第131話 王子のスキル

【スキルキャンセラー】とは相手のスキルを無効化、封印出来るスキルである。更にヒト種(獣人、エルフ、ドワーフを含む)においてはスキルを無効化された影響で一時的にスタン状態になる。


 それまで素直で誠実であったヤポン王国の正統後継者リュウゼンは祝福の儀でそのスキルを得てから性格が変わっていった。


 この世界の住人はほぼ全てのヒト種がスキルに関係する職業であったり、そのスキルを活用して生活している。

 つまりスキルを無効化されるとほぼ生活が立ちいかなくなる。


 それを恐れて、王子に逆らうものは居なくなった。父である王でさえも。

 王は領民にとっては良い王だったが気の弱い男だった。リュウゼンの増長を止められなかった。もともと体も弱かった王は病気で床に臥せりがちになっていた。


 また王子は逆に体格にも恵まれていて、本来の肉体の強さも相当なものであった。


 その後のリュウゼンは己の思うがままに振る舞った。気に入らない者のスキルを無効化し、封印し、スタン状態の相手を切り捨てた事もあった。よってそれを知る者は逆らう事もなく、付き従うのみであった。

 

ーーーーーーーーーーーー


 力が抜けて、片膝をついた俺はバカ王子を睨む。

「‥‥‥何を‥‥‥した!?」


「お主のスキルは封印させてもらったぞ」


 !? 何だって‥‥‥!?

 手を翳してみても金属操作が普段の感覚と全く違う。


「ムダだ‥‥‥」


ガコッ!!

 バカ王子に顔を蹴られ、俺は倒れた。

 このまま頭を踏まれる。


「本来なら我に逆らうなど即刻死刑でもおかしくはないのだ。優しいであろう?」

「くっ‥‥‥!」


「お主の妻たちも準備があろう。三日猶予をくれてやろう。三日後に後宮に参るがいい」


 王子は足を退けて振り返り、カール将軍の方を向くと、


「これで良いな。ドラゴンの遺体は王宮の庭まで運ばせよ」

「ははぁ!」


「おお、これはしたり! そこの荷物持ちに遺体を運ばせれば良かったの。ハハハ!! 失敗、失敗!!」


 高笑いを残して王子は部屋から出て行った。


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 みんなが駆け寄ってきた。

「アウルム!! 大丈夫!? 怪我は?」

「怪我は大した事ない‥‥‥けど」


 さっきからずっとあの周囲の金属と繋がる感覚が全くない。戻らない。


「アウルム殿‥‥‥、本当にすまない。スキルはやはりダメそうだな。事前に話しておけば良かった」

「アレはなんなのですか?」


「アレはバカ王子のスキル【スキルキャンセラー】 周囲の対象のスキルを無効化してしまうスキルだ。さらに封印する事も出来るらしい」

「なんちゅう恐ろしいスキルや‥‥‥」


「解く方法は無いのですか?」

「王子が解除すれば‥‥‥おそらく。だが解除したのは見た事がない」


 アリスが将軍に問い詰める。

「あんなのが次の国王なんですか?」

「残念ながらそうだ。現国王が退任されたらだが‥‥‥」


「他の継承者はいないんですか?」

「もともと継承順位一位だったリュウゴ王子は病気により既に‥‥‥。他のお方も次々と国外追放などになり‥‥‥」


「あのアホ王子がそうしたんやろうけど‥‥‥あんなのでも王は王や。兵としては逆らえんわな」

「ウチらは冒険者やさかい、いつでも他所の国へ移住出来るけど、一般国民はそうはいかんわねぇ」


「くそっ‥‥‥、このまま二人をみすみす渡せるものか」

「でも‥‥‥スキルが‥‥‥。コレも動かせないんでしょう?」

 シルヴィアがポケットから取り出した銀貨、手のひらに乗せてあるそれすらも動かせない。


「なんて事なの‥‥‥」

「ルーちゃん達も出せないの?」


 ストレージの方もダメだ。

 全く反応がない。

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