第126話 物理で解決しました sideケーシー

「どこに行くのだ?」


 室内に聞き慣れない女の声。

 俺は驚いて振り向いて誰何する。


「だ、誰だ!!ここがどこかわかって・・・」


 声がした方向を向くと、そこには女が三人立っていた。

 それは、他国の女で、その見た目はどの女もとても美しい。

 しかし、その三人の放つ空気はとても冷たいものだった。

 というかこいつは・・・


「す、周防!?貴様周防の・・・」

「ごきげんよう、ケーシーのご頭首。」


 馬鹿な・・・何故・・・

 まさか、周防の報復だったのか!?

 そんな戦力を持っていたのか!?

 あの国は、事なかれ主義じゃなかったのか!?

 混乱するがそれどころではない!!


 女どもは依然冷ややかに俺を見ている。

 しかし、女だけでここに来たとは思えない。

 他の戦力はどこに隠れている?


 くっ!?こうしてはおれない!!

 逃げなければ!!


「逃さん。」

「無理ね。」

「無理だよ〜。」

「愚かな・・・」


 窓の方には少女が4人居た。

 そこに居たのも綺麗な女どもだ。

 

 な、何が起こっている!?

 気が狂いそうだ!


「き、き、貴様ら!こんな事をしてただで済むと・・・」

「黙りなさい、ケーシー。あなたはもう終わりです。今あのバカ息子の所に送ってあげましょう。」

「な!?」


 その言葉に、一瞬頭が真っ白になる。


 デビット!?

 殺された!?

 そんな!!


「ジュディは!?あいつにはジュディがついて・・・」


 ジュディは特殊部隊から引き抜いた最強の女兵士だ!

 そんなに簡単に殺されるわけがない!

 ましてや、戦争も知らない腑抜けたこいつらの国の軍隊が!

 勝てるわけが無いんだ!


「ああ、あのお付きの者ですか?美玲?」

「はい、お嬢様。ケーシーのご頭首、あの者であれば、私がこの手で処断しておりますが何か?」


 周防の小娘の側に居た女・・・あれは、報告にあった轟とか言うやつだ。

 なんでもないようにそう言い放つ轟。

 嘘だ、と思いたかった。

 しかし、ヤツの放つ空気が、実際の事だと強く思わされる。


「・・・馬鹿な・・・くそっ!!よくも息子を!!」


 懐から銃を取り出す。

 この距離なら外さん!

 息子の仇!!


「おのれ!!死ね!!」


 バァンッ!!


 周防の小娘を撃った。

 だが、


「傷つけさせないよ。」


 突然視界に現れた少年が一人、目の前に立ちはだかり・・・そして掌から何かを落とす・・・ま、まさか・・・!?そんな馬鹿な!?


「くそっ!死ね!!死ねぇ!!!!」


 バァン!バァン!!バァン!!バァン!!!バァン!!!!・・・カチカチ・・・


 全て撃ち尽くし・・・しかし、それでも目の前に立っている少年。

 その掌から、何個も小さな鉄の塊が落ちる。


「それじゃあ僕は殺せないよ。」

「ひぃぃ!?そんな馬鹿なぁ!?」


 思わず後ずさる。

 こいつ人間じゃない!?


「悪あがきはそれで良いかしら?」


 周防の小娘からの言葉で膝が落ちる。

 そうだ!?

 

「も、もうすぐ、俺の取り調べに当局が来る!貴様らもただでは・・・」

「しつこいですね。終わりだと言ったでしょう?」

「まったくだな。ジェミニ、やるぞ?」

「ええ、良いわよ。」


 室内が光り輝く。

 何が起こっている!?


 そして、室内の光がおさまると、何も起こって・・・いや、まて!

 使用人はどこに・・・


「関係の無い者はこの館から退避させた。ここに残るのは貴様のみだぞ?さて、美咲、良いか?」

「はい、お願いします美嘉さん。」


 身ぎれいな女が一歩前に出る。

 見た目は綺麗だが、その身に宿る雰囲気が、こいつが化け物だと強く思わせる。

 身体の芯から震えが止まらない。


 女がニヤッと嗤う。


「さて・・・よくもまぁ、妾達の命を狙ったものよ。貴様、覚悟は出来ておろうな?」

「な、な、なんの事だ?俺はそんな事していな・・・」

「何を言うか。軍隊を送り込んで来ただろう?あやつら、妾達の命をしっかりと狙っておったぞ?まぁ、お返しに、全て塵にしてやったがなぁ?ついでにこの国の軍も蹂躙してやったわ。良い運動になった。」


 コロコロと嗤う。

 愕然とする。

 俺は・・・一体、何を相手にしていたんだ・・・?


「さて・・・貴様にはこの家ごと消滅して貰うとしよう。美咲、最後に何かあるか?」

「・・・あなたの馬鹿息子には大変迷惑を受けました。子の責任は親の責任です。しっかりと責任を取って下さい。次は子育てに失敗しないと良いですね?」

「・・・」


 何も言葉は出ない。

 虚ろな目を周防の小娘に向ける。


「さて、ではな、傲慢な愚か者よ。世の中には、金よりも強い存在がいると最期に知れて良かったのぅ?さらばだ。」


 目の前から全ての人が消える。

 

 ・・・助かったのか?


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

 ・・・なんの音だ?

 外?


 窓から外を見ると・・・空から、この家と同じくらいに大きな石の杭のような物が落下してきていた。

 どうあがいても、もう逃げられない。

 

 ・・・はは。

 本当に俺は一体、何を相手にしていたんだ?

 何故、こんな事になったんだ?


 考えられたのはそれだけ。


 ドガガガがガガガがガガガ!!!!!!


 という轟音が最期に聞こえたものだった。

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