第106話 王国到着(公爵の帰還)

「ふぅ、すまんな。居心地が良すぎて寝てしまった」

「本当に。ごめんなさいね、アウルム」


「いえいえ、お寛ぎいただけて幸いです。間もなく着きますので降りる準備をお願いします」


「うぅ〜ん、起きたくないぃ〜」

「あと五分‥‥‥」

「いや、起きろよ。シルヴィアもアリスも」


「やだぁ、ずっとここにいたい〜!」

「ここでずっと寝ていたい‥‥‥」

「‥‥‥これからずっとここで生活するんだろ?」


「‥‥‥? あっ!! そ、そうね」

「そうだったわね。準備するわ‥‥‥」


 まったく‥‥‥。


ーーーーーーーーーーーー


「陛下!!! 上空に未確認飛行物体が!!」

「何!? モンスターでは無いのか?」


「わかりません!」

「余が見よう。望遠鏡を‥‥‥」


 ジークハルトは望遠鏡を受け取り、覗いてみる。


「ふむ、モンスターの類いでは無さそうだな。念のため魔道士達を集めておけ」

「今集合させております」


「しかしあまり見ない形だ。球に輪の付いたような‥‥‥、ん!? 誰ぞ現れたぞ!!」

「なんでしょう? 魔王とかでしょうか?」


「!!!! ぷっ! フハハハ!! 心配いらん、あれはアウルムだ」

「あの英雄ですか? またなぜこんな‥‥‥」


「わからん! こちらに向かってくるぞ」


ーーーーーーーーーーーー


 テラスにちょうど陛下が出てきていた。


「陛下! 急な訪問失礼致します。アレは私の船です。公爵夫妻をお連れしました。お庭に停泊させていただいてもよろしいですか?」

「アウルム! 大儀である。構わぬぞ、あまり荒らさないでくれるとありがたいがな」


「承知致しました」


 スキルでゆっくりと下ろしていく。地上から高さ10メートルくらいで止めて、足を出す。

 入り口を開けて階段を作る。下りのエスカレーターのように動かす。

 みんな慣れたのか、乗れるようになったようだ。


「おぉ、叔父上!! ご無事で!」

「陛下もご健勝そうで何より」


「叔母上も‥‥‥、此度は本当に申し訳ない」

「ご無事で‥‥‥、本当によかった‥‥‥」


 シルヴィアはアリスの陰に隠れながらゆっくりと近づいてきた。


「だって王様なんて私なんかが会っても良いのか‥‥‥」

「大丈夫よ、陛下は優しい方だから‥‥‥」


「でも‥‥‥」

 まぁ、気持ちはわかる。差別されてたヒト種のリーダーだからな。そうじゃなくても王様に会うなんて緊張するのが当たり前だ。


「大丈夫だよ、俺の妻として会ってくれ」

「‥‥‥うん、わかった」



「おぉ!!! そなたが! なんと美しい‥‥‥」

「アウルムの妻、シルヴィアにございます。陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう‥‥‥」


「シルヴィア殿、誠に済まなかった!!」

 陛下が頭を下げて謝罪した。周りにいた兵士は動揺している。慌てて土下座している兵士もいた。


「えぇ!!? そんな‥‥‥」

「余は王として民を蔑ろにする行動を取ってしまった。このような謝罪で許されるものでは無いと思うが‥‥‥」


「いいえ、そんな‥‥‥」

 シルヴィアも焦っている。そりゃそうだろう。


 見るに見かねたブラス様が取りなす。

「陛下、その辺で。陛下のお気持ちは伝わっております。兵士の前で頭を下げてはなりません」

「このような姿です。今の私は王であり、王ではありません」


「ふぅ‥‥‥、というわけだ。シルヴィア殿、許してやってくだされ」

「も‥‥‥もう、いいですからっ!!! 頭を上げてください!!!」

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