第113話 精米
「ふむ‥‥‥、これくらいがちょうど良さそうかな?」
精米機さながらに上手く出来る様になったと思う。遅いと混ぜてるだけになってしまうし速すぎると米が砕けてしまう。
すごく真っ白ではないがかなり糠は取れたはずだ。
「よし、これで炊いてみよう!」
「えぇ!? まだやるの〜?」
「さぁ、炊くぞ。ここからが本番だ」
鉄で鍋を作る。圧力鍋だな。
鍋は普通でいいが、蓋が大切だ。
といっても、密着して圧力を高くすれば良いのだから鍋と蓋をくっつけてしまえばいい。これだと圧が高くなりすぎるので蒸気穴と程良く塞ぐ為の分銅をつけよう。
白米と水を同量鍋に入れて蓋をする。吸水は20分でいいかな。密着させて鍋を熱くすると蒸気穴の分銅が揺れる。
圧が高まったら一分間保温、そのあと自然冷却、10分弱で圧が減ってくるがまだ蒸らす必要がある。
さらに10分弱蒸らしたので蓋を外して様子を見てみると‥‥‥?
「完璧だ‥‥‥」
白く輝く米が総立ちで俺を待っていた。
早速盛ってみる、良い感触だ。そして炊き立てのいい香り。
「これだ‥‥‥、これだよ」
一口箸で摘んで口に入れる。
言葉にならない。ずっと食べたかったこの味。
魚の干物を焼いたものがストレージにあった。
一口、また一口。止まらなくなった。
「アウルム? 大丈夫、泣いてるの?」
「え? あ‥‥‥、だ、大丈夫だよ。二人も食べてみるかい?」
「う‥‥‥、うん」
「泣くほどの味なの?」
二人は簡単に食べやすいおにぎりにしてあげよう。手を少し濡らして、塩を少しつけて。
「!! 全然違う! これは美味しいわ!」
「これは美味しいわね、なるほど。アウルムが頑張る理由がわかったわ」
「そうか、良かった。頑張った甲斐があったよ」
「コレって売れないかしら?」
「おにぎりか? まぁ売れるだろうけど」
「違うわ、茶色の米を白くする方法と白い米の炊き方を、よ」
「!! そっちか!」
「茶色の米が美味しくなるのなら食事に革命が起きるわよ」
「たしかに‥‥‥、やってみましょ、アウルム?」
「ふむ‥‥‥、じゃあやってみようか」
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とりあえず米を売ってくれた主人に話を持ちかけてみた。試食用のおにぎりと共に。
「この白いのが米だって? 本当かよ、どれ‥‥‥」
おにぎりを口に入れた主人の目が見開く。
「‥‥‥詳しく話を聞こうか?」
シルヴィアもアリスも顔を合わせて微笑む。
精米の仕方と炊き方について教えた。
精米器については手動で出来るものを作り、職人に渡してきた。
値段は安くしておいた。
広まった方がいいからな。
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結果、この国の米の食べ方が変わり、精米と炊き方について「アウルム式」と名が付いたのはわずか二年後の事だった。
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