第88話 タイタンの顕現(その他視点)

「タイタン様が本教会をぶっ壊した‥‥‥?」

「あれ? そもそもユピテル教団なんて必要あるのか?」

「俺たちはずっとタイタン様の背中で生まれ育ってきたんだ。ヒト種だけが特別なんて事ないんじゃないか?」



 種族平等を是とするタイタンの教えと「ヒト種至上主義」を掲げるユピテル教。

 タイタンの姿をしたタイタンの角がユピテル教団の本拠地を破壊した。

 その事でヒト種の目が覚めた。あろうことか、それまでは敬虔なユピテル教信者ですら。 

 まるで洗脳が解けたかのように‥‥‥。


「俺たちは今まで何をしていたんだ?」

「獣人達にとんでもない事を‥‥‥」


「すまなかった!! 許してくれ!!」

「お、おう‥‥‥」


ーーーーーーーーーーーー


「くそっ!! 何が起きた!? 何故急に洗脳が解けたんだ!? 先程の爆音と関係が‥‥‥?」

 ユピテル教祖ユリウスは焦っていた。急に信者の目が戻ってしまったからだ。

 身に覚えのあるユリウスは数人の側近を引き連れて急ぎ王宮から本教会に戻ってきて、無惨な本教会の姿を目にした。


「そんな‥‥‥、馬鹿な‥‥‥!!」


 ユピテル教本教会には秘密があった。三階の教祖の部屋は誰も入れなかった。そこにはある魔道具が設置されていた。


「洗脳の魔道具」


 ユリウスの作り上げたこの魔道具は魔力を注ぐ事で周囲数メートルのヒト種の精神に作用する。そして本教会の尖塔が増幅、拡散の装置として機能していた。

 さらに入信希望者にはユピテル教のシンボル丸十字架のペンダントを配った。それが魔道具の受信装置だった。


 魔道具本体が破壊された事で、側近である一部の狂信者以外の洗脳が解けてしまった。


「ぐぬぬ‥‥‥、なんという事だ。港へ向かうぞ!!」

「「「はっ!!」」」


ーーーーーーーーーーーー


「頭の中のもやが晴れたようだ、余は今まで何を‥‥‥?」

 タイタン王国国王も例外ではなく、ユピテル教に洗脳されかかっていた。

 国王の記憶が繋がってきた。


「余は今までなんという事を‥‥‥」

「陛下、狂信者どもが逃げます、先に捕らえねば!」


 それまで首にかけていた丸十字架を床に投げつけた。

「もちろんだ、逃すな、必ず捕らえよ!」


ーーーーーーーーーーーー


「よし、グランホルストに乗り込むのだ!」

「ははっ!」


 現在のグランホルストは教団預かりとなっていた。乗組員も全員心からの信者だった。


「出航用意!!」

「教祖様、船を動かすのにいささか魔力が足りませぬ」


「良かろう、我が魔力を提供してやる」

 教祖から魔力が溢れて、魔導エンジンが動き出した。


「出航準備完了しました!」

「待て、あの像だけは破壊せんと気が済まん。魔導砲の用意を‥‥‥」


「魔導砲用意!!」

「魔導砲! 用意始め!!」


「おのれ、上手くいっていたものを‥‥‥、台無しにしてくれよったわ」


「魔導砲、発射準備完了!」

「照準よーし!」


「撃てぇ!!!」


ドンッッッッ!!!!!!!!

ズガァァァーーーーーーン!!!!!!!!


「目標に命中を確認‥‥‥目標大破! 破壊確認しま!? さ、再生してます!!」

「!? 何ぃ? 見せてみろ!」

 望遠鏡を奪い取って覗いてみる教祖ユリウス。

 

「‥‥‥本当だ。なんだ、アレは‥‥‥? 本当に神の奇跡なのか‥‥‥?」

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