第117話 美玖ちゃんが狙われました

 年明けして1週間がたった。

 実は、最近美玖ちゃんの元気が無い。

 どうしたのかなって思って聞いてみたんだけど・・・


「・・・実は、専務から突然マネージャーの変更を言い渡されたのよ。文句言ったんだけど、聞く耳を持ってくれなくって・・・」

「・・・急だね。」

「そうなのよ。わたし、ずっとマネージャーの沙織さんにお世話になっていたから、なんだか悲しくって・・・それに・・・変更の後、一本の電話が沙織さんから掛かって来たの。それがね?」


 美玖ちゃんから電話の内容を聞く。

 それは・・・




side美玖


「え!?変更ですか!?」

『ええ、そうなの。急でしょ?いきなりあのバカ息子からそう言い渡されたのよ。』


 わたしは、沙織さんからの電話に驚いた。

 いくらなんでも急すぎる!

 ちなみに、バカ息子とは現在の社長の息子の専務の事だ。

 専務は、本人は合理主義者を気取ってるけど、実際にはただの守銭奴な上、長いものには巻かれる形質を持つ癖に、野心だけはデカいヤツ。

 わたしは大嫌い。

 勿論、沙織さんも嫌いだと思う。

 じゃないとバカ息子なんて言わないだろうし。


『それで、私はMikuと会うのを禁じられたわ。変でしょ?』

「はい。変だと思います。」


 いくらなんでも、それはおかしい。


『解任の理由は、大きな取引先に不信感をもたせたから、ですって。それってあのアイドル達の事務所の事だと思うのよね。Miku?気をつけなさい?これは、多分、何かあるわ。私も、社長に直談判するつもり。ただ、現在社長は入院中でしょ?秘書経由で話をしようとしたら、取り次げないって言われたのよ。絶対おかしい。社長が私に会わないわけがない。今は携帯も持っていないらしいから、電話では連絡取れないし、ちょっと時間がかかりそうなの。』


 沙織さんの訝しむ声。

 以前、沙織さんから聞いた事がある。

 沙織さんは、わたしがいる事務所の社長から、色々あって直々に雇われた経緯を持っているそうなの。

 ちなみに、社長は凄く良い人。

 いつも、『モデルは我社の宝だ。大事にするように』って周りに言っていて、いつもわたし達のことを気にかけてくれているの。

 そして、社長の沙織さんへの信頼は厚い。

 だからこそ、事務所として売り出したいわたしの専属マネージャーに就任したって聞いたわ。


『もしかしたら、何か圧力が掛かっているかもしれない。Miku?用心しなさい?絶対に一人になっちゃ駄目よ?良いわね?』

「はい!ありがとうございます!」



side瞬


 という感じだったらしいんだ。

 確かに、怪しいね。


「・・・ちょっと心配ね。クォン?どう?」

「・・・尻尾にビンビン来る。何かあるよ。絶対。」


 ジェミニが険しい顔でクォンを見ると、クォンは難しい顔をしてそう言った。


「やっぱりね。ミク?これ持ってて?」

「・・・これは?」

「お守り。絶対肌見放さず持ってるのよ?で、何かあったら、魔力を流しなさい?すぐに駆けつけるから。良いわね?」

「わかった。ありがとジェミニさん。」

「どういたしまして。」


 美玖ちゃんは嬉しそうにジェミニにお礼を言っている。


 ・・・ちょっと心配だね。

 でも、もし、美玖ちゃんに手を出すのなら・・・僕は絶対に許さない。


「・・・ちょっと、こちらでも調べて見ましょう。美玲?」

「はい、先方のアイドル事務所と美玖様の事務所の関係と、背後関係を洗って見ます。」

「場合によっては、美玖さんを『周防』の関係事務所に引き抜きます。美玖さん、良いですね?」

「・・・うん。ちょっと複雑だけど、その時はお願い。ありがとね美咲ちゃん。」

「美咲さん、よろしくお願いします。」

「良いんですよ、美玖さん、翠さん。あなた方はかけがえのない仲間ですから。」


 こうして、僕達は用心して動く事になった。

 そして、その間に判明した事も。

 その結果に僕達は驚き・・・憤慨する事になる。

 結果、


「この際です。美玖さんには申し訳ないですが、思い知らせてやりましょう。」

「うん!わたしも許せない!!だから、囮になるよ!!」


 と、気合を入れる事になった。

 

 僕達は、その対策を練って過ごし、そして・・・ついに動きがあった。

 

 それは1月の中旬の日曜日。

 翌日は成人の日で休日。


 そこに、突然美玖ちゃんの撮影が舞い込んだ。

 それも、件のアイドルグループと一緒との事。


「・・・それじゃ、行ってきます。」

「ミク、気をつけて。何かあれば・・・」

「うん。すぐ知らせるから。」



 僕達は、全員有事即応体制でその日を過ごしていたんだけど・・・


「!?反応があったわ!すぐに行くわよ!!」


 ジェミニの突然の叫び声!

 僕達がみんなで反応のあった付近に転移すると、スーツを来た多数の大人がいる建物があった。


「・・・なんだね君たちは。ここは部外者の立ち入りを現在禁止しているんだ。さっさと・・・」

「踏み込むよ!」

「な・・・!?お、おい!そいつらを止め・・・」


 僕達は一斉に駆け出す。

 美玖ちゃん!すぐに助けるからね!!

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