いです」
「あ、アオイさん、本日も相談を聞いてくださって、本当にありがうございました。助かりました。………す、すっごく恥ずかしいですけど………」
「大丈夫です。ルミさんの恥ずかしがってる顔はかなり可愛いので、多分彼さんもイチコロです」
「そ、そうですかね………えへへへへ………」
そして、恍惚な表情のまま、ルミさんは相談スペースを後にしていった。うむ、実に可愛いお人だった。彼さんはルミさんを幸せにできなかったら私が直々に殺しに行ってやろう。光景に思うがいい。バティンを使ってでも殺してやるぞー、ふははは。
私は実に馬鹿な事を考えつつ、リリーさんの座っている席にまで戻るのだった。
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