第119話 食後の‥‥‥

「んー! 美味しかった!」


「美味かったやろ? あ、ワイは冒険者のハンジローや。よろしゅうな、あ、タメ語でええで」

「ウチも冒険者のカエデや。兄ちゃん達も冒険者ちゃうんか?」


「そうだ。俺がアウルムで‥‥‥」

「私がシルヴィア!」

「アリスよ、ハンジローはその剣を使うのかしら?」


「せや! アリスも剣の腕に覚えがありそうやな?」

「まぁ‥‥‥ね。少しはやるわよ」


「じゃあ満腹になったところで一丁手合わせしてもらえるか?」

「ご飯も奢ってもらったし‥‥‥いいわよね、アウルム?」


「まぁ、ギルドには行こうとしてたしな。カエデは魔法使いか?」

「うん、そやで。そういうシルヴィアもやろ?」


「まぁね。私は手合わせしないわよ」


「同感や。早よいこか?」


 ーーーーーーーーーーーー


「おう! ギルマス、ちょっと訓練所借りるで〜」

「ハンジローにカエデ、今日はどないしたんや? 揃ってくるの珍しいやんか」


「今そこで面白い奴ら見つけたから連れてきたんや。手合わせするわ」

「依頼はまたそのうち行くわ」


 二人は有名人らしい。荒くれ者達が周りが道を開けている。

「ハンジローさんが手合わせやって」

「細い男と女二人かいな?」


「怪我すんで! あんたら、やめとき‥‥‥」

 その男は次の言葉が出なかった。


 首筋にハンジローの剣が当てられていた。

 その目も氷のように冷たくなっていた。


「余計なこといいなや? 楽しもうとしとるんやから‥‥‥」


「す‥‥‥すんまへん」

「次は止めへんからな‥‥‥」


 ハンジローは剣を納めると元のにこやかな目になった。


「悪い悪い! さ、気を取り直していくでぇ」


 アリスがボソッと呟いた。

「あの動き‥‥‥、かなりやるわ」


ーーーーーーーーーーーー


 ハンジローが木剣の入った籠を持ってきた。

「さ、どれ使う? 好きなの選びや」


「‥‥‥これにするわ」

「ワイはこれやな」


 やはり周りに人が集まってきた。賭けにするのはどこも一緒らしい。

 

 ギルマスもやってきた。

「審判は俺がやろう。こういうのはちゃんとしないとな」


 アリスとハンジローが互いに向かい合って木剣を構える。ハンジローの目つきがガラッと変わる。殺気と威圧感が凄い。


「始めっ!!!」


「キェー!!!!」

 独特の掛け声で突っ込んでくるハンジロー。

 構えは上段の少し変形した感じ。


 目に見えない速さの力強い打ち下ろし。アリスが柄にもなく大きく避けた。


「よう受け止めんかったなぁ?」

「もし受けてたら‥‥‥多分折れてたわ」

「正解や、次は連続で行くで、キェー!!!」


 連続で打ち込んでくるハンジローに圧倒され、後手に回るアリス。


「くっ!! なんのっ!」

「キェッ!! キェッ!! キェー!!!!」

  

 ボキッ!!


 アリスの木剣が折れた。

 アリスは木剣を手放して両手を上げた。

「私の負けね‥‥‥、ハンジロー、アナタ強いわね」

「いや、一本もまともに入らなかった。お前もやるやん」


 あまりに見事な戦いに俺は自然と拍手を送ってしまった。

 周りも拍手喝采していた。

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