第120話 勝負の後は‥‥‥

「二人とも見事やったで」

 審判だったギルマスが二人を労う。


「私は何も出来なかったわ‥‥‥」


「普通ならハンジローの最初の一太刀で木剣ごと頭を割られて回復魔法のお世話になっとるわ。受けずに避けられただけでもすごいんやで」


「ハンジロー‥‥‥、私に剣を教えて!!」

「おう、ええで。しばらくこの街におるんやろ?」


「アウルム、ごめんなさい。しばらく居させて」

「あぁ、いいぞ。この街の飯は美味いしな」


「そういえばアウルムはどういう戦い方をするんや?」

「いやぁ、俺のはちょっとな‥‥‥」


 冒険者同士の暗黙の了解としてスキルを隠しておきたい場合は無理に聞き出してはいけないというのがある。あまり知られてもまずいしな。


「秘密かいな、まぁしゃあないわ」

「無理に聞いたらアカンわ。汗もかいたし風呂でも行こうや」


「風呂!? 風呂があるのか!?」

「公衆浴場やけどな。なんで知っとるんや?」


 今まではずっとシャワーだの水浴びだのばっかりだったから、風呂と聞いてつい反応してしまった。


「‥‥‥本で見たのよ。ね、アウルム」

「そ‥‥‥そうそう。そうなんだよ」


「まぁ、ええわ。早よ行こうや」


ーーーーーーーーーーーー


「「ふぃーーー‥‥‥」」

 俺とハンジロー、二人とも同時に自然と声が出た。

「ははは、わかっとるやないか。その声が出るという事は‥‥‥、お前もしかしてプロやな?」


「風呂入るのにプロとかあんのかよ?」

「いや、知らんけど」


 出た、完全に日本で言う大阪のノリだろ。好きだからいいけど。なんであれ、最後に「知らんけど」って言うんだろうな?


ーーーーーーーーーーーー


「きゃー!! カエデさん胸大きい!!」

「なにそれ!? ずるい」


「何ゆーとるん? 二人の方が綺麗な形しとるやんか」


 なんちゅう会話してるんだよ、女性陣は‥‥‥。


 もちろん風呂は男女別だが声は仕切りを超えてくる。


 ハンジローも苦笑いだ、そりゃそうだよなぁ。

 お互いに気まずい雰囲気になってしまった。


 ハンジロー、早く上がらないかなぁ?


 さっきの会話で想像が膨らんでしまってアウルムJr.も膨らんでしまったのだ。

 コレをハンジローに見られるのは‥‥‥、さすがに嫌だ。

 ハンジローより後に出ることにしよう。



「アウルム、上がらんのか?」

「いや、ハンジローこそ‥‥‥」


 ハンジローが促してくる。

 おそらくだが、ハンジローのハンジローもテンションアップしてしまったのではないだろうか?


 おおう、なんてこった。

 若さが仇になるとは‥‥‥。


 我慢だ、ガマン‥‥‥。

 ハンジローも限界が近そうだ。間もなく出るだろう‥‥‥。



ーーーーーーーーーーーー


「二人とも何しとんねん!?」

 結局、俺とハンジローは一歩も譲ることなく風呂に浸かりっぱなしだったため、二人とものぼせて倒れるという事態になってしまった。

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