第130話 残念王子登場

「我が参ったぞ! 頭を垂れよ」

「ははぁ! (これ、皆も頭を下げよ)」


 一応将軍様と同じように頭を下げる。


「此度の活躍、聞いたぞ。見事である。カールよ、この者たちであるな?」

「仰せの通り」


「なんぞコソコソと動いておったようだが、よもや秘密裏に論考褒賞を決めようとしてたのではあるまいな?」

「いや、まさかそのような事は‥‥‥」


「であろうな。ではそこな者たち。頭を上げよ」

 言われた俺たちは頭を上げる。


 入ってきた瞬間も見たけど、改めて見ると残念な王子様だな。


 体格は素晴らしく大きい。

 ただ顔がなぁ、白い顔に太い眉、わかりやすく高いちょんまげ。

 偉大なコメディアンの扮したまさにバ◯殿様だった。そして笑いを取ってるつもりはないのだろうが、声が高い。


 吹き出しそうなのを必死に我慢した俺を褒めて欲しい。でも誰にも伝わらないんだろうな。


「ほう、美しいの‥‥‥」

「あ‥‥‥ありがたきお言葉」


「ふむ‥‥‥、先にドラゴンの話をしよう。討伐ご苦労であった。ドラゴンの遺体はこちらで引き受ける。そなた達には褒賞を授けよう」


 えっ!? ドラゴンの遺体を? 

 それってドラゴン素材全部持ってかれるって事だよな? それはさすがに酷くないか?


「お、お待ちください! それでは‥‥‥」



「誰が発言していいと言った!?」


 ギンッ!!! と睨まれた。

 再び頭を下げる。


「ふむ、我に対する無礼、此度の活躍を考慮して今回は不問といたそう。二度はないがな」


 なんなんだ、コイツ‥‥‥。

 これが絶対王政ってやつなのか? 

 タイタン王陛下とかも気さくだったからあれが普通だと思っていたけど違うのか?



 お付きの人が王子様に耳打ちして書類を渡す。


「ふむ‥‥‥、そうか。では『鬼狩りハンジロー』『聖炎のカエデ』、其方らにはこちらの褒賞を授けよう」

「「ありがたき幸せにございます」」


 声が揃ってる。さすがだな。


「残り‥‥‥シルヴィア、アリス。ほう、【全属性魔法】と【剣帝】‥‥‥。お主らにはこの国の永住権をやろう」

「は‥‥‥、はい」

「あ、ありがとうございます」


 永住権? 随分と報酬として格落ちしてる気がしないでもないが‥‥‥。

 そしてスキルを把握しているのか。


「最後のアウルム?‥‥‥だな? ストレージ‥‥‥荷物持ちか? 貴様には妻二人を我が後宮に差し出す名誉をやろう」


は?


「どうした? 名誉であろう? 我が後宮に其方の妻を迎えてやると言っておるのだ」


 全く理解できない‥‥‥?

 

 将軍が静かに手を挙げる。

「‥‥‥殿下、発言よろしいでしょうか?」

「うむ、なんだ? カール将軍よ」


「アウルム殿は他国の冒険者であります。さすがにそれはいかがかと‥‥‥」

「なんじゃ? 我の決定に異議でもあるのか?」


「い、いえ。失礼致しました」


「アウルムとやら。返事をせぬか? お主の妻を見て気に入ったのだ。もちろん金も支払おう。あ、もしかして先程発言を諌めたから黙っておるのか? それなら‥‥‥」

「お断り致します!!」


「‥‥‥? 我の聞き間違いか? 其方、今なんと‥‥‥」


「お断りします!! アンタになんか二人を渡すものか!!? 何を考えて‥‥‥」

「【スキルキャンセラー】!!」


 バカ王子が手を翳して何か言った途端、身体の力が抜けていき、俺は片膝をついた。

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