第60話 公爵邸にて


「こちらは恩人のアウルム殿だ。最高のもてなしをしてやってくれ」

「かしこまりました。アウルム様、ようこそ公爵家へ。私がこの家を取り仕切っております執事長のセバスでございます。ミランダ!」

「はいっ! セバスさん」


「貴女が部屋までご案内してあげなさい」

「わかりました。アウルム様、ご案内致します」

 ミランダさんはメイドさんらしい。

 あれ? 頭にネコの耳が‥‥‥。

 スカートの穴から尻尾も‥‥‥。

 獣人ってやつか!!


 お屋敷だけあって広いなぁ。結構歩いたぞ。

「こちらがお泊まりいただく部屋になります。どうぞごゆっくりとお寛ぎください。何か御用がございましたらそちらの呼び鈴でお知らせください」

「ミランダさんはネコの‥‥‥?」


「猫獣人のミランダです。以後よろしくお願いします」

「つかぬことをお伺いしますが、語尾に『ニャ』って付かないんですか?」


「‥‥‥‥‥‥付きません」

 ‥‥‥‥‥‥ホントかな?


ーーーーーーーーーーーー


「アウルム様、お食事のご用意が出来ました。ご案内致します」

「あぁ、どうも。ありがとうございます」


 案内された部屋に入ると煌びやかな部屋に長いテーブル、豪勢な料理が並んでいた。

「‥‥‥すごい」

 まるで貴族様の食事風景を絵に描いたような‥‥‥。あ、貴族様だったか。


「アウルム殿、こちらに。そんなに緊張しないで寛ぎたまえ、ハハハ」

「恐れ入ります」


「妻のヒルダでございます。この度はありがとうございました」

「アウルムです。こちらこそこんな歓迎してもらってありがとうございます」

 ヒルダ様は綺麗な方だ。二十代にしか見えないけど。青くて長い髪が綺麗に整ってる。


「父の命の恩人と伺いました。ありがとうございました。娘のアリスと申します」

「アウルムです。こちらこそありがとうございます」

 アリス様は歳の頃でいえば12歳くらいかなぁ? 可愛いと綺麗を足したような。ヒルダさん同様綺麗な青い髪だ。なんか少し顔が赤くなっていたようだけど。


 晩御飯はすごいコースメニューだった。

 前世でも一度だけ食べたっけかなぁ、テーブルマナーとか忘れちまったぞ。


「もっと気楽に楽しんでくれ。マナーとかも気にしなくてよろしい」

「ありがとうございます」


「命の恩人に乾杯!」

「「「乾杯」」」


ーーーーーーーーーーーー


「ではアウルム様は冒険者で生計を立てていると‥‥‥」

「そうですね。それとアウルム様はやめてください。そんな立派な人間ではないので」


「そんな事ないですわ。でも冒険者業は大変でしょう。ご苦労も多いでしょうし」

「まぁ、それしか生きる術を知らないものですから‥‥‥」

 さっきからずっとアリスお嬢様が話しかけてくる。本人はまぁ楽しそうだから良いんだけど。



「ふむ‥‥‥、ヒルダ、アリス。どうだろう? 彼をアリスの護衛として雇うというのは‥‥‥?」

「まぁ、それは良いですわね」

「私も賛成ですわ」


「アウルム君、君さえ良かったらアリスの護衛として雇いたいのだが‥‥‥」

「えぇ? ハンニバルさん含めた近衛騎士隊の方々がいるのでは‥‥‥?」


「彼らだけではどうしても人手が足りない事もあるのだよ。今朝のような事もあるのでね」

「うぅーん、でも私はどこの馬の骨ともわからないですよ。それをいきなりお嬢様の護衛にとなるのは‥‥‥」


「ハハハ、それに関しては問題無いよ。詳しくは言えなくてすまないが『人物鑑定』を会った時からさせてもらっている。もし君が刺客だったらもう生きてはいないから」

 怖えぇ!!! なんだそれ!?


「こういう立場なものでね。仕方ないんだよ。で、さっきの話だが出来たら受けてもらえるとありがたい。急な話だから明日返事をくれ。今日は泊まっていくと良いだろう」

「‥‥‥わかりました。ありがとうございます」

 と、こうして泊まっていく事になった。

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