第99話 無人島に到着しました
「さて、準備は良い?」
僕達は、それぞれ旅行の準備をして、部屋に立っている。
新聞紙を敷いて、靴を履いてね。
転移を使用するのは、美嘉とジェミニとフォーティ。
美嘉がクォンと僕、ジェミニがラピスとリリィと翠叔母さん、フォーティが美玖ちゃんと美咲と美玲と共に飛ぶ。
この班分けは、万が一転移先に異常があった場合に、速度に優れている美嘉と僕とクォンが対処するためなんだ。
『『『転移』』』
三人が転移を使用する。
光が溢れ、一瞬で景色が切り替わった。
その瞬間、僕とクォンは気配察知で周囲の状況を確認したけれど、異常は特に感じられなかった。
「さて、着いたわね。」
「ええ、じゃあ、各自に予め渡しておいた薬を飲んで置いてね?」
ジェミニの言葉で、みんなガラス瓶に入った液体をあおる。
これは、ジェミニが作った虫除けなんだ。
なんでも、摂取する事で、皮膚から虫が嫌がるフェロモンみたいなのが出るらしく、効果は一週間程続くんだって。
「次はわたくしですね。清光魔法『清浄の風』」
リリィから全員に翠色の光が流れる。
この魔法は、弱いけれど効果の長い魔法で、その効果は3日間程続く。
内容は状態異常耐性(弱)なんだ。
魔法的な状態異常にはかなり弱いけど、普通の生物が持つ麻痺、毒なんかには効果的だ。
少なくとも、よっぽど強い毒なんかじゃないとレジストする。
こっちの生物の毒程度では即死はしなくなると思う。
「これで準備はOKね。さて、まずは拠点に行こう?こっちよ。」
美嘉が歩くのに合わせて僕達も移動を開始する。
転移したのは森の手前で、向かうのは森の奥だ。
洞窟があるらしい。
道は整備・・・とうか、明らかに魔法で整地されていて、歩き易い状態になっていた。
5分程歩き、洞窟を発見する。
洞窟の中も、すでに手が加えられていて、一定間隔毎に、照明代わりに光る岩が設置されていた。
多分、ジェミニが作った奴だね。
「・・・ここは、美嘉が見つけた他国にある無人島を買い取り、あたしとジェミニ、それとフォーティで手を加えた島よ。」
歩きながら美嘉が説明する。
・・・すっごいお金かかってそうだね、それ。
「まぁ、物価がだいぶ安いから、そんなに高くは無かったわね。さて、着いたわ。」
洞窟を50m位進むと、そこには岩の壁がある。
美嘉がその岩に触れると、壁は横にスライドした。
「この扉は、登録してある魔力の人しか開けられないわ。ジェミニが美咲や美玲、美玖、翠さんの魔力を解析してるから、四人でも問題無いよ。」
四人が試してみると、問題なく扉は開いた。
中に入ると、大きな部屋になっており、そこは居間のようになっていて、室内には台所もあった。
もっとも、機械的なものでは無いけど。
見た目は、簡素な岩と金属の箱って感じ?
「基本、魔力で火をつけられるわ。そこにある冷蔵庫も照明も同じよ。魔力で動いているの。さて、四人とも、練習の成果を見せて貰うね?」
美咲、美玲、美玖ちゃん、翠叔母さんが緊張した面持ちでコクリと頷いた。
そう、四人は旅行に行くまでに、みんな魔力制御の訓練を受けていたのだ。
僕はここに来るまで知らなかったんだけどね。
まず、美玲が恐る恐るコンロみたいになってる所に手を伸ばす。
そして、金属部分に指を置き、念じる。
次の瞬間、
ボッ!
「っ!点きました!」
「おっけー!合格よ。じゃあ、次は・・・美咲?そこの暖炉を起動してみて?」
「はい・・・ここに触れて・・・」
暖炉にも、火が灯る。
「出来た!」
嬉しそうにする美咲。
「よし。熱いからすぐに消してっと。次は美玖ね?台所の蛇口からお湯を出してみて。」
「わかった・・・・・・やったぁ!出来た!」
蛇口のスイッチを押すと、魔力に反応して、お湯が出てきた。
「最後は、翠さんね?同じ様に今度は水よ。」
「ええ・・・こ、これで良いかしら・・・?・・・あっ。」
別の蛇口を同じ様に操作して水を出す翠叔母さん。
「よし、これでここでの生活は問題無いわね。」
へ〜・・・みんな頑張ったんだなぁ。
「ここにある物は基本全て魔力で動くの。で、大物の冷蔵庫や冷暖房、お風呂なんかは、あたし達魔力に慣れている人が操作しましょう。冷蔵庫は予め魔力を封入しておく必要もあるしね。」
「これ・・・大変だったでしょ?」
僕は素直な感想を言う。
実際、これだけのものを仕込もうと思ったら、かなり大掛かりな作業が必要だし。
「ま、それなりにね。でも、大きな工事は基本ゴーレムやラピス、クォンが手伝ってくれたし、魔法もあるしね。通路の光石への魔力封入もリリィがやってくれたし、期日までになんとかなったわ。」
「・・・ありがとう、みんな。」
僕のお礼に、みんなは素直に喜んでくれた。
これは、僕は今日から頑張らないと!
「・・・さて、続きを案内するね?」
こうして、美嘉の案内で地形操作で作った屋上・・・テラスや、寝室、トイレへと案内される。
寝室は・・・うん。
大きなベッドがあるだけだった。
後は照明かな。
居間の部屋と大差ない。
・・・細かいことは気にしない。
翠叔母さんが、どこで寝るのか、とか、誰の横で寝る気なのか、とか、細かいことは気にしちゃいけないんだ。
「最後はお風呂ね。こっちよ。」
僕達は一番奥に向かう。
すると、そこには岩をくり抜いて作ったであろう大きなお風呂が!
すでにお湯が張ってあり、湯気が出ている。
「これね?実は温泉なんだよね。魔法で調べて見たら、地下30メートルくらいに水源を見つけてさ?実際、穴繋げてみたら温泉だったのよ。成分も問題ないわ。」
「「「「「おお〜!!」」」」」
温泉!
良いね温泉!!
僕の両親は温泉好きだったから、小さな頃よく連れて行かれたんだよ!
まさか無人島で入れるとは思わなかった!
これは嬉しい悲鳴だね!
「一応、『クリーン』の魔法を仕込んである、クリーンルームってのも作ってあるよ。もし、入浴するのが面倒だったら、それでも良いからね?洗濯もそれで出来るし。」
みんなでそんな説明を聞きながら居間に戻る。
「これでこの施設の説明は全てよ。後は、この島についてね。」
美嘉の説明では、この島は森、山、海の3つで構成されているらしい。
危険な生物・・・というか、毒のある虫や蛇なんかはやっぱりいるらしいけど、そういうのはこの洞窟からは結界で排除されてるんだって。
大型の獣は見てはいないらしいけど、島全体を調査したわけじゃないからわからないってさ。
まぁ、異世界組はドラゴンくらいどうってこと無いメンバーだし、美玖ちゃんや美咲達が単独で行動しなければ問題無いみたい。
僕達は当然余裕です。
「こんな感じかな。何か質問ある?なければ、まずは散策しない?」
「「「「「「「「「異議なし!」」」」」」」」」
こんな感じで無人島生活は幕を上げたんだ。
この時は、後々あんな目に遭うとは思わなかったんだけどなぁ・・・
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