病ノ魔ノ手
さいきょうのふくごうまほう(当社比)
私が色々な人に拉致された時の状況を話したりしてから、既に1ヶ月が経過した。あの時、私を拉致して奴隷にしようとした黒幕の………あー………名前を覚えてない冒険者さんは、既に捕まっているらしい。前々から色々な悪事を働いていたらしいのだが、上手い具合に証拠を残さずにしていたそうだ。が、今回、私を拉致し損ねた事で色々な犯罪の証拠を残してしまい、そのまま衛兵さん達に連れて行かれてしまったそうだ。割と重い刑である公開処刑になるとは聞いたが、人の生き死ににそこまで興味も無いので、私は見に行ったりしていない。そもそも人の死ぬところを見るような性癖は持ち合わせていないので見る気もない。
ギロチンを使用する由緒正しいというかそれっぽい公開処刑だったらしいが、私はそもそも人の首が飛ぶ瞬間なんて見たくもない。そんなグロい光景をわざわざ見るより、コルトさんの寝ている姿を見ている方が何億倍も楽しいに決まっている。実際、私はその公開処刑の時間の間はコルトさんの所まで行って、わざわざ見たくもない処刑を見せようとしてくるフォージュさんやミナを回避してたし。やっぱりコルトさんは最高だぜ。………やっぱり私、コルトさんの事大好きだな?いやまぁ、だからどうしたって話だけどさ。
そういえば、フォージュさんやミナはわざわざ見に行って私にその様子を教えようとしてきたが、普通にやめてもらった。首が飛ぶ時の詳細なんて知りたくもないし、わざわざ知ったとしても、そんな事はどうでもよ過ぎる。そんな生きていく上で一切の必要がない無駄知識を頭に入れるよりか、私が新しく始めたソシャゲの排出率を知ってた方が有用だろう。確か、星5キャラが1%、星6キャラが0.3%だったかな?ヤバイ所だと0.005%とかあった筈だし、まだ私のやってるソシャゲは割と良心的だ。
ちなみに、スマホへの課金は異世界なのに何故かできたりする。魔法のカードも何も無いのに、だ。一体何処のお金を使っているか一切わからないのが怖いので、最初の検証の為の一回以外は欠片もやっていない。最初の一回も、課金できる最低額の120円くらいをちょっと使っただけだ。ほんと、何処の誰のお金を使ってるのかわからないのが怖すぎる。私の元の世界の家族のお金を使ってる可能性がある限り、流石に無駄使いはできない。元の世界にはそこまで帰りたくないが、家族には会いたい。ちなみに元の世界に帰りたくない理由は、就職とか進学とかが実に面倒だからだったりする。あんな事するくらいならこっちの世界で働くわ。
「んー………?」
そんな事を色々考えていたが、私が今現在やっていたのは、遂に魔法を教えてもらっていた人達からやってもよいと言われた、複合魔法の作成だ。複合魔法とは、自分の適性がある二つ以上の属性を使用した、新しい魔法の総称である。ある程度の魔力操作能力を有していないと正確な魔法を作り出すことができず、おかしな構造の魔法になってしまい、そんなおかしな魔法を使ったら最悪死に至る可能性だってある魔法だ。だが、作り方を間違えれば危険な分、その作成の自由度は無限大なので、かなり強力な魔法を作れるらしい。
そして私は今、魔法を教えてもらっている師匠達に卒業試験という名目で、何かしらの複合魔法を作り、師匠達に披露する事を求められている。攻撃系の魔法でも、防御系の魔法でも、便利系の魔法でも、強化系の魔法でも、とにかくどんな魔法でもいいから、私自身が作りたいと思う複合魔法を作れ、だそうだ。その複合魔法の出来を見て、合格か不合格かを判断するらしい。まぁ、そんな事を言われたのが10日前なのだが、私は未だに構想すらない状態だ。
複合魔法を作るために必須な知識は、それぞれの属性の性質だ。それが分からなければ、複合魔法なんて作り出す事はできない。例えば、火属性なら加速、水属性なら減速などなど、属性には一つ一つの性質が存在する。ちなみに、各属性の性質は紙に書いているので、覚えてたりはしない。
ちなみに、その紙の内容はこんな感じだ。
──────────────────────────
火属性=加速 火を生み出して操作する魔法
水属性=減速 水を生み出して操作する魔法
地属性=固定 土を生み出して操作する魔法
風属性=移動 風を生み出して操作する魔法
光属性=増加、倍増 光を生み出して操作する魔法
闇属性=減少、半減 闇を生み出して操作する魔法
雷属性=収束 雷を生み出して操作する魔法
毒属性=侵食 毒を生み出して操作する魔法
氷属性=停止 氷を生み出して操作する魔法
音属性=拡散 音を生み出して操作する魔法
木属性=成長 植物を生み出して操作する魔法
金属性=結合 金属を生み出して操作する魔法
影属性=複製 影を生み出して操作する魔法
幻影属性=隠蔽 幻影を生み出して操作する魔法
重力属性=負荷 重力を生み出して操作する魔法
妖属性=変化 自分又は生物限定で変化を起こす魔法
練金属性=変換 物質限定で変化を起こす魔法
無属性=消去 ありとあらゆるモノを無にする魔法
回復属性=再生 怪我や病気を治癒する魔法
記憶属性=定着 見たもの聞いたものを記憶する魔法
契約魔法=召喚、条件 召喚して契約を結ぶ魔法
補助属性=付与、強化 基礎能力を増強する魔法
血液属性=巡廻、継承 廻り巡り継承する魔法
深淵属性=分解、解析 全てを知って分解する魔法
空間属性=拡張、収縮 空間を操作する魔法
時間属性=延長、遅延 時間を操作する魔法
──────────────────────────
このように、各属性にはそれぞれの性質が存在しているのだ。ついでに、基本的にはどんな魔法を使えるのかも記載しておいた。こうやってメモ紙に書き込むと、かなりの属性が存在しているのがわかる。そういやこの前師匠達から聞いたのだが、性質が存在せず、ある条件を満たすだけで使えるようになる属性もあるらしい。条件属性だとか言われていた筈だ。この世界での有名どころを出すなら、日属性や月属性だろうか。例えば、日属性を使う条件は男性である事で、月属性を使う条件は女性である事、などなど、ある一定の明確な条件を満たすことで、どんな人であろうと使えるようになるのが条件属性らしい。私はどっちの性別にもなれるのでどっちも使えるのだが、生憎どっちも使った事はない。
なんでかと言うと、私の性別が女で、月属性の持ち主だからだそうだ。
別に師匠達に性別に関する差別的な発言をされた訳ではなく、事前に説明されていたのでその時は怒りもしなかった。初めて聞いた時にはびっくりしたが、なんせ、月属性の魔法の中には魔物を大量に引き寄せる効果のあるものが多いらしい。そんな危険な魔法、例え街中でもそう易々と使えるわけがないので、月属性の魔法は、練習どころか使ったことすらない。しかも私の場合、魔力効率が最高過ぎて、恐らくドラゴンみたいなめちゃ強い魔物が引き寄せられる可能性が大いにあるので、絶対に無闇矢鱈に使うなと師匠達には釘を刺されている。私はそんな事したくないので、絶対にやるつもりはないが。
まぁ、話が逸れに逸れたが、とにかく、私は複合魔法を作らねばならないのだ。………どうしようかな。
「あー………図書館でも行くかな………」
本当に何も浮かばないので、図書館に行ってコルトさんの可愛らしい寝顔を拝みつつ、アイデアが生まれそうな適当な本を読むとしよう。うーん、複合魔法一覧とかみたいな本無いかな………
てことで、やってきました図書館。3ヶ月くらい前だったら絶対に外には出なかっただろう私が、わざわざこんな20分くらいかかる図書館にまで来るようになるなんて………私、成長してる?
「コルトさん、おはよ」
「………んー………おはよぉ………アオイちゃん………」
「コルトさんは今日も今日とて眠そうだけど………まぁ大丈夫か」
うむ、今日も今日とてコルトさんの寝顔が可愛い。後コルトさん、その枕にしてる『古代王国全書』は確か金貨300枚くらいする希少価値の高い本だった筈だから、流石に枕にするのはやめとかない?私が心配になっちゃうよ?
「ふわぁあぁ………んー………アオイちゃん、本の返却期限はまだ先なんだけど………読み終わったの………?」
「あぁいや、まだですよ。ただ、魔法を教えてもらってる人達に、複合魔法を一つ作ってみろって言われてまして。けど、特別作りたいものもなくって………何かアイデアでも浮かばないかなーって、図書館に」
「おー………複合魔法やってるんだー………んー………複合魔法はいいよー………?使いやすいから………」
「確か、コルトさんも図書館の司書する時に使ってるんですっけ?」
「まぁ………寝ながら司書したくて、【
へー、コルトさんの図書館内を確認する魔法、【
「コルトさん、なんかこう、有名な複合魔法の一覧、みたいな本ありません?」
「あー………えっとね………ふわぁ………魔法関連の棚の、上の方の棚にあるみたい………」
「なるほど、ありがとうございます」
「いいってことよー………おやすみー………」
毎回思ってるけど、コルトさん寝るの早過ぎない?
時間は経ち、既に3時間は経過してしまった。私的には後2時間くらい図書館に居てもよかったのだけれど、丁度借りたい本がいくつかあったので、本を一旦持ち帰る為にも帰ってきたのだった。
「
私は
後、明らかに使う機会のない元の世界の物も取り出そう。自転車も
………あ、いや、別にユニークスキルじゃなくてもいいんじゃないかな?複合魔法で作ればいいんじゃね?はっ、私天才か?!そうだよ!こういう便利系の魔法だっていいんだよ!!作ろう!幸い、私には空間属性の適性があるし、他の属性も上手い具合に使えば………いける、かも?………よし、無限でなくても、とにかく大容量のアイテムボックスを目指して複合魔法を作ろう!!こりゃやりがいが出てきたぞー!!!
そうして、私の初めての複合魔法が出来たのは、たった3日後だった。私の今使える技術を全て使って、なんと、2つの複合魔法を作ったのだ。森羅万象のあらゆる存在が私を沢山褒めてほしい。そんな沢山褒められるべき存在である私が作った複合魔法の名前は、『物質情報変換管理アプリ』。素手で触れている物質のみを解析し、侵食し、分解する。その後に分解した物質を情報へと変換し、所持しているスマートフォン内に情報として落とし込み管理することのできる、私限定のオリジナル魔法兼
そう、スマホアプリ。私は複合魔法を、スマートフォンのアプリケーション・プログラムの一つとして組み込んだのだ。
実は、複合魔法には作るのも難しいのだが、使う際の使用難易度も高いのだ。ぶっちゃけ作っても使うのが難しいのである。比較的高度な魔力操作能力が必要なのは、むしろ作る時より使う時だそうなのだ。どうしてそんな事になっているのかと言うと、なんと、複合魔法は他の単体属性の魔法と同じように単純なイメージを現実にするのではなく、使う度に複雑なイメージをしなければいけないそうなのだ。魔力操作と複雑なイメージを同時にしなければいけないから、難しいらしい。
が、魔力の操作と複雑なイメージという、2つのことを同時にやるなんて高等テク、私にできる気がしなかった。というかやりたくない。だからこそ、どうにかして私のイメージも魔力操作も全く必要のない、私が念じるだけで使えるような複合魔法を作る為に、私はスマートフォンに目をつけたのだ。それにはちゃんとした訳がある。実は、私の求めていたイメージも魔力操作も必要ない魔法というのは、それはつまり魔法道具だったのだから。
魔法道具とは、記録属性の魔法によって定着された魔法に、魔力を流すだけで使えるのが、魔法道具。普段、魔法道具は魔物から採取できる魔石を動力として使っているものをよくみるが、魔法道具の中には使用者の魔力を消費して使うような物だってある。今回私が目をつけたのは、使用者の魔力を消費して使うタイプの魔法道具だ。私は、宿屋にあったそのタイプの魔法道具を調べて、その魔法の構造を流用したのだ。それにより、私は魔力を消費するだけで複合魔法を行使できるようになった訳である。私天才って褒めてあげたいくらいだ。
ここまで来れば、後は私の求めていたような大容量なアイテムボックスを再現するだけだった。私の頭の中で魔法をイメージし、魔力を操作して、その魔法をスマホの一アプリとして落とし込む。最後に魔法道具の魔法構造を流用する………そうして出来たのが、私の新しい複合魔法。それこそが、『物質情報変換管理アプリ』。通称
勿論、スマートフォンを通して魔法を使う為、スマートフォンが側にないとこの魔法は簡単に使えないので、そこは注意が必要だ。一応、
そんな魔法アプリの画面は超簡易的なモノで、タブには『収納』『管理』『放出』の3つだけと、かなり簡易的なものだ。そうしないと私が頭こんがらがるからな。『収納』のタブは画面一杯に大きな"収納"のボタンがあり、そのわかりやすいボタンを押すと収納できる。亜空間内にスマホをしまっていても遠隔操作ができるので問題ない。『管理』のタブはまさにゲームのインベントリのような画面で、何を収納したのかわかるようになっている。この機能は亜空間内にスマホがあると使えないが、別に気になりはしない。管理のタブで収納済みの物質にタッチすると、そのアイテムの外見を確認できるようにしてある。『放出』のタブは『管理』のタブと同じようにゲームのインベントリのような画面だが、タッチした物質を一回の確認に了承することでその物質を放出することができる。ちなみに、この魔法を使える対象は直接手で触れるものに限定されているが、『収納』や『放出』の機能は私の視界の中ならどこにあっても収納できるし、どこへでも放出できる優れものだ。
などと、かなりスマホのアプリ感を出しているが、これは歴とした複合魔法の一種だ。一応、スマホを通じて使わずともこの魔法を使えなくはないが、その場合はただただ物質を情報として分解するだけになる。情報を保管する場所がないと、ただの物質分解魔法だからな、これ。
そんな
『あ、これも複合魔法でどうにかすればいいんじゃね?』
と、私は考え、直ぐにでも実行に移した。その結果がこれ、『情報容量増加アップデート』、通称第一アップデートだ。
この魔法は、スマホの容量を何百万倍も増やす魔法兼スマホアップデートで、空間、光、契約の属性の複合魔法である。空間属性と契約属性によってスマホのメモリ容量だけを魔法的に増やし、光でその容量を更に倍増させることでスマホの容量を何万倍も増やすことができるのだ。これを先に導入したことで、
ということで、私は新しい複合魔法を2つ作ったのだ。
「ふんふーん、
既に私は
既に師匠達からは合格を貰っているので、私はこれからは自由に複合魔法を作り出すことができる。いやー、長く苦し………くは無かったが、かなりの時間をかけた気がする。最初は各属性の複合魔法の時の挙動や魔力消費を考えていたので時間が掛かったが、今度は2日くらいで作ってみせる。
あ、そういえば、私はやはり契約属性にかなりの適性があるらしく、契約属性の性質である条件を複合魔法に組み込むと、魔力消費の軽減や、魔法の威力がかなり増えたりするらしい。元々契約属性の条件付けはそういう効果があるらしいのだが、それが更に強化されているようだ。中々に嬉しい。そのおかげか、
「この調子で、じゃんじゃんと複合魔法を作っていこうじゃないか」
まぁ、今はアイデアがゼロだから、作るに作れないけどさ。次はどんな複合魔法を作ろうかなぁ?
「へぇ、合格したのね?」
「まぁなー………頭ぽんぽんやめろ」
私が師匠達に合格を貰ってから3日後、私の昼営業が終わってからフロアの机で休んでいると、ミナに頬杖を突いている私の頭をぽんぽんとされてからそう言われた。別に頭を撫でられるのなら嫌いじゃないが、頭ぽんぽんはやめて。それはちょっと痛いからやめて。
「ねぇ、ちょっと見せてくれない?」
「まぁいいけど………
私は左手を机の上に出してからそう言うと、魔力がほんの僅かに抜けていく感覚がしてから、その後すぐにスマホの中に管理されていた金貨の情報が変換されて再構築され、金貨が机の上に出現する。………つまり、スマホの中にあった金貨を取り出しただけだ。ちなみに、起動だとかなんだかの発言は、ミナに使ったのをわかりやすくする為のものなので、普通に使うときは全く必要無かったりする。私のスマホにこのアプリを使用する為の魔力流すだけだからな。しかも、私の亜空間内にあっても自在に流せるので、スマホをいちいち取り出す必要も無い。側から見れば
「………それだけ?」
「それだけだよ、何か文句ある?」
「文句は無いけれど………アオイの性格的に、もっとこう、攻撃するみたいな魔法だと思ってたわ」
私をなんだと思ってるんだお前は。え、何?私ってそこまで脳筋に思われているの?いやまぁ、いつか攻撃系の複合魔法は作りたいと思っているけれど………だってさ!なーんか、私の使える攻撃系の魔法、普通に適当なイメージで使っても威力過多なのしかないんだよね。
例えば、この前覚えた光属性の魔法の
いやまぁ、私が魔法を使う時のイメージを稚拙なモノにしてしまえば、その分魔力効率が下がって、魔法の威力も普通になるんだろうけど………そんな事するなら普通にぶちかました方が早い。わざわざ稚拙で雑なイメージをし直さなきゃいけないとか、そんな時間あるなら慣れてるイメージでぶっ放した方が楽だし早い。そも、イメージを稚拙にすると言ってもさ、それが限りなく難しいんだけども。例え漠然としたイメージをしたとしても、既に魔法を使う時の癖なのか、瞬時に漠然としたイメージから連想してそのイメージがどんどん精密になってっちゃうから、どっちにしろ使う時には威力過多に………って感じなんだよなぁ。つまりは、一度定着したイメージはそう簡単に取っ払えないってこった。イメージをわざわざ雑にするなんて高等技術、私にゃ無理だ。
「とりあえず、この金貨はしまっとけば?」
「あー、それもそうか」
今度は無駄な発言などせずに、単純に思考による対象の指定と複合魔法の使用をする。ちなみに
………笑い事じゃねぇんだよなぁ。本当にどうにかしないと………魔法の威力を下げる魔法道具とか、売ってないかなぁ………流石に売ってないかな?まぁ、とりあえず、一度だけでも魔法道具の売ってる店くらいは見てみるか。どうせこの後やる事ないし、ミナか店長さんにでも魔法道具の売ってる店の場所を教えてもらって、そのまま買いにでも行こう。例え魔法の威力を下げる魔法道具が無くても、その他に何か欲しい魔法道具があるかもしれないし、多分買い物に行って損することはないだろう。
「少し出かけてくるなー」
「いいけど………気を付けてね?」
「大丈夫大丈夫」
「貴女、既に1回拉致されかけたことを自覚してるの?」
してるよ?でもさ、あれって未遂みたいなものだったじゃん?主犯格も関係者もぜーんぶ捕まって処刑されたって言ったのは
「大丈夫、大丈夫」
「あーもう………夜営業の2時間前には戻ってきなさいよ?」
「はいはーい」
私はそのまま、大事な何かを忘れつつ、出かけたのだった。
「………迷った」
やらかした。ミナか店長さんに魔法道具の売ってる店までの道のりを聞こうと思っていたのに、完全にド忘れしてしまった。出かける時にミナが居たのに全く聞いてなかったし………私は馬鹿だ。いや、むしろアホだな。本当に私は記憶力が雑魚過ぎる。道行く人に聞こうと思ったけど、まぁ、初対面の他人に話しかけられるほど私のメンタルは強くないので、無理だよね。まぁ、話しかけられたら反応はできるけどさ。
「んー………」
とりあえず、裏路地のような人通りのない場所は絶対に通らないように、表通りのある程度人がいる場所だけを歩いているから、まぁ、この前みたいに拉致される事は無いだろう。多分、きっと、恐らく、maybe………うんまぁ、心配になってくるけども、まぁ、大丈夫じゃないかなぁ。拉致られたらそん時はバティンでも召喚しよう。
あ、そういやバティンのステータスの紙をどっかのポケットにいれといてそのまんまだったっけ………あぁ、あった。どうせなら、もう一度バティンのステータスを確認してから
名前:バティン
性別:男
魔力量:5643
《スキル》
韋駄天:☆あらゆる速度がとてつもなく素早くなる
炎熱無効:☆炎熱の干渉を無効化
炎熱操作:☆炎熱を自在に操ることができる
関係良好:☆他人との関係がよくなる
長距離転移:遠く離れた所へと転移する
薬学:薬や薬草についての深い知識
魔法薬学:魔法の薬や薬草についての深い知識
宝石学:宝石についての深い知識
《召喚条件》
1時間限定で、主人への命令権の行使をすること
これがバティンのステータスだ。アクと同じで、召喚時に私にも適用されるスキルには、同じように☆マークをつけてある。つまり、バティン召喚中の私は、あらゆる速度が速くなってて、炎熱による干渉が無効化されてて、更には炎熱を操れて、他人との関係が良くなる、ってことだな。アクとは違って共有されるスキルが基礎的な強化では無く、特殊なスキルっぽいのがいいところだ。炎熱無効とか強そうじゃない?まぁ、条件の対価が常に召喚し続けるのに面倒過ぎるから、ずっと呼び出したりはできないけど………
あ、そうだ。アクに魔法道具の店を探してもらおう。そうすりゃ早い。
「
『主様ですか。どうかしました?』
『あー、すまんが、魔法道具を売ってるような店を探してくれないか?実は迷ってて………誘導もしてくれると助かる』
『それくらいならお安い御用ですよ!直ぐに行ってきます!』
うし、アクが探してくれてるみたいだから、とりあえずなんとかなったな。よがったよがった。特にやることも無くて暇だし、ま、ここで待ってるとしよう。
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