第33話 決闘後

 賭け金の配当を受け取った。手持ちの金が約二倍になった。

 また相手の金はギルドを通して支払われるらしい。まぁあれだけバカにされたから別になんとも思わない。


「お前のせいで大損だよ!!」

「だっせぇな、おい?」


 観衆はほぼみんな相手に賭けていたので、大損したようだ。倒れているイアンとやらに文句を言いながら帰っていった。


 そのイアンとやらのパーティーの仲間らしき奴らが睨んできたけど、お門違いだよ。ケンカふっかけてきたのも、手持ちの金全てって言ってきたのも、それで負けたのも全部倒れてるソイツが悪いんだからな。


 訓練所を出たら、二人に抱きつかれた。


「アウルム、さすがだわ!!」

「あの角度で当てた鉄球があんな動きするはずがない。主殿の能力のせいじゃな?」


「だが目立ってしまったな。この町にずっといる理由はない。ダンジョンは他の町にもあるし」


「そうね、ミスリルの剣を受け取ったら他の町に移動しましょ」

「その方が良いじゃろうの」


「よし、決まりだ」


ーーーーーーーーーーーー


「嬢ちゃん。ほれ、出来とるよ」

「ありがとう、ガンドルフさん。抜いてみても良い?」

「もちろんじゃ」


 ヒュッ!! ヒュッ!! ヒュン!!!


「すごく手に馴染むわ! ありがとうございました」

「あぁ、ここを離れるんだって? 気をつけて行くんだぞ」



 ギルドで依頼を見ていたら、行商人の護衛依頼があった。話を聞くと隣町までの護衛としてついて行く話らしい。

「ちょうど良いわね? これにしましょ」

「そうだな、ついでに稼げるしな」


「我はこの姿のままでよろしいか?」

「別に構わん。これが乗り合い馬車なら剣に戻ってもらうところだが」


「我は馬車の上で周辺の警戒に努めまする」

「わかるのか?」


「我は魔剣です。魔力の察知には敏感ですので‥‥‥」

「なら、任せてみようか」




 行商人の荷馬車が揺れながら進んでいく。ちょうど森の道に差し掛かった辺りでルーが叫んだ。


「森の中3時の方向200メートル、コボルトが多数じゃ!!」


 警戒態勢から戦闘態勢に移行する。俺は金属粒子にして撒き散らす。シルヴィアは剣を構えた。

「お二方、我にお任せあれ」

「「ルー!?」」


 ルーがコボルト達の前に躍り出た。


「この姿で暴れるのも久方ぶりじゃ‥‥‥ハッ!!!!」


 ルーが手刀を振ると当たっていないにも関わらずコボルトの首から血が噴き出した。返り血を浴びたルーは薄ら笑いを浮かべながら、まるで踊るように次々とコボルト達を血祭りに上げていく。

 一分もしないうちにコボルト達は全滅した。


「ふぅ、コボルト如きに手間取ってしまい申し訳ない。全盛期の動きには程遠いのう」

「「‥‥‥‥‥‥」」

 見つめ合う俺とシルヴィア。

 うん、あいつはあまり怒らせない方がいいな。


「手刀が当たってなかったように見えたが‥‥‥?」

「あれはこの手刀から放つ『真空刃』という剣術の一つですな。あれしきの威力とはほんに情けない‥‥‥」


「全盛期はどれくらいの威力だったの?」

「山を斬り、大地を割りました」


「「‥‥‥‥‥‥」」

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