第75話 家を建てよう

「おぅ、コパーさんから聞いてるよ、家の上物だけ欲しいんだって? 妙な話が来ちまったなぁってよ。どんな家にするんだ?」

 この人は大工のトウリョウさん。

 ‥‥‥偶然かな? うん、きっと偶然だな。



「こんな感じのシンプルな家で良いんですけど。どのくらいかかりそうですか?」


「こんな感じなら外側三日、内装三日だな」

「そんな早く出来るんですか?」


「建築魔法ってのがあるからよ。材料さえちゃんとあればそんなにかからねぇんだよ」

 ほう、すごいんだな。さすがは異世界。


「まぁ、この街で待っててくれや。出来たら知らせるからよ」

「わかりました」


 まぁ今日含めて7日か、それくらいなら大丈夫だろ。目立つような事がない限り。


ーーーーーーーーーーーー


 しかし、俺の想定は甘かった。




 って言うと何かあったっぽいけど特に何も無かった。

 ちゃんと目立たないように、宿からはあまり出ないように、ひっそりと過ごしていたので問題無かった。


「おう、出来たぞ。見に来てくれ」

「おお、とても良いじゃないですか!」

「うん、すごく良いわね」


「そうだろう? 材料も良かったのさ。あの木材が定期的に手に入るなら仕入れても良いなあ」

「あぁ、それなら‥‥‥」


 住む予定の所はまだ木がたくさん生えてる。家にいるときに時間が有れば切って収入にしても良いかもしれないな。


 ちゃんと注文通り家の下の部分に床面積よりも一回り大きい金属板も取り付けてくれてるな、よし!


「ではいただいていきますね。『ストレージ』」

 ヒュッ!! と収納された。


「ずいぶんと便利なスキルだなぁ? 俺の仕事、手伝ってくれないか?」

「あはは、冒険者を引退したら考えますね」


ーーーーーーーーーーーー


 泉の近くの予定地に戻ってきた。

「でも家の上物だけで土台はどうするの?」

「うん、こうする」


 ストレージから鉄を取り出して10メートル程の鉄柱を四本つくる。先端をドリルのようにして地面に約半分くらい突き刺していく。

 家の下部の金属板を浮かせると家をもちあげられる。

 うーん、さすがに重いな。集中しなきゃ。


 鉄柱の先に家を乗せてくっ付けてしまえば、我が家の完成だ。



「アウルム‥‥‥、階段がないじゃないの!! どうやって入るのよ!?」

「え? ほら、こうやって飛べば‥‥‥」


「あなたがいないときはどうするのよ!?」

「あぁ‥‥‥そうか。そうだよな。縄梯子でも付けておくか?」


ーーーーーーーーーーーー


 ストレージから家具類を出して配置する。

 テーブル、椅子、ベッドは大きめのを一つ。


 一つ‥‥‥‥‥‥。

 うん、そう。そういう事です。



「あ、あはは。いざとなると緊張するね」

「シルヴィア‥‥‥戻って来てくれてありがとう。もうどこにも行かないでくれよ」

「‥‥‥うん。ずっと一緒にいようね」


 どちらからともなく俺たちは抱き合い唇を重ねた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る