第101話 無人島1日目 みんなの目的がわかりました

「さて、これだけ奥に来たら大丈夫かな?」


 僕は走る速度を落とし、周りを見回す。

 ここは、リリィの張った結界のきわくらい。

 周りは鬱蒼とした森だけど、少し小高くなっており、海が見える。

 

 いい景色だなぁ・・・ここ最近、色々と・・・うん、色々とあってホッとする景色だ。

 

 僕は少し大きめの石に腰をかけ、のんびりとそんな風景を見る。

 はぁ・・・落ちつくなぁ。


 魔法もスキルも禁止かぁ・・・

 まぁ、そうじゃないとすぐに見つかってつまらないもんね。

 後は、どうやって斥候のクォンの目を誤魔化すかだけど・・・


 一応、いくつか細工をして来たから、途中で逆に行ったと思ってる筈だけど、どうだろ?


 まっ見つかったならそれはそれで別に良いか。

 罰ゲームがあるわけじゃないしさ。


 ふぁぁぁぁ・・・それにしても、眠い・・・

 良い天気だし、眺めも良いし、ちょっと寝ようかな・・・








 この時、僕はそんな風に考えていた。

 もし、危機察知のスキルをオンにしていたら、ビンビンに反応していただろうね。

 このレクリエーションの目的を考えたらさ。

 それは後に・・・まもなく判明するんだけど。







 僕は、腰をかけた状態でうとうとする。

 長い旅の中ではそんな事は何度もあったからね。

 

 がさっ


 ん?

 物音?

 

 僕は目を覚ます。


「シューくんみーつけた♡」

 

 後ろから声が聞こえた。

 クォンか・・・やっぱり本職の目は誤魔化せないか。

 

「みつかっちゃったか。流石クォンだね・・・ってなんで!?」


 僕は後ろを振り返りながらそう言うと、驚く。

 何故なら、クォンは水着だったからだ。

 

 なんで森の中で水着!?

 危なく・・・ないか、僕達は。


「んっふっふ〜♡シューくんごほーびちょーだい♡」

「はいはい、で、結局ご褒美って何?」

「そ〜れ〜は〜・・・いっただっきまーす♡」


 クォンが飛びついてきた。


「ふぇ!?ク、クォン!?ここ、外だよ!?」

「そう!それがご褒美♡みんなも多分一緒だよ?」

「ええ〜!?」


 嘘でしょ!?


「にひ♡シューくん?んちゅー♡」

「んむ!?ちょ、クォ・・・はう!?」


 僕は大自然の中、クォンに食べられました。








「はぁ〜♡さいこー♡」

「・・・」


 とてもいい笑顔のクォン。

 僕はムスッとしている。


「どしたのシューくん?」

「これ、誰が考えたの?」

「ミカ。」

「・・・やっぱり!」


 魔王め!!

 こんな事を・・・あれ?

 

「・・・みんな賛成したの?」

「うん。」

「美咲達も?」

「うん。」

「・・・翠叔母さんも?」

「うん♡」

「・・・」


 ・・・ヤバい。

 絶対に見つからないようにしないと!!


「ぼ、僕、場所変えるから、服返して!」

「・・・」


 クォンがニコニコしたまま、僕の服を後ろ手に隠す。


「・・・ねえ、クォン?返して?」

「い・や☆」

「ええ〜!?なんでさ!!」

「にっしっし〜♡あれ?良いのシューくん?近くに誰かいるよ?」

「!?く、くそ!クォンのあほ〜!!」

「あっはっは〜!頑張れ〜!シューくーん!」


 僕は逃げ出した。

 素っ裸で。


 その後、


「シュン、見〜つけた♡」

「うわぁ!?み、美嘉!?」

「あら♡いい格好ね?いただきまーす♡」

「ひゃううう〜!?」



「シュン。何故そんな格好に?」

「ら、ラピス・・・それがね?」

「いや、良い。手間が省ける。というわけで・・・」

「はうっ!?」



「・・・瞬。見つけたぞ?」

「ふぉ、フォーティ・・・」

「いい眺めだな瞬?そうは思わないか?」

「そ、それはそうだけど・・・なんで距離を詰めてくるの?」

「それはな・・・お前を食べるためだ!」

「いや〜!!」



「きゃ!?」

「ん?美咲の声?・・・美咲!?大丈夫!?」

「・・・ありがとう瞬さん。やっぱり優しいね?」

「・・・ねぇ美咲、離して?」

「駄目♡ん♡」

「んぐっ!?」



「瞬様、見つけましたよ。お嬢様も・・・もう終わられましたか?」

「あ、美玲?ええ、終わったわよ。大自然の中でするのも、開放感があって良かったわ。とても良い経験になりました。じゃあ、私は向こうに行くから。」

「はい、ありがとうございます、お嬢様。それでは瞬様?愛して頂きますね?」

「・・・あうううううう・・・」



「はぁ、はぁ、こ、ここまで来たら・・・」

「シュン様、見つけましたよ!」

「げっ!?リリィ!?」

「・・・シュン様、酷いです・・・げっだなんて・・・」

「あ、あ、リリィ?泣かないで!・・・ご、ごめんって!?」

「うふふ♡シュン様隙あり♡」

「え!?ず、ずるい!!ああああああ・・・」



「瞬!」

「み、美玖ちゃん・・・」

「なんだかげっそりね。」

「だ、だってぇ・・・」

「もう、しょうがないなぁ。おいで?癒やしてあげるから。」

「うう・・・美玖ちゃん・・・って美玖ちゃん?」

「・・・瞬が悪い。そんな格好で誘惑する瞬が・・・」

「ええ!?癒やしてくれるんじゃ・・・」

「癒やしてあげるよ?はむっ♡」

「うひゃう!?吸わないでぇぇぇぇ!?」




「こ、ここなら・・・」

 

 どすっ

 がしぃっ!!


「うふ♡」

「うわぁ!?ジェ、ジェミニ!?どこから!?」

「私動くの苦手だからね〜。シュンくんが来るの木の上で待ってたのよ♡」

「ええ!?」

「ああ、こんなに景色の良い所でシュンくんとするだなんて♡頑張りましょうね♡」

「はうううう!?」







 はぁ、はぁ、つ、疲れた・・・


 お昼まで後少し・・・もう見つからないようにしないと・・・ん?


 僕の視線の先に、見慣れない女の子が歩いている。

 歳は同じくらいに見える。

 誰だろあれ?

 感じ的には美玖ちゃんに似てるけど・・・でも、美玖ちゃんじゃない。

 ・・・美玖ちゃんはあんなに胸が大きくないし。

 水着だから丸わかりなんだよね。


 あ!?躓いて転んだ!

 

「君!大丈夫!?」


 僕は女の子に駆け寄り助け起こす。


「あ、ありがとう。」

 

 やっぱり美玖ちゃんに似てるや。


「どういたしまして。ところで君、こんな無人島で何を・・・」

「お礼を差し上げますね?んむ♡」

「んぐっ!?」


 言葉の途中で、いきなり知らない女の子にキスをされたまま押し倒され、目を白黒させる僕。


「ぷはっ♡うふふ・・・瞬ちゃん美味しい・・・♡」

「へ?瞬ちゃん?・・・まさか!?」


 にちゃあと笑う女の子の顔が、翠叔母さんに重なる。


「うふ♡瞬ちゃん♡あん♡大きい♡私のキスでそんなになっちゃったのね♡嬉しい♡」

「み、み、み、みど・・・はうっ!?」

「ああ・・・夢にまで見た瞬ちゃんの・・・♡」

「お、叔母さん!駄目・・・うあっ!」

「・・・♡」



 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


「しくしくしく・・・」

「はぁ・・・瞬ちゃん・・・最高・・・好きぃ・・・♡」


 僕の胸の上で、満足そうな翠叔母さんが、蕩けた顔で胸に顔を押し付けている。


 ああ・・・ついに・・・やっちゃった・・・


『はーい!しゅーりょー!!全員目印の所に来てねー?』


 美嘉からの念話が届く。


「はぁ♡瞬ちゃん行きましょう?」

「・・・うん。」


 翠叔母さんが立ち上がり、僕の手を引いて歩きだす。

 ・・・みんなに、なんて言おう?


 僕は項垂れ歩くのだった。

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