第81話 誰かと思えば

 ある日、森で果物や薬草を採取してたはずのシルヴィアが家の下に戻ってきた。

「アウルム、ちょっといいかな?」

「どうしたの、シルヴィア?」


「人が森で倒れてたの。家に連れて帰ってもいい?」

「わかった。俺も行く」


 森の奥、家の比較的近くで倒れていたのは、冒険者っぽい服装の男性だった。まぁうちの近くで死なれても寝覚めが悪いので助けるとするか。


 気絶しているようだ。金属の装備もあるようなので少し浮かせて担架のような金属プレートを下に滑り込ませる。こうすれば運びやすい。


 宙に浮かせて、俺たちも飛び家に入る。金属プレートを変形させてそのままベッドを作る。


 と、そこで目を覚ました。

「ここは‥‥‥? アウルム!?」


 その声は‥‥‥?

「アリス様!?」

「アウルム‥‥‥、お父様とお母様が‥‥‥、助けて‥‥‥」

 アリス様はそれだけ言うと再び力尽きて横になってしまった。相当疲れているのだろう。


 長かった髪は切ったのだろう。まるで男性の冒険者だ。


 何があったのだろうか?

「シルヴィア、すまないが回復魔法をかけてやってくれないか?」

「良いけど‥‥‥、この子はタイタン王国の‥‥‥?」

「あぁ、公爵令嬢だ。公爵様は多種族擁護派の人で、俺が二年間世話になったお方だ」


「‥‥‥わかったわ。で、これからどうするの?」

「話を聞いてみないとわからないけど‥‥‥」



 アリス様が目覚めた。

「アウルム、良かった。無事だったのね」

「アリス様こそ、こんな所までよくぞご無事で‥‥‥」


「そう! お父様とお母様が侯爵に捕まってしまって‥‥‥」


 話を聞くと、あの後カリュプス侯爵の悪事を国王に報告しようとブラス様は王宮へ。そこで待ち構えていた侯爵と私兵に謂れのない嫌疑をかけられ釈明する間も無く捕縛され投獄されたと言う。


 公爵邸の方もほぼ同時に私兵が乗り込んできてヒルダ様を捕まえ去って行ったと言う。


 アリス様は冒険者活動をしていたので無事だったが、追手がかかると噂を聞いて逃げてきたのだと言う。


「公爵という立場上すぐに処刑とかにはならないと思うけど‥‥‥、最近の侯爵は本当におかしいわ。何かに取り憑かれてるとしか思えない‥‥‥」

 

「なるほど、わかりました。アリス様はここでしばらくお休みください。シルヴィア、頼んだぞ」

「アウルム、行くのね? 気をつけて」

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