第127話 ようやく落ち着き・・・ませんでした

 

「ふぅ。帰ってきたね。」


 今は、向こうから帰ってきて、自宅なんだ。

 別荘にもう一泊ってのも考えたんだけど、みんな精神的にも疲れているから、やっぱり自宅に帰りたいって思ったんだよね。


 それぞれ入浴を終えて、居間で心を休ませる前に、みんなで温かいハーブティーを飲みながら話をしてるんだ。


「皆さん、本当にご迷惑をおかけしました。そして、ありがとうございます。」

「良いのよミサキ?仲間なんだからさ?」

「・・・ありがとうございます、ジェミニさん。でも、やはり一言言わせて下さい。皆様、私の問題の解決の御尽力、ありがとうございました。特に、美玖さんと翠さんは怖かったでしょう?手まで汚させてしまって・・・本当にごめんなさい。瞬さんも・・・すみませんでした。」

「気にしないで美咲ちゃん!わたしだって・・・仲間なんだから!」

「そうですよ?私たちはいつも一緒です。死ぬ時も、生きる時も、地獄の果まで、ね。」

「美玖ちゃんと翠さんの言う通りだよ。美咲、気にしないで。僕達がやりたくてやったんだからさ?」

「・・・ありがとう・・・ございます・・・」

「私からも、一言言わせて下さい。皆様、ありがとうございました。皆様に鍛えて頂いたおかげで、傷一つ負うこと無く対処できました。ありがとうございました。」


 涙ぐみながらお礼を言う美咲と、微笑みながらそういう美玲。

 そんな二人に微笑むみんな。

 美咲は悪くないんだ。

 全ては、軍隊まで率いてやってきた向こうの責任なんだから。


「それにしても、あの国の軍隊相手に蹂躙して来るなんて・・・ヤバいね。」

「本当ね。こっちでもニュースでいっぱいやってたわよ?軍本部が壊滅的な被害だとか、歴史に残るテロだとか、渦中のケーシー家の突然の消失とか。」


 実は土魔法でケーシーの家を頭首ごと潰した後、土魔法を解除したから、地面には底が見えない位の大穴があいていたんだ。

 これくらいミステリアスな方が、わからないんじゃないかってさ。

 おかげで世界中で大混乱。


 もしかしたら、他国の衛星兵器なんじゃ?

 なんて話を筆頭に、あの国の陰謀論、軍事実験の失敗、宇宙人が攻めてきた説、色々出てるみたい。


 その中で、この国の人の中には「異世界人がやったのでは?」というのを見たときには吹いた。

 流石はサブカルチャー大好きな国民性だなって思ったよ。

 当たってるもん。

 みんな想像力豊かだよね・・・


 幸い、僕達の存在はバレていないみたい。

 美嘉が「絶望の黄昏」で、周囲を包んで見えないようにしていたからね。

 いい面も悪い面もあるけど、でも、僕達は納得しているし、何かくれば対処するだけだ。


 もう、躊躇しないしね。

  



「・・・意外ね。」


 ポツリとジェミニが僕を見ながらそう呟いた。

 何がだろう?


「それは、私も思いました。瞬さんはもっとショックを受けるかと思っていましたから・・・」

「・・・そうね。瞬は優しいから、傷ついたのかなってさ?」


 美咲と美玖ちゃんがそう言うと、みんなも頷く。

 ・・・そうかもしれない。

 前なら、そう思っていたと思う。

 でも、


「元々、向こうでも盗賊や魔族、それに悪事を働く貴族なんかを斬ったりはしてたからね。初めてでは無いんだよ。・・・それに、僕はもうみんなと一緒に幸せに生きるって決めてるんだ。だから、それを脅かすモノには容赦するつもりは無いよ。これは僕の決意だ。」


 みんなを見てそう言う。

 そう、僕はもう迷わない。

 みんなと生きるためなら、この手を汚すのだって厭わない。

 

 それが僕の覚悟だから。


 みんなはそんな僕の言葉を聞いてまじまじと見ていたけど、美嘉とジェミニ、それとフォーティだけは苦笑していた。


「・・・あ〜あ。ついにシュンにその決意をさせちゃったかぁ・・・そうさせないようにしようって思ってたんだけど・・・」

「そうね・・・嬉しいやら悲しいやら・・・でも・・・」

「仕方があるまい。瞬も男子だったという事だ。それは我々だけは否定はしてはいかん。」

「え?どういう事?」


 美嘉とジェミニとフォーティの言葉に翠さんが不思議そうに聞き返してた。

 そして、僕の心を読んだ美嘉たちがそれを説明し、みんなも苦笑した。

 

 ・・・いいもん。

 僕が納得してたらそれで、さ。



「それにしても、もう流石にトラブルは終わったかな?」


 僕が拗ねているのに気がついた美嘉が、空気を変えるようにそう言った。


「う〜ん・・・まだじゃない?まだ、なんかあるよ。尻尾がまだ反応してるもん。」

「確か、あの管理者様の奥方様が、ミカさんにも何かあるって言っていませんでしたか?」

「リリィの言う通りだな。ミカのはなんだろうな?」


 クォンとリリィ、それとラピスがそう呟く。

 本当に、なんだろうね。


「ま、それはそれ、これはこれ、よ!取り敢えず、今日は疲れたし、もう良いんじゃないかな?明日は日曜日だし、少し遅めに起きても良いんだから、心の運動してから寝よう!」


 心の運動?

 何それ?


「と、いうわけで、行くよシュン?」

「へ?どこへ?」

「こっちこっち。」


 美嘉に手を引かれて立ち上がると、そのまま寝室方向へ・・・ちょっと!?流石に不謹慎じゃ・・・

 みんなもそう思うよね!?え!?高ぶって寝れない!?なんで!?ちょっとみんな・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ!?

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