第32話 決闘

「わかった、受けて立とうじゃないか」

「よし、ギルドスタッフ! 決闘場を借りるぞ!」


 冒険者のイザコザは割とよくあり、話し合いが決裂した場合は決闘で決めたりするため、訓練所を決闘場としてレンタル出来るそうだ。

 それ以外の冒険者同士の喧嘩は御法度で、処罰の対象となるらしい。

さらに決闘は賭けにする事でギルドも儲かるらしい。


「よっしゃ、イアンに賭けるぜ!」

「おーし、俺もだ!」


「おいおい、これじゃ賭けにならねぇよ。誰かあの兄ちゃんに賭ける奴はいねぇのか?」

「私が賭けるわ! アウルム、全額出して!」

 と、シルヴィアだ。まったく‥‥‥。


「絶対勝てる賭けに乗らない手はないわ」

「道理じゃな」


「‥‥‥‥‥‥」

 もう、いいや。負ける気はしないからな。


 ギルドスタッフが審判もするらしい。

「双方、準備出来たか?」

「俺はいいぜ」

 相手はスラリと厚めの両手剣を抜いた。

 決闘だから死ぬ事もあるらしい。


「俺も大丈夫だ」

 ポケットから鉄の球を取り出した。ちょうど野球ボールくらいのサイズにした。


「では、始め!!!!」


「なんだ? その球は。投げてきてみろよ。打ち返してやるよ」

「じゃあ、ありがたく‥‥‥」


 日本の記憶で見た野球選手のピッチング。昔の選手のトルネード投法で鉄球を投げる。


 もちろん速くはない。相手に届くかどうかというところだ。もちろん剣で打ち返されるだろう、普通なら。


 カキーーーンッ!!!!

 

 高校野球中継のような金属音が鳴り響いた。

 鉄球は放物線を描いてスタンドに‥‥‥。


とはならず、インパクトの瞬間にスキルを使い軌道を大幅に変更、さも自打球かの様に相手の顎にヒットした。


 相手はガラ空きの顎に鉄球をくらい、脳を揺さぶられて、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。


「「「‥‥‥????」」」


 観衆の皆さんも何が起きたかわからない様子だ。

 審判が駆け寄り相手の確認をする。

「勝者 アウルム!!」


「きゃー!! やったわ!」

「あっという間に終わってしもうたの」


 ふぅ、やれやれ。上手く誤魔化せただろう。

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